「断乳・卒乳」についてまとめていたんですが、改めて調べるなかで、
記事には容量的にも流れ的にも載せられないけれど、
書き留めておきたいと思ったこと、こちらに記しておきます!
公のガイドライン
「米国小児科学会(AAP)」によると、「6ヶ月まではなるべく母乳のみ。6ヶ月から1歳までは離乳食と共に授乳し、1歳を過ぎてからは、ママと赤ちゃんが好きなだけ続けましょう」といいます。
国際団体のWHOやユニセフは、「2歳頃まであげましょう」とのこと。
日本では、何らかの団体が表立って「いつまで」とすることはないようですが、
昨今では母子手帳からも「断乳」という言葉が消されたと聞きます。
一昔前は、「1歳前後に断乳するのがベスト」という意見のみが主流でしたから。
子ども自らが「もういらない」とする「卒乳」を待つことが、
より認められつつあるんですね。
人類学者による世界各地の事例
また、人類学者によって世界各地の事例も報告されています。
こちらの、人類学Katyerine Dettwyler氏のまとめた’Examples of Societies Whrere Children Nurse For Many Years’に引用されたYale大学出版の論文によると:
ネイティブアラスカンやイヌイットに混ざり、アイヌでは3-4歳で卒乳といった記述も!
また、同じくDettwyler氏による、’A worldwide average age of weaning?’、では、2-7歳という幅をみるのが妥当であろうとのこと。
世界のマジョリティーは、より長く母乳をあげているんですね。
話はそれますが、この氏の研究を取り上げて、「2-7歳と結論づけたのは猿の研究に基づいていて、そのまま人間にあてはめても参考にならない」とされた記事も見つけたのですが、私でさえ、少しネットを調べれば、ヒトの文化の調査を基にしていると分かるのになと、ちょっと驚きましたよ。
「断言された言葉」、しかも、それが肩書きのある人によってだったりすると、すぐさま信じ込みたくもなりますが、改めて、情報を鵜呑みにしない大切さを思います。
世界最低の母乳率はイギリス?!
ではそもそもどれぐらいの人々が母乳をあげているのか、2016年のニュースによると、世界最低の母乳率はイギリスだそうです。
81% が母乳を上げようと試みるものの、34%が6か月まで、12か月まで続けるのは0.5%とのこと。
ちなみに、米国は79% が試み、 49% が6か月を過ぎても続け、1歳過ぎても続けるのは27% とのこと。
ドイツが23% 、ブラジルが 56% 、セネガルが99% とあります。
アフリカ諸国は90%強がほとんどです。貧しい国では、母乳が唯一の栄養補給源になりえますからね。
日本はどうなんでしょう?
こちら【図解・社会】母乳育児の割合(2016年8月)によると、
”母乳のみで育てた保護者の割合は、15年度は生後1カ月が51.3%、生後3カ月が54.7%で、前回調査の05年度の42.4%と38.0%を上回った。粉ミルクと両方で育てた場合も含むと生後1カ月は96.5%、生後3カ月は89.8%だった。”
そうです。
母乳率高くてびっくりしましたよ!
欧米での母乳を長くあげようムーブメント
欧米で1歳以降も母乳を与え続けるムーブメントの「グル」ともされる、ビル・シアーズ医師が唱えるのが、「アタッチメント理論」です。
こちらにも以前まとめたんですが、
・「アタッチメント育児」が教えてくれる「繊細さ」
1.産後の数時間を赤ちゃんと共に過ごす
2. 赤ちゃんの泣き声等のサインには意味があると捉える。
3.母乳を与える
4.スリングやキャリアーなどで赤ちゃんを身体に近づけておく
5. 赤ちゃんと同じ部屋やベッドで眠る
6.してよいこととよくないことの境界を設け、片寄り過ぎない。「何してもいいのよ」でもなく、「それはだめこれはだめ」ばかりでもなく、その間でバランスを取る。
7.周りからのアドバイスや意見に常に従うよりも、親自身の本能や直感も大切にする。
という「7つの柱」をあげ、一部の女性層に熱狂的な支持を受けました。
それでも次第に、スリングで抱っこし続けたり添い寝や母乳を長く与えるなど、「女性への負担が多すぎる」、「働きながらでは到底無理」、「女性だけが罪悪感を煽られる」といった批判が出るようになります。
私自身は、それまで主流だったスポック博士(赤ちゃんはベッドで泣きっぱなしにさせれば次第に泣かないようトレーニングされますよ等のアドバイス)よりも、よほど「アタッチメント理論」に共感しますが、「7つの柱」も自らに合ったものをできる範囲で取り入れるぐらいでいい(というか完璧なんて無理)、と思っています。
母乳を長くあげることへの批判
「いつまで母乳をあげるか?」については、2012年5月のタイム誌の表紙に、4歳の息子君に授乳するスーパーモデルJamie Lynne Grumetさんの写真が登場し、大議論が巻き起こりました。
また2015年には、オーストラリアの女性が6歳の娘ちゃんに授乳することをインターネットで厳しく批判されたとのこと。
批判には、「性的虐待だ」というようなものもあり、結局、女性の胸を「性的な対象」とのみとらえてしまう文化背景が大きいんだなと分かります。
それで、赤ちゃんでなく幼児が授乳されていると、何とも居心地悪く感じてしまう。
時々日本でもこちらでも議論される、「公の場で授乳する・しない」もそうですよね。
「布で覆ってもだめ」なんて意見もあり、なんて子供を育てにくい社会なんだと思います。
女性の胸って、赤ちゃんや幼児への栄養補給や絆づくりのためでもあるんですよね。
公園の陽だまりで授乳するママさんの、なんて健やかな光景、そう思います。
ご自身が6歳まで母乳を飲んでいたという、Grumetさんの言葉が印象的です。
「本当に温かくて、お母さんを抱きしめているような感じ。心地よくて、満たされて、本当に本当に愛されていると感じるの。私は子供時代、本当に自分に自信があった。そしてそれは授乳のおかげだと私知っている。お母さんが決して私をおいていかないと感じていたのよ。それほど安心感を感じていたの。It’s really warm. It’s like embracing your mother, like a hug. You feel comforted, nurtured and really, really loved. I had so much self-confidence as a child, and I know it’s from that. I never felt like she would ever leave me. I felt that security.」
何ら害がないどころか、こんなに温もりあふれた思い出を持つ女性もいるわけですし、周りがとやかく言うこともなく、それぞれの母親の決断を尊重すればいいですよね。
ちなみに、私自身は5人とも1歳から1歳半の間に断乳でした。
夜間の授乳がきつくて、夜間だけ授乳をやめることもうまくいかず、
上の子たちの世話のためにも、「夜ぐっすり寝ること」を優先した結果です。
子育ては、様々な意見が溢れる中、
自分と子どもに合った方法を選択していくことの連続。
「物理的な迷惑がかかっているか?」と自問し、
単に「好き嫌い」といった「心象的な居心地悪さ」が原因ならば、
自らとは異なる決断も、尊重し合いたいです。
「断乳・卒乳」にまつわるあれこれでした!
それではみなさん、今日も良い日を!