夏休みを挟みつつ3本公開できました。タイトなスケジュールでした。
そんな中でも会心の出来だったのが谷口君の小池回です。
これはいい動画になったと現場ではとても盛り上がりました。
それにしても小池さんの理解度の高さよ。即座にこちらの意図を汲んでくれます。
そして反比例する再生回数の低さよ。さすがに堪えます。
伊藤によるフレット入れも公開されました。
塗装前にフレットを入れるというスタイル。おもしろいなあと思いながら観ました。
これからも目が離せません。
せっかくなので駒紙についても私の見解を述べさせていただきます。これめちゃくちゃ現場の話なのですっ飛ばして最後の方まで行っても問題ないです。
何なら今回この話だけです。
まず、製作の順序から。
伊藤がいつの段階でブリッジを作ったのかは不明ですが、私の順序は以下の通りです。
①木工磨き
②すぐに塗装
③塗装が終わればフレットを入れる。(ここは塗装の乾燥期間にもあたります)
④ブリッジ(駒)作成(同じく乾燥期間)
⑤塗装面にバフをかける←これは次の動画になります。
⑥ブリッジの位置を決めて貼る
こんな感じです。伊藤君は①の後に④があって③で、⑥の位置決めだけして②という順でしょうか。
全然違いますね。おもしろい。
私の場合は木工磨きが終わり次第、速やかに塗装に入ってコーティングしてしまいたい、というのがあります。
とにかく最高の状態のまますぐに塗料でカバーしたいと。
伊藤君のようなフレットの先入れは、実は昔作っていたミニギターがそのシステムでした。
あの時のイメージとして、指板面のマスキングが大変だったな、というのがあり今は敬遠しがちですが、逆に今のような一本生産だったらありなのかもしれませんね。
塗装を乾燥させている期間をフレット入れなどに充てられるのも私はこの順番が気にいっている点です。
このタイミングで指板をまっすぐに整備できるのもいいですね。指板に塗料が乗ってしまっていてもここで削れます。
フレットを入れた時点で最終的なブリッジの高さが出ます。ブリッジの高さは、ネックの仕込み角+指板の厚さ+フレットの高さで決まります。
最初から大体はわかっているのですが、この時点で最終的な高さがびしっと決まります。
駒紙をなぜ私が使わないかと、彼は疑問に思っていました。
これも実はミニギターを作っていたころに、先代の社長からある日「駒紙を貼りなさい」と指示が出ました。
当時は一人で1ヶ月に60本以上作らないといけません。工程のスリム化は文字通り私の死活問題でした。
それまでのミニギターのブリッジ取付方法は、塗装乾燥後、治具でブリッジの位置を決め、ブリッジを表板塗装面にダボで固定し小刀でふちをなぞる、そのブリッジの形に塗料をノミではがして、ニカワで着ける、というこの上ないシンプルなスタイルでした。ニカワですと30分で固定できますので接着剤はニカワです。
これなら30分で6本付けられる、というサイクルでやっていました。
駒紙を使うとなると、まず、塗装前にそれを作る必要があります。ブリッジのサイズよりちょっと小さい形状のテープを作ります。それを新たに治具を作って位置決めして張ります。その上に塗装します。当然駒紙の分だけ段差ができるので塗装が難しくなります。
ミニギターの塗装は信じられないぐらい薄かったのです。具体的に言うと、
ウレタンサンディングを2回吹き付けて、乾かして、サンドペーパーで磨いて、ウレタンサンディングを2回吹き付けて、乾かして、サンドペーパーで磨いたらその次にもうトップコートです。激薄です。
なのでたった0.1mmぐらいの駒紙であろうと邪魔で仕方なかったです。
駒紙の利点はブリッジの形に塗膜をノミではがす際に楽である、ということなのであると思うのですが、ブリッジのサイズとぴったりなものではないので、結局ニカワ接着の場合は、駒紙を剥がした後、隅々をノミではがす必要が出ます。さらには、駒紙であるテープのノリが表板につくのでそれを取る必要がありました。
ということで、当時の私が死にかけたので、当時の社長に「マジ無理でした」といい、シンプルスタイルのまま今に至ります。
それもあくまでも時間に追われたあの頃の場合なので、今のような一本生産なら話は変わってくるかもしれません。
しかし、今のところ、あまり必要性が感じられんなあ、と思うので伊藤君の動画の今後に注目します。便利そうなら採用します。
本当に他の人の作業をじっくり見られるのはとても勉強になって楽しいです。いい企画だなあと思います。
匠の世界の中沢さんもよかったですね。あの人は超面白い人です。
今回はちょっと専門的すぎる内容で読みづらかったでね、すみません。これだから視聴回数も伸びないのでしょう。
次の動画は何でしょうか、先日も新企画を撮りましたが、あれは形になるのかな。私が足を引っ張りました。お楽しみに。
あと、カスタムショップ、ご注文随時受付中です。お気軽にお電話ください。