きた産業のスローなブログ

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(欧州ワイン醸造設備・見聞録、その2)ボルドー右岸の「Ch.フォージェール」

2011年01月31日 09時40分50秒 | Weblog

1月12日のブログに引き続き、見聞録(その2)、です。


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<ビックリ?!>x2 +<ポイント!>x5 +<これは何?>x1


<ビックリ?!①>
目的地サンテミリオンに入る前に、お隣のポムロールにちょっと寄り道。ボルドーで最も高価なワインはポムロールの「ペトリュス」でしょう。で、そのペトリュスの前、というか道を挟んだところに忽然と「鳥居」がある!! 


思わず、拝礼・かしわ手を打とう、、、、と思ったが、何を拝んでいいのか。鳥居の先にはムエックスさん(ペトリュスのオーナー)の社屋があるけれど、拝んでありがたく飲みなさい、というブラックジョーク??
ペトリュス前鳥居


ムエックスさんが日本好き、ということで最近建立したらしい。日本人としては、「ミニ万里の長城」が建たなくてよかった(いまや高級ボルドーワインの最大の消費地は中国なので)ような、、、でもちょっとおかしい、意味不明だぞ、でした。日本国以外のワイナリーで、鳥居を建ててしまったのは、世界でここだけではないか?!


さて、本論。「サンテミリオンで最も先鋭的設備」との紹介を受けて「シャトー・フォージェール(Château Faugères)」を訪問先に選びました。ヴィンヤードに突然現れる醸造所は、辺りでみたこともないような、こんな近代建築。
シャトー・フォージエール

サンテミリオンの市街とその周りのワイン生産地域は「ユネスコの世界遺産」に指定されている伝統地域なのだけれど、聞けばユネスコのルールでは「世界遺産区域内に建物を新築する場合、<伝統的なもの>か<ものすごく近代的なもの>のいずれか」ということらしい。


これは、建物の最上部から、1kmくらい離れた元のフォージェールの建屋方面を眺めたところ。フォージェールの醸造コンサルタントは、かのミッシェル・ロラン。重力式レイアウトを織り込んで十二分に検討を重ねたという建築は、世界的建築家、マリオ・ボッタ(作品には、サンフランシスコ近代美術館、渋谷のワタリウム美術館など)による。
シャトーフォージェール


<ポイント!①>
さて、入ってまず目につくのが、画像処理ブドウ自動選果システム。前回のバンフィにも登場したけれど、「ブーハー・ヴァスラン」のシステム。この2年ほどで、ボルドーで有力なシャトーには、これが結構入った。縦長部分の上部にカメラがあって、その下でブドウ粒を空中に放り出して画像で良否を判別する。能力は1秒に処理できる粒数に依存するわけですが、トン数に直すと5~10トン/時の処理能力。
画像処理ブドウ自動選果システム


<ポイント!②>
醗酵はオークバット(オーク製タンク)による。ただし、温度コントローラー(私が眺めている先)が付いているのに注目! ステンレス・タンクでなく、オークバットにこだわっている高級シャトーは従来から多かったけれど、温度制御がビルトインされものはほとんど見なかった。ところが、最近は高級ワイナリーが導入するようになってきた。世界的に夏の異常高温や、冬の異常低温が常態化するなかで、温度調整なしでは乗り切れない、という事情もあるのでしょう。ステンレス・タンクでなくオークバットにする理由は、やはり「酸素透過度」と「オークから出る微量有用成分」が決め手。
オークバット

オークバット


<ポイント!③>
この醸造所にはメンブランプレスはない。オークバットのフロアの1階下にある、このバスケットプレスで搾っている。バスケットがフォークリフトで簡単に出し入れでき、プロコンで圧力制御をおこなう、「新世代の自動バスケットプレス」。メンブランプレスに比べて、濁度の低い清澄なジュースが取れることがバスケットの魅力。バスケットプレス上部のみを吹き抜けとして、無用に天井高さが高くなることを防いでいるのに注意。なお、これはヴァスランの「JLB」だけれど、DIEMMEにも同様の機種があります。
新世代の自動バッケットプレス


なお、上の写真で頭に手をやっているシルエットの女性、下の写真で樽から果皮をかき出している女性が、フォージェールのワインメーカー。醸造所内を走り回って作業されていて話はしませんでしたが、若くてとてもきれいな方です。フォージェールのウェブサイト(日本語もある!)に顔写真があります。
20110131-08


<ポイント!④>
フォージェールでは、樽で醸し醗酵を行っている。樽が自由回転できる「オクソライン」と、醗酵後の果皮を取り出すために樽の鏡に取り付けたステンレスの蓋。
樽で醸し発酵

樽で醸し発酵


<ポイント!⑤>
なお、樽洗浄機はMOOGのシステムでした。(当社が日本代理店をしているので、牽強付会と思われては困るのですが、スイスのMOOGの樽洗浄システムは世界中のワイナリーで活躍しています。)
MOOG樽洗浄機


<これは何?①>
クイズ、これは何かわかりますか? オークバットの近くに設置してあります。
20110131-12


<ビックリ?!②> 
カベルネS、メルロ、Cフラン、Pヴェルドなど、複数のブドウ品種を混ぜて仕上げる(アッサンブラージュする)のがボルドーワインの伝統、常識、真髄であるのは皆さんご存知の通り。ところが、シャトー・フォージェールのトップブランドの「Peby」は「おきて破り」。なんとメルロ100%。右岸ならでは、ということでしょう。
Peby



日本でポピュラーな「プピーユ」はメルロ100%で有名ですが、筆者は不勉強でボルドーのGrand Cru赤ワインで、単一品種モノがあるのは知りませんでした。因みに、写真の2001年Pebyは、シャトーの訪問者向け特別タリフで85ユーロ也。


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最後の写真は、フォージェールとは違うのですが、すぐ近くのシャトー・ド・プルサック(Château de Pressac)。サンテミリオンのグランクリュで、近代建築のフォージェールとは対極の伝統的な「お城」。ここでは、DIEMMEの閉鎖式メンブランプレス(オレンジ色の機械)を使っていました。(CMになりますが、DIEMMEはメンブランプレスのほかに除梗破砕機も制作しています。21世紀にはいって以降、日本における除梗破砕機のシェアは、DIEMME・きた産業がトップです。)
シャトー・ド・プルサック

シャトー・ド・プルサック



代表取締役 喜多常夫


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