きた産業のスローなブログ

会社のトピックスや出来事を、「スロー」に記録・発信するブログ。文章は、当社の各部門のスタッフが書きます。

(欧州ワイン醸造設備・見聞録、その3) ボルドー左岸の「Ch. ベイシュベル」と「Ch. マルゴー」

2011年02月04日 08時43分27秒 | Weblog

1月12日、1月31日のブログに引き続き、見聞録(その3)、です。


- - - - - - - - - - - - - - -


6年前、8年前との<変更点!>x4


ボルドー左岸にある「シャトー・ベイシュベル(Château Beychevelle)」は、「メドックのヴェルサイユ宮殿」と形容される。この辺りはどこも、文字通り「お城」のような建物のシャトーばかりだけれど、確かにこの写真のとおり、建物と園庭の調和は飛びぬけてきれい。
20110204-01

20110204-02


「ベイシュベル」のラベル。ワイン通にはおなじみ、帆を半分下げた帆船のイラスト。
20110204-03


「ベイシュベル」という名前は、ジロンド川を通る船が、城主のフランス海軍提督に敬意を表するために「Baisse Voile(帆を下げろ)」と言った、その言葉がなまったもの。と、いうのは、よくガイドブックに載っているけれど、ずいぶん離れたジロンド川から本当に見えるのか? 確かめに行ってみたのがジロンド河畔から撮ったこの写真。確かにちゃんと見とおせるが、まるで「点」。並木のはるかかなたに見えるのがシャトー・ベイシュベルです。帆を下げてもあまり見えなかったろうに・・・?!
20110204-04


さて本題。ベイシュベルは2004年に一度見学したことがある。6年で、シャトーの醸造設備はどう変わったのか?をみるのが今回のミッション。写真は、ブドウ受け入れ部分のコンベア。2連のバイブレーションコンベアで房の状態で選果する、この部分は6年前と変わらない。



<変更点!①>
2連のラインは、エレベーターコンベアで2台の除梗機に入る。右の「ブーハー・ヴァスラン」は6年前と同じだが、左の黄色いほう(「ペレンク」)は今シーズンに導入したものだそう。除梗後の粒を選果するのに、「ブーハーの後は6人いるけれど、ペレンクの後は2人で済む」とのこと。ペレンクの除梗機は、通常の「円筒ケージと回転ビーター」ではなく、「左右からはたいて粒をとる」という独特の形式。(見聞録1のバンフィでは「ペレンクの自動選果がいい」との報告をしました。ペレンクの設備にご興味のある方は、ご照会ください。資料やDVDがあります。)



<変更点!②>
左側にステンレス・タンク、右側にコンクリートタンク、の眺めは6年前と何も変わっていないように見えます。が、よ~く見ると、右のコンクリートタンクの数が増えている。色や意匠を同じにしているので気付きにくいが、いちばん手前のステンレスマンホールのもの数基は、最近増設したそう。温度変化が緩やかなコンクリタンクは、数年前から静かなブームになったと思いますが、今でも信奉者は多いよう。


- - - - - - - - - - - - - - -


次はボルドーの「シャトー・マルゴー(Château Margaux)」。ボルドーの「5大シャトー」のなかでも特に有名で、「この紋所が目に入らぬか、頭が高~い」と、言いたくなるような世界に冠たるブランド。



「5大シャトー」のうち、ラツールやムートンは積極的に設備更新と建物リノベーションを行うけれど、マルゴーはやり方を変えない事で知られる。2002年に一度訪問したことがあり、8年ぶりのとなるが、はたして何も変わっていないのだろうか? まずここは、樽貯蔵庫。まるで時間が止まっているかのようで、8年前と何も変わっていない。樽の置き方や数まで変わらない印象。



<変更点!③>
次に醗酵タンクの部屋。長く使いこんで黒ずんだ大型オークバットは以前と同じ眺めで、ここも何も変わっていないように見えるが、、、以前はステンレスのキャットウォークがなかった気がする。それに天井をみると、クレーンが! 尋ねると「ブドウは大きな桶に入れて、クレーンでつり上げ、オークバットに投入するやり方」に変えたとのこと。



次は、比較的新しいオークバットの部屋。やはりキャットウォークがあり、天井にクレーンのレールが取り付けられていて、ポンプを使わず、重力に従って落とすやり方を採用している。ポンプを使わず、という意味では「重力式」と同じ思想と言っていいでしょう。



<変更点!④>
そしてもう一つの変化は、「小容量ステンレス・タンクの導入」。畑の細かい区画ごとに仕込みを分けるそう。ボルドーでは、4~5年前までは、ステンレスにしろ、コンクリートにしろ、オークバットにしろ、300~100HL(ヘクトリットル)クラスを見ることが多かったが、最近は60~30HL、特定区画については10HLくらいのミニタンクで仕込むこともよく行われます。



- - - - - - - - - - - - - - -



以上、「欧州ワイン醸造設備・見聞録」として3回にわたってフランス、イタリアの最新のワイン設備事情をご紹介しました。

代表取締役 喜多常夫


最新の画像もっと見る

コメントを投稿