「どんぐりの花」が満開だ。
三浦半島・観音崎に近い虚庵居士の住いは、半島の東京湾側だが、自然もかなり残っていて時には「はっ」 とさせられる。
今回ご紹介するのは、そんな天然の「どんぐりの花」だ。半島の山々は、新緑が萌えて将に「山笑う」季節だが、そんな山の緑の中でもひと際「どんぐりの花」は、椎の巨木に花を一杯に付けるので、遠くから見てもハッキリと識別できる。
巨木全体が花で覆われるのだから、その花数は並の数ではない。加えて、むせ返る様な香が辺りに漂うので、林の下を歩いていて
花が見えなくとも、それと知れる程だ。
この辺りの「どんぐり」は、マテバシイかスダジイが殆どのようだ。三浦半島の殆どの山は、泥岩が隆起して出来た山で、平地に均しても耕作地には不向きな故か、山々は手付かずの天然の樹木が残されていて、椎も巨木に育っているのはそのためであろうか。
マテバシイとスダジイの区別は定かでないが、葉の形と葉の付き具合から、この「どんぐりの花」はマテバシイと思われる。無数のブラシのような雄花の中に、比較的数少ないが蕊が目立たない雌花が見える。秋になればこれが「どんぐり」に育つのであろう。虚庵居士の育った信州・諏訪は、寒冷な土地柄ゆえ、スダジイは見かけなかったが、スダジイの団栗は炒って食べれば香ばしい味がするようだ。今年の秋には子供に還って「どんぐり拾い」と「団栗の賞味」を愉しみたいものだ。
山笑ふ主役は巨木の椎の樹か
もこもこ にこにこ どんぐり咲くかな
幾百年? 巨木のスダジイ仰ぎ観つつ
樹齢に重ねて想いをいたしぬ
椎の樹の溢れる程に花咲くは
春山笑ふと観る人居ればか
噎せ返る花の香りは椎の樹が
あまたの「どんぐり」子等に約すや
この秋はどんぐり拾わむ子供等と
賞味もせむかな巨木の恵みを