玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

定額給付金を支持します(あるいは給付金ボイコット宣言の勧め)

2009年01月13日 | 政治・外交
これまで何度か定額給付金問題について書いてきた。
いや、正確には「閣僚の定額給付金受け取りを問題にする愚かさ」と「定額給付金の世間での評判」について書いたけれど、考えてみれば私自身が定額給付金という政策について賛成か反対か立場をはっきりさせてなかった。
これまでの記事を読んでくださった方はだいたいお分かりだとは思うが、私は定額給付金について「どちらかといえば賛成」である。本当は「経済知識、判断力がないのでわかりません」なのだが、マスコミや世論の頑なな反対・嫌悪ぶりを見ていて「ちょっと違うんじゃないか」と思うことが多く、いつのまにか賛成寄りになった。
ネットを見渡すと反対派よりも容認・賛成派のほうに「経済がわかっていそうな人」が多いように見える。私自身が「まったくわかってない人」なのでこの判断はすこぶるあやしいものだが。
とはいえ、田中秀臣さんが「僕は給付金を止めることには反対してもいい。」と言うのだから「天下の愚策」などではなくそれなりの合理性があるのだろう。麻生内閣に微塵も好意などなさそうな上杉隆氏森永卓郎氏も定額給付金のアイデアを評価している。
もちろん、懐の淋しい自分にとって1万2千円が魅力的なことは否定しない。金持ちが(その人にとっての)ハシタ金を欲しがるのはさもしいが、貧乏人が諭吉さんや英世さんの顔を拝みたいと願っても天下に恥じることはない。


私が気になる定額給付金反対派のおかしなところ。

● 麻生総理と閣僚が給付金を受け取るかどうかにこだわる

この点についてはすでに3回書いたので(われながらしつこい)、こちらをお読みください()。

● 給付金の受け取りばかり気にして使われ方に無頓着

低所得者への援助としてはほぼ100%受け取ってもらえるだろうから心配する必要はない。
問題は支給の対象から外れてしまう低所得者(住民登録がない等)のあつかいで、必要なのにもらえない人が出ないようしっかり対応する必要がある。
もう一つの目的、景気刺激については「とにかくお金を使ってもらうこと」が肝心なのに、マスコミは消費拡大のための呼び水(便宜)でしかない「給付金を受け取るかどうか」ばかり気にしている。目的と手段の区別を理解してない。音楽を例にすれば、「どれくらい演奏するか」を知りたいのに「楽器を所有しているかどうか」の調査しかしないようなものだ。まさに隔靴掻痒、歯がゆくて仕方がない。「あなたは給付金を受け取りますか」よりも「もらったお金をどのように使いますか(あるいは貯めこみますか)」について訊くべきだ。

● 「迷走」報道とそれを真に受ける人たち

定額給付金関連のニュースはたまに(週に一度くらい)しかチェックしないけれど、最初に聞いたときと今までの間に麻生総理が迷走していると感じたことはない。高額所得者に支給制限するかどうかでちょっとばかりゴタゴタしたのは知っているが、給付金本来の目的からすればまったくどうでもいいことである。
マスコミが「迷走、迷走」と言いたがるのは、後部座席の乗客がドライバーの手の動きだけを見て「迷走している」と言うようなものだ。峠を上る道筋は変わっていないのに、景色を見ずハンドルばかり見ているから大局的判断ができない。

● 二言目にはバラマキ批判

これは本当に馬鹿みたいだと思う。
そもそもバラマキの何がいけないのか。景気が回復し失業者が減り国民の幸福が増すのであれば、給付金バラマキでもマイナス金利でも何でもやればいいのである。その逆に増税でも財政引締めでも必要であれば断然やらなければならない。すべての政策の評価基準は「有効か・コストに見合っているか」であり、「100年に一度の危機」に手段を選り好みするのは贅沢というものだ。
感情的・道徳的なバラマキ批判には辟易しているが、「支給コストがかかりすぎる」とか「貯蓄に回される可能性」といった有効性に対する批判はどんどんやってほしい。「バラマキはやめろ」ではなく「役に立たないからやめろ」という批判を聞きたい。

● 二言目には「選挙対策」

これも聞きあきた。ステレオタイプで陳腐な批判だ。
選挙対策として効果的な、つまり有権者を喜ばせる政策がいけないのであれば、政治家はいったい何を主張すればいいのか。増税と福祉削減を叫んでひたすら国民に痛みを強いるのが立派な政治家なのか。マゾヒズムにもほどがある。

● 定額給付金には反対、でも実施されたら貰うつもり

前の記事では「反対の人は受け取りを断ったらいかが」と書いた。
だが、よくよく考えてみると私が違和感を抱いたのは反対派が「給付金を受け取ること」ではなく「矛盾したことを言いながらシレッとしていること」のほうだった。よって「反対者は給付金を受け取るべきではない」という意見は撤回する。つまらないことを言ってすみませんでした。

定額給付金が実施された場合、なるべくたくさんの国民(反対派を含めて)に受け取ってもらうほうが麻生総理にとっては都合がいい。「口では反対と言っていたけど、本心は喜んでますよ」「言葉よりも財布のほうが正直ですね」と言えるからだ。「定額給付金には反対、でももらいたい」という人たちは「自分は本気で反対しているわけじゃない」と言っているのと同じで見くびられるだけだ。
麻生総理がいちばん嫌がるのは、「バカげた定額給付金なんて受け取るものか」というボイコット宣言が広がることだ。過半数の国民に受け取り拒否されたら面目丸つぶれである(実際はそうならないと思うが、可能性は否定できない)。「ボイコットするぞ」という脅しは「天下の愚策」定額給付金をやめさせるのにいちばん効果がある。
だが実際は世論調査に「反対だけどお金はもらいたい」と答える人が大多数だ。はっきり言ってあまりにもヘナチョコで情けない。本気で反対するなら、お金がほしい気持ちを押し殺して「ボイコットするぞ」となぜ言わないのか。
ボイコット戦術が失敗して定額給付金が実施されてしまったら、それぞれの判断で受け取るかどうか決めればいい。負けた後でなお抵抗するのは意味がないし、お金が必要な人に痩せ我慢しろ、受け取るなと要求するのも酷な話である。



国民とマスコミの「定額給付金嫌い」についてはこちらの分析が参考になった。

 給付金にキレる人々 - 事務屋稼業

要約すると「小泉の呪(バラまきは悪)」「金額がショボくてがっかり」「埋蔵金って何?」の三点が嫌われる原因らしい。
私はそれに「公明党嫌い」を付け加えたい。ネットで定額給付金反対論を見て回ると、少なからぬ人たちが「もとはといえば公明党(創価学会)の政策だからダメだ」と批判している。私は「ネズミさえ取れば黒猫でも白猫でもいいじゃないか」と思う性質なので「公明党だからダメ」という感覚はよくわからないのだが、公明党(創価学会)嫌いが定額給付金嫌いにつながっているのは間違いない。


「定額給付金」関連記事
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 「定額給付金反対世論」に13年前を思い出す


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3 コメント

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大賛成です。 (Snail)
2009-01-14 16:13:47
どうやらはてぶでも賛否両論のようですね。
私は、この記事に大賛成です。

民主党もマスコミも、反対反対ばかりで何も進まなくなる事が腹立たしくて仕方がない。

効果が薄い?100年に一度の危機なんだから、薄いとか厚いとか言ってる場合じゃないですよ。なんでもやらないとダメです。

他に使った方が良い?
何いってんだ、給付金プラス、他にも使えばいいじゃないか。

恐らく批判ばかりを繰り返している人は、今回の経済対策が総額75兆円もあり、給付金はそのうちのほんの僅かだと言う事が分かっていないのでは?

たかだか2兆でがたがた言ってる場合じゃない。批判をしている間にも、どんどんと中小企業は資金繰りに苦しみ、倒産に追い込まれていますよ。

今のマスコミは、政治批判をする前に、自分らマスコミがどれだけ馬鹿げた事を続けているかを再認識すべきだと思います。
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Unknown (PoohKid)
2009-01-14 23:39:16
「私は受け取りません」という意見があるとしたら不可解でなりません。
私からしたら「他の人は全員受け取らなくてもいいから私に2兆円全額ください」と言いたいくらいなのにw
確実に全額使って見せますよ!

政策については即断即決に欠いた感があり、ぶら下がった予算の奪い合いが起こる隙を与えてしまったことはマイナス評価しています。
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Unknown (金太)
2009-01-15 03:11:07
マスコミに煽られて「ヒステリックな反応をしているように見える」のには慣れっこになってきました。
「ゴミ処理場を何処につくるか」という住民投票をすれば人気のない山奥に決まると言うように、世論なんてほとんど役に立ちませんもの。

今回の件で、頭を抱えてしまったのは、もうすぐ政権をとってしまう民主党の行動で、天下の愚策とは言えない給付金の為に、予算案と関連法案の成立をストップさせたことですね。給付金を除いた予算案、関連法案を提案しているところをみるとその他については賛成の様子。結局、給付金をネタに政争を演じているだけ。この状況ですら政権闘争に明け暮れる姿勢には、次期政権与党として信頼出来ないのです。

もしかすると、給付金が行き渡って、クルッと世論が変わり、麻生政権が息を吹き返えすのを恐れているのではないか…などというのは邪推であって欲しいものです。
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