竹と遊ぼう。伊藤千章の日記、

小平市と掛川市の山村を往復して暮らし、マラソン、草花の写真、竹細工、クラフトテープのかご、紙塑人形の写真があります

岡村桂三郎展と宮沢賢治

2015-02-19 07:16:31 | 旅行

17日天竜に行ったとき秋野不矩美術館に立ち寄りました。

岡村桂三郎の特別展をやっていました。
まったく知らない作家です。

http://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/akinofuku/index.html

大きく張り合わせた板を削ってその上に絵を描くというやり方で、
特に10m以上もある大きな板絵「降り注ぐ」では、黒い画面からいくつもの大小の顔が浮かび上がっていました。



その日の朝東北地方に地震があり、青森岩手に津波注意報が出されました。
「降り注ぐ」を見ていると東北大震災のときに津波にのまれた人々の顔に見えてきました。
しばし呆然と見ていました。

こんな絵は見たことがありません。
ピカソのゲルニカや丸木夫妻の原爆の図を彷彿とさせます。
画家本人の意図は別なのかもしれませんが。

人の命は津波のときのように自然の恐ろしい力の前に翻弄されます。
そのような事態を前にしては呆然と黙するしかありません。

宮沢賢治に「青びとのながれ」という連作短歌があります。

青びとのながれ

680
そもこれはいづくの河のけしきぞや人と死びととむれながれたり

681
青じろき流れのなかを水色に人々長きうでもて泳ぐ

682
青じろきながれのなかにひとびとは青ながき腕をひたうごかせり

683
うしろなるひとは青うでさしのべて前行くもののあしをつかめり

684
溺れ行く人のいかりは青黒き霧をつくりて泳げるを灼く

685
あるときは青きうでもてむしりあふ流れのなかの青き死人ら

686
青人のひとりははやくたゞよへる死人のせなをはみつくしたり

687
肩せなか喰みつくされてしにびとはよみがへりさめいかりなげきぬ

688
青じろく流るゝ川のその岸にうちあげられし死人のむれ

689
あたまのみわれをはなれてはぎしりの白きながれをよぎり行くなり

ーーー
これは宮沢賢治が見た幻視ないし夢に基づいた詩のようで、
同じ描写の「流れたり」という詩もあります。

三陸海岸は明治の大津波、昭和の大津波、チリ地震津波そして今回の大震災と何度も大津波を経験してきています。
私の従兄たちも流されました。

あの「降り注ぐ」という絵はさまざまな災害で失われた人々への鎮魂の意味が隠されていると思うのは私だけでしょうか。



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