平野啓一郎さん*野口健さん対談《おまけ》
ychanありがとうございます。
2013-08-17
随分間があいちゃったのですが、小説家・平野啓一郎さんと登山家・野口健さんの対談には
《おまけ》というような時間もあったそうです。
ychanがその部分も書き留めてくださいました。
ychan、ありがとうございます。
いのち、というのは豊穣なものなのだなあとあらためて思いました。
(相当脱線してしまったので、今回はコメント欄は閉じさせていただきますね。ご了承ください。)
2013-08-17
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野口さんは匂いの話もされていました。
6000メートルを超えて生物がいなくなると匂いがなくなるそうです。
山に登る前に連れて行かれた京都で、
芸子さんのおしろいと髪を結う鬢付け油の混じった匂いが何とも言えず、くんくんしていたら、
芸子さんが怪訝な顔をされたので、匂いのない山のこと、
この匂いを肺いっぱいに吸って行きたいと事情を話したら理解してくださって、
後日その芸子さんから荷物が届いたそうです。
野口さん・・開けてみたら、「京都の芸者のうなじの香り」という缶詰が入っていて、
これを私と思って山に持って行ってくださいと・・・もう、涙が出ました。
で、ヒマラヤに持って行って、テントの中で開けたら、匂いがきつく、目が痛くなりました(笑)
テントから3,4メートル離して、風にのって香ってくるのがちょうどよかった。
平野さん・・そのとき(京都で)かいだ匂いと似た(感じ)?
野口さん・・んー、やっぱし本物がいいですね!
ふたりとも爆笑
割愛して書かなかったのですが、このシーンは個人的に好きな場面です。
日常の話の前あたりだったと思います。
またまた長くなってしまいました(汗)すみません!!
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本編のお話のなかでも、
野口さんが生と死の瀬戸際というような場面で、
思い起こすのは、日常のなんでもない瞬間、
ラーメン屋さんののれんをくぐる瞬間・・というようなお話がありましたよね。
匂いもそうなんだなあと思いました。
死の世界には何もないんだ。
ミヒャエル・エンデの、
「はてしない物語」(ネバーエンディングストーリー)はとても優れた小説で、
実は大人のための児童文学なのではないかと思うのですが、
それでも、一応の対象はこども、ですよね。
ところが、その小説のなかで、「虚無」という言葉がなんども出てきます。
「虚無」はどんなことばにも置き換えられないのだなあと思います。
小説のなかの世界が、「虚無」によって蹂躙されようとしている・・・
映画では真っ黒な渦巻きが世界を恐ろしい速さで飲み込んでゆきました。
あとには何も残らない。
その恐ろしさは凶暴なものだと思いました。
匂いのない世界、というのは、凶暴、というエネルギーさえ感じられないものでしょう。
(荒天のときはもちろん除いて)
それを笑い話のように朗らかに語られる野口さんはすごいひとだなあと思ったのです。
でも、このお話にはもうひとつの意味もあって、
「匂い」を連れて行ってください、というのは、ひとが生きていて結び合う、
ささやかな縁、生きていてこそ、の日常のなかのエピソードですよね。
匂いのない世界で、野口さんは勇気付けられたのだろうなあと思います、
下界?での、ささやかな、穏やかな出逢いに。
虚無の世界、匂いも音もひかりも、何もない世界。
大切なひとがその世界に行ってしまっても、
残されたこちら側の人間は、
その大切なひとが、
からっぽの世界にずっと居続けるということに耐え切れず、
悲しみの時がすぎてなお、
彼らを日常の世界、豊穣で、喧騒に満ち溢れた世界と、
断絶してはいない、と思いたくなるのではないでしょうか。
16日、お盆にこの世に帰ってきた故人の魂が、
船に乗ってあの世に戻ってゆけるようにと、
色とりどりの飾り細工を載せた舟が水面を漂っていました。
夏の風物詩として各地で見られる光景です。
その舟を見ていると、せつなくて、
故人がまた向こうにちゃんと帰っていけるようにという、
故人への愛情がせつなくて、胸がつまりました。
対談からは脱線してしまいましたが、
お盆というのは、死者を迎え、また送り出す儀式であると同時に、
きっと、こちら側に残されている者は、
いのちを尊び、日常に感謝する日々なのに違いないと思いました。
折に触れ、死者に思いをはせ、
死者とともにあった時をなつかしみ、
また、気持ちに区切りをつけて前を向いてゆく、
この国のさまざまな行事は美しく、素晴らしいものだなあと思います。
お線香の匂いや、花の香りは、
いや、呼びかける声もですが、
死線の向こうに届いてほしいものですね。
ychan、あらためて、
ありがとうございました。
すごく素敵な対談を味わうことが出来て、
感謝しています!!!