玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

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「据物撃ちなら誰でもできる」

2008年06月12日 | 死刑制度
秋葉原の通り魔事件について、現場で対応した警官を賞賛したり批判したりする意見が出てきている。
目に付いたのはこちらの記事。

J-CASTニュース : こんな凶悪犯相手でも 日本の警官は銃を使えないのか

私には「逮捕術」のことはよく分からない。マイク水野こと水野晴郎氏が存命であれば「アメリカの警官ならこういうときどうするか」教えてくれただろう。そう思うとますます逝去が惜しまれる。
素人なりに意見を言えば、佐々氏のように「逮捕術の見本」とまで言われると「本当にそうか」「もっとうまくできたのでは」と言いたくなるけれど、かといって批判されるような不手際があったとは思えない。体を張って市民の安全を守ってくれた警察官に感謝する。

発砲問題については「素人の思いつきに価値なし」と言いたい。
銃規制の問題でヒステリックに「日本に銃はいらない」と叫ぶ人が多いことにも表れているように、平均的日本人にはまったくと言っていいほど銃器の知識がない。ケガレとして忌み嫌うか、あるいは悪を砕く万能武器のような幻影を抱きがちだ。だから今回のような事件が起きるとテリー伊藤のように安易な「発砲期待論」が出てくる。これは(いわゆる)左翼人権派の「発砲絶対悪論」の裏返しである。どちらも銃器とその使い手の能力を知らずに空理空論を語っているだけだ。

偉そうなことを言ってしまったが、私自身は実銃を所有したことも撃ったこともない。ただ本を読んだりモデルガンを撫でさすって喜んでいるだけだ。こんな奴の意見はそれこそ素人の思いつきに毛が生えた程度でしかない。アメリカでPPC(プラクティカル・ピストル・コース)の最高位「グランド・マスター」まで上り詰めたプロの意見を聞こう。

以下はGUN誌1979年11月号掲載「世界拳銃撃ちある記」からの引用。
筆者は当時は世界を放浪するヒッチハイカー、現在はエアソフトガンメーカーK.T.W.社長の和智香氏(ワッチャン)。
「イチロー兄貴」はサンフランシスコ在住のガンフォトグラファー・ライター、イチロー・ナガタ氏。
日本の感覚では考えられないような銃の撃ち方をしているが、広大な牧場の真ん中であり流れ弾の危険はない(はずである)。


 もう大分前の話だが、大阪のある銀行でショットガン強盗があった。4人も死んだ、日本では珍しい凶悪銀行強盗事件である。みなさんは、もう思い出していただけただろう。
 久しぶりにGUN誌のS.F.支局を訪れるやいなや、僕はイチロー兄貴にこの話題を持ちかけ、いつもの通り、「日本のケイサツは〜」とやった。
 あの事件のとき、警官が6人で寄ってたかって犯人めがけて8発も撃ち、たった2発しか当たらなかったが、6人の警官はピストルの名人というし、射距離は10m足らずとのことである。
 だから日本の警官は練習不足だとかヘタクソだといわれて当然であるという趣旨のことを僕はイチロー兄貴に言ったのだ。
 当然、イチローは僕に同意するものと思っていた。が、しかしこれが少し違ったのだ。直接的な回答はせず、まず、「そうかな……」とだけ言った。そして、「ワッチャンならもっとうまく当てられるかい?」と逆に問いかけてきた。
 そこで僕は当然のように「もちろん当てられますよ」と答えたことから今回の話が始まる。

和智氏は「等身大のマンターゲットを立て、10mの距離をおいて」普通の拳銃(38口径4インチ銃身のリボルバー)を8発撃ち全弾命中させる。

8発中、2発命中とは?

 僕は「当然さ」という顔でイチローを見た。僕は半年ぶりに撃ったのだが、ちょっと経験のある者なら誰だってこのくらいに集弾する。
 次にイチローは3.8ℓのポリビンを持って来た。「これを2〜3mの距離で撃てるかい?」と言う。こんな大きなビンをたった2〜3mで撃つなら誰だって百発百中に決まっている。僕は「当然!」と一言、答えた。
 僕がシリンダーに.38スペシャルをフルに入れたのを確認したイチローは、ニヤリと笑い、「じゃあ撃てよ!」と念を押した。そしてイチローは、そのポリビンをいきなり空中に放り投げた。てっきり2〜3m先の草の上にでも置くものとばかり思っていた僕は、これには面食らい、あわてて銃口を空に向けて一発ぶっ放した。的の近くに銃口を向けて引き金を引くのが精一杯のめくら撃ちである。もちろん外れた。
 イチローは僕に有無も言わせずこれを8回繰り返した。結果は8発中1発が何とか当たったにすぎなかった。
 「ほら、8発中2発も当たらなかったじゃないか」
 尻もちをついて地面にしゃがみ込んでいる僕にイチローは平然として言った。

据物撃ちなら誰でもできる!

 イチロー兄貴が言ったのはこうだ。
 「人間を撃つ際の命中率の目安は、マン・ターゲットにどの位当たったからどうのということで判断してはいけない。相手は生きており、常に動いている。しかも反撃してくる。常によい光線状態で照準し、的は動かず、反撃もせず、自分に最も都合の良い瞬間に引き金を引くことのできる標的射撃というのは実戦ではまるで通用しないのだよ」
 イヤ、なるほどそう言われてみればその通りである。僕も標的射撃と狩猟の両方を体験してみて、標的射撃がいかに生き物を撃つ際に使い物にならないかを知っている。人間同士の実戦の場合は、相手が撃ってくるので丸腰の獲物を撃つ狩猟よりも難しいに決まっている。
 そう考えると、例の銀行強盗事件の場合の8発中2発というのは当然のことだったかもしれない。
 イチローは、コーラの空缶を持ち出し、今度はこれを撃ってみろと言っている。銃を持った人間を撃つことは、こいつに当てる以上に難しいことであると言い、僕が「もう、分かった!」という顔をしているにもかかわらずとことんシゴくつもりでいる。
 僕は今度は必中の覚悟も新たに、真剣に空に舞うコーラ缶を撃った。しかし、2発目が当たるまでに何と18発もの.38スペシャルを消費してしまった。
 イチローが最後に結んだ言葉は、「据物撃ちなら誰でも出来る」だった。剣豪小説にでもあったような、どこかで聞いた言葉だ。イチローはいつもこうして格好つけるのである。


事件が起きたとき秋葉原にいた警官は「ホコテン警備」で発砲が必要になる可能性をほとんど予期していなかったはずだ。緊急事態にあわてて銃を抜き狙いを定めてもどれくらい命中させられるだろうか。半分も当たれば上等だと思う。犯人は銃こそ持っていないが、ナイフで武装しており広い道路を自由に移動できる。周囲には大勢の人間がいて、発砲すれば流れ弾の危険が非常に高い。
犯人が動き回っているときには発砲できず、路地に追い込んでしまえば発砲する必要がない。
テリー伊藤は「なぜ(警察は)撃たなかったのか。人質がいたら撃っていたと思う。」と言っているが馬鹿げた話だ。日本の警官は、いや世界中どこの警官でも、確実に人質を避けて犯人だけを射殺できるような射撃の腕を持っていない。そんなことができるのは特別な訓練を受けた狙撃手か次元大介のようなフィクションの世界のガンマンだけである。

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2 コメント

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あと (とどろき)
2008-06-14 00:38:47
ゴルゴ13ですか。

おっしゃるように犯人に銃口をむけて他の人にあたったら「警察はなにを考えてるんだ!」というのがでますね。ぜったい。
なるほど (hg)
2008-06-16 17:08:53
まさに人を盾にされると発砲できないということですね。

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