千の天使がバスケットボールする

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カストロとガルシア=マルケス 革命が結んだ友情

2010-08-13 16:58:46 | Nonsense
【カストロ前議長、84歳の誕生日を迎え再び表舞台に】
キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が13日、84歳の誕生日を迎えた。 フィデル前議長は2006年に腸の手術のため第一線を退いたが、最近になって度々公の場に姿を現し、健在ぶりをアピールしている。

キューバ政府は7月、同国のカトリック教会とスペインとの間で、フィデル・カストロ前議長時代に収監された52人の政治犯の釈放に合意した。この発表の数日前には、は国営テレビのインタビューの中で米国の外交政策を批判し、核戦争勃発の可能性を警告したが、政治犯の釈放や弟のラウル現議長の経済改革については触れなかった。
また、フィデル前議長は7日、トレードマークのオリーブグリーンの軍服を着て、国会で12分間の演説を行った。その際、前議長はいつも座る弟のラウル現議長の隣の席には座らず、リカルド・アラルコン議会議長の隣に座ったため、政権内の力関係や兄弟の関係についてさまざまな憶測を呼んだ。

未熟な経済、増え続ける借金、慢性的な品不足などさまざまな問題を抱えるキューバでは、ラウル議長が限定的ではあるが自由市場要素を取り入れつつある。しかしフィデル氏は国内問題についてはほとんど触れず、あくまで外交問題専門のコメンテーターに徹している。
ハバナ(CNN) 


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今日は、南米キューバ、フィデル・カストロ前国家評議会議長の誕生日。国会では定番のカーキ色のミリタリー・ファッションで登場して、彼にしてはとても短いわずか12分のスピーチをこなして健在ぶりをアピールした。カリブ海に浮かび別名”緑のオオトカゲ”は、この長身で野球が得意な議長が、長い政権を維持できた独裁者と、大国の米国からの支配に抵抗を続ける革命家という異なる肖像画の間でゆらめくように、その歴史も不思議な色合いを帯びている。

20世紀のラテン・アメリカが生んだ革命家のフィデル・カストロより、ほんの数ヶ月遅れて誕生し、同じくラテン・アメリカが生んだノーベル賞作家のガブリエル・ガルシア=カストロ(通称、ガボ)の友情を書いた「絆と権力 ガルシア=マルケスとカストロ」が話題をよんでいる。なじみのないラテン語の地名や人名に苦労しながらも私もようやく半分ほど読み終えたのだが、感想を文書化する前に情報誌「選択」で掲載されていた傑出したふたりの熱い友情の予告編を上映したい。

ふたりが本格的に出会う前に最も接近したのは、1948年4月コロンビアの首都ボコダで最有力大統領候補だったホルヘ・エリエセル・ガイタンが暗殺されて勃発したボダコソ事件だった。その日、ガイタンと会見する予定だった学生団の代表者カストロと無名の作家志望のガボは同じ大学の法学部に学ぶ学生、文学を愛好する政治家と権力に愛着する文豪が後に出会った時、カストロがボコダ騒動を回想してタイプライターを壊している男を目撃したエピソードを披露すると、ガボは作家らしく創意溢れる答えを返した。
「フィデロ、そのタイプライターの男は僕だ」

67年、こうしてカストロは「百年の孤独」で作家として成功したガボと、共通の「ボダコソ」の思い出を友情の原点と確認しあい、82年にガボがノーベル文学賞を受賞すると益々友情を深めていった。友情の深まりは、同時に作家としてのガボにその際立つ文才を政治家のように世界をかえる政治的な能力にかえる夢をもたらすようになった。ガボはカストロの密使としてコロンビアの二大ゲリラ組織とコロンビア政府との和平交渉を設定し、82年にはフランスのフランソワ・ミッテラン大統領とカストロの間を仲介して、キューバの獄中にいた詩人アルマンド・バジャダレスの釈放も実現させた。それにも関わらず、バジャダレスは米国に亡命するや恩人を「ガボにとってキューバは、礼賛する友人フィデルが持ち主の広大な荘園」と揶揄し、ガボをカストロの密告者と批判する。

そうは言っても、ガボはカストロとの友情の絆を大切にしながらもキューバの現体制を全面的に支持しているわけではない。「族長の秋」「迷路の将軍」の主人公にはカストロが反映されていると受け止められているが(実際、世界的ベストセラー「族長の秋」は長らくキューバでは出版されなかった)、権力者であってカストロではないというのが真相のようだ。しかし、大国と南米の大陸に浮かぶ島で起こった革命が、若者たちに唯一信じられる現象だったというガボの主張を考えれば、権力好きだけでは説明できないカストロへの忠誠と友情もうなずける。

文学大好きカストロは「ラテンアメリカでは作家はフィクションをさほど必要としない。現実が虚構をはるかに凌いでいるからだ。(中略)ガボは私に、来世はガボのような作家になりたいと思わせた」とコロンビア人作家を讃えると、ガボは2006年に倒れたカストロに「フィデルにとって生きる最大の刺激は危機に立ち向かう情熱であり、閃きで危機に即座に対応する」としながらも「仕事を覚えるのと同様に大切なのは休むのを学ぶこと」と休養をすすめた。このアドバイスがきいたのだろうか、カストロは大手術をのりこえて復活した。
キューバの詩人にこんな歌がある。

 もしも宝石箱から
 最高の宝石を選べと言われたら、
 私は誠実な友を選び
 愛は脇に置いておく

ガボは、もしフィデルが自分より先に死んだなら、カリブ海の真珠とも言われるキューバを二度と訪れるつもりはないそうだ。
「実際、あの島は、ひとつの友情の風景のようなものなのだ」と。

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2 コメント

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Unknown (Venceremos)
2010-11-11 22:42:56
ラテン文学にもカストロさんにも興味があるので権力と絆は興味深い本です。カストロさんは文才も凄いらしいっすね
あれほど聴衆を惹き付ける演説が出来る政治家はそうそういません。モンカダ兵営を襲撃した後、有名な「歴史は私に無罪判決を下すだろう」で締めくくる演説をしたのですが、それは一種の文学作品だったと評されているぐらいですからね。
ひょっとしたらガルシア=マルケスより上手かもしれませんねw
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革命家カストロ (樹衣子*店主)
2010-11-12 22:31:09
こんばんは。ご訪問とコメントをありがとうございます。

>あれほど聴衆を惹き付ける演説が出来る政治家はそうそういません

長身で生まれながらの政治家のカストロ氏は、若かりし頃は、キューバーの多くのママたちをも魅了し、娘の理想の婿としての人気も高かったそうです。そう言えば、ノーベル平和賞の候補にもなっていたとか・・・。
ラテン文学にご興味があったら、「権力と絆」は読むべき1冊かと思いますね。
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