玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

聖火リレーと「警察のお仕事」

2008年04月28日 | 日々思うことなど
長野の聖火リレーはとりあえず無事に終わったようだ。
「フリーチベット・チーム」も「加油中国チーム」(松沢呉一氏の命名による)も日本国憲法で保障された表現の自由を謳歌したのはたいへん結構なことだ。ただ、一部にはヘイトスピーチや暴力行為が見られたことは残念である。

さて、フリーチベット・チームが長野県警の警備の不公平さを批判している。

長野県警さんって一体…:FREE TIBET
なんと。

中国人は優遇処置されてたそうですね。

かなりビックリ。

日本人を守りもせず、中国人ばかり擁護して一体どうするつもりなんだい、日本の警察さん。

世界最低の国、日本(転載)
出発地点に、中国の旗を持った人は入場できるが、チベットの旗を持った人は入れない。

警察の言い分。

「危険だから」

じゃあ、何で中国人はいいんだ?

「......ご協力お願いします。」

は?

それやらせじゃん。

中国国旗しかない沿道って、警察が作ってるんじゃん。

『聖火リレーin長野』スタート&ゴール地点状況まとめ - 想像力はベッドルームと路上から
チベット国旗、ないしはチベット弾圧に反対するメッセージボードなどを掲げる事、あるいは「チベット支援者だと思われる人物」の行動制限は、スタート地点・ゴール地点双方でかなり厳しく行われていました。

フリーチベット・チームの不満は心情的には理解できるけれど、私は長野県警のやり方がひどいとか許せないとは思わない。むしろよくやった、ご苦労様でしたと言いたい。

そもそもフリーチベット・チームの方々は警察に何を期待していたのだろう。
あまりにもナイーブすぎる。最初から事情がわかっていてあえて警察を批判してみせるならまだしも、どうやら純粋に怒っている人が多いようでびっくりする。
長野県警の仕事は治安を守り長野市主催のイベントを無事に終わらせることである。抗議が平和的に行われると確信できる状況でない以上、抗議側の行動規制を行わざるをえない。エクストリーム聖火リレーにおいてフリーチベット・チームは攻撃側であり、加油中国チームと警察は防御側である。最初から利害が対立している。

警察は治安維持のためのお役所である。警察の方針を決めるのは警察官僚、つまり役人だ。役人の処世術は事なかれ主義であり、責任を取らされることを何よりも恐れる。フリーチベット・チームのほとんどが日本人であるのに対し、加油中国チームは中国人ばかりだ。バックの力がぜんぜん違う。

フリーチベット・チームに本気で肩入れする有力政治家や大物財界人がいるとは聞いたことがない。砂のごとき市民の集まりであり、彼らの機嫌を損ねても後で上のほうから叱られることはない。せいぜい一部のマスコミとネットが騒ぐくらいだ。
逆に加油中国チームの後ろにはオリンピックに国威発揚を賭ける中華人民共和国が付いている。彼らの機嫌を損ねてしまい「不当弾圧だ」「差別だ」と騒がれると外交問題になる。外務大臣が謝らされたり警察庁長官が責任を取らされる羽目になるかもしれない。そうなると長野県警はたっぷり油を絞られる。お役人である警察官僚がそんな事態を望むわけがないし、フリーチベット・チームの正義のために泥をかぶる覚悟などあるはずもない。

今回は「フリーチベット・チームv.s.加油中国チーム」だったが、他の場合でも警察は同じような対応をするだろう。
オーストラリアから「捕鯨反対チーム」が来日して日本人の「鯨食わせろチーム」と衝突しそうになれば警察は「お客さん」である捕鯨反対チームを守って鯨食わせろチームを抑圧する。アメリカから「原爆投下の正当性を主張する歴史家グループ」が来日して「被爆者・反核運動グループ」と衝突しそうになれば警察は後者を押さえ込む。警察のお仕事とはそういうものであり、政治的な「正義」とは無関係だ。

結果として長野県警は加油中国チームの好き勝手にさせたわけだが、それが中国人たちの望む結果につながるとは思えない。

『聖火による市中引廻の刑』~晒されているのは中国という国家の特異性 - 木走日記
 中国という国を語るときにはいろいろな意味でその13億という巨大な人口、頭数の多さを無視しては語ることができないのでありますが、世界各国で大量の留学生を動員して沿道を五星紅旗と中国人で埋め尽くしてしまうという、このような頭数を利用しての聖火を独占するかのような集団行動は、中国政府は意図していないでしょうが、これでは世界の人々の反感は買っても、中国への理解を深めることはないでしょう。

 まったくの逆効果なのであります。

 まさに『聖火による市中引廻の刑』であります。

 そして引廻され「みせしめ」にされているのは、まさに中国という国家の特異性なのであります。

木走氏の意見に完全に同意する。
加油中国チームは思いきりONE CHINAを叫び愛国心を高揚させ満足して長野を後にしたのだろうが、それを見る日本人の目は決して暖かいものではない。むしろ異様さと恐れを感じて「引いた」人が多いはずだ。
かのテサロニケ大先生は「政治戦は中国側の圧勝で右翼側の完敗だった。」と満足しておられるが、あの方の予言が当てにならないことはご存知の通りである。

参考記事

自分の感覚としては、「棲み分け」は(すべきではなかったけど)やむなしだった - sjs7のブログ
そりゃあ理想論として「棲み分け」なんていうのは、対話促進*2というデモの精神から外れることだし、良くないのもわかるんですが、じゃあ誰か怪我したり騒動が起こったときあんたたち責任取れるの?というのが、警察の言い分でしょう。僕も、それについては警察に同意します。少なくとも傍観者としてみてる分には今回の警察はグッジョブだった。

長野聖火リレー現地レポート:TBN -Today's Best News-
一部の中国人が日の丸を持ち、日本人の若者たちの間に真の人権意識を持った人が現れ、遠い長野まで来て、冷たい雨の中でフリーチベットと叫び続けた人がいたのを見れたことは収穫でした。

【読みもの】黒子の部屋 ≫ お部屋1474/長野観光ガイド●スタジオ・ポット/ポット出版
地元の人たちはどう感じていたかと言えば、五星紅旗だらけになってしまったことの反発もあると同時に、リレーに反対する「フリーチベット・チーム」に対する反発も強くて、「どっちもウザい」と感じている人がもっとも多かったように思え、私自身、地元の人に怒られました。すんません。両方のチームを代表して謝ってきました。


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8 コメント

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ソウルの聖火リレーの状況 (Baatarism)
2008-04-28 20:40:23
長野の次に行われたソウルの聖火リレーは、長野とは比較にならないくらい中国人が暴れまくったようですね。

五輪聖火リレー、ソウルでも衝突(中央日報)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=99311&servcode=400&sectcode=430

日本の警察や外交当局は、このような事態を防ぎきっただけでも、十分評価に値するのかもしれません。
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Unknown (T to T)
2008-04-29 01:56:55
中国むかつく!・・・という感情論を抜きにして考えれば、今回の長野の状況はかなりうまくやったと言えると思われます。中国といやでも隣国として付き合い続けなくてはならない我々としては、いかに距離を取りつつ儲けさせてもらうか、一方で彼らからの迷惑を出来るだけ被らないようにするかという観点から行動方針を決定すべきだと思いますしね。
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警察 (もも)
2008-04-29 11:10:29
ほぼ同感です。

ただ、例えのお客さんを守るってちょっと違うカナーと。
どちらが「主催」つーか、「もともと」の趣旨にそって活動しているかによって
警察の「守る」べき立ち位置が変わるんじゃないかと。

オーストラリアから「捕鯨反対チーム」が企画したイベント等に
日本人の「鯨食わせろチーム」が乱入したら、後者が逮捕だろうけど、
日本人の「鯨食わせろチーム」が企画したイベントに
オーストラリアから「捕鯨反対チーム」が乱入したら反対チームが逮捕されると思う。

どっちが「この場の秩序を乱したか?」が基準じゃないかと。
今回の長野は聖火リレーを受け入れることを承諾してるんだから、
それを妨害するほうが排除されるのは当然なのに、
何で警察に文句言うのかホント、謎です。

何でアテネの真似して五大陸回るかなーと中国のお気楽さに呆れてたのですが、
ただ、今回の他国でも自国の旗のみを埋め尽くす中国人と、北朝鮮での無事なリレーを見て、
中国と北朝鮮の類似性とか、不気味さとか良く判って、
聖火による羞恥リレーは正解だったのかも。
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今回の件でもっとも不満だったのは地元民 (元地元民)
2008-04-29 16:03:13
暴動も最小限で抑えられ、一方で中国人達の異常性を、平和的に、最大限アピールできたのだから、(狙っていたかは別として)、治安を守る国側と抗議派とでは割といい按配で収まったのではないかと感じました。

抗議派の人たちは、少し自分達の都合のみに捕らわれすぎている感がありました。
「売国長野市・長野県警」とか、「中華人民共和国長野」とか、とっくの昔に一自治体である長野市の意向だけではどうしようもない状況なのは明らかなのに短絡的に非難を始めるし。
地元民としては「長野冬季オリンピックの感動をもう一度!」という、非常にローカルな、政治性を殆ど感じないお祭り程度の認識だったにも関わらず、中国人にせよ、抗議派にせよ、一大イベントをめちゃくちゃに引っ掻き回されてしらけた以上の感覚はないでしょう。長野礼賛も長野批判もいい迷惑です。
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前後関係を確認しましょう (ルクス)
2008-04-30 20:31:39
長野市でこの日に聖火リレーを行うのは何ヶ月も前から決まっていたんですよね。
だが、3月中から、急にチベットチベット言われ始め、聖火リレー妨害が正義の行いであるかのような(ただの業務妨害に過ぎないのに)宣伝がネット上で増殖し、テレビ局まで乗っかった。
警察が警備人員の大増強を決めたのは、その後でしたよね。新聞記事で確認できるから。
中国大使館が、大勢の留学生(それでも、今日本にいる留学生総数にはほど遠い)を沿道に配置すべく、声をかけ始めたのはいつだったのでしょう?
聖火妨害の煽動などなかったら、中国大使館も長野県警も人手を増強しようなんて考えなかったでしょう。自分から襲撃をさんざん予告しておいて、相手が防戦すると、そのことを理由に貶めるなんて、どこまでお花畑の幸せ回路が広がっているのでしょう。
黄渦論が煽動されていた時代の日系人がどんな行動とっていたか(要人が視察にやってくると沿道で日の丸振りまくってなかったか?)考えるまでもない。あのマルクスはプロイセン政府に立ち向かい、ついにロンドンへ亡命した人物ですが、自分が生まれ育ったドイツという土地には終生愛着を捨てず、酒場でドイツを馬鹿にしたやつとは本気で大乱闘したのです。
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Unknown ()
2008-05-02 10:29:35
kurokuragawa さん

おはようございます。
直接メッセージをお送りしたかったのですが、メッセージ投稿が出来ないようなので、こちらにコメント致します。
kurokuragawaさんがトラックバックなさったブログオーナーです。

チベットサポーターは、kurokuragawaさんが書いてらっしゃるように、きっと「ナイーブすぎる」のだと思います。
人権よりもお金が大事に扱われる現代社会のやり方に、どうしても迎合出来ない人達が、個人ででもチベットの為に動いているのではないでしょうか。
そんな「砂のごとき市民の集まり」である人達の姿は、チベットに興味がない方にはおめでたいとしか映らないのかも知れませんね。
要領よく自分が傷つかないように立ち回る方が簡単ですし。私もそう出来たらどんなに楽かと思います(笑

お手すきになりましたら、「チベットの現状」という箇所を読んでみて頂けますか?
分かりやすい画像も貼ってあります。
ご覧になって下さい。

kurokuragawaさんの感想を教えて頂きたいのです。
立場や物の見方が違う方の感想を、ぜひ教えて下さい。
お待ちしてます。
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Unknown (るい)
2008-05-05 22:53:14
私がリレー前日に2ちゃんねるのフリーチベットスレに
「パリでのリレーでも(中国に気を使う)パリ警察はチベット旗を観衆から毟り取るなどの処置をしていたから、旗の扱いには気をつけて」と書き込んだ所、
「私は表現の自由を守ってくれると日本の警察を信じている」
「脅して抗議活動を意気消沈させようとしてる」
と聞く耳持たれませんでした。

結果は旗の回収はなく、その点は国境無き記者団もパリ警察より評価していましたが、スタート・ゴール地点においては書かれた通りの警備となりました。

ただ、あの日長野に集結した中国人は五千人(中国の報道によれば1万人)三千人体制の警察の警備では暴徒化した場合防ぎきれなかった、というのが現実のようです。
もしパリやロンドンのように在住中国人の動員をかける間もない状況なら、チベットサポーターもゴール地点に入れたのではないでしょうか。
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Unknown (るい)
2008-05-10 10:02:03
シンセン・広州でも聖火の消化、コースの短縮があったようです。
http://meinesache.seesaa.net/article/96200425.html
映像では群集にもみくちゃにされる聖火が映っています。真逆の理由で、中国国内でも結果は同じ。警察の予想を超える人数が集まってしまったようです。
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