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サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

mini review 07254「シュガー&スパイス 風味絶佳」★★☆☆☆☆☆☆☆☆

2007年09月13日 | 座布団シネマ:さ行
山田詠美の短編小説「風味絶佳」を原作に、うぶな青年の初恋と失恋、成長を見つめたラブストーリー。もどかしくも初々しい恋の行方を、『冷静と情熱のあいだ』の中江功監督が繊細に描き出す。主演は、『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を史上最年少で受賞した柳楽優弥。初恋の相手役を、『パッチギ!』で数々の映画賞を総ナメにした沢尻エリカが演じる。主題歌を歌う人気ロックバンドのオアシスが、初めて邦画に楽曲を提供したことでも話題を呼んでいる。[もっと詳しく]

なめきった大人たちが、青春物語を「通俗」に導く。

僕たちは思春期の頃、やはりどこかでアメリカに憧れていたところがある。
「アメリカン・グラフィティ」のように、御馬鹿で少しキュートな青春物語。
どの街にも、少し年上に、オートバイ野郎とか、アメ車の信奉者とか、ロックンローラーやサーファーがいた。
クスリをやっているグループもいたし、自慢のナイフを持ち歩いている兄貴もいた。真夜中にグラサンをしてみたり、うまくもないのに、マールボロを吸ってみたりもした。
皮ジャンにリーゼントスタイルの友人と、Junの細身の花柄シャツに肩まで長髪の少年(僕のことだ)が、一緒に歩いているという滑稽も気にならなかった。



しかも田舎の町である。
高校も中退し、ガソリンスタンドで働きながら、たまに、農作業を終わって繰り出した兄ちゃんたちと、酒場でいざこざを起す。
たった1件しかない、ビリヤードホールで、女の子をはべらかしたりする。
もちろん、黒人がいるわけでもないし、牧師以外には白人などいない。ジャズもブルースも有線でかかっているような街だ。

福生や横須賀や佐世保に憧れたりした。六本木なんて、想像のしようもないし、湘南の海は、どこからどこまでがそうなのか、てんでわからない。
だから、もっぱら、片岡義男の小説である。
そのなかのアメリカが、自分たちにとってのアメリカだ。
もう少し、時代があとになれば、村上龍だ。「限りなく透明に近いブルー」は福生の青春物語。
雑誌「POPAYE」の創刊は1976年。おしゃれなアメリカがそこにはあった。



山田詠美の短編を下に、この映画は製作された。
製作/亀山千広、企画・プロデュース/大多亮、監督/中江功、脚本/水橋文美江。
いわずもがな、吐き気の出るような駄作「冷静と情熱の間」のフジテレビ系のスタッフである。

出演は主人公志郎に柳楽優弥、初恋の相手乃里子に沢尻エリカ。アメリカ狂いのお婆ちゃん(グランマ)に夏木マリとその若い恋人役マイクにチェン・ボーリン。優弥の恋敵矢野に高岡蒼甫。
福生の街を舞台に、乃里子への初恋とそして失恋を通しての志郎の成長物語。そこに、人生の達人であるかのようにグランマが助言をする。
たとえば「女の子は甘くて優しいだけじゃ駄目なのよ。強引に引っ張ってくれることも願っているの」まあ、そういったことがタイトルの「シュガー&スパイス」である。



カンヌで主演男優賞を14歳でとった柳楽優弥は、前作「星になった少年」もそうだが、フジテレビの子飼いになったのか。なんなんだ?いまや、絶好調の沢尻エリカと組み合わされて、アイドルロマンがしたいのか?
夏木マリのあのもったいぶった演技はなんなんだ?「チョイ悪姐御」の路線で評判がでつつあったのに、これはコメディのつもりで参加したのか?
チェン・ポーリンは、なんでこんなところに意味もなくでしゃばっているんだ?日本の観客をなめているのか?なにがよくて、グランマのお守りをしているんだ?

19歳になったら・・・志郎と乃里子のおままごとが続く。
思春期のドキドキは誰にもあるし、乃里子はちょっぴり大人で、結果として矢野に二股かける小ざかしい娘になっている。まあ、男と女は微妙だ。くっついたり離れたりまたくっついたりは、はいて捨てるほどある。
友人たち(マッキー、ヨウコ、尚樹)も、性をめぐるドタバタで青春している。
正直といえば正直な、オツムが良さそうにない、青春群像であり、等身大といえば等身大の、青春説話である。



こういう作品を、わざわざ、スタッフを動員しての映画にする魂胆がよくわからない。
テレビであればわからなくもないが、それでも1クールもつようなお話でもない。もちろん、谷崎潤一郎賞を受けたこの小品を、けなしているわけではない。
山田詠美は、当代きっての物語メーカーだ。いつも、その斬新な言葉に、はっとさせられる。頭で、捻くった、言葉ではない。

思春期を思い出す。
ある意味で、女の子のことしか、頭になかったかもしれない。
何時間も、何時間も、公園のベンチにたたずんで、なにを話すともなく、ただ一緒にいるのが幸せだった。
無知な頭の中で、欲望だけが膨らんでいく。自分が汚いもののように思えてくる。眠れない夜に、感情を持て余して、犬のように遠吠えをする。
世間知も何もない。自己嫌悪と自己憐憫と・・・。
この時期にしかない、宝物のような時間であり、そのほとんどは後悔と化していく。



それでも、と僕は思う。
たしかに、「シュガー&スパイス」だ。
だけど、この映画のように、なめきった大人たちによって、「通俗」にまみれさせてほしくはないのだ、と。


 


 

 



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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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ごくろうさまでした (sakurai)
2007-09-18 15:01:51
わざわざ借りて、ごらんになったんですよね。ご苦労様です、、、というか、ご愁傷様です、とでもいいましょうか。
試写会で見たので、あんまり酷評もできず。
(一応、試写には宣伝してねの意味があったので)
しょうもない映画見てると、いろいろな無駄が出てきた、エコに反するなあ、などとも思った覚えがありますです。
返信する
sakuraiさん (kimion20002000)
2007-09-18 15:13:03
こんにちは。
基本はこれからご覧になる方もおられますから、あんまり酷評はしないんですけどね。
ときどき、僕の「地雷」というのがあります<笑)
じゃあ、blogはパスすればいいじゃないの、という反論がきそうですが、悪口は悪口で、また楽しいんですね、はは。
返信する

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