山の洋服(1)

2018-06-03 09:32:37 | 童話
僕達は今、学校の遠足で山に来て、遠くの山をながめていた。すると、山が話しかけてきた。

『君達は遠足で来たのかい?』
『うん、そうだよ。ねぇ山さんは洋服を着替えるの? この前来た時と山の色が違うよ。』
『そうなんじゃ、わし達山も洋服を着替えるんじゃよ。
冬に雪が降るとみんな白い洋服になり、春になるとみんな黄緑色の洋服に着替え、夏になると濃い緑色の洋服になり、秋になると赤や茶色い洋服を着るんじゃよ。
だけど、今は洋服を着替えない山が有るんじゃ。木が枯れてしまって、一年中茶色で、雪が降った時だけ白くなるんじゃ。』
『そうなんだ。』

『君たちは、どうしてわし達の仲間の木が枯れてしまったのか知っているかい?』
『なぜなの?』
『年を取った木や、若いけれど病気になった木や、虫に食べられた木や、工場の汚い煙で枯れてしまった木もあるんじゃよ。だけれど、今は工場の人の努力で煙もきれいになってきているし、木の病気は樹木医さんというお医者さんが病気を直してくれるようになっているんじゃよ。
それからね、年を取って枯れる木の代わりに、植林といって小さな苗木を山に植えて大事に育てることもやっているんじゃ。だから、わし達山は、今は着替える所が多くなっているんじゃ。
だけど木が大きくなるのには何年もかかるから、全部の山が着替えるようになるのはずっと先なんじゃ。だから、みんなも木を大切にしてほしいんじゃよ。』

『それでは、どうすればいいね?』
『山の木の日当たりを良くするために、高い木に登って枝を切ることは大人の人がやっているので、君達は小さな植木を育ててほしいんじゃ。』
『うん、わかったよ。』