五十年前にタイムスリップでもしたかのような奇妙な景色だった。
弟の施餓鬼会を済ませ、幾つかの墓所の掃除を済ませ、幾つかの霊前に線香上げ、今年のお盆は、何十年ぶりに仏事に浸りきっていた。
懐かしい話を、それぞれの場所で聞き、話したせいだろうか。
新明町から田町を抜けて、中学校の辺りまでぶらぶらと歩いていた時、崩れたままになっているレンガ塀と、荒れたままになっている空き地に、この花が咲いていた。秋色になりかけているエノコログサが、いっそう荒れ果てた雰囲気を醸し出していた。
こんな景色が、五十年前はごく普通だった。
わずか二、三坪の場所だけが、その名残を残している奇妙な空間だった。
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