コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。


新展開の続き、その1

2005-12-04 15:26:43 | 
「大人の文章表現」ネタです。

前に「新展開」で書いたように、前回の「大人の文章表現」は、[伊勢物語]第二十四段(原文も、こちらを参照)の翻案でした。私は、調子に乗って2つもつくってしまいましたとさ。
と言うわけで、拙文公開。
忌憚のない御意見を求む。

















 ユミが死んだという電話が来た。「おまえのせいだぞ」と亮が言う。ユミは、本当に俺の事を待ち続けていたんだと。

 ユミも亮も、高一で同じクラスになって以来、ずっと仲間だ。ユミは、美人ではないけれど愛嬌があって、何でも話せるし、亮はいつでもトップクラスの優等生だ。俺はと言えば、サッカー馬鹿で、成績はめちゃくちゃ。二人がいなかったら三年で卒業なんて出来なかったと思う。俺たち二人は、そこそこに取り柄もあったから、適当に遊んでいたし、ユミはユミで、女心とやらを説教混じりに語って聞かせてくれる、まぁ、良い話し相手だった。いつも三人だった。彼氏はいなかったんだな。そういえば。
 高校生最後の正月に、ユミは家族でハワイに行った。亮と俺は、冴えねぇなぁ、と愚痴りながら二人で初詣に行ったその帰り、「ナンパでもすっかぁ」とふざけて言う俺に、「いや、今日はおまえに話があるんだ」と真面目な顔で言う。茶店に座ると、「ユミの事、頼むな」と、いきなり。奴は東京の大学を受験する。俺がスポーツ推薦を決めた地元の大学なんて、受けもしない。ユミは、実家から通える短大しか受けないと言ってる。「俺、ユミの事好きなんだよ」「マジかよ、シャレんなんねーよ、それ」 亮にしてみれば、三人組の内一人だけ東京に行くのが寂しくて、それがユミへの想いみたいになっただけなんじゃないか、とも思う。でも、そう言われてしまうと、俺も、遊んでた女たちよかユミの方が大事なのは確かなんだよな、とか思ったり。「だからさぁ、おまえ、ちゃんと、ユミの事、守ってやってくれよな。おまえがつき合うなら、かまわねぇから」
 その時は、そりゃぁねぇだろうよ、と思ったのだけれど、卒業式の夜にユミが泣いて、亮を見送った新幹線のホームで、またユミが泣いて、しょうがねぇなぁって、抱きしめたら、そのまま愛しくなって、気が付いたらつきあい始めてた。ユミは最初から俺の事が好きだったと、後になって言った。俺もそうだったのかもしれん、と、ユミを抱きながら思ったり。亮は、それをホントに納得してたのかどうか。ともあれ、時々帰ってくれば、相変わらず三人で馬鹿騒ぎをする。決まった彼女はいないようだし、そういう話はしないまま。
 ユミは無事に短大を出て、これまた無事に、地元の幼稚園に就職した。俺は、四年で卒業すると、またしてもサッカーで地元の企業に就職。亮は大学院とやらに進むそうで、あと二年学生だ。
 二年後、ユミと俺は、結婚の話を切り出すタイミングをはかりかねたようにぎこちなく過ごしている内、会社からサッカー留学の話が来た。現地に関連会社があるから、そこで働く形で給料も出る。一年で戻って、そしたら切りも良いからプロポーズするか、と、軽い気持ちで話を受けて、ブラジル、と言うわけだ。
 亮は大学院を出て、地元の企業に研究職として就職した。俺と入れ違いだ。「今度は俺がユミの事、守ってやる番だな」と泣き笑いの亮に、ユミは、「何の事?」って、またしても泣きながら言う。そうやって別れて、あっという間に三年経った。そう、俺にとっては本当にあっという間だ。ここで学ぶ事はいくらでもある。無我夢中でサッカーに打ち込んだ。他のことは……。確かにおろそかになっていたかも知れない。でも、そのおかげでプロチームからのオファーも来た。今帰ったら、“サッカーもやるサラリーマン”に戻っちまう。俺は、サッカーで生きていきたい。その自信もついた。多分、ユミは、また泣いたんだろうけど、「頑張ってね」というメールをくれた。その後、亮とユミの間に何があったのか、俺は知らない。別々にやりとりするメールには、「ユミに会った」「亮と食事した」と、報告はあるから、仲良くやってることは伝わってくる。ユミは寂しかっただろうし、亮はずっとユミの事が好きだったんだ。何もないだろうなんて考える方がおかしい。俺だって、こっちで少しは遊んでるし。
 「なんにも言わなくて悪かったな。ちゃんと相談すりゃよかったよ」「おぉ、マジでびっくりしたよ。おまえら、俺に気ぃつかいすぎなんだよ」

 サッカーで生きていく見通しが付いて、日本のチームとの交渉もあって、三年ぶりに帰った。驚かしてやろうと思って、駅に着いてからユミに電話した。「俺、日本のチームに入るかも。そしたらさ……。あ、とにかく、会えないかな、今」ユミは、暫く黙ってから、「あのね、言ってなかったんだけど、あたし、亮と結婚するの。明日」という。「マジで?」俺はそれ以上言葉がない。ユミは、もう涙声になって、「あたし、待ったんだよ、三年。三年だよ。寂しかったんだよ。剛、メールくれるけど、一回も帰ってこなかった。寂しかったんだよ。解る? 亮は、ずっと、あたしの事好きだったんだって、知ってるでしょ。いつでも話し相手になってくれたし、休みが合えばドライブにも連れて行ってくれたよ。剛、帰ってくるなんてひとことも言わないで、ずるいよ。待ってたんだよ。帰るかも、ぐらい言ってくれればいいのに、そしたら、ずっと、待ってられたよ。ずっと、剛の事だけ好きだったんだよ。待ってたのに。帰るって、ひとことぐらい言ってくれたって良かったじゃない。寂しかったの。寂しかったんだもん。あたしだって人間だよ。女だよ。ずるいよ。遅いよ」まくし立てるように、息を荒くしながら同じ事を何度も言う。俺は、何を言って良いのか判らない。
 「そっか、おめでとう。よかったじゃん。亮は真面目だし、将来性もあるし、俺も安心だよ。幸せにな。愛してやれよ。奴、ずっとおまえの事、思い続けてたんだ。それじゃぁ、今、準備で大変なんだな。なんか、よくわかんないけど、会うとややこしそうだし、このまま帰るよ。ウチにも言ってないんだ、実は。ブラジルのチームからもオファーがあってさ、条件は向こうの方が良いんだけど、日本で就職すれば、って思って、来てみたんだ。でも、ブラジル、戻るよ。幸せに暮らせよ。亮、大事にしろよ。奴にもよろしくな。」
 「ちょっと待って、今駅なの? 清水? 行くから、そこにいてよ、絶対いてよ。帰ったらあたし死んじゃうから。化けて出るからね! 三年待たせたんだから、十分くらい待ってよね」
 冗談きついけど、それも一理あるな、と思いながら、結婚式の前の晩に元カレと駅で涙の対面もまずいだろうし、俺だって、会えば何を言い出すかわからない。知らない男なら、ダスティン・ホフマンを気取る手もあるけど、今更亮からユミを奪うなんてできっこない。帰るしかないじゃないか。良い具合に電車が来たので、そのまま東京まで戻り、一泊してブラジルへ。日本のチームは断った。戻ったのを見計らったような亮の電話だった。

 「おまえが電話したんだろ。携帯におまえの番号があったんだ。その時、俺、いなくてさ。お袋さんも留守でな。ユミは、一人で、サンダル履きで自転車に乗って、駅に行ったらしいんだ。慌てて、車輪が滑ったのか、こけてさ、車道に、で、そこに、ね。サンダルは、途中で脱げたんだろうな、随分前に落ちてたよ。あっけないもんだよな。俺のとこに、メールが来てさ、『ごめんね』って。電話しても出ないから何だろうと思って家に行ったら、警察から電話が来たってわけだ」
 返す言葉が見つからない。ユミは亮と結婚して幸せに暮らしてくと思ってた。俺は地球の裏側で、サッカーやって、ユミの事は忘れればいいと思ってた。ユミの事を好きだったけど。好きだったけど。
 「ユミはさぁ、ずっとおまえの事、想ってたんだよ。でも、おまえ、帰ってこないし、多分知らないだろうけど、ユミのおやじさん、ガンなんだ。もう、半年も持たないらしくてさ。お袋さんも看病で疲れて、大変なんだ。孫の顔は半分諦めてるにしても、花嫁衣装くらい見せてやりたいって。おまえの事、ずっと待ってたんだぞ。俺は、代わりの新郎のはずだったんだよ。俺だって解ってたんだ。おまえが帰ってくるのが一番良いって。でも、こんな裏事情話してサッカーやめろとは言えないし。悩んだんだよ。俺、しめしめ、とか、思ってなかったぞ。マジで。おまえのために、ユミ、守ったんだぞ。解ってんのかよ。おまえがユミ殺したんだよ、ばかやろ」
 今度は亮までどうにかなってしまいそうな勢いで、半分泣きじゃくってる。事情が呑み込めてきた時は、もう、全部終わってる。俺が、ユミを、殺した。俺はユミを好きだった。でも、ユミを、ちゃんと受け止めてなかった。寂しさを、解ってなかった。亮がなんとかしてくれると思ってた。サッカーに夢中だった。ずっと。
 「悪かったな。よく解ったよ。おまえたち、幸せな夫婦になると思ったのにな。元気出せよ」
 自分の声が白々と響く。少し落ち着いた、と言うより、押し殺したような声になって亮が言う。
 「俺、ユミと寝てねぇんだぞ。」声が、震えてる。
 あぁ。
 ユミぃ、悪かったなぁ。化けて出てこいよぉ。迎えに来てくれよ。待ってるから。

ジャンル:
小説
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4 コメント

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ついに! (テンカオ)
2005-12-04 17:33:33
まってましたよ!



こゆのです!!!!
ありがとう (コネタ)
2005-12-04 17:50:13
テンカオさん、ありがとう。お恥ずかしいです。

これは、元ネタが素晴らしいんですよ。

普遍的なのに、どうにでも解釈できる。

テンカオさんなら歌も入れてもっと良いものを作れるはず。是非!
 (kee)
2006-10-25 13:41:30
おおおおおおおおおおお。
 (コネタ)
2006-10-27 08:15:29
えぇぇぇぇぇぇぇ?!

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