Officer's '70s Theater

'70年代の恐竜的ハイパワー車ファンが昔を懐かしむブログ

スクワッド

2010-07-02 13:40:42 | 映画(戦争)
Homemade trailer for "The Siege of Firebase Gloria"

1988年
原題:The Siege of Firebase Gloria
監督:ブライアン・トレンチャード・スミス
主演:リー・アーメイ
   ウイングス・ハウザー
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最初にベトナム戦争の映画で有名なものを列挙します。

プラトーン(ジャングル戦)
フルメタルジャケット(市街戦)
ハンバーガー・ヒル(陣地戦:攻撃側)
スクワッド(陣地戦:防御側)

これらの他にも米兵の戦争犯罪(現地人女性レイプ殺人)を描いた反戦映画(マーク・ハミル主演の「カジュアリティーズ」)がありますが、マイナーなので除外します。
広義に言えばジャン・クロード・ヴァンダム主演のユニバーサル・ソルジャーもベトナム反戦映画のジャンルに入ります。
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この映画は1988年の作品です。
前年公開のハンバーガー・ヒルが単調な記録映画風だったのに比べ、様々な劇的要素を詰め込んだ作品です。
私の知る限り、日本語版はVHS作品のみでDVD化されていません。

主役のリー・アーメイはフルメタルジャケットのハートマン教官役で名を売りましたが、この映画では海兵隊の人情派の士官として描かれています。長距離威力偵察の帰りに砦に逃げ込み、立て篭もって戦う事になります。

英語の「火力拠点グロリア包囲攻撃」をどう和訳すればスクワッドという表現になるのか意味不明で、映画配給会社の命名センスの無さには失望します。映画雑誌のキャッチコピーは「逆ハンバーガー・ヒル」でした。

米国人にとっては「アパッチに包囲された砦で戦う騎兵隊」に似た構図が非常にわかりやすい映画だと思います。

1)深いジャングルに囲まれた丘の上に砦を築いて補給はヘリで行うという米軍の戦法は、陸戦というよりも島嶼防衛戦に似ています。悪天候の際や夜間に空軍の支援が途切れると突然不利な状況に陥るのが難点です。この映画の場合は「後方の航空基地がテト攻勢で被害を受け、十分な支援が受けられない状況」に陥ってしまいます。

2)砦の指揮官の大尉がアヘン中毒で、戦闘は部下任せにして現実逃避しています。こんな無能な指揮官の下では全滅してしまうと感じ、リー・アーメイは強引に指揮権を委譲させます。ベトコンは数が多い上に正規軍並みに迫撃砲や対空機銃を持っていますから、真っ先に陣地の強化を命じます。

3)この映画では攻める南ベトナム解放軍側の指揮官にも脚光を当てています。指揮官は勇敢で、決して無能ではありません。しかしアメリカ兵を殺す代償に南ベトナム解放軍が消耗し、代わりに北ベトナム正規軍が入って来ます。結局、南の国土は北ベトナム人の思うが侭にされてしまうのです。

4)若いベトナム人女性が二人組で(もちろん丸腰で)砦の入り口にに近づいてきますが、うっかり鼻の下を伸ばして近付けると自爆テロで殺されます。夫や兄弟が米軍に殺されて恨みに凝り固まった女が服の下にダイナマイトを巻いて近づくようなケースが多かったのです。
このような事例から被害妄想的になった兵士が「怪しい現地人は躊躇わずに射殺しろ!」という発想になり「逃げる奴はベトコンだ、逃げない奴は良く訓練されたベトコンだ(以下略」という結果を生んだ訳です。

5)多数の死者を出しながらも昼間に人海戦術で何度も押し寄せてくるロボットのような共産軍の恐怖を描きたいのは判るのですが、それは朝鮮戦争のときの中国軍の話であって、「ベトコンは基地の下まで地下トンネルを掘って爆薬を仕掛ける攻撃方法を知っていた。」とか「ベトコンは旧日本軍の影響で夜襲を得意とした。」ということを知っている者にとっては、納得ゆかない「アジア人をことさら無能に描こうとした誇張的表現」が数多くあります。

6)リー・アーメイに従う部下の熟練狙撃兵はM14オートマチックライフルの狙撃型を使っています。これは史実に基づいた設定で、昨今の映画に登場する米軍狙撃兵が安易にレミントンM700型のボルトアクションライフルしか使わないのに比べて、非常に「通好み」の味付けだと言えます。

7)彼等は何度もベトコンの攻勢を凌ぐのですが、最後に防衛線が崩壊してベトコンに壕内に突入されてしまいます。野戦病院の中で看護婦、怪我人や薬棚まで目茶目茶に射撃され、怒った女性医師が銃を持って反撃します。
 負傷者までもが外に出て射撃しないと塹壕を保持出来ない非常事態に、騎兵隊よろしくヘリコプター部隊が支援に到着し、かろうじて砦は陥落を免れます。米軍の武装ヘリの恐るべき攻撃力が良く描かれています。
回復不可能な損害を出したベトコンは「米兵を多数殺したという名誉だけを持って」撤退してゆきます。


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