MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

シューベルトの手招き

2010-02-16 00:00:15 | 私の室内楽仲間たち

02/16 私の音楽仲間 (139) ~ 私の室内楽仲間たち (119)



   弦楽四重奏曲 第15番 ト長調 Op.161 D887 



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




           関連記事  『最後の四重奏曲』

   (7) ~ (11)  Schubert ~ 『第15番 ト長調 Op.161, D887』
           ① 尾を引く譜面騒動
           ② シューベルトの手招き
           ③ 振動と沈潜
           ④ 安らぐ異分子
           ⑤ 異和感と疎外感

   (12) ~ (14) Schubert ~ 歌曲集『冬の旅』
           ⑥ 第1曲 『お休み』
           ⑦ 第5曲 『菩提樹』
           ⑧ 第15曲 『カラス』

   (15) ~ (17) Schubert ~ 『第15番 ト長調 Op.161, D887』
           ⑨ 放浪の果ての静寂
           ⑩ 隙間風と踊る
           ⑪ 手を触れるべからず?





 2月へ入ったばかりのある午後、まるで Schubert
引き寄せられたかのように4人が集まりました。

 メンバーは、Violin が私、Sa.さん、Viola が.さん、
チェロはSu.さんです。



 私にとっての "前回" は、ちょうど2週間前。 曲目は、
Mozart のヘ長調 『プロシャ王』 K.590、Beethoven の
ヘ長調 Op.135。 いずれも作曲者にとって最後の
弦楽四重奏曲でした。

 そして今回は Schubert です。

 よりによって、"最後の四重奏曲" が3曲も続くなんて…。
それも、ほぼ年代順に。 偶然とは言え、何か因縁めいた
ものを感じてしまいます。



 ちなみにO.さんとSu.さんは、前回の BEETHOVEN でも
ご一緒した仲間です。 さらに付け加えれば、「Su.さんの
リクエストがあったからこそ、BEETHOVEN、SCHUBERT
の2曲が決まった」と言ってもいいほどなのです。

 これも因縁なのでしょうか。 あるいは "腐れ縁" とSu.さん
には言われてしまいそうですが…。 




 やがて第Ⅰ楽章が始まりました。 長大なこの楽章。
最初は、何の変哲もない "ト長調" の長い和音です。

 と思うと、すぐに "ト調" の打撃が!




 Schubert でよく聞かれる、"長調と短調の移ろい"。 私に
とっても、これは決して珍しいものではありません。 しかし
この楽章では、それがあたかも "主要な命題" であるかの
ように扱われています。

 大半は「長調 → 短調」のようにハーモニーが変わります。
しかし楽章の末尾では、「長調 → 短調 → 長調」のような
"揺り戻し" も聞かれます。



        関連記事 『私の室内楽仲間たち 』 (16)
   Schubert の 五重奏曲 ② (光と影~シューベルトと三和音)




 譜例は、この四重奏曲の冒頭部分です。

 2 → 3小節目にかけては "ト長調" → "ト短調"、
7 → 8小節目では "ニ長調" → "ニ短調" のように
ハーモニーが変わっています。







 これが、やはりヴィーンと関係の深い、マーラー交響曲
第6番
になると、表現は、より直截的になります。



 SCHUBERT では、長調のあとに短調の和音が現われる
際に、リズムの動きがあったり、チェロが新たに加わったり
しながら、いわば響きの変化を補佐するような役割が付随
しています。

 しかしマーラーでは、長く延びた和音の中で、トランペット
のⅡ番、トロンボーンのⅡ番などが、単独に半音低い音を
目がけて動いています。 周囲にはほとんど変化が見られ
ません。

 これは、古典的な和声学では禁じられている手法です。
しかし作曲者にあっては、「表現が第一目的」なのでしょう。



 マーラーでは、和音の動きは、すべてが「長 → 短」です。

 『悲劇的』という副題の由来は定かではありませんが、
いずれにせよ、悲劇的な内容を感じさせる要素の一つ
です。




 話はシューベルトに戻りますが、さらに驚いたのは、これに
続く部分です (譜例の A)。

 私の心の中に現われたのは、マーラーだけではなかった
のです。




 音源は前回と同じものです。




: ト長調 3/4拍子 Allegro molto moderato
(一部の音源は中途まで、あるいは中途で堂々と終わっています。)

Hungarian String Quartet

The Juilliard String Quartet play and discuss
sections of a Schubert Quartet with Elliott Carter


Quartetto Italiano   

Young Chamber Players on February 7, 2010




: ホ短調 4/4拍子 Andante un poco moto

Hungarian String Quartet

Quartetto Italiano  

Škampa Quartet

演奏団体不明




: SCHERZO : ロ短調 3/4拍子 Allegro vivace
   TRIO    : ト長調  3/4拍子 Allegretto

Hungarian String Quartet

Quartetto Italiano




: ト長調 6/8拍子 Allegro assai

Hungarian String Quartet

Quartetto Italiano  




     関連記事  『最後の四重奏曲



(1) ~ (2)    Mozart  『プロシャ王四重奏曲ヘ長調』
               

(3) ~ (6)   Beethoven  『第16番 ヘ長調 作品135』
              

(7) ~ (11)  Schubert  『第15番 ト長調 Op.161, D887』
               

(12)   歌曲集『冬の旅』 第1曲 『お休み』

(13)   歌曲集『冬の旅』 第5曲 『菩提樹』

(14)   歌曲集『冬の旅』 第15曲 『カラス』

(15) ~ (17)  Schubert  『第15番 ト長調 Op.161, D887』
                            


  (続く)