
『デスペラード』のロバート・ロドリゲス監督が、アメコミ界の人気者で本作の原作者でもあるフランク・ミラーとタッグを組んだ最高に刺激的なエンターテインメント・ムービー。ハリウッド中の俳優たちが出演を希望しただけあり、ブルース・ウィリス、ジェシカ・アルバ、イライジャ・ウッドなど豪華メンバーが勢ぞろいした。白黒を基本とした映像に、赤い血や口紅の色をカラーで映し出すアイデアは斬新かつ強烈だ。[もっと詳しく]
ロバート・ロドリゲスは次々と、僕らを映画的快楽に導いてくれる。
ロバート・ロドリゲスは、いい男である。
メキシコ系アメリカ人だが、アクション映画が好きで、ゾンビ系のホラーオタクであり、自分で編集をやっちゃう職人気質である。
音楽もセンスがよくて、「ブラザー」の関係にあるタランティーノの「キル・ビルVOL.2」の音楽監督も買って出ている。そのバーターということもあり、「シン・シティ」のゲスト監督にタランティーノを招きいれた。報酬は、1ドルである。
ロバート・ロドリゲスはインディーズ監督の夢を集積しているようなところがある。
好きなものを撮るんだ、金がなければないなりに。
1992年制作の「エル・マリアッチ」は、メキシコ向けのホームVTRとして制作されたものであり、僕も、VTRでみたが、ぶったまげた。
制作費わずか7000ドル。100万円にも満たない金額を、一文無しのロドリゲスは製薬会社でバイトをしながら貯めたのだった。
メキシコの小さな村を舞台にした脱獄囚の復讐劇に巻き込まれたマリアッチ(流しの歌手)の物語だが、面白いの何の。結局、コロンビアが全米配給に踏み切ったのだが、映画史に残る快挙である。7000ドル!!
この成功で、次回作「デスペラート」(1995年)で1000倍の予算がついた。ロドリゲスは、増えた予算のほとんどをド派手な火薬に充てたのだった。
ここで、有名なギター型マシンガンが登場する。
そして、主人公にアントニオ・バンデラス、ヒロインにサルマ・ハエックを起用。
ご機嫌なラテン系アクションは、ジョニー・デップやミッキー・ロークまで引きずり込んでの痛快な第3弾「レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード」(2003年)に続く。
アントニオ・バンデラスのブレイクは「デスペラート」からであり、また、タランティーノ脚本の「フロム・ダスク・ティル・ドーン」は、前半アクション、後半ゾンビ映画という怪作だが、この映画で、ジョージ・クルーニーをブレイクさせている。たいしたものだ。
その後、007をパロディ化したような冒険コメディ「スパイキッズ」3部作を撮るが、これは、VFXや3Dを試行しながら、デジタル編集やポスト・プロダクション作業のノウハウを積むためであろう、と甘い推測(笑)。
さて、「シン・シティ」である。
この映画の最大の話題は、アメリカン・コミック界の重鎮フランク・ミラーの作品を下敷きにし、その実写をミラー自身を共同監督に据えて、実現してしまったことである。
盲目のコミック・ヒーロー「デアデビル」や脚本を担当した「ロボコップ」シリーズ、魅惑的なヒロイン「エクストラ」など、これまでも映画に関与はしてきているが、なんだかなあ、という感じであったが、本作はフランク・ミラーも本領発揮。実に、楽しげに、制作現場にも深く入り込んでいる。
冒頭のモノクロのシーン。
ビルを見渡す夜更けのパーティ会場のベランダに、ひとりの色っぽい女がいる。
洋服と口紅だけが、深紅。そこに、ひとりの男が近づく。
一発で引き込まれるシーンだ。
ロドリゲスは、この映像をプレゼン用に撮影し、フランク・ミラーを口説きにかかったのだ。そして、ブルース・ウィルス以下の超大物たちをも。機微をついている。とてもクールだ。
「シン・シティ」(罪の街)。3人の男たちが、愛をくれた女のために、邪悪と戦う。3話構成となっているが、ストーリーが微妙に輻輳している。
1話:前科者で仮出所しているマーブ(ミッキー・ローク)は高級娼婦ゴールディを殺された謎を追う。
監察官や娼婦の双子の妹と交錯しながら、冷血なサイコ・キラーであるケビン(イライジャ・ウッド)と対決することになる。
2話:顔を変え過去を葬るドワイト(クライブ・オーウェン)は、恋人シュリー(ブリタニー・マーフィ)のアパートで堕落した刑事ジャッキー・ボーイ(ベニチオ・デル・トロ)と遭遇する。
昔の恋人ゲイル(ロザリオ・ドーソン)が管理する娼婦たちの自治区であるオールド・タウンに駆け込むが、殺人マシーンであるミホが刑事と知らずジャッキー・ボーイを殺めてしまう。
オールド・タウンの危機に、ドワイトは死体を隠しに行くのだが・・・。
3話:最後の正義と呼ばれるハーディガン刑事(ブルース・ウィルス)は、引退の最後の仕事で、幼女連続殺人犯が上院議員の息子ロマークであることを突き止め半殺しにするのだが、同僚刑事の裏切りと上院議員の計略で罪をなすりつけられ逆に獄中へ。
助けた少女ナンシーからの手紙だけを楽しみにしたが、途中で途絶える。
ナンシーの身を案じたハーディガンは嘘の自供をし、8年ぶりに娑婆に出て、ナンシー(ジェシカ・アルバ)を探す。
ナンシーはまたしても誘拐されるが、その犯人はロマークが奇怪に変身した怪人イエローバスタード(ニック・スタール)であった。
いや、この映画は、10回でも100回でも、面白く見られる映画である。
3話に甲乙つけがたいが、個人的には、ベニチオ・デル・トロの出演パートがお気に入り。
死体を満載した車を運転するドワイトの助手席に座らされている死体のベニチオ・デル・トロがドワイトの妄想の中で、生き返るのだ。切り裂かれた咽喉から、タバコの煙を出したりして(笑)。思わず、拍手喝采をしてしまった。
プエルトリコ出身のこの男前だが怪異な風貌にも見える役者は、「トラフィック」でブレイクしたが、日本でも、「トロ様」と慕う女性に腕を咬まれるという愛すべき事件も起こしている。
顔に似合わず、怪獣のフィギュアを集めるのが趣味というオタクだ。2005年には「che」という映画でチェ・ゲバラを演じた。未見であり楽しみだ。
それにしても、だ。
映画は観ることが快楽なら、創ることはその何倍も快楽なはずだ。
「シン・シティ」は、監督としてゲストのタランティーノ含め3人の名前が連ねられている。アメリカ監督組合(DGA)では、クレジットに監督として表記するのは1名に限るとの規定がある。通常は、助監督とか表記するのだろう。ロドリゲスはどうしたか。監督内定の次作品を監督契約を返上したうえで、「シン・シティ」で連記をするために、DGAをいったん脱退したのだ。男ですねぇ。
フランク・ミラーの主人公たちは、いずれもダークな過去を背負っている。
「シン・シティ」でいえば、ブルース・ウィルス演じるハーディガン刑事だけは、暗い過去の設定はないが、最後の事件を前に心臓病で弱っており、しかも逆に幼児連続殺人の汚名を着せられ、8年に亘って投獄されている。すなわち、充分、ダークになっている。
「バットマン・ビギンズ」の暗黒面を強調したバットマン誕生以前の前史も、その骨格にはフランク・ミラーの影響が色濃い。
ともあれ、続編も決定した。いまから、ワクワクしている。
こういう映画を前にしては、僕は恥も外聞もなく、「水野晴郎」モドキになることだって、辞さない。
ニコニコしてこう言おう!
「いやぁ~、映画って本当にいいもんですねぇ」
ワタクシは正直言って苦手なタイプの作品だったので楽しめなかったのですが、世界観と完全にマッチした映像には圧倒されました^^
出番少ないながらも存在感抜群のデヴォン青木も良かったです。
ではでは~、これからもよろしくお願いします♪
殺人マシンのデヴォン青木。いやいや、強かったですね。2世の方なのかな?
それは災難というか、愛されているというか・・・^^)
この車のシーンは、やっぱり最高でした。
こうして見ると、ロドリゲスとタランティーノ、刺激しあいながらおたがいのこだわりのある映画撮ってくれますね。
これからも、どんな事に興味を持って映画にしてくれるのか、とても楽しみです。
詳しくは知らないけど、トロ様が来日して、ファンが殺到したときのようですよ。
その、女性も、スプラッタファンだったりして(笑)
まさに動くアメコミというかんじで、凄く面白かったです!
でも見終わった後はぐったり疲れました(あまりに映像が斬新だったから??)
続編もすぐに見に駆けつける予定です!
そうですね。とてももりだくさんに、見せ場が詰め込まれていましたね。関係者が、出来上がりをみたときに、とっても楽しい映画でしょうね。
私もです!10回でも100回でも見たいと思いますが一緒にDVDを見ていた人間は時間の無駄だったとゆっていました。
映画って本当にいいもんですねぇ
デルトロみたいな濃い役者さん、好きですね。
2枚目だか3枚目だかわからない。
ゲバラ役もはまりそうだな。
>Gさん
映画のなにが面白いか、ということですね。いろんな、鑑賞ポイントがありますからね。たとえば、男女で映画を見る場合、僕はあまり恋愛ものだと、なまなましくていやですね。ヒューマニズムや社会派路線か、この映画のような、お間抜けぶっとびを選びますね(笑)