千の天使がバスケットボールする

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亀山工場の明日なき低賃金労働者

2006-10-06 23:53:52 | Nonsense
「ワーキングプア」とは、働いても貧しいこと。それは真面目に一生懸命働いても働いても、貧しく、社会人としてかろうじて立っている人たちのこと。
「週刊東洋経済」の9/16号は、3年前に偽装請負蔓延の構造を記事化して、ある請負業者から名誉毀損で訴えられたという経緯のあるリスクを覚悟のうえ、続報を届ける編集部にとっては渾身のレポートである。利益をあげるメーカー企業の製造現場では、まるで車や液晶テレビのように多くの低賃金労働者も生産されていたのだった。

そのひとつの現場では、私も欲しいシャープ「亀山工場」ブランドの評判の高い液晶テレビだったとは。
亀山工場内のシャープ正社員(2200人)・・・年収736万円。日本人の非正社員(1800人)・・・年収312万円。ブラジル人の請負労働者(数十人)・・・年収381万円。
ちなみに日本人の非正社員の時給は1150円で、一日12時間拘束で月21日勤務。
亀山工場の製品は”国内”で生産しているので性能が高いというのがセールス・ポイント、またCO2排出量の大幅削減、工程排水の100%循環利用にとりくんだ努力が認められ、「日本環境経営大賞」(環境経営パール大賞)を受賞するという美しい工場としても有名だ。その工場のお隣、液晶テレビの一端を担う下請工場のユーテックグループのさらに外部下請会社「カメヤマテック」でシャープとの契約をきられたブラジル人が300人ほど働いている。
朝8時半、シャープ亀山工場の前には送迎バスやミニバンで次々と他県から集められた20代の若者がやってくる。その12時間後日本人が勤務終了する頃になると、今度は夜勤のブラジル人たちがやってくる。工場は、生産ラインをストップさせないから毎日24時間稼働だ。確かに作業内容は、液晶パネルの検査などの単純労働だが、正社員ではないので、生活ぎりぎりの低賃金は、結婚してこどもができてもずっと続く。

こうした請負労働者は、メーカーにとってはありがたい低賃金、新製品サイクルの生産変動の調節で簡単に契約終了できるという使い勝手のよさ。
今年の6月、ある日系ボリビア人のAさんは、所属する外国人専門の請負業者の桜ワークスから2枚の紙を渡され、その場でサインするよう強く求められた。日本語のわからないAさんがとっさの判断でサインを保留にしたのは正解だった。1通は桜ワークス宛、もう1通は桜ワークスの親にあたるユーテック宛の「退職届」だった。雇用保険を除き、社会保険も未加入で2年半勤務するAさんを、いつでも解雇できるように前もって「退職届」が書かせるのが目的だ。これはフェアではない。

亀山市では、4年前シャープの工場誘致のために45億円もの補助金も交付。三重県分もあわせて90億円の補助金も受けて稼働したシャープは、07年3月期に4年連続の最公益を更新する1000億円の連結最終利益の予想。今夏からは、1500億円を投資した第二工場での生産もはじまった。にも関わらず、亀山工場の正社員は社内移動組みで、三重県内で新規に採用された正社員はわずか130人ほど。亀山工場ができる前の市の地方税額71億円から101億円と、補助金を貢いだ見返りはあった。
しかしあまりにも少ない正社員採用、偽装請負問題も、亀山市助役は、われわれの宿題だが、亀山市だけではなにもできないと関心が低い。

先ごろ総理大臣に就任した安倍晋三氏が官房長長官時代に、奥山元経団連会長に非正社員の雇用問題について厳しく食い下がったことがあった。1円単位のコスト削減をして世界のマーケットで厳しい競争にさらされているメーカーの現状を骨身にしみている奥山氏からは、相手にされなかったのだが。
おりしもちびっこたちが様々な仕事を体験できるテーマーパーク「東京キッザニア」が昨日オープンした。パビリオンで仕事をしたらキッザニア通貨で報酬を受け取り、キッザニアのデパート内でお買物もできる。働くことの達成感と喜びをこどもの頃に体験することが、将来の就労意識への橋渡しになることを願いたい。しかしもしも、彼ら、彼女たちが、成人して使い捨ての労働者になった時の失望感は、このテーマーパーク自体を架空というよりも似非テーマーパークに映すだろう。

「テレビの性能を決めるのは工場の性能です。美しい日本の液晶。」
女優の吉永小百合さんは、加齢とともに益々美しい品格にみがきがかかってきた。その着物姿の背後には、とても時給1150円の低賃金労働者の姿はみえなかったのに。

■英国の実体を書いた「ハードワーク」
  


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7 コメント

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Unknown (小作)
2006-10-07 02:31:33
樹衣子様の関心の幅広さには頭が下がります。    プアーワーキングは資本主義社会の宿命ですね。米国を見れば自明の理です。
プアワーキング (ペトロニウス@物語三昧)
2006-10-07 13:52:49
この問題はなかなか目をそらせません。それは僕自身が、事業企画でこのへんの固定費の計算を毎日している立場だからです。底辺に生きる人間のモチベーションをどうあげるか?、そして、決められた階層を努力によって流動できるかどうか、というのはその国の健康さをあらわすとは思います。しかし、世界を巻き込む資本主義の競争が、そんな甘えを許さないほどぎりぎりであること、、、、そしてみんなで平均化するよりは、イヤなこと汚いことは底辺の押し付けようとする都市文明の、そして人類の志向は、人間の本質です。先進国が、100年前の生活水準に戻れば全世界を同じレベルにできますが、だれもしようとしないですもんね。そんな歪んだ平等は僕もイヤですが。。。。けれども、それでも、ハードワークの低賃金の世界は、あまりに苦しい。どうすればいいのでしょうか、、、日々悩みますねぇ。ちなみに、僕は製造業だけが攻められるのは間違っていると思います。というのは、とりわけ日本なんかは、金融制度の非効率や、公務員の異常な賃金の高さなどがその他の非効率を助長して庵、そういった不公平なところが、まだまだ叩かれていないと思うんですよねぇ。そこの効率かなくして、見えやすい末端の部分だけを問題にするのも、けっこう腹が立ちます。
小作さまへ (樹衣子)
2006-10-07 22:48:06
それ以前に「週刊ダイヤモンド」では「悲惨世代」の特集でプアーワーキングの問題をとりあげていましたが、世代感の格差を論じたら、戦争体験の有無など、運の良し悪しにいきつきそうで説得力に欠けていますが、今回の東洋経済の特集は、今の社会がみえてくるヒットでしたね。

亀山工場は、ほんの一例です。

私が震撼した桐野夏生さんの小説「OUT」の舞台でもある深夜の弁当工場の実体、簡単に現金が手に入ると安易に飛びつく地方の高卒の若者など、多角的にこの問題をとらえていて読み応えありました。



>プアーワーキングは資本主義社会の宿命ですね



にも関わらず社会主義国家の現状を見ていると展望もなし。日本のカイシャの”家族主義”という風潮も、今にして思えばよかったのかもしれないですね。国際社会の競争には勝てそうにもないですが。
ゲキリーマンのペトロさまへ (樹衣子)
2006-10-07 23:11:06
>決められた階層を努力によって流動できるかどうか



それを言われたら、益々不健康な社会になりつつありますよね。亀山工場で勤務する外国人のこどもには、学校すら行かないこどももいます。



>世界を巻き込む資本主義の競争が、そんな甘えを許さないほどぎりぎりであること



乾いた雑巾さえしぼるとその合理的な経営で知られるトヨタの奥田元経団連会長が、安倍前官房長官の意見に耳を貸さないのももっともだとは思うのです。それほどグローバル化した資本主義の競争は厳しいのでしょう。他者を搾取することでより豊かになりたいという人間のエゴも本質ですが、ひとりひとりの個人の本質がより集まり複雑化したところに、ペトロニウスさまのおっしゃる人類の志向なのでしょう。だとしたら、はたして人類は賢明な道を進化していけるのでしょうか。

そうかといって、アーミッシュの集団にはついていけませんがね・・・。



私がハードワークの低賃金に関心があるのは、単純な女性的な同情かもしれません。けれども、今の資本主義の世界、社会問題が見えてくることに無関心ではいられないです。



>製造業だけが攻められるのは間違っている



「日銀はだれのものか」で著者の中原さんは、日銀マンの高給にひきかえ責任をとらない体質に怒っていましたね。金融業界やサービス業においては、女性をうまく安く使っています。



>見えやすい末端の部分だけを問題にするのも、けっこう腹が立ちます



製造業の現場で働く人は、ブルーカラーだから大衆にわかりやすいのです。どんどん怒ってください、ペトロニウスさま。^^
なんとなく (ペトロニウス)
2006-10-08 16:16:00
>>決められた階層を努力によって流動できるかどうか>それを言われたら、益々不健康な社会になりつつありますよね。



うん。でも、それでも、日本社会が圧倒的に格差が少ない社会であるのもまた現実で、こんな国は世界中探してもないでしょうなぁ。どっちから見るか?によって、意見は変わってしまう。僕も、甘えんな!と叫ぶ気持ちと、もっと国に政府に怒らなければならないという気持ちが相反します。この辺のどちら側に加担するかの決断は、いつも思うのですが難しい。



>>世界を巻き込む資本主義の競争が、そんな甘えを許さないほどぎりぎりであること>だとしたら、はたして人類は賢明な道を進化していけるのでしょうか。

そうかといって、アーミッシュの集団にはついていけませんがね・・・。



ああ・・・この視点は面白いですね。こういうのの大きなVISIONをアシモフら英国の科学主義の伝統を受け継ぐSF作家の大家は、よく考えています。だから僕はSFが好きなんです。そして、アメリカのアーミッシュなどの結社や宗教共同体への自立の伝統について興味があるのも、どういう逃げ道が?どういう第三の道があるのか?といつも考える時に非常に参考になるのです。



>>私がハードワークの低賃金に関心があるのは、単純な女性的な同情かもしれません。けれども、今の資本主義の世界、社会問題が見えてくることに無関心ではいられないです。



僕は身近な人が、スーパーグローバルカンパニー(笑)に勤めており、自分も海外と競争する立場にいるので、エクセレントと呼ばれる企業の中の凄まじく妥協のない健康的な競争意識には、凄いなぁとおもいます。美しいですしね。けど、その影にあるもの・・・その厳しさで削られていく心や、その厳しさが末端に届く時に悲惨さ(アフリカ問題とかね)を考えると、いつも、両義的でなかなか反応に困ります。かといって、立ち止まっていると、食われるのは常に自分と自分の大切な人ですからね。逃げるわけにもいかない。。。



>>製造業だけが攻められるのは間違っている>「日銀はだれのものか」で著者の中原さんは、日銀マンの高給にひきかえ責任をとらない体質に怒っていましたね。



ええ、よくわかりますよ。金融系エリートは、身近に多いのでよくわかります(笑)。本来は、エリートこそ責められ非難されるべきだと僕は思うのですが。



>金融業界やサービス業においては、女性をうまく安く使っています。



これもねー・・・サマンサとかもそうだけれども、なんというか、歪んだ形の使い捨てにしか僕は見えないんですがねぇ(苦笑)。まぁ、それをいうなら男性も同じだから似たようなものかもしれませんが。



>>見えやすい末端の部分だけを問題にするのも、けっこう腹が立ちます>製造業の現場で働く人は、ブルーカラーだから大衆にわかりやすいのです。どんどん怒ってください、ペトロニウスさま。^^



ええ、まじで、この辺は許せないです(笑)
使い捨て (樹衣子)
2006-10-09 13:12:53
>日本社会が圧倒的に格差が少ない社会であるのもまた現実



年功序列などといって、ぼんやりした親父さんの高給を支える若者の怒りも当然だとは思います。でも格差というよりも正しい評価にふさわしい賃金への反映がなかったという考えもあります。今までの日本のまったりとしてはいるが、逆に能力の高い者には報われなかったことから、成果主義、自由競争の時代は望ましいとは思うのですが、階層が硬直して不平等を招くのはもはや社会問題レベル。貧しくても学力さえあれば高い教育を受けられればよいのですが、入試の偏差値の高い大学ほど、かかった教育費も高いというのも如何なものかと。



年収312万円というのも、高卒の若者にとっては魅力的な高給にうつるのですね。また森永卓郎さんの提唱した「年収300万円時代」のスローライフでいけるのではないかと一見思えるのですが、12時間も拘束されたらスローライフなんかではないです。シャープも4年連続最高益をだすほど業績がよいのなら、正社員の既得権益だけを増進させるのではなく、使い捨て労働者への対応も考えることも、ひとつの企業としての社会貢献だと思うのです。



>エクセレントと呼ばれる企業の中の凄まじく妥協のない健康的な競争意識には、凄いなぁとおもいます。美しいですしね。けど、その影にあるもの・・・その厳しさで削られていく心や、その厳しさが末端に届く時に悲惨さ(アフリカ問題とかね)を考えると、いつも、両義的でなかなか反応に困ります。かといって、立ち止まっていると、食われるのは常に自分と自分の大切な人ですからね。逃げるわけにもいかない



つい女性は非現実的な理想論を言ってしまうのですが、厳しい競争社会の戦士としてはふたつの光と影のはざまで悩まれるわけですね。けれど、影を見ない、見ようとしないビジネスマンはどんなに有能でも、人としての底は浅いと思います。



>サマンサとかもそうだけれども、なんというか、歪んだ形の使い捨てにしか僕は見えないんですがねぇ



おおっ!さすがに読みが深いですね。

サマンサタバサのバッグは、確かにカワイイオーラできらきらしています。けれども、おばあちゃんでも持てる不滅のカワイイ(笑)とは違います。実際エビちゃん年齢では、もつにはすでに厳しいかも。だから今のところ、ルイ・ヴィトンの足もとにも及ばないほんの短い、若いときだけの使い捨てバッグだと私は思っています。

社長の寺田氏は、すぐれた経営者です。けれども女性を”活用”しているとはいいましたが、本音はファッションに高額投資する若い女性社員のモチベーションをうまく”利用”していると感じてます。(あからさまに利用しているといってしまうと、中傷レベルの文章になりますから。)

いずれは女性役員も登場すると言っていますが、広告塔になってしまうのではないかという疑問もあります。花火で号泣できるタイプの方に、シブアな計算を冷静にできるのでしょうか。バッグと同じ、女性社員も使い捨てに、私にも見えるのです。売るのも買うのも、世界一ファッションに消費する日本女性の典型かも。
外人 (とん)
2017-12-11 10:56:34
外人のほうが、日本人より時給200円たかい!此処は、日本じゃないの!?

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