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バルカン超特急の乗客は、恋する感情もわかない男との結婚という祭壇に向かう決意をした美しい女性アイリス(M・リックウッド)、アイリスと昨晩喧嘩した作家希望のギルバート(マイケル・レッドグレーヴ)、音楽教師でお人よしのミス・フロイ、不倫旅行を楽しむ小心者弁護士とその愛人、クリケット大好きビジネスマンのカルディコットとチャタースの二人組、それに手品師や公爵夫人など。それぞれが袖すりあうも縁ではないが、ロンドンまでの列車旅行を昂揚した気分で楽しんでいる。
やがてアイリスは、同じコンパートメントのミス・フロイと親しくなるが、彼女がほんのつかのま眠っている間に、ミス・フロイは忽然と消えていた。しかも周囲の誰もが、ミス・フロイという人物は最初からいなかったと説明する。事故なのか失踪なのか。いずれにしろアイリスは、納得できずに天敵だったギルバートの協力の下に車内を探し始める。すると、ミス・フロイを名のる人物が表れるのだが、同じ服装をしているのに全くの別人である。これで尚さら不信感を募らせる二人だったが、途中の駅から運ばれた脳外科医の患者に注目する。その患者はミイラのように体中を、白い包帯でぐるぐる巻きにされているが、あの下の顔を見てみたい。。。
1938年製作されたヒッチ・コックの映画は、走る列車という密室を使った古典的な名作サスペンスであろう。謎解きと犬猿の仲だったアイリスとギルバートのふたりのコンビの行動とその後のなりゆきも含めて、こどもの頃に読んだシャーロック・ホームズの物語を連想する。バンドリカという架空の国を設定した理由は、ミス・フロイの失踪の謎を解明した時に理解できる。また日本とは違ってヨーロッパ大陸を多くの国が占めている状況と緊張感は、上質のミステリーの素材として最適だ。この映画が、ヒッチコック作品でも親しまれ、またサスペンス映画として評価が高いのは、推理のプロットが正統であり、しかも当時としては意外性があったこと。そして、なんといっても登場人物の個性的なキャラクターとセリフが、そのルックスといでだちも含めてユーモラスで魅力的であること。まことにヒッチコックは、才能のある映画監督だった。
尚、アガサ・クリスティの最高傑作ともいえる「オリエント急行殺人事件」が、本作品に設定がよく似ている。
■監督:アルフレッド・ヒッチコック
さてさて、アイリスとギルバートはその後どうなったのか。ヒッチコックがある役柄でおきまりの登場をしているのだが、その結末は彼に聞いた方が早いだろう。
そしてクリケット大好きビジネスマンのコンビは、ロンドンであれほど観たがっていたクリケットの試合にはたしてまにあったのだろうか。その謎解きをしたかったら、まずは映画をご覧あれ。。
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