もう、四十年以上前になるかなぁ~。
大学受験に失敗して浪人生活を送っていた彼が、ぶらりと我が家に来たのは。
たった一度の試験だけで大学に入ってしまった多くの同窓たちは、
暑い夏を、それぞれの青春を過ごし、旅先からのはがきが何通も届いた。
浪人生活を送っていた彼は、それでもまるまる一年余分に勉強ができる、
などと精一杯の強がりを書いて寄越した。
高校卒業からわずか半年、それぞれの進んでいる道の違いを感じながら、
私はその一年前の夏に初めて訪れたことのある、彼の家を訪問した。
何度もそこに集まって、クラシック好きの仲間たちといっぱしの評論家気取りで、
ブルックナーやマーラーの大作を聞き、
時にはワーグナーの「指輪」を少しずつ聴き繋いだ懐かしい場所。
今年も、収玄寺の庭で同じタチアオイを撮らせて頂きながら、
青春真っ只中、今でも鮮烈に浮かんでくる、何時間もワーグナーを聴いていた彼の家の周囲に咲き乱れていたタチアオイを思い出している。
「見てみろよ、タチアオイが今年も元気だよ。負けてないねぇ~、この暑さだけど、見てると元気を貰える。俺も負けてはいられないよ。」
そう言った、彼の元気を思い出している。
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