鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2017/2/16

2017年02月16日 21時02分29秒 | ゲーム・コミック・SF
今日は午後休暇をいただいて「虐殺器官」観に行ってきましたヽ(^o^)ノ感想はまた後日。
久しぶりにディックを読んだので、そのレビューなど。

フロリクス8から来た友人/P・K・ディック、大森望訳(創元SF文庫)

優れた情報処理能力を持つ「新人」と超能力を有する「異人」が世界を支配し、従来の人類である「旧人」はろくな仕事にも就けずに圧政に苦しめられている未来の地球。「旧人」の心の支えとなっているのは、現状を打破するために外宇宙に救いを求めて旅立ったトース・プロヴォーニと彼の代弁者たるエリック・コードン、彼らを支持する地下活動だった。
息子の公務試験失敗に打ち拉がれている「旧人」ニックは、職場の上司が地下活動に加盟していることを知り、我知らぬままに活動の渦中へと踏み込んで行く。その過程で出会った鉄火肌の美少女・チャーリーに惹かれてゆくニックは、支配者層たる新人・異人にとって、旧人のステロタイプとして目をつけられている存在でもあった。取り締まりに遭遇し、チャーリーと共に後戻りできない逃避行へと追い込まれて行くニックの前に、「プロヴォーニ帰還」のニュースが飛び込んでくる。フロリクス8出身の異星人を仲間として帯同してきたらしいプロヴォーニに対して、新人・異人が取った対抗策とは?そして、プロヴォーニの帰還が地球にもたらした変革とは?

ディックが生活費を稼ぐために長編作品を書きまくっていた頃の、典型的な量産品ですヽ( ´ー`)ノ
小説としての完成度は、中の下程度。起承転結の「転」で終わってしまっている感じで、「結」がどうなるのか、また「転」にいたる明確な経緯と背景は何だったのか、よくわからないまま何となくストーリーがこぢんまりと収束しています。読後感は、はっきり言って「何じゃこりゃ??」な感じ。

が、そんなレベルの作品でも、それなりに面白いのがディックのすごいところ。
SFとしてのアイディアはありきたりだし、登場人物が直情的で幼稚なキャラクターばかりで感情移入できないし、全体的な完成度はイマイチなんですが、要所要所のディテールがとにかく面白い。特に、プロヴォーニが地球に帰還するまでのサスペンスフルな展開は、頁をめくるのがもどかしくなるほど。前半のストーリー展開を牽引する激烈な美少女・チャーリーの存在感も素晴らしいですね(まぁ、キャラ造形的にはありきたりなファム・ファタールではあるんですが)。
ラストシーンには、如何にもディックらしい「ネガティブな前向きさ」が感じ取れます(何だよそれ、と思われるかもしれませんが、ディック読み慣れると感じ取れちゃうんですよそんな前向きさがヽ( ´ー`)ノ)。傑作とは言い兼ねますが、佳作とぐらいは言っても良いかな。愛すべき作品です。
コメント
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