Officer's '70s Theater

'70年代の恐竜的ハイパワー車ファンが昔を懐かしむブログ

ハンバーガー・ヒル

2010-08-01 01:55:29 | 映画(戦争)
Hamburger Hill

1987年アメリカ映画
監督:ジョン・アーヴィン

 原題がそのまま日本語題名になっているので非常に判りやすいです。
戦場となった丘に多数の死者が出て、激しい銃火のため死体の回収も出来ず、砲爆撃でぐちゃぐちゃに砕かれた敵味方の死体がナパーム弾で焼かれる悲惨な状況を「あそこに行ったらミンチ肉にされて焼かれて、ハンバーガーになっちまう。」と米兵が表現したことから、米国マスコミによってその丘はハンバーガー・ヒルと呼ばれました。
日本人にとっては日露戦争の203高地が思い出されます。

 米軍内の上下の軋轢や白人と黒人の人種対立、恐怖から逃避するための麻薬中毒など個別のエピソードは散りばめてあるのですが、テーマをひとつに絞った誇張表現は抑えられています。出演者に(主人公にだけは絶対に敵弾が当たらない的な)世界的大スターを起用しなかった事もあって、戦闘シーンはまるで記録映画のような印象を受けます。

 ベトコンの火力拠点となっている丘を攻めるのは米軍でも有名な伝統ある部隊の101空挺師団です。戦闘はブラボー中隊という現場の目線で描かれているので「なぜこの丘を攻めなければならないのか?丘を奪取したら何が変わるのか?なぜベトコンは死守しようとするのか?」という説明が弱く、そのため見終わったあとに何も印象に残らない傾向に有ります。

 この動画で描かれているのは「米軍ヘリコプターによる味方の誤射殺害」いわゆるフレンドリーファイアです。命の危険をおかして必死で丘に攻め登ったら、あとから来たヘリ部隊は「数時間前の前線の位置」を基準に掃射を行うので、勇敢な味方の兵士が(敵が居るはずの位置に立っているから)成すすべも無く背後から射殺されてゆきます。ヘリの爆音が大きいので叫んでも声は届かず、軍服が泥まみれなので敵味方の区別がつかないのです。

 このような悲惨な間違いを起こさないためには、「無線で上空との連絡を頻繁に行う」「敵味方の境界線を決まった色の発炎筒で上空に向かって示す」「上空から掃射するタイミングは地上の前線管制官が決定し指示する」といった運用上のテクニックが必要です。
 このような人命の犠牲の上に戦闘のノウハウが継続的に蓄積されているのが「強い軍隊」だと言えます。そういう面では(常に実戦の洗礼を受けている)イスラエルとアメリカが世界で一位・二位を争っています。

 ベトコンが「敵機が来るぞ!」と言って壕内に逃げ込み、爆撃の嵐が過ぎたら外に出て射撃を続けるという戦法は太平洋戦争時の旧日本軍と同じです。制空権を握って圧倒的に優位なはずの米軍は「山の形が変わってしまうほどの猛爆撃をしながら」昔と同じ戦法で苦しめられた事になります。

 結果として現場の勇猛な攻撃精神で丘は占領されますが、その拠点が占領された後もベトコンは粘り強くその丘を迂回して補給・戦闘を続けました。そして最終的に「終わり無き持久戦。重なってゆく人的損害。国内からの反戦世論」に耐えかねた米軍は、不名誉を承知でこの地から撤退する事になります。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。