日々是好日

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伊藤ハム「シアン問題」 2号井戸原水からシアン検出の謎にせまる その1

2009-01-16 21:26:48 | 学問・教育・研究
伊藤ハム「シアン問題」では2号井戸にシアンが検出されたことが「つまずき」のきっかけとなったと私は思っている。そして調査対策委員会の報告書(平成20年12月25日)は次のように締めくくっている。

《原水からシアン化物イオン及び塩化シアンが検出された当時、速やかに再検査を実施することが、伊藤ハム及び登録水質検査機関Bの適切な対応であったが、両者ともに再検査を実施していないことが、今回の問題を分かりにくくした理由といえる。
 以上述べたことを総合的に考慮し、2 号井戸の原水の継続調査結果から考えると、原水がシアン化物イオン及び塩化シアンによって汚染されている可能性は極めて低いといえるだけである。当時の試料はすでになく、これ以上の検証は不可能である。》(46ページ)

私は伊藤ハム「シアン問題」は幽霊事件?の追記に《追記(1月13日) 平成20年10月7日に採水した2号井戸原水に0.037 mg-CN/Lのシアン化物イオン及び塩化シアンが検出された事実には依然として謎が残る。》と述べたが、その謎にはシアンが検出された経緯に対するものもあれば報告書に含まれる謎もある。そこで私なりに現在把握している問題点を指摘して伊藤ハム「シアン問題」の締めくくりにしたいと思う。

まずは報告書に含まれる謎(あくまでも原水問題に限定する)である。

報告書の44ページから45ページにかけて次のような記載がある。画像は二つに分かれているが連続した流れになっており、省略や改変は行っていない。




はじめの文章は、シアン化物イオン及び塩化シアンが検出(0.037 mg-CN/L H20 10/7)された2号井戸の原水において、シアン化物イオンとしてのCN存在率は3.6 %で、塩化シアンとしてのCNの存在率は96.4%であると読み取れる。またそれ以外の読み取り方は出来ない。

一方、次のグラフ(図7)および表であるが、《図7 2号井戸原水で検出されたシアン化物イオンおよび塩化シアン》と説明があるので、これが登録水質検査機関Bから提出されたクロマトグラム記録用紙なのであろう。しかし図の左上段に記された「081007C #38 [Administratorが変更しました」の意味は不明である。そしてグラフを数値化したのが下の表であろう。グラフに書き込まれている数字が表の保持時間の数値と一致していることが分かる。表に示された[含有量]はCNが0.00014でCNClが0.00347で単位はmg/L(小文字l(エル)を大文字Lに書き直した)であるが、その合計は単純計算では0.00361であるのになぜか表では「合計」が0.0036になっている。これでは0.00014/0.0036=0.03888、すなわち3.9%となり44ページの3.6%とは合わない。この表でCNとCNClの値を加算すると「高さ」、「面積」、「相対面積」のそれぞれで「合計」の値と一致するのに、「含有量」だけは一致しない。そこで「含有量」でも加算と「合計」が一致するものとしてCNの値を0.00014から0.00001減らして0.00013とする。そうするとCN及びCNClの百分比が0.00013/0.0036=0.0361と0.00347/0.0036=0.9638から44ページの3.6%および96.4%と一致する。この結果は表の0.00014という記載が何か手を加えられた結果であることを疑わせる。上記「081007C #38 [Administratorが変更しました」の書き込みが気になるところである。しかしこれにもまして重大な問題がこの表に存在する。「含有量」の「合計」である。

この表に従うと「含有量」の「合計」は0.00360mg/Lでこれが2号井戸原水のシアン化物及び塩化シアンの検出量と言うことになる。しかしこの数値はこれまで基準値を超える値として報告されている0.037 mg-CN/Lの十分の一で明らかに基準値以下である。これはどういうことなのだろう。私は伊藤ハム「シアン問題」を最初に取り上げた昨年12月9日のブログで《異常値が検出されたこと自体が不可解なのであれば、先ずその異常値の出てきた状況を詳らかに調べ上げることを思いつくべきであろう。誰かが測定値に0を一つ付け忘れたのではないのか、私ならそう言うことすら疑うだろう。》と述べたが、まさに0.00360とすべきところ0を一つ付け忘れて0.0360としたのかも知れない。もし数字の記載ミスが事実であったとすると2号井戸原水にはもともとシアンが含まれていなかったことになる。

それでも問題は残る。仮に0を付け忘れたとしてもその数値は0.036で、最初に報告された0.037よりは0.001小さい。なぜこの食い違いが起きたのか。また表の0.00360はまだ報告すべき最終値ではなくて、それにどこにも説明されていないがあるファクターを掛け合わせて最初の報告値である0.037という数値を導いた可能性はありうる。報告書には私がここに指摘したような疑問に答える説明が見あたらないので、その意味では不親切であり、その分科学的な報告書としては質が低いと言わざるを得ない。

「0の付け忘れ」なのかそれとも「説明のし忘れ」のどちらなのか、これぐらいは明らかに出来るのではなかろうか。(つづく)


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