目指せ!映画批評家

ネタバレしないで、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

テルマエロマエ ★★★★

2012-04-30 10:36:25 | ★★★★
テルマエロマエ

梅田のTOHOシネマズで鑑賞。これは面白かった。

まず、テルマエロマエは漫画原作でして現時点で単行本が四冊出てるものの未完の作品です。ローマ時代の大衆浴場テルマエを設計する技師ルシウスが来る日も来る日も風呂の設計で悩んでいて、風呂で溺れたら現代日本へタイムスリップしてしまい、最新のお風呂の技術や日本の奥ゆかしい入浴文化に触れてそれを取り入れてローマ時代のテルマエ作りに活かしていき天才技師として評価されていく、というお話。

漫画は四巻まで読みましたがこれは漫画自体がかなり面白く、目の付け所の勝利とも言えるような作品になっています。ローマを舞台にお風呂の技師が主役の作品なんて、そうそうにはないわけで。そもそも、こういう文化史っぽい作品にエンタメ要素を盛り込むのが難しい。説明過多になればつまらないし、説明がなさ過ぎても読者はついてゆけない。

タイムスリップして現代に迷い込んだ過去の人間が現代の技術に驚愕するお話というと最近だと「ちょんまげプリン」(小説原作)
とかもそういう内容でしたし、別段珍しいものではないのですが、タイムスリップするのが、過去の日本人ではなく、「過去の【ローマ人】が現代日本へタイムスリップしてくる点」と「タイムスリップするのがお風呂の技師であり、同じように【お風呂を愛してやまない日本】にやってくる、」という点が二重にひねりが効いていて非凡な作品だと感じるわけです。しかも、お風呂やローマの文化については単行本内でも注釈が付くような形の非常に親切な作り。日本人にはいまいち親しみが湧きづらいかもしれないローマの文化への心理的障壁の高さも融解させるようなつくりになっています。

この二重のひねりのおかげで、タイムスリップモノの定番である現代日本の高い技術に驚愕するというお決まりの展開にも二重に笑えるようになっているのです。ここが、テルマエロマエという漫画が持っている構造的強さ。ローマの文化に対する考察もしっかりやって、舞台装置となる、背景にも手を抜かないことが、より、この漫画の面白さを増大させてると言えるように思います。

ここまでが、漫画テルマエロマエの話。

では、映画としてはどうか、というと、この漫画が日本で実写映画化される場合、一番問題になるであろう、ルシウス役に阿部寛を持ってきた時点で予告編の引きはバッチリです。なんせ、ルシウスは作中で日本人のことを「平たい顔族」と呼ぶわけで、そんじょそこらの彫りの浅い俳優ではルシウス役はこなせないと思っていたのでこれはまさにベストな配役と言えるのではないでしょうか。彼と並ぶ彫りの深い人というと平井堅になるのでしょうが、彼は歌手ですしねえ。

次に私が心配していた点が言葉の問題です。漫画では全編日本語で展開するものの、ルシウスはラテン語を、日本人は日本語を話してることに「なっており」、その辺りは脳内補完しながら漫画を読み進めていくことになります。
これを映画化した場合、どういう風に演出するんだろう、ということです。「観客が物語世界に没入し易くするのにどういう手法を取るのか」、ということ。

まず、冒頭、ラテン語のテロップに日本語のナレーションと字幕。さらに、ルシウスたちの会話は日本語。周りはさすがのイタリアロケでチネチッタ借りて多くのエキストラにも出てもらったことで、完全に古代ローマの市井を再現してます。ここが結構すごいな〜と感心するところでして、日本映画のルックでいながら、ここのシーンは本当に洋画を観ているかのよう。並み居るエキストラに混ざっても存在感のある阿部寛のキャスティングの妙もあいまって、しっかりとしたカットに仕上がってます。んで、そこで残念な点というのが言語。こればっかりはセリフ数の都合もあるし、全編ラテン語というのはあまりにもハードル高過ぎるということで、おそらくは日本語での会話シーンとなっているのでしょう。ただ、そこがすごいミスマッチ。また、観客もずーっと日本語テロップを観続けるというのも日本映画の体では厳しいと考えたのかもしれないし、阿部寛のモノローグまで、全部ラテン語にするのか、という問題もある。結果的に、日本語での会話シーンとなり、日本にタイムスリップして来た場合にはルシウスのラテン語は理解してもらえず、日本人の日本語もルシウスは理解出来ない、という描写になっている。が、ルシウスは脳内思考では日本語で考えてる。ここが映像化されると非常にややこしいことになっていた。

さて、ここからはネタバレ入りますので未見の方は気を付けて!


そして、途中から上戸彩演じる漫画家志望の山越真実がラテン語をマスターし始めるところから、この映画の複雑さが増していく。ラテン語を勉強した真実はルシウスと会話することに成功するものの、なんと、真実までローマに迷い込んでしまう、超展開。しかも、真実の実家のお父さんやら従業員まで。

この真実が迷い込んでくるシーンからは全てが日本語で展開するシーンになっており、先ほどまではラテン語で意思疎通を図っていたのに皆、日本語になる。さりげなく、画面右上にバイリンガル、という字が出て思わず笑ってしまった。あー、こういう形で乗り越えてくるのね、と。ギャグ描写であっさり言語問題をクリアしてくるとは。正直、真面目にやるなら、ラテン語で延々と展開するというのが恐らくは正解なのだろう。キャストに余裕と学識があれば、それも良かったかもしれないが、TV局主導の日本公開前提のGW映画でそこまでの手間をかける事は出来なかったわけで、折衷案としてのこの展開だったのだろう。ここはラテン語で踏ん張って欲しい部分もあった。なにせ、後から来たラテン語を話せない真実のお父さん方はやはり日本語ではルシウスとは意思疎通が出来てなかったのだから。そこから考えると、かれらはラテン語を話せないから、ルシウスとは話せてない、という事になる。
ここは全て観客の脳内補完が求められており、ここはなかなかに複雑な展開と言えるだろう。

まあ、ハリウッド映画で古代モノやるときもみんな、現代のアメリカ英語話してるし、そこを責めることは中々難しいんだろうなー、と。むしろ、上戸彩や阿部寛はこの複雑な展開の中、ラテン語も一部は勉強したわけで、そこは良かったのではないかなあ、とも思う。別にこの映画の良さをスポイルするほどの問題だとは思わない。

まあ、ラスト近辺の「大儀であった」「ありがたき幸せ」の流れなんて、まさに時代劇のそれだし、セリフ回しも含めてローマ人の生活言語やら儀式言語体系なんてそこまでしらべて忠実に再現は出来ないんだから、どの点に妥協点を置くか、という話なのだと私は思います。エンタメ映画で目くじら立てるほどのことではない、と。

さて、この劇場版オリジナルキャラとしての漫画家志望の山越真実は中々にうまく構築されてる。多少無理のある設定ではあるにせよ、短いストーリーの連なりである原作にうまく絡めてあると思う。ただ、色んな役割を一身に背負わされてる割に、キャラとしてはもう一本芯が通った部分も欲しかったのも事実。ものづくりに文字通り命をかけるルシウスに影響されて、絵を書くことにもう一度可能性を見出す真実。ルシウスはルシウスで、平たい顔族に影響を受けてやはり協力することの大事さなどを学んではいくものの、その精神を活かしていくシーンが無かったのは少し残念。ただ、「異なるバックグラウンドを持つ両者が互いが互いの運命や生き様に共感して相互理解する」、というのはタイムスリップモノではどうしても必要な描写だったので、あの焚き火のシーンはなかなかに良かったと思います。

その後、皆が何事もなく現代日本へ帰れるのはあまりにご都合主義展開すぎるけど、まあ、もうそこはギャグだと思う他ないね。

真実は原作四巻に出てくるローマオタク美女の要素も多分に含んでおりながら、他の要素もじゃんじゃん詰め込まれてる良キャラで、上戸彩自身も悪くないのですが惜しむらくは、もう少し落ち着いたキャラが良かったかなーと。阿部寛演じるルシウスとのギャップが激し過ぎて…まあ、それもまた味と言えばそれまでなのですが…。ってか、ローマ人と日本人だから、あのくらいのギャップはもともと狙ってるのだ!とすればこれはお見事、なのかも。上戸彩は結構薄めの日本人顔なんだなー、ということがこの映画観てるとよくわかる笑。

神格化〜のくだりは真実がローマのお勉強をしてたからこそ、なのかもしれないが、神格化というのが、唐突過ぎてそこは説明セリフになり過ぎてて残念。もうちょっと前に神格化に関しての言及を皇帝にさせておけばよかったのに。ここは残念な点。

賛否あるタイムスリップ描写については私はアリだと思う。タイムスリップもまた、誰も経験したことがないし、そもそも、水のあるところから水のあるところへタイムスリップしていくシーンは殆どがギャグというか、ウケ狙いの部分であるので、ドラマパートとのギャップを緩和するためにも必要だったのではないか、と。適度な笑いが適度なタイミングで差し挟まれる、というのは結構劇場映画では大切なことで、エンターテイメントしてたなあ、と感心する。
トイレに人形が流されてく様は見てて笑える。人の運命なんて時にそんなレベルで流転するんだよなー、という。


色々語ってしまいましたが、総じて今の日本映画の中ではかなりレベルの高い映画化になっていたと良作であり、GWにもし一本映画を観にいくとしたら、私はこれをオススメしたいところです。(このクオリティの映画を原作なしのオリジナルストーリーでも出来たら最高なんですけどね)
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SPEC 天 ★★★

2012-04-24 16:47:22 | ★★★
SPEC 天

TBSの人気TVドラマの劇場版。ケイゾクと世界観を同じにしてあるそうですが、残念ながらケイゾクは未見です。TVシリーズとTVスペシャルは鑑賞しました。

SPECは超能力サスペンスモノなんですが、独特のユーモアセンスが織り交ぜられてる作品なので少し取っ付きにくい作品です。しかも、TVシリーズも最初から伏線が張られてるタイプの連作モノなので、一話から観ておきたい作品です。きちんと伏線は張っては小刻みには回収はしていくのですが、いつまで経っても途中でも更なる伏線をばら撒いていく作品でもあったので、終盤になると劇場版での続編展開は間違いないな、とは思ってました。

劇場版は当然これらのシリーズを全て観てきた人が最も楽しめる作品になっていますので、TVを観ずにこの映画を観るのはご法度です。さっぱり何のことかわかりません、たぶん。

好きな人には楽しい映画だし、そうじゃない人はわざわざ劇場には足を運ばないと思います。

私はTVシリーズをリアルタイムに観てて、再放送とTVスペシャルも観て万全の体制で臨みました。

ネタバレします!



TVシリーズでも終盤に大きな謎を複数残して終了しており、TVスペシャルではそのうちのいくつかは回収されます。

TVスペシャルの話もしなければこの劇場版の話は出来ません。

TVスペシャルでの展開は実は当麻もスペックホルダー(能力者のこと)で、しかも、「全ての死んだスペックホルダーの能力が使える」、というやたらとチートな能力でそのおかげでTVシリーズ最終話での絶体絶命のピンチから助かっていた、という展開でした。

TVシリーズから結構色んな超能力が登場してました。憑依する能力、物凄い筋力と脚力の能力者、衝撃波を発する能力者、未来を予知する能力者、自分の体感時間を早くすることで時を止めたかのように動ける能力者、人に病を処方する能力者、人の病を治す能力者、相手の動きを止める能力者、記憶を改ざんする能力者、
相手の思考を読む能力者。

こういった手強いスペックホルダーを当麻の持ち前の人並外れた推理力とバラバラの事実を組み合わせる考察力によって真相を掴む、というのが、TVシリーズの醍醐味でした。


TVスペシャルのラストには能力者の血を吸うことでスペック(超能力のこと)を手に入れることが出来る能力者が立ちはだかります。
(これ、わかる人にはわかるんですけど、海外の超能力ドラマの「HEROS」のサイラーと似てる能力なんですよね。)

ただ、結局、超能力対決では主人公、当麻が辛勝します。

で、TVスペシャル観てて感じたのは超能力対決はつまんない、ということ。しかも、どっちの超能力も万能過ぎたのがさらに良くなかった。何でもアリになってしまったことで、TVシリーズの醍醐味である、凡人がスペックホルダー(超能力者のこと)にあれこれと工夫して勝つというテーマが薄れてしまった。その懸念は作り手側にもあったのか、TVスペシャル終盤に主人公は超能力を封印し、
劇場版では主人公は一切、そのチートな超能力は使いませんでした。ここでの瀬文からのあくまで、スペックホルダーではなく、刑事として事件を解決すべきだ、という矜恃に触れ、能力と左手を封印するくだりはなかなか良かったように思う。(というか、この作品は瀬文が本当にいい味を出してて彼がいるから救われてる部分は大きい)

劇場版では、冷やす能力者には凍結防止オイル、一十一には電撃爆弾、という対抗策でスペックホルダーとの戦いに勝ちます。

それでも残念なことは、劇場版天のラスボスが一十一であること。しかも、オチがクローンという…そこまでやったら何でもアリやなーっていう展開。勝ち方はアレでもいいのですが、一十一とはTVシリーズでも戦ってるので少し新鮮味に欠けるんですよね。そこが最大の残念な点。まあ、時を止めるかのごとく能力というのはすごくチートなので、その能力者との戦いというのは面白いんですがね。(劇中、一十一と伊藤淳史の会話シーンではジョジョのDIO巻が大写しになっており、作り手側も十二分に意識してることが伺えます。)

個人的には瀬文というキャラクターは加瀬亮の新境地として非常に見応えのあるキャラクターだと思います。「それでも僕はやってない」あたりが代表作というのが大方のパブリックイメージだったのでは、と勝手に思っていますがこのSPECでのSAT仕込みの坊主頭の堅物刑事というのもなかなかにいいキャラでした。これでかなり加瀬亮の既成イメージは塗り替えられたように思います。
そういう意味では戸田恵梨香もこの映画では相当に際どい役どころで、特にラスト付近の餃子好きからくる口臭ネタなんかは旬の女優としては中々に際どい描写なのですが、それも難なくこなせてるところが、ライアーゲームやデスノートの頃とははっきりと違う印象を受けますよね。ただ、戸田恵梨香ってキャラ的にバリッバリのヒロインってあんまり無くて毎回少し癖のあるキャラクターを演じてて、少し薄幸な役柄を健気に生きてることが多いように思います。

SPECは独特の世界観と
台詞回し、キャラクター設定がすんなり受け入れられて能力者バトルモノが好きなら楽しめる作品とは思います。決して万人にはオススメ出来ませんが、ファンには嬉しい劇場版、是非ぜひ劇場で。

で、結はいつやるんですかね?
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バトルシップ ★★★★

2012-04-24 09:29:21 | ★★★★
バトル・シップ ★★★★

横浜ブルク13で鑑賞。
ユニバーサル100周年記念作品、ということでしたが、えらく笑わせてもらいました。いやー、これはイイですよ!
予告からはそこはかとなく、B級感が漂ってましたが最初から最後までそのテイストをスポイルすることなく、突き抜けてくれました。ツッコミどころはあまりにも多過ぎて突っ込んだら負けな作品です。これは

「宇宙人の戦艦と駆逐艦や戦艦が戦ったらどっちが強いのー?」

「そんなの、我らがアメリカ海軍が勝つに決まってるだろ!HAHAHAHA!」

ということを描くためだけの舞台立てです。

ここから少しネタバレします。未見の方で観たい方は早く映画館へ!




どうして宇宙人の戦艦が空を飛ばないのか、とかどうして宇宙人はろくに航空戦力を備えてないのか、とか、宇宙人、あまりに人型過ぎない?とか、宇宙人の攻撃判断が結構何気に紳士的だったりとか、あのグルグル回る車輪みたいなやつで最初から攻撃しとけよ、とか、地球の通信インフラ、そんなに簡単に使えるんだ!ケーブルの規格同じなの?とか、退役軍人さん、時間ないからアルマゲドンみたいにカッコつけてないで、早く降りてきて!とか、さまあーきゃんぷかーらーのー、眩しいっ!とか、宇宙人の船、防御力なさすぎ!とか、たまたま航空戦力を分断出来たけど、分断出来てなかったらあっという間に爆撃でアウトじゃん、とか、あれだけ頑丈な装甲服あるなら、速攻で白兵戦を挑めば宇宙人の勝ちだったんじゃない?とか、言い出したらキリがないのです!

そして、そんな穴だらけの設定も全ては駆逐艦やミズーリvs.宇宙人の戦艦をやりたかったから、に尽きますよね、多分。だから、戦艦だけで勝てない最後の展開はちょっとだけ残念。

それにしても大金と大規模なCGでよくここまでの作品を作り上げましたね〜これは愛すべきB級大作ですよ。

浅野忠信が美味しすぎます。この役柄でしかも見せ場が艦長としてもスナイピングでもあって、
ここまでフィーチャーされてるのは日本の観客は喜んでしまうんでしょうねえ。浅野忠信の英語もやたら流暢でした。激昂すると日本語になるのも面白かった。「あのバカ…」みたいな台詞回し、かなり好きでした。

浅野忠信演じるキャプテンナガタが途中で策を講じるシーンではまさに昔からある紙と鉛筆があれば出来る「潜水艦ゲーム」を現代のCG技術でやっちゃうわけなんですが、ここは非常に緊張感あるシークエンスで撃破するまで敵戦艦を映さないことで、クルーと同じ緊張感を観客に与えてる良い演出でした。そうそう、潜水艦ゲームの緊張感って命中するかどうかは推測とカン、っていう醍醐味がうまく演出されてました。

スナイピングシーンでの眩しい!
からの一斉攻撃やミズーリの急ストップからの一斉攻撃は非常にトリッキーなのですが、潜水艦ゲームの描写だけはまさに艦隊戦の醍醐味が活かされていて、ここが一番の見所かなあ、と思いました。

この映画、なんで宇宙人が攻めてくるの?とかも少しだけ語られますが描きたいのはそんなことではなくて、まさにバトルシップの勇壮な戦いっぷりを描きたかったことが窺い知れる作品になっています。まあ、確かに昨今の宇宙人モノって基本的に航空戦力か陸上戦力で雌雄を決してますものね。こういう限定された空間での限定された条件だからこその艦隊戦が現代のCG技術で観られるならそれはそれで面白いなあ、と思いました。
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マネーボール ★★★★

2012-04-09 20:23:05 | ★★★★
マネーボール
DVDで鑑賞。

(あらすじ)
ビリー・ビーンは、かつて超高校級選手としてニューヨーク・メッツから1巡目指名を受けたスター候補生だった。スカウトの言葉を信じ、名門スタンフォード大学の奨学生の権利を蹴ってプロの道を選んだビーンだったが、自身の性格も災いして泣かず飛ばずの日々を過ごし、さまざまな球団を転々とした挙句、引退。スカウトに転進し、第二の野球人生を歩み始める。2001年ポストシーズン、オークランド・アスレチックスはニューヨーク・ヤンキースの前に敗れ去った。オフには、スター選手であるジョニー・デイモン、ジェイソン・ジアンビ、ジェイソン・イズリングハウゼンの3選手のFAによる移籍が確定的。アスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)となっていたビーンは、2002年シーズンに向けて戦力を整えるべく補強資金を求めるも、スモールマーケットを本拠地とし、資金に余裕の無いオーナーの返事はつれない。ある日、トレード交渉のため、クリーブランド・インディアンズのオフィスを訪れたビーンは、イエール大学卒業のスタッフ、ピーター・ブランドに出会う。ブランドは各種統計から選手を客観的に評価するセイバーメトリクスを用いて、他のスカウトとは違う尺度で選手を評価していた。ブランドの理論に興味を抱いたビーンは、その理論をあまり公にできず肩身の狭い思いをしていた彼を自身の補佐として引き抜き、他球団からは評価されていない埋もれた戦力を発掘し低予算でチームを改革しようと試みる。
(以上 Wikipediaより)

この映画は抜群の安定感ですよ。面白かったです。実話だけに尚更面白い。マネーボールという統計学的アプローチ自体よりも、そこに可能性を見出して賭けに出るビリーとピーターの二人の挑戦、そして、飽くなき野球愛がこの映画の主なテーマになっています。
守旧派に散々こき下ろされてマネーボールと揶揄される二人のセイバーメトリックス的手法にばかり目が行きがちなところをこの二人の野球への愛と旧態依然とした野球界自体にその守旧派の手法の是非を問うという挑戦を描ききったのは素晴らしい。映画って、何がいいかって、一つの事実をどう料理しても映画として成立するのだけど、着眼点と描き方で同じ事実でも全く違った印象を与える、ということ。本来であれば古き良き時代のそれを懐かしむような映画になりがちですが、このお話の骨子はそこには無いのですから当然と言えば当然なのですが、古いものを打ち壊しつつ、そこに嫌味を感じさせないのは、ビリー自身が旧態依然としたスカウティングの犠牲者(と言うと言い過ぎですが)という側面を描いたからでしょう。実際に「これは復讐なのか?!そうなんだろう!?」というスカウトマンとのやり取りを敢えて描き入れることで、そして、ビリーにそれを否定させることで、いやらしさを感じないようにしてある。これは中々に丁寧な仕事ですよ。こういう場面を描き入れることで、絶妙にバランスを取って映画の描きたい方向性を微妙に調整してあるわけですから。
音楽の控えめな感じも好印象。

ブラッド・ピットもいい老け方してきましたよね。円熟味が増してるように思います。

それにしても、このマネーボール的アプローチは抜群の勝率をもたらすのに、ワールドシリーズのような短期決戦には向かない、と言う事実がまたこの映画の、そして、現実のバランス感を感じますよね。
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マイバックページ ★★★

2012-04-09 11:16:13 | ★★★
DVDで鑑賞。
映画の作り次第は結構好きな作り。こういう昭和の安保闘争やら学費闘争の学生運動の時代を切り取ろうとする映画はそれ自体は手法として、嫌いじゃない。三億円事件とか浅間山荘事件とか象徴的な事件っていろいろありますしね。最近だと沈まぬ太陽とかで描かれた日航機墜落事故とか。時代を彷彿とさせる事件事故とそこに翻弄され苦悩する働く大人たち。生き様が深く刻み込まれた形で描かれるし演技派の重厚な熱演が観られる事が多いし。
この映画の場合は松山ケンイチと妻夫木聡の熱演がそれにあたるわけですが…。
二人の演技は文句の付け所もないし、時代の描きこみもかなり好き。いい映画だと思います。
昭和の一時代を切り取った映画としては中々に佳作ではないかと思います。


ここからは雑感です。
でもね、私、こういう松山ケンイチ演じる片桐のやってたような学生運動には全くシンパシー感じないんです。
新聞社が経営する雑誌の記者の心の動きもよくわかる。これって若気の至りってやつですよね。そして、片桐が短絡的で虚言癖であることを見抜けず逮捕までされてしまって。一つの人の生き様として映画化までするには余りに薄っぺらい、人物なんですよね、二人とも。作者としては鑑賞者がそう感じたら成功なのかもしれませんが、それにしても、あんまりにも…。
学生運動に対しては私はアレルギーがあるんですよね。私の通っていた大学には2001年の段階でも学生運動の活動家が大学を根城にしてビラ貼ったり蒔いたり課外活動棟を占拠してたり、中々に時代錯誤な様を見ることが出来ました。カオスな感じがあってそれはそれで「これぞ、大学!」という感じもあって良かったのですが、大学で実際に課外活動団体を運営する立場になってからは本当に健全な課外活動の障害にしかなっていませんでした。コリクコ坂からのレビューの時にも書いてたようにカルチェラタンとは逆に改装の時に課外活動棟から運動家を追い出しました。
それにしても、本当に厄介な人たちでした。ところ構わず糊でビラ貼ったりするし、赤いヘルメットと角材はそこら中から出てくるし、いくつかの部屋にはダンボールに入ったアジビラだけで部屋が埋まるほどの部屋もいくつかあって。大学からの了承を取り付けて夜な夜な部屋を制圧してく様はそれはそれで、とても貴重な経験でした。写真やアジビラも目を通したりしてましたが、まあ、火炎瓶で革命的攻撃を行っただとか物騒なことが書いてあるのですが、そんなこと、一切ニュースにもなりやしないし、(敢えてニュースにしてない可能性はゼロじゃありませんが)本当にそんな物騒な活動してるのかも果たして怪しいものでした。いくつかの写真には大学が封鎖された時の写真なんかもあってあれはあれで中々に貴重な資料だったのかもしれませんが、気持ち悪くて全部捨てました。
学生運動なんてくだらないよ、何も変わらないし変えられないってみんなが白けていったのもわかる気がします。論理を突き詰めていって内ゲバやらなんやらにどんどん陥っていって。革命だなんて、そんな簡単に起きませんよ。しかも、当時の日本はまさに高度経済成長時代。誰も食うに困ってるわけでもなく、インテリ学生が革命家に憧れて無茶やってたってだけで。ほんと、はた迷惑な連中だと思います。何十年も経ってから後始末だけやらされた身としては学生運動なんかには一ミクロンもシンパシーなど感じないのです。

全く共感することは出来ないのだけど、胸がざわついた、という意味では観る価値はあったのかなあ、といった次第。
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シャーロック・ホームズ シャドウゲーム ★★★★

2012-03-13 20:58:12 | ★★★★
シャーロック・ホームズ シャドウゲーム

名古屋のミッドランドシネマで鑑賞。あそこはゆったりしてて、少しプレミアスクリーンっぽいから好き。名駅前アクセス最高だしね。

珍しく、一作目を観ずに続編から鑑賞しました。なーんとなく、この作品は一作目とははっきりと話が分かれてると確信してましたので。と思ったら今週末に一作目が地上波で放映されるんですね!知ってたらなあ…失敗した…。

ガイ・リッチー監督って2009年に公開された前作が最大のヒット作なんですね。二作目も大ヒットしており、ヒットメーカーの仲間入りですかね。彼の固定ファンも多いそうです。
ホームズを演じるロバート・ダウニーJr.は誰が言わずともアイアンマンでの飄々とした演技で一躍スターダムの仲間入り、その後もコメディやアクションなどでヒット作に恵まれてます。
ジュード・ロウも演技派で知られてますが私はガタカの彼が大好きです。

普通、シャーロック・ホームズを題材にすると推理ものになるのが常ですが、そのみんなの常識を思い切り覆し、19世紀末を舞台としたアクション大作にまとめたのは成功したポイントなのでしょう。別段、作品のノリとしてはバディムービーなので、ホームズである必要はないのですが、19世紀末という世相を最大限に活かした舞台設定、小道具、背景、などなどには目を見張るものがあります。世界大戦前夜にモーリアティ教授が暗躍するのをなんとかホームズが彼を止めようとするお話なのですが、これが非常に面白い。

ホームズとワトソンは潤沢な資金と周到な準備による度重なるモーリアティの妨害をかいくぐりながら、真相に迫っていくわけですが、随所で繰り広げられるアクションが非常に観ていて楽しい。ホームズはお茶目で、腕っぷしも強い。周りを振り回す変人なのですが、それに飽きれながらも巻き込まれて行く助手のワトソンという構図はバディモノとしてはよくできています。ホームズの部屋でワトソンに対していたずらを仕掛けるシーンも笑えるし、汽車でワトソン夫婦を助けにやってくるホームズの描写も笑える。笑いが随所に挟まれながら巧みな伏線を張り巡らして、巧妙かつ、並外れた洞察力をアクションに活かしていくホームズがある種、新境地なわけですが、これが楽しいんですよね。この軽妙なロバート・ダウニーJr.というのは、シネマハスラーでも以前言われていたようにアイアンマンでの「発明」ではあるのですが、彼はギャグもこなせる三枚目、という立ち位置を確立しましたねえ。(実際には超イケメンですが)日本で言うと大泉洋あたりのボジションなんですかね。まあ、ダウニーJr.の方がよほどの大物ではあるのですが。

シャドウゲームというのは、ダブルミーニングになっていまして、モーリアティが仕掛けた陰謀、そして、国際会議でホームズが仕掛けたチェスからの頭脳戦の両方をかけてるのだなあ、ということを映画終盤に感じました。ホームズの類稀な洞察力を表現するのに僅かな情報から周りの事象を推測する能力の描写は慣れないとちょっと嫌味なのですが、今作の終盤戦は本当によかったですね。やはり、戦いというのは圧勝よりも多少苦戦した方が面白いですね。

クライマックスから映画終盤の展開は私は良かったなあと思います。このキャストならもう一作くらい観たいなあ、とおもいます。

週末のデートムービーとしてはそこそこオススメです。
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神様のカルテ ★★★★

2012-03-07 22:38:08 | ★★★★
フィリピンからの帰りの飛行機で鑑賞。
すっかりレビューが遅くなってしまいました。

(以下あらすじ)
主人公・栗原一止(くりはらいちと)は、信州松本にある本庄病院に勤務する内科医である。彼が勤務している病院は、地域医療の一端を担うそれなりに規模の大きい病院。24時間365日などという看板を出しているせいで、3日寝ないことも日常茶飯事。自分が専門でない範囲の診療まで行うのも普通。そんな病院に勤める一止には最近、大学病院の医局から熱心な誘いがある。医局行きを勧める腐れ縁の友人・砂山次郎。自分も先端医療に興味がないわけではない。医局に行くか行かないかで一止の心は大きく揺れる。
そんな中、兼ねてから入院していた安曇さんという癌患者がいた。優しいおばあちゃんという感じで、看護師たちには人気者だが、彼女は「手遅れ」の患者だった。「手遅れ」の患者を拒否する大学病院。「手遅れ」であったとしても患者と向き合う地方病院。彼女の思いがけない贈り物により、一止は答えを出す。
(以上 wikipediaより)

松本市は仕事でよく行きますので、なかなかに親しみが持てる風景がロケ地に選ばれていて、観ていて楽しかったです。この作品の面白いところはやはり、主人公栗原一止のキャラクターとその彼が暮らしている御嶽荘とその面々とのやりとりでしょう。一止は夏目漱石ファンということで、夏目漱石の小説に出てくるような物言い。小説よりも映画で観るとこの感じは面白い。実際にいると、夏目しゃべりというのはうっとうしいんだなーというのがよくわかる。でも、こういうキャラ、嫌いじゃないなあ。
それにしても、奥さんの山岳写真家のハルとの掛け合いやゆったりとした、二人の生活は観ていて心が洗われるような思いでした。奇しくも「ツレがウツになりまして」の奥さんもハルなわけですが、同じ名前で同じ役者が演じていても本当にキャラクタは正反対ですよね。公開時期も似通っていたので、なかなかにこれは面白いですよね。

お話自体も心が温まるものでした。結構おすすめです。
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ツレがウツになりまして ★★★★

2012-03-07 22:34:09 | ★★★★
フィリピンに向かう機内で鑑賞。

宮崎あおいと堺雅人の「篤姫」コンビが送る原作は漫画の映画化。
原作漫画は未読です。

生真面目な性格の会社員だったツレ(堺雅人)がある日突然鬱になってしまい、それを支えていく妻のハルを宮崎あおいが好演しています。

それにしても宮崎あおいは出演作のチョイスが上手です。嫌な言い方になるかもしれませんが、彼女のセルフブランディングの上手さには舌を巻く思いです。芸能界という生き馬の目を抜くような入れ替わりの激しい業界できちんと自分の立ち位置を確保し、その時点で最善と言える選択を積み重ねて流行に乗りすぎず、ちょうどいいバランスで映画やCMに出ているように思います。誤解を恐れずに言えば、この作品でのハルというキャラもともすれば、家事の苦手なズボラな奥さん、というキャラになりかねないところをそう映らないように演じています。ほぼ同時期に神様のカルテが公開されてしまったのはちょっと残念だったかもしれませんが…。

堺雅人は毎回色んな映画で色んな役を上手にこなすなあ、と感心しますが、今回の役どころはどちらかというと、彼向きな役柄かもしれません。芸達者な彼の本領が発揮されたように思います。

それにしても、鬱という症状もしくは状態が世の中にここまで氾濫してしまっていても、やはりいまだに鬱への偏見というものは存在しますし、自分の肉親がそういう状態に追い込まれてしまった時にどこまで理解のあるサポートをできるか、というのは本当に悩ましいところです。単なる怠け者だ、と見なしてしまいがちだし、鬱は恥ずかしいことだと言って人に言えない、だなんて、こともよくありそうに思います。

レビューからは話題が逸れますが、鬱は比較的身近な話題です。私自身がそうだというわけではないのですが。そういう意味ではこの映画は非常に気付きや発見があったように思います。どう接することが、ダメなことで、どう接することが良いことなのか、というとはわかっていてもできていないものです。自分のこと、肉親のことなら尚更です。つい、きつく言ってしまったり、ほんの軽い気持ちで言った一言が命を断ちたくなるほど絶望に追いやることもある、ということ。そういう意味では現代病と言うカテゴリの中でもまだまだ、わからないことの多い病気なのだな、と思わされます。なんせ、頭や心の中の動きが、身体に変調を来すまでになってしまうわけですから。こればかりは本人でなければ辛さはわからないし、周りからは問題なさそうに見えるだけに怠けてるだけに見えてしまうというのも悩ましい問題だなあ、と感じるわけです。周囲の家族や職場の同僚の理解が必要だなあ、と痛感させられます。

そういう意味では追い詰められた生真面目なツレを更に追い詰めなかったハルはとても理想的な対応をした、と思います。現実には共働きでなければああいうツレが治療に専念出来る環境を用意してあげる対応は難しかったわけで、そこはやはり実際に同じことをしようと思っても難しい部分もあるかとは思いますが…。

病めるときも健やかなるときもこれを愛し、いたわり…という結婚式でよくある宣誓の言葉。パートナーがこういう深刻な病気にかかってしまうような時ほど、思い出して相手を支えてあげないといけないんだなあ、と思い知らされます。現実には難しいことかもしれませんが、相手の全てを受け入れ、お互いを尊重しあえれば、困難な局面も二人で乗り越えられるよね、となんだか、妙に納得させられるお話でした。

脇を固めるキャストも実力派が揃っており、安心して観られる良作だと、感じました。オススメです。
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TIME ★★★

2012-03-07 22:16:39 | ★★★
渋谷のtohoシネマズで鑑賞。

(あらすじ)
そう遠くない未来、遺伝子操作で年を取らなくなることが可能になった。人口過剰を防ぐため、時間が通貨となり、人々は自分の時間で日常品から贅沢品まで支払うこととなった。裕福な人、すなわち時間を十分に持っている人たちは永遠に生きることができるのだ。他の人は不死のために時間を得るために働き、時間銀行から利子付きで時間を借り、人によっては他の人から時間を奪い、生活していくのであった。左腕に光る時間表示が0になるとき、人は命を落とす。一秒一秒が無駄にできなくなった世界で、ある貧乏な男がひょんな事から117年もの時間を手に入れる。
(以上 wikipediaより)

私、この映画の監督のアンドリュー・ニコルは大好きでして、特にガタカは生涯ベスト級の作品なので、毎回毎回楽しみなんですよね。この人の関わっている作品って、錚々たる作品でして、ガタカ、トゥルーマン・ショー、シモーヌ、ターミナル、ロード・オブ・ウォー、などなど。シモーヌはやや際物色が強いですが、それでもガタカ、トゥルーマン・ショー、ターミナル、の3作品に関わっているというだけでもこの監督が非凡な才能を持って生まれた監督であることは疑いの余地がないのではないでしょうか。この監督、シモーヌの主演のレイチェル・ロバーツと結婚しているんですね・・・知らなかった。イヤー、本当にすごい人。私は好きな監督であり、映画人なわけです。

そんな彼が監督するわけなので、TIMEも期待しないわけがない!ということで観てきましたが、結果は・・まあ、どっちかというとシモーヌ寄りな作品だったかなあ。と。無念。ストーリーは好きな部類のSF設定だったのですが、いかんせん、このSF設定がちょっと大味すぎる。緻密な設定があってこそ、初めてSFってときめくのですが、このSF設定が曖昧だったりすると非常になんでもありになってしまって、つまらないものになってしまうんですよね。今回の作品でいうと、時間がお金の代わりになるという設定がSF設定になるわけですが、この時間がお金の代わりになる、という点がいろいろと取引や奪い合いの部分でいい加減な描写が目立ってしまい残念な結果になっていました。この監督の色彩感覚や映像表現も結構すきなんですけどね。スラムを赤茶けた色で表現しつつ、金持ちの住むタイムゾーンを青白く描いたり、とか。

ただ、やはり映画では物語が非常に重要でして、この物語がガタガタだと、受け入れられなくなってしまうわけです。いやー、こういう大味なSFも好きなんですけどね。。。



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ステキな金縛り ★★★★

2012-03-07 21:25:07 | ★★★★
香港からの帰りの飛行機で鑑賞しました。
あー、どうしてこの映画は映画館で観なかったんだろう。
とても楽しい映画でした。どうも私は三谷幸喜の映画に甘い点数をつける傾向にあるようです。
だって、楽しいんだもん。こういう演劇っぽいギャグの狙い方、私は大好きなんですよね。だから、前作の「ザ・マジックアワー」もとても楽しめたし、その前の「有頂天ホテル」も好きな映画です。大傑作、心に残る名作!とは言いませんが、クスリと笑える、そんなハッピーな時間を提供してくれる素敵な映画だなー、と感じました。

(あらすじ)
妻殺しの容疑で逮捕された矢部 五郎の弁護を担当する宝生エミは、将来性ゼロの三流弁護士。勝てる見込みのない裁判に矢部は「旅館で金縛りにあった」とアリバイを証言し無罪を主張する。矢部が泊まった旅館に赴いたエミは、矢部に金縛りをかけたという落ち武者・更科六兵衛を法廷につれて、矢部の無罪を証言してもらうことに。しかし、対する検事・小佐野徹はオカルトを真っ向から否定して、六兵衛の証言は法的に無効であると主張する。更には殺された鈴子の愛人、日野勉が陰陽師を雇って六兵衛を除霊しようとしていた。
(以上 wikipediaより)

今回はネタバレしますのでお気をつけ下さい!




まず、深津絵里はもうそろそろ40歳を迎えるのですが、まだ新人弁護士っぽさを演出するのに何の問題もない、というのが驚きですよね。この人って、老けないなー、とつくづく感心します。声のハリツヤとか変わって来てしまうような気がしますが、まだまだ大丈夫!って感じですよね。前作に続いて素敵な演技を披露してくれています。特に更科さんのまねをして、話すシーンや警察官に疑われないように一人芝居をするシーンなんかは最高です。

落ち武者の亡霊を演じた西田敏行もまた、今回もいいコメディアンっぷりでした。それにしても、落ち武者の役ってこれだけの大御所の西田さんにさせるというのもすごいし、引き受けるほうも引き受けるほう。まあ、釣りバカ日誌で鍛えられた西田さんには何の苦労もないのでしょうけど笑。

二人で歌っているエンディングテーマもなかなかに素晴らしいできでした。三谷幸喜映画で歌うのは深津絵里は二回目ですが、本当にこの人は歌手として活動してもおかしくないくらいステキな歌声の持ち主です。西田敏行もまた、素晴らしいバリトンを響かせています。

今作は脇役もまたことごとく豪華でして、阿部寛に小日向文世、中井貴一、竹内結子に山本耕史、浅野忠信、草なぎ剛、戸田恵子や生瀬勝久、深田恭子、篠原涼子、唐沢寿明、挙げればきりがないほどの豪華キャスト。まあ、キャストが豪華だからいい映画ということはなくて、いちいち豪華なキャストに少々、気が散るのですが苦笑。出来れば、そこまで豪華キャストで固めてほしくはなかったなあ、というのが正直なところ。なぜなら、この映画、結構本筋に絡めつつ、深津絵里のお父さんのお話を絡めてくるのですが、ここのところが本当に私にはツボでした。なので、そういうお話に集中させてくれたらよかったなあ、と本当に思ったのでした。どうも、

私は早くに母を亡くしているので、この深津絵里の演じるエミの父への気持ち、つまり「お父さんは、見守ってくれてなんかいやしない」という気持ちが痛いほどよくわかります。後半でエミは仕事を達成させてしまうことで、お父さんと直接出会うことは出来なくなってしまいますが、ハーモニカの音でお父さんと会話することに成功します。ここは結構涙なくして観られないくらいの展開なのですが・・。ただ、二度と出会えなくなってしまう悲哀を描くわけなので、本当であれば、もう少し阿部寛の扱いを考えてほしかったようにも思いますが・・・。

まあ、お涙ちょうだいもほどほどにコメディ色強いエンドロールを持ってくるあたりに喜劇作家としての三谷幸喜の面目躍如というところが出ているのかなあ、と。

楽しい映画でした。賛否両論ある監督ですが、私は大好きです。これからも映画も作っていってくれるといいなあ。
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J・エドガー ★★★

2012-03-07 21:14:05 | ★★★
香港へ向かう飛行機の中で鑑賞しました。
うーん、じっくり見ていましたが、傑作!とは思いませんでしたね・・。

(以下あらすじ)
1960年代。黒人公民権運動の盛り上がりを苦々しく思っていたFBI長官のジョン・エドガー・フーヴァーは、キング牧師宅の盗聴を命じると共に、自身の伝記をスミス捜査官に口述タイプさせる。
1919年。アメリカでは、ソビエト連邦の建国を受け、共産主義者や労働運動家の過激派によるテロが活発化しており、ついにはパーマー司法長官自宅が爆破される事態となった。これを受けて司法省は、過激派を逮捕し、国外追放する特別捜査チームを編成、24歳のフーヴァーがその責任者となる。無力な父親と支配的な母親のもとに育ち、吃音の内気な青年であるフーヴァーは、司法省の新人秘書ヘレン・ギャンディを国会図書館のデートに誘い、プロポーズするが断られてしまう。しかし、彼女を個人的な秘書にすることには成功した。
国会図書館の蔵書をインデックス化し、検索時間を飛躍的に向上させた経験から、フーヴァーは全国民の指紋などの個人データを集約し、犯罪捜査に利用する構想を持っていた。ただし、彼にとっては、彼の考える国家の道徳秩序を破壊し、破壊しようとする者もまた犯罪者であった。 わずか数人のフーヴァーのチームは、過激派のアジトを急襲、大勢の過激派を逮捕することに成功する。
(以上 wikipediaより。)


ディカプリオは今回はフーヴァーを演じたわけですが、日本人にはまず、フーヴァー長官があまりなじみがないですよね。アメリカでは有名人だと思いますが。なじみが無いから面白くない、とは言わないのですが、どうもフーヴァー自身、感情移入を拒むようなタイプの共感しづらい人生を生きているために、どうしてもお話にも感情移入がしづらかったように思います。ディカプリオ自身の演技は素晴らしく、若いときも年老いた後も素晴らしい役を演じているように感じましたが、それ以上のものは感じられなかったように思います。



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ドラゴン・タトゥーの女 ★★★★

2012-02-12 12:09:52 | ★★★★
ドラゴン・タトゥーの女、渋谷のTOHOシネマズで鑑賞してきました。
これは素晴らしい映画でした。

(あらすじ)
スティーグ・ラーソンの世界的ベストセラーを映画化したスウェーデン映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(2009)を、「セブン」「ソーシャル・ネットワーク」のデビッド・フィンチャー監督がハリウッドリメイクしたミステリーサスペンス。
経済誌「ミレニアム」の発行責任者で経済ジャーナリストのミカエルは、資産家のヘンリック・バンゲルから40年前に起こった少女ハリエットの失踪事件の真相追究を依頼される。ミカエルは、背中にドラゴンのタトゥをした天才ハッカーのリスベットとともに捜査を進めていくが、その中でバンゲル家に隠された闇に迫っていく。主演はダニエル・クレイグ。リスベット役は、スカーレット・ヨハンソンやナタリー・ポートマンら名だたる女優が名乗りを上げたが、数百人のオーディションで前作「ソーシャル・ネットワーク」でも起用したマーラを起用したとのこと。ルーニー・マーラは26歳。

(以上、映画.comより)

というか、この作品はまず、予告編で非常に引きつけられる予告編でして、これまでの予告編の中でも一二を争う、どきどきさせられる予告編なわけですよ。ツェッペリンの「移民の歌」をトレント・レズナーがカバーしたバージョンが予告編、そして、本編のオープニングには使われていまして、カットが曲の拍に合わせて次々と切り替わっていく様は否が応でもその先を観たい、と思わせることに成功しています。非常にシンプルでいて、緻密な映像美。特にオープニングは素晴らしい映像美でして、引きつけられること間違いなし。

私は全然知らなかったのですが、この「ドラゴン・タトゥーの女」の原作小説は3部作になっており、全世界で類型6500万部(桁違い!)の売り上げを誇っていて、しかもこれが原作作者の処女作でありながら、最後の作品になっている、ということ。なんと、この人のお話、もう続きも何も観られない、んですね。なんとも残念。

脚本を担当しているのは、「シンドラーのリスト」(1997)でアカデミー賞脚本賞を受賞し、昨年の「マネーボール」などでも知られるスティーブン・ザイリアン。フィンチャー監督は彼の脚本に惹かれてハリウッドリメイク時の監督を応じたという。

主演のダニエル・クレイグは007シリーズでの好演が続いているわけですが、彼の選んだジャーナリスト役はなかなかのハマり役でした。彼は不思議と007以外の作品で出ても007のイメージを引きずっていないですよね。これは結構簡単なようでいて難しいことだろうな、と最近本当に思います。次回作「007スカイフォール」も楽しみ!

撮影場所はスウェーデン。これは作品と同じ舞台を選んでおり、フィンチャー監督はあえてスウェーデンでの撮影にこだわった理由を「天候に左右されることも多かったが、独特な環境がキャラクターに及ぼす影響を外すわけにはいかなかった。現地ならではの利点? 現場に大量の雪があったよ(笑)」と説明した、とのこと。確かに凄まじく寒そうな映像でしたけど、実際に役者たちも寒かったんですね・・・。

この作品は前述したように既にスウェーデンでは一度映画化されているし、原作小説は大ヒットしているし、で粗筋はみんな知っている、というタイプの映画なわけですが、フィンチャー監督の独特の映像感覚なども相まって観る価値の高い映画が出来上がったんじゃないかな、と思います。日本公開時のタイトルから「ミレニアム」を抜いたのも正解だったと思います。

この映画、基本はサスペンスなのですが、暴力的・性的表現もそこそこに存在したりして、どぎついモザイクシーンなども登場するため、「ここまでする必要あるの!?」と感じる部分もそこそこにありました。特に、ダニエル・クレイグ演じるジャーナリスト・ミカエルの物語、として観るとリスベットのパートが極端に振り切れたものに映ります。ただ、実際にはこのお話は3部作のうちの1作品で、主役はミカエルであり、リスベットなのだと理解してからは非常にすんなりと物語表現を受け入れることが出来ました。

2時間半の上映時間の中で、随所にしっかりと伏線が張り巡らされていて、気づく人は途中で気づくようになっていて、きちんとサスペンスになっているのは非常に好印象です。リスベットがとにかくかっこいいしね。バイクの疾走シーンは1週間以上かけて撮影したそうですが、その苦労の甲斐あって、非常にイカすバイクシーンになっていたかと思います。ただ、走っているだけなんですけどね。
音楽が延々と流れているのも特徴的でした。この手のサスペンスでは意外とも言えるほど音楽が流れていたように思います。そのあたりはフィンチャーがPVの監督だったことも大きく影響してそう。

うーん、続きが観たいぞ、このキャスト・スタッフで!原作が3部作なので当然、続編への期待も高まるところですが、フィンチャー監督は条件が合って、なおかつ、本作品がヒットすれば、と言っているので、ぜひともこの作品が大ヒットすることを祈っています。


あんまりネタバレしても面白くないので今回はこんな感じで。ぜひとも映画館で楽しんでください★

参考url
http://eiga.com/news/20120131/7/
http://eiga.com/extra/konishi/169/
http://eiga.com/movie/56065/interview/
http://eiga.com/movie/56065/interview/2/
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イップ・マン 序章 ★★★★★

2012-02-12 10:39:34 | ★★★★★
やっとDVDで観られました。ずーっとレンタル中でなかなか観られなかったのです。
カンフー映画の傑作がまた一つ生まれた、ということですね。


イップ・マン(葉問)は実在する人物です。ブルース・リー(李小龍)の師匠としてその世界では有名な方のようです。数百万人がマスターした詠春拳の中興の祖とでも言えばいいのでしょうか。ドニー・イェンが演じており、非常にすばらしい演技を披露しています。彼が体得した詠春拳の型もさることながら、そのたたずまいは相当にイップ・マンという実在する人物をトレースしており、優雅かつ、誠実な彼を演じています。タバコやお茶を飲む姿は相当に研究したのだろうな、と感じさせるものがありました。

日本でも「五福星」などの作品で有名なサモ・ハン・キンポーがアクション指導で参加しており、数々の名シーン、名バウトを構築しています。

音楽は川井憲次が担当しています。ここ最近の川井憲次はその作風は変わらないにせよ、確実に自分の音楽の立ち位置を理解した作品への参加の仕方が目立つように思います。彼の音楽がカンフー映画にもぴったり合うことを発見した監督は素晴らしいですね。


ここからはネタバレ注意です。

序章では、中国の南方・彿山に住む孤高の武道家、詠春拳の使い手としてのイップ・マンが日中戦争時の日本軍による占領下でのやり取りが描かれます。イップ・マンは妻子のある身ですが、どうやら資産家の息子だったようで、豪奢な家に住み、特にこれといった定職にはつかずに友達の事業に投資してあげたりして、暮らしていました。ときたまやってくる来客はみな、武館街(道場街みたいなものですね)の若者や師匠連中で毎日、誰が強いだの、誰が弱いだの、カンフーを教え合ったりしていた。イップ・マンの強さは圧倒的で、それでいて弟子は取らず、周辺の武館の師匠からも、街の人たちからも深く尊敬されていました。でも、それは彼自身が強さに驕らず、常に謙虚で本当に必要な時にしか、その拳を振るわないから、でした。詠春拳は攻防一体、流れる流水のように優美な構えでして、相手の打撃をきれいに受け流し、そして、的確に相手を打ち、倒します。あるとき、道場破りが現れて彿山の武館街の師匠は次々と北派武術の達人であるチョウの道場破りに敗北します。サイモン・ヤムが演じるチョウもなかなか、素晴らしい立ち姿で荒々しい雰囲気が出ており、イップ・マンとの直接対決によって、敗北を悟ると、彿山から逃げ出します。イップ・マンの屋敷でのチョウとの対決はなかなかに見応えがありました。チョウの怒濤の攻撃で、武館街の師匠たちは軒並み敗北したのに、詠春拳の前には何一つ通用しなかったのです。最後は剣まで取り出して、倒そうとするのですが、ハタキにはたかれてチョウは完膚なきまでに敗北します。実際には武器を手に持った相手に勝つには「剣道三倍段」などとも言いますからよほどの実力の差がなければ、そういう圧倒的な試合展開にはならないわけで、この作品ではイップマンは始終圧倒的な強さを誇ります。

日本軍による占領時代になると、イップマンの屋敷は接収されて、極貧生活を強いられるようになり、生まれて初めてまともに肉体労働したりして、なんとか飢えをしのぎながら、妻子とともに耐え忍ぶ生活が続きます。その中で友人が日本軍人との手合わせで死ぬという凄惨な事件がおこります。それを知ったイップマンは確かめに日本軍人たちの道場へ向かいます。当時は占領下、中国人には日本人を糾弾する術は無いに等しかったわけです。その道場では、中国人の武道家をつれて来ては日本軍人と対決させて、勝てば米をもらえる、というシステムで組み手をさせていました。日本軍人は空手をマスターしており、簡単には勝つことが出来ません。その道場でかつての武館街での師匠仲間が一人、イップ・マンの目の前で銃殺されてしまいます。怒りに燃えるイップ・マンはその道場で10人と同時に対決して、勝利を収めます。怒りに震えるイップマンの拳は少し悲哀も感じさせました。本来は怒りに任せた拳は振るうべきではなく、何事も和を尊び、話し合いで解決したい、というイップ・マンの気持ち、生き方を踏みにじるような相手には遠慮などないということでしょう。

彼に目を付けた日本軍人 三浦はイップ・マンを探そうと必死になります。

その一方、友人である周は綿花工場を営んでいましたが、その彼の綿花工場を生活に困ったチョウの一味が襲撃します。イップマンは彼らを守るため、そして、彼らが彼ら自身で戦えるようにするために初めて詠春拳を人に教え始めます。チョウの一味の2度目の来襲に対して、イップ・マンも助太刀し、チョウの一味をすべて倒すことに成功します。このシーンでのチョウに対峙するイップ・マンの長い竹の棒(物干し竿?)での戦いは見物です。カンフー映画ではよく、手近にあるものを武器にして戦うことがありますが、イップ・マンが手に取る得物がいずれもハタキや物干竿だったりして、それでいて、相手が手も足もでないほど打ち据えることができるところが非常に面白い。
チョウの一味にかつての友人の弟がいることを見つけ、彼に生き方を自分で選ぶことを諭すシーンはこの映画の中でもかなり良いシーンになるのではないでしょうか。

三浦にとうとう見つけられてしまったイップ・マンは三浦と直接対決をすることを選びます。

三浦を演じるのが池内博之です。この人選もなかなか意外でした。日本公開は香港公開の3年後ですから、池内博之もなかなかヤキモキしたかもしれませんね。川井憲次といい、日本でも売れている人がアサインされている映画なのだから、もっと早く日本で公開されてもよかったのになあ。。。

三浦は空手の達人で、腕に自信があり、「日中文化交流のため」大衆の面前での対決を望みます。そして、直接対決ではイップ・マンに鋭い攻撃を放ち、何度か彼を打ち据えることに成功します。(この作品では、イップ・マンはほとんど攻撃を受けておらず、唯一、三浦の攻撃だけはクリーンヒットしています)ただ、イップマンの日頃の鍛錬の成果は確実に三浦を捉え、彼を最後は徹底的に打ち据えて試合はイップ・マンの勝利に終わります。そして、イップ・マンは日本軍人に殺されかけますが、友人の助けを借りて脱出することに成功します。

実際、現代でも葉問派詠春拳は世界的には人気な中国武術であり、ブルース・リーの影響もあって、習得を希望する人が多いそうですが、残念ながらこの日本軍占領下のことがあってからか、詠春拳は日本人には教えてはならない、というイップ・マンの教えが伝達されており、香港でもなかなか習得できないそうです。元々詠春拳自体が習得が困難なことも相まって本当に詠春拳をマスターした日本人は少ないそうです。この映画で描かれている内容がどこまで事実かは正直わかりませんが、それでも日本軍人、日本のしたことを許したくない、というイップ・マンの強い感情が根強く伝えられていることは間違いがなさそうです。

この映画の作劇(抑圧からの反抗)はブルース・リー映画のそれと非常に近しいものがあるわけですが、それは彼がブルース・リーの師匠であった事実と十分に関係している、といっていいのでしょう。中国には英国や日本に侵略された記憶があるからこそ、こういった外圧・抑圧への抵抗という図式での作劇が非常に効果的に作劇に作用するという典型的な作品だと言えるでしょう。日本ではアメリカの占領という事実を前向きにアメリカに従順するとい形で昇華して経済成長を遂げただけに、このアメリカへの反抗という感情を爆発させる映画はあまり多く観られないように思います。米国の映画においてもそれは同様だと思います。(米国には西部劇という伝統的な様式美がありますが、あれはまたちょっとまた違いますよね、下手すると迫害の主体だったりするし。SF映画などではよく米国本土は侵略されていますが、相手が具体的な国籍を持った人間ではない、ことがポイントです。)映画はそれが制作される時代背景や、描かれる時代、公開される場所によって色々な類型的な特徴を持つことになりますが、このイップ・マンではそのことを非常に考えさせられましたね。

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海賊戦隊ゴーカイジャーvs宇宙刑事ギャバン ★★★

2012-01-21 18:39:07 | ★★★
海賊戦隊ゴーカイジャーvs宇宙刑事ギャバン ★★★

結論から言うとTVシリーズの中のちょっと豪華な一話という印象。ゴーカイジャーはこれまでの戦隊モノと比べても非常に「よくできた」回が多いシリーズで、これからいよいよクライマックスに向かっていく作品で残すところ一ヶ月くらいの放映期間なわけですが、そんな佳境における閑話休題といった印象です。前回の映画もTVシリーズと繋がっていたし、今回もTVとはある程度連続性のある話と考えて差し支えないでしょう。
特筆すべき点はひとえにギャバンがオリジナルキャストで変身する、という部分です。大葉健二演じる一乗寺烈がそのまま、30年の時の流れを顔に刻みつけつつ、身体的には当時を彷彿とさせるアクションを披露できたのは本人がJACの出身だったから、という点以上に恐らくはご本人のたゆまぬ努力がそうさせたのだと思います。素面アクションが思いの外、多く、その点でも往年のファンは非常に満足されたのではないでしょうか。ご本人はバトルフィーバーJやデンジマンではスーツアクターもやっていたそうなので、納得と言えば納得です。四国でイベント会社を経営してる社長だそうで、ほんとにヒーローを大事にしてるんだろうなあ、という感慨にふけるばかりです。
また、当時は特撮で描かれていたドルギランや電子星獣ドルなどもCGで復活しており、派手なアクションが冒頭から展開します。
さらにギャバンについても相当スーツアクターの方も当時の動きを研究したそうで、これまでのライダーや戦隊モノにはない宇宙刑事独特の動きを見事に演じ分けていたように思います。最新のCGで蒸着やらレーザーブレードでのギャバンダイナミックが観られるのも嬉しいところです。

お話としては、それほど複雑な話でもなく、宇宙刑事ギャバンとゴーカイジャーとの戦い、ゴーカイジャーを餌にしてギャバンが宇宙警察にはびこるザンギャックのあぶり出しに成功する、ギャバンがマクー空間のマクー監獄に捕まる、ギャバンを助けるためにゴーカイジャーが立ち上がる、助けて一件落着という筋だてに、

・実はマーベラスは昔、ギャバンに命を助けられていた。
・バスコの暗躍を次期スーパー戦隊のゴーバスターズが止める
・マクー監獄には過去の悪役たちが投獄されていた

という展開が挟まるくらいでして、非常にオーソドックスな作劇でした。

ちゃんと
・デカレンジャーが海賊戦隊の無実を証明済み、であることや
・ギャバンの主題歌は歌ありで流れること、
・蒸着の際のナレーションをパロったゴーカイジャーの変身ナレーション
・ギャバンには大いなる力、無くてよかったなあーとか、
・大葉さんのデンジブルー、バトルケニアとの演じ分け!同時出演、同時変身も観られます。(こっちはギャバン、シャリバン、シャイダーの三人変身揃い踏みのように天の声まで聞こえてくる)

細かいところにも手が届いてるあたりはさすが、ゴーカイジャーは平均点の高い仕事をするなあ、という印象。

ただ、惜しむらくはあまり作劇上の冒険というか、飛躍がなかったことでしょうか。いっそのこと、デカレンジャーあたりも再登場させたり、宇宙刑事の世界観をもう少し堪能させて欲しかったなあ、というようには思います。まあ、それをやってしまうとお話がとっ散らかってギャバンとマーベラスの心の交流が描けない、という意味では今回の展開は悪くなかったのかなあ、と。

そういう意味で、ゴーカイジャーにおけるレベルの高い先輩ゲスト回として考えればいいのかなあ、と。

二つ気になったのは、中の人が同じ顔という理由だけでマクー空間の鍵になるレンジャーキーって!?という点とゴーカイジャー、最初あっさりとギャバン置いて行きすぎじゃない?ザンギャック目の前にして…ということくらい。

映画館で大葉さんのアクションが楽しめたのは嬉しかったしギャバンが観れたのも嬉しいんだけど、作劇としてはあと一つ何か押しが欲しかったなあ、と感じました。でも、これをきっかけに宇宙刑事シリーズがTVシリーズでも復活して欲しいなあ、と密かに期待しています。
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ミッション・インポッシブル ゴーストプロトコル ★★★★

2012-01-09 18:18:03 | ★★★★
ミッション・インポッシブル ゴーストプロトコル

渋谷TOHOシネマズで鑑賞。めちゃ楽しかった。2011年公開映画ランキングに確実に入れただろう、文句なしの仕上がり。個人的にはTOP3に入る出来でした。
四作目にして安定感抜群の仕上がり。やっぱり、スパイモノはこうでなくては、という好例になっていたと思います。シリアスな中にも笑いあり、涙あり、といった感じ。
トム・クルーズ自身も47歳になっており、こういったアクションをいつまで撮れるのやら。
ストーリーはロシアの核ミサイル発射コードが悪玉に奪われてしまい、それを取り返すべくIMFからの支援も得られず、孤立無援のイーサン・ハントのチームがドバイにムンバイに飛び回るというお話。

今回の映画のメインの舞台はドバイの世界一の高さを誇るホテル、ブルジュ・ハリファなのですが、このシーン以外も結構たっぷりあるんですよね。序盤はロシア クレムリンですし。終盤はインド・ムンバイも舞台になっており、ここのパートもかなり長い。
ただ、長さを感じさせない素晴らしい出来になっています。
スパイアクションって語るべきストーリーよりは恒例のスパイアクションを楽しむ映画ですよね。詳しくは観て欲しいところですが、やはりドバイのビル登りシーンは面白かった。砂嵐などを効果的に物語に組み込んでいるのも好印象。
あと、意外とムンバイのシーンで分析官の彼が磁力スーツで活躍するところも面白かった。本来であればイーサンがやりそうなシーンですが、彼が司令塔になって指揮するところにもやはり四作目の工夫が見てとれました。
あと、ロシアのパートでのチームメンバーとの共同潜入などなど、これまでのシリーズではやっていなかったことをきちんと描いてます。ちょっと、ゲットスマート的な要素も感じました。敢えてスパイアクションを茶化すような…。網膜認証に拘りすぎなIMF、とか(笑)

あと、中盤からの奥さんのエピソードがここまで盛り込まれるとは意外。3とは密接に繋がってるんですね。基本的に前作のエピソードを引き継がない単発モノでイーサンとルーサーだけがレギュラーのシリーズという認識でしたが、3は観ておいたほうがより楽しめるとおもいます。
まだまだ公開されてるようですから是非とも劇場で鑑賞ください!
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