千の天使がバスケットボールする

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「沸騰都市 シンガポール 世界の頭脳を呼び寄せろ」NHKスペシャル

2009-02-16 22:45:00 | Nonsense
昨夜のNHKスペシャル「沸騰都市」でとりあげられたのは、小さな都市国家であるシンガポール。
シンガポールが大好きという女性もいるのだが、土地面積は東京23区程度で480万人もの国民が住む。私は訪問したことがないのだが、近代的な高層ビルが林立していながら、裾野は緑のオアシスが整備されて教育熱心で清潔な金融の街というイメージだったのだが、なんと最近の統計では、国民ひとりあたりのGDPは35000ドルを超えて、アジアで最も豊かとなった。土地が狭い、資源もない、という日本に似ているが、日本より厳しい状況のなかでの成長の秘密が番組で紹介されていた。シンガポール建国の祖といわれたお爺さんをもつ現在のリー・シェンロン首相は、幼い頃より帝王学をしこまれて、ケンブリッジ大学とハーバード大学で学ぶ庶民とはかけ離れたエリート。日本のただの資産家の子孫の首相とは違う頭脳明晰なシェンロン首相のトップダウン方式による冷徹なまでのしたたかな戦略は、今後も『シンガポール株式会社』の業績と成長を予想させられる。

資産がなければ、かっての日本のように頭脳で勝負。政府は「向こう20年間に200万人の高度専門人材の移民を受け入れる」という方針を発表した。優秀な頭脳を輸入して、お金をつぎ込んで自家栽培するのである。大金を投資した研究設備「バイオ・ポリス」には、クローン羊を生んだイギリスのコールマン博士をはじめ、世界中から優秀な研究者を集めている。日本からも京大を定年退職した大腸がんの世界的に有名な研究者や、白血病の研究者などが破格の研究費と設備という恵まれた環境で日夜研究にあけくれている。

彼ら研究者の多くは主にEDB(経済開発庁)という政府直轄組織の人材スカウトマンなどから、声をかけられてやってきた。その責任者は、ノーベル賞は2の次で、産業に直結した研究でGDPを増やし、国家収入を増やすことが大事、日本はお金がありながら使い方を知らない」とはっきり言う。確かに、もっともだ・・・。1億円もの機材を2機も購入する天井知らずの研究予算、豊富な実験動物とそれを飼育するスタッフの充実。日本の貧しい手づくりの研究環境とは桁違い。但し、3年以内に目に見えるまざましい成果がでないと簡単に解雇されるという厳しい成果主義である。長くかかる基礎研究はここでは用がない。すぐにビジネスに直結する研究しかとりあげられないし、名誉よりもお金である。「cell」「ネイチャー」「サイエンス」の御三家科学誌に論文が掲載されることが必須。”天才”そう称される科学者たちが何人もしのぎをけずっているのが、バイオポリスである。

その一方で、低賃金で海外からの労働者を雇っているのもシンガポールである。
フィリピンからこどもをおいて出稼ぎにやってきた女性の仕事は、所謂お手伝いさん。月給は3万円。彼女たちは、なんと半年に一度妊娠検査を受ける義務がある。妊娠したら即、国外退去(追放)。また観光にも力を入れているシンガポールでは、ホテルやイベント会場の建設もすすめているが、そこでは安価な労働力としてバングラディッシュなどから2年間の期間限定の派遣労働者が活躍している。日本人研究者がプール付きのマンションに住みながら彼らはエアコンもない倉庫で大勢で寝泊まりをして、トラックの荷台で現場に運ばれるなど、まともな扱いを受けているとは思えないのだが、1年間働ければ、10年分ほどの収入を得られるとしてシンガポールにやってくる希望者は後を絶たない。そして彼らも家族を呼び寄せることはできない。単純労働ではない仕事をこどもたちにさせたいと、学校を建設するための資金稼ぎに出稼ぎにきた教師もいたのだが、今般の世界的不況により仕事が減ってしまい、結局夢が叶わず解雇されて祖国に戻ることになった。

こんな次々と解雇される外国人労働者の現状を外国人記者がリー・シェンロン首相に質問したところ、「外国人労働者は、雇用のバッファー(調整弁)だ。景気が良い時は必要で、仕事がなくなれば解雇される。彼らは雇用の調整弁の役割を果たしている。国益を優先するのは当然だ。」優秀な頭脳がない単純作業用の外国人労働者がこの国に移住されることは断固として阻止し、安価な労働力の使い捨て要員として利用する。

シンガポールは資源がないから教育熱心な国として知っていたが、ここまでやるかと衝撃も受けた。恵まれた研究環境に、ips細胞の山中教授が一時シンガポールに移住するという噂が流れた根拠はここかとわかったものの、その競争の厳しさに本来の研究の意義が失われてしまう危惧もなきにしもあらずである。しかし、徹底した国益優先をめざすリー・シェンロン首相の「日本ではネマワシと言って時間がかかるのですよね」と笑った顔に、日本の政治家の愚策を怒りたくもなる。(それこそかんぽの宿売却事件なんぞ、全く国辱ものの”ネマワシ”ではなかろうか。)同じ人間でありながら、他国民を踏み台に貪欲に繁栄を求めるシンガポールに、賛同できかねる部分もあるが学ぶべきところも多そうだ。
シンガポールでは、F1を誘致して公道でレースも行った。魅せる国、金融の国、そして今後どんな国の顔を見せるのだろうか

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6 コメント

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この番組は (有閑マダム)
2009-03-01 03:03:18
実家の母も興味深く観たようです。

小さな国が世界で生き残り、頭角を現そうとするには、作戦が必要。
シンガポールという国は、周辺の東南アジア諸国のような政府の堕落もないし、優れているところが一杯あるとは思いますが、そうなるには内情を知ると眉をひそめられるような強引なやり口もたくさんありますね。
ある意味社会主義的だし、冷酷な切捨て、「世の中、金・金・金でっせ~」と大阪商人も顔負けのあからさまな部分も目立ちます。
人権、平等、権利などを主張する日本やアメリカのような国からやってくると、シンガポールの階級社会ぶりや外国人労働者を同じ人間として扱わないこと、それを全く後ろめたく思っていない様子に驚きます。
観光者には見えない・見せない面がたくさんあります・・・ま、それはどこの国も同じかな。

最近、樹衣子さんのブログになぜだかうまく繋がらなくて、思うように訪問することが出来ず・・・原因不明。 今日はうまく繋がり、うれしい限りです。
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有閑マダムさまへ (樹衣子)
2009-03-02 22:37:30
有閑マダムのお母様がどのような感想をもたれたのか、同じ日本人ならなんとなく想像できるような気がします。

この番組では、いろいろなショッキングを受けました。
勤務先の上司は、7年間シンガポールにご家族で赴任していました。
こどもたちは、毎日プール(おそらく居住していたマンション専用だと思います)で泳がないと息がつまる気候風土だが、振り返れば夢のような7年間だったと語っていました。それだけに、番組での途上国からの外国人労働者への政府の対応にはショックを受けました。
もっとも我が国内も「派遣切り」がすすんで、バングラディッシュからの出稼ぎ労働者と似たような話も聞きます。
それから、当時、ぼろぼろの中古車を200万円も出して購入したそうですが、そんなに高額なのも国土が狭いことから車を規制するためだとおっしゃったので、それでは障碍者にとっては車を使えなくては不便だというような会話をした記憶があります。


>内情を知ると眉をひそめられるような強引なやり口もたくさんありますね

観光で紹介されるよい部分だけしか知らなかったですが、もしかしたらこの国を好きになれないかもしれません。
有閑マダムさまがシンガポールに在中されていた時は、いかにも有閑マダムさまにふさわしい豊かな暮らしぶりを想像して、シンガポールのイメージは好感度大だったんですけれどね・・・。
ところで、話は変わりますが、この番組で私が最もショックを受けたのは、ブログには書きませんでしたが、双子の研究をしているフランス人青年の実験です。コンピューターのモニターに内臓を共有する二匹の魚(人間で言えばシャム双生児ですね)の映像が映っていたのですが、、、この映像には本当にショックを受けました。彼の研究が実を結べば、ES細胞や老化の研究に応用されるそうですが。

>最近、樹衣子さんのブログになぜだかうまく繋がらなくて

おっとそうでしたかっ。はてな?
おそらくgooブログ全体に渡ってそのような現象ではないかと?サーバーの容量不足かしらん。ご迷惑をおかけします。
こちらこそ、コメント嬉しかったです。長々と書いてしまいました。^^
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光と闇 (有閑マダム)
2009-03-04 08:39:47
やや! うまく繋がらなくって・・・などと書いた途端に、あっさり繋がるようになりましたよ。 なんだかわからないけれど、よかった~。
また、これで足しげく通うことが出来そうです。

MITの教授で、やはりバイオの研究でシンガポールに滞在されていた方と知り合ったのですが、樹衣子さんが記事で述べられているように、とてもビジネスに直結する研究に力を入れている場所だとおっしゃっていました。
最新のバイオの研究の話などは、ちょっとホラーな部分があるなあと、私などは思いましたが。

私が出国する頃は、外国人駐在員が増えて増えて、インターナショナル校はどこも、満員御礼。 長い長いウェイティングリストが一向に縮まる気配がなさそうだと踏んで、数校がキャンパス拡大の計画を具体的にしていたところです。 娘達の通っていたアメリカンスクールも、一学年15クラス!というマンモス校を、5年後には二倍の生徒を受け入れられるように第二キャンパスを建設するという話になっていました。
しかし、その後の不況の影響か、聞くところによると駐在員がざーっと帰国し、あれだけ長かったウェイトリストもあっさりクリアされているとか・・・・。
日本人家庭も欧米人家庭も、駐在中の生活というのはちょっと非現実の部分がありますね。
しかも、条件のよい企業で様々な手当てを現金でもらっていたりすると、勘違いしたり弾けちゃったりする家庭もあって、まあ、色々です。


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ホラーな部分 (樹衣子)
2009-03-05 23:36:01
>最新のバイオの研究の話などは、ちょっとホラーな部分があるなあと、私などは思いましたが

有閑マダムさまの感想は、私も肌感覚で同じ感じをもっています。
あのフランス人青年は天才だな~と感じましたが、なんとなくその才能のキレが素人には怖いような気もするのです。双子の研究から発生学、老化のメカニズムの道筋は理解できるのですが、命の操作はどこまで許されるのかな・・・と漠然と考えています。
ここではマウスなどの実験材料もとても豊富なのですが、小さな大学の研究室でごめんなさいマウスとノックアウトするのはまだついていけるのですが、あの大量さには薄気味悪さもありましたね。

>とてもビジネスに直結する研究に力を入れている場所だとおっしゃっていました

やっぱりそうでしたか。本来科学とはまず人類の発展、次に国益優先、そして企業の利益追求と考え勝ちの自分が、無知なのかと考えてしまいます。

>勘違いしたり弾けちゃったりする家庭もあって

笑^^。もっと物価の安いアジア圏に駐在すると広いお屋敷にメイドがふたり、というなんともうらやましいお話しも聞きますし、実際「王侯貴族のような生活」に妻が大満足などというのももれ伝わります。有閑マダムさま宅のプールの綺麗な”青”を垣間見ちゃうと、日本は諸々サービス業は役立ち便利ですが、物価は高いし住宅事情も難ありで・・・と、ついぼやきたくもなりますよ。おっと、私らしくもない。。。
別件ですが、『チェンジリング』をTBさせていただきました。
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Unknown (まーくん(レンタルサーバー研究者))
2009-06-04 14:29:36
こんにちは、まーくんです

シンガポールがそんなにすごい国だとは
知らなかったです
首相もただの金持ちじゃなく、
本物のエリートっていうところがすごいです
ほんと日本とは大違いですね
もっとシンガポールを知りたくなりました
また来ます
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まーくんさまへ (樹衣子*店主)
2009-06-04 23:37:03
こんにちは

映像で見るともっとこの国に衝撃を受けますよ。

>首相もただの金持ちじゃなく、
本物のエリート

エリートすべてが高貴かともいえないと思いますが、日本の首相に比べて頭脳が優秀なのは間違いないでしょう!
ご訪問ありがとうございました。
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