うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

小娘からのエール

2022年03月05日 | 日記

最近は、

実家に行くと、だいたい何かを探している。

 

おはようございます。

母さんが、何でも、どこかへしまい込むからだ。

ある時はポリデントが無くなっていたり、

またある時は、そのポリデントがあっても

肝心の入れ歯が見当たらないってこともある。

そんなわけで、私はいつも、

床に這いつくばったり、家中の引き出しを引いている。

 

ある日は、

母さんの腕時計を探していた。

もしかしてと閃いた私は、仏壇の引き出しを引いてみた。

すると、線香の箱の下に、見覚えのある封筒を見つけた。

私は、それを、こっそり自分の服のポケットにねじ込んだ。

そして、母さんの腕時計は、

母さんの腕にしっかり巻かれているのを見つけた。

「おい、母さん!腕にちゃんとあるやないか。」

すると、母さんは自分の腕を見て、

「ほえ~、ほんとや!いつの間に誰が巻いたんや?」

と驚いた。

当然、私は、

「そりゃ、自分で巻いたんだろうが!」

と言った。

そして、私と母さんは大笑いした。

さすが母娘だけあって、笑い方はそっくりだが、笑った理由は、きっと全く違う。

母さんは、おそらく

「おかっぱめ、また、わしのせいにしてからに」と思っていただろうし、

私は、封筒を黙ってポケットにねじ込んだ後ろめたさを感じていた。

互いに違う思惑を隠すために、大口を開けて笑っっていたのだ。

だからか、ずーっとひたすら笑っていた。

いつ笑い終わろうか、頃合いを見計らっていた。

可笑しな駆け引きだった。

 

この封筒は、30年前、

私が両親に書いた、一度きりの手紙だ。

この家を出る日に、そっと置いて行ったのを覚えている。

30年ぶりに、読み返してみた。

私は驚いた。

今とまったく変わっていないことに驚いて、自分にガッカリした。

「あれから私は、全然、成長していないじゃないか!」

20歳の私は、こう記している。

 

今までの年月の中で、

私は何度、あなたをよろこばせることが出来たでしょう。

自分の殻に閉じこもり、心配ばかりかけていたと思います。

その殻の中は、ひどく孤独で寒くて、

なのに、出たくとも出ることの出来ない殻でした。

五体満足で産まれ、何の不満もないはずが、

不満ばかりがわいてきて、そんな自分がはずかしく、

また更に、自分の殻をかたく厚いものへとしてしまった気がします。

せめて、もっと、お母さんやお父さんと、いろんな話がしたかった。

けれど、自分の未熟さのせいで、それが出来ませんでした。

本当に、ごめんなさい。

これから先、私になにが起こり、どうかわっていくのか、

今は全くわかりませんが、

自分でえらんだ道を進んでいくことにします。

今まで、ありがとうございました。

 

本当に、ガッカリだ。

どんだけ、ひらがなが多いんだ!

まったくガッカリだ。

30年前と事情は大いに変わっているが、私は何も変わっていない。

 

先日、ある人が

「人を羨んでいる時ってさ、自分が幸せじゃない時なんだよね~」

と呟くのを聞いて、ハッとした。

自分で勝手に作り出した殻の中の自分が、ハッとしたのだ。

何も人を羨む必要はない。

私は私だ。

そんなことを言いながら、自分の殻を固く守っている。

孤独で寒いくせにだ。

だから私は、殻をぶち破りたくて、

自分の選んだ道を進んできたのだろうに、

今、私は出戻っている。

 

最近、年老いた両親のいる実家にいると、

まるで振り出しに戻った気がして、新しくキラキラした世界から

どんどん、自分が遠ざかって行く気がしていたのだ。

これを、閉塞感と呼ぶのだろうか。

まるで、20歳の小娘の気分だ。

 

私は、あの小娘が、自分の足で歩き出した日の手紙を読んで、

今、「負けるもんか、こっちとら50だかんな!」と

可笑しな励ましを受けている。

 

さて、こっぱずかしい、この手紙をどうしようか?

もう一度読んだら、燃やそう。

殻と一緒に、燃やしてやろう。

 

そんなわけで、

今日は我が家のヤングチームでも眺めよう。

君らは、キラキラしてんな~。

よし、私も続くぞ!

自分の殻をぶち破ってやる。