南町の独り言

様々な旅人たちが、日ごと行きかふ南町。
月日は百代の過客、今日もまた旅人が…。

時を超えてのメッセージ

2008-08-03 21:40:00 | Weblog

不思議な存在感に包まれた。
1200年の時を越えて「鑑真和上」に直に触れた気がする。
弟子の一人が鑑真和上の死が近いことを知り、その2ヶ月前から作り上げたという日本最古の肖像彫刻だ。
展示されているその一郭だけ空気が違う。
真正面から近づいていくとまるで生きているような存在感、右側から見ると穏やかな横顔だが、左側に回ると厳しい表情の鑑真像。

30代の頃見た映画「天平の甍」を思い出す。
井上靖の歴史小説で奈良時代に遣唐使として、高僧を日本に招くために大陸にわたった若い僧たちの物語であった。
乱れきった日本の仏教を正すために国法を犯して日本に渡ることを決意した鑑真和上は5度渡航に挑戦し失敗、あまりの労苦に両眼を失明した挙句、6度目にしてようやく日本への上陸を果たした。
日本では戒律制度を確立し、唐招提寺を創立した。

今回、静岡県立美術館で開かれている「国宝 鑑真和上展」は、大規模な解体修理が行われることとなった唐招提寺を記念して公開されたものである。

肖像ではあるが生命の息吹を感ずる像である。
強烈な自己主張は感じないが不思議な存在感がある。
今でも頭の中に“鑑真和上坐像”が焼きついて離れない。

8月31日まで展示中です。
ぜひ会いにいくことをお奨めします。