火星ネズミ(1)

2017-09-11 21:13:46 | 童話
僕はハツカネズミ、僕の仲間には宇宙環境の実験のために、小さなオリに入れられて宇宙へ行ったネズミも居る。
だけれど、僕は宇宙飛行士として宇宙に行きたいと思っている。
日本の宇宙飛行士十人は、ロケットの発射による重量に耐える訓練や宇宙船の操縦、そしてロボットアームの操作の訓練を毎日行なっていた。
一日の訓練が終ると疲れて、宿舎に帰って食事をしてお風呂に入ったら、すぐ寝てしまうのだ。

ハツカネズミの僕はみんなが寝ている間に訓練の装置を見て回った。
僕は機械の操作はできないが、全部見ておけば人間が実際に訓練している様子が良く分かる。昼間は見つかってしまうので夜の間の探検だ。

僕の一番のお気に入りは操縦室だ。
コンピュータ画面や計器がいっぱい並んでいる。
まだ全然分からないが、打上げまであと一年くらいかかるのではないかと思うので、その頃までには全て分かる予定だ。

『訓練開始!』教官の大きな声が響いた。
僕は訓練装置の隙間から訓練の様子を見ている。
『ふぅ~ん、そうなんだ。ハッチを閉めるのは、そのボタンで、船内の気圧は、あのメーターで、炭酸ガス濃度は、こっちのメーターなのか。』
計器類の確認が終わったら『Gをかけます。』とのアナウンスがあり、徐々に僕の体が重くなってきて、ついに体が床に張り付いて動けなくなった。
『そうか、ロケットが打上げられる時に体にかかる重力なんだ。』
しばらくしてやっと歩けるようになった。『ふぅ、大変なんだね。』
それからみんなは、いろいろな計器が異状を示した時に、原因を調べて修理する訓練をやっていた。
『ふぅ~ん、予備の装置がいっぱい付いているんだ。誰もいない宇宙に何年も飛んで行くから、全部自分達で直さなければならないから大変なんだね。』
何日か見ている間にいろいろ分かってきだした。