
あれから四十九日・・
思えば、いつも一緒だった。
私は毎日ビールを飲む。
晴れの日も雨の日も、
真夏のうだるような暑い日は絶対、
外には粉雪しんしん寒い日も、これはこれで絶対飲む。
元気なときには300%、熱にうなされながらも毎日休まずに飲んだ。
子供もの頃から、両親に「お前は三日坊主だもんな」そう言われ続けていた。
だから、ああ、自分は三日坊主なんだと小さく自負していた。
他に大して自慢できることはないが、これは大いに自慢できる。
(三日坊主が自慢なのか?自慢できることがないのが自慢なのか?それとも、休まずビールを飲み続けたのが自慢なのか分からない・・。)
毎日、その日に飲むビールを2缶だけ近所の酒屋さんへ買いに行く。
420円だけしっかり握り締め。それが最近では360円で済む。「ビール」とラベルが貼ってあればなんでもいい。
アサヒだ、キリンだ、サッポロだ、メーカーだってどこでもいい。
シェアー競争に加担したくもない。
ただただ冷えた「ビール」が飲みたいだけなのだ。
だから安いのはありがたい。
そういった意味ではシェアー競争は、ん、これもありがたい。
なぜ、わざわざ毎日買いにいくのか。
安いだけならディスカウントショップが明らかに安い。
しかし買わない。買ったことがない。
それは、グレースがいたからである。
雌のゴールデンレトリバー。
私の家にきてから11年が過ぎた。
11年前、車で1時間くらいの町へ会いに行った。
産まれてまだ三ヶ月だった。丸々と太っていた。
でも可愛いというよりブスだなあ。
そんな印象を持った。
車の中ではひざの上でじっとしていた。
家について一日目は「クンクン」と泣いていた。
やはりお母さんのおっぱいが欲しいのかなあ。
下痢をした。血便もした。
やっぱり無理だったかなあ、可愛そうになった。
そんなグレースが、あっと言う間に大きくなった。
最初の散歩。怖がるグレースを無理に引っ張った。
コンクリートの上に赤いものが付いた。
血だった。踏ん張るグレースを無理矢理に引いたので、足の裏の皮が剥げたのだ。
グレースに謝ることがあるとすれば、このことだけだ。
ごめんね。痛かったね。ごめんね。
実に頭のいい子だった。
おすわり、待ては一度か二度で覚えた。
まるで人間の子供と話をしているように色んなことを理解した。
だから楽しかったし、とても面白かった。
散歩も楽だった。
ロープ無しで、いつも横に付いていた。
愛していたが、愛されているのがよく分かった。
私が出かけようかすると、なんとも寂しそうな目が後を追う。
時には「クウ~ン・クウ~ン」といかにも悲しそうな声で鳴いた。
いつの間にか、グレースとの散歩の帰りにビールを買うようになっていた。
頭のいい子だったので「ビール」という言葉もすぐに覚えた。
夕方になり「ビール買いに行こうかなあ」と囁くように独り言をいうだけで尻尾をビュンビュンと振って喜んだ。
こうして、雨の日も、雪の日もグレースと一緒に酒屋さんへビールを2缶買いに行った。
そうして11年が過ぎた。
ある日グレースを触っていたら、胸にしこりがあった。
あれっと思っている間に大きくなった。
病院へ連れて行った。
ガンだった。
いつものように「グレース、仕事に行ってくるね」と言ったが、その日は顔も上げない、顔をうずめてじっとしていた。
元気ないなと思いながら出かけた。
それが生きているグレースを見た最後だった。
私の誕生日の二日前だった。
悲しかった。どうしようもなく悲しかった。
そおっと、何度も何度も撫でた。
グレースのご飯と、水と、それに線香を供えた。
毛布をかぶせてあげた。
次の日火葬して納骨をした。
あれから、いつもの酒屋さんへは 缶ビールを買いに行けなくなった。
田口 圭二
思えば、いつも一緒だった。
私は毎日ビールを飲む。
晴れの日も雨の日も、
真夏のうだるような暑い日は絶対、
外には粉雪しんしん寒い日も、これはこれで絶対飲む。
元気なときには300%、熱にうなされながらも毎日休まずに飲んだ。
子供もの頃から、両親に「お前は三日坊主だもんな」そう言われ続けていた。
だから、ああ、自分は三日坊主なんだと小さく自負していた。
他に大して自慢できることはないが、これは大いに自慢できる。
(三日坊主が自慢なのか?自慢できることがないのが自慢なのか?それとも、休まずビールを飲み続けたのが自慢なのか分からない・・。)
毎日、その日に飲むビールを2缶だけ近所の酒屋さんへ買いに行く。
420円だけしっかり握り締め。それが最近では360円で済む。「ビール」とラベルが貼ってあればなんでもいい。
アサヒだ、キリンだ、サッポロだ、メーカーだってどこでもいい。
シェアー競争に加担したくもない。
ただただ冷えた「ビール」が飲みたいだけなのだ。
だから安いのはありがたい。
そういった意味ではシェアー競争は、ん、これもありがたい。
なぜ、わざわざ毎日買いにいくのか。
安いだけならディスカウントショップが明らかに安い。
しかし買わない。買ったことがない。
それは、グレースがいたからである。
雌のゴールデンレトリバー。
私の家にきてから11年が過ぎた。
11年前、車で1時間くらいの町へ会いに行った。
産まれてまだ三ヶ月だった。丸々と太っていた。
でも可愛いというよりブスだなあ。
そんな印象を持った。
車の中ではひざの上でじっとしていた。
家について一日目は「クンクン」と泣いていた。
やはりお母さんのおっぱいが欲しいのかなあ。
下痢をした。血便もした。
やっぱり無理だったかなあ、可愛そうになった。
そんなグレースが、あっと言う間に大きくなった。
最初の散歩。怖がるグレースを無理に引っ張った。
コンクリートの上に赤いものが付いた。
血だった。踏ん張るグレースを無理矢理に引いたので、足の裏の皮が剥げたのだ。
グレースに謝ることがあるとすれば、このことだけだ。
ごめんね。痛かったね。ごめんね。
実に頭のいい子だった。
おすわり、待ては一度か二度で覚えた。
まるで人間の子供と話をしているように色んなことを理解した。
だから楽しかったし、とても面白かった。
散歩も楽だった。
ロープ無しで、いつも横に付いていた。
愛していたが、愛されているのがよく分かった。
私が出かけようかすると、なんとも寂しそうな目が後を追う。
時には「クウ~ン・クウ~ン」といかにも悲しそうな声で鳴いた。
いつの間にか、グレースとの散歩の帰りにビールを買うようになっていた。
頭のいい子だったので「ビール」という言葉もすぐに覚えた。
夕方になり「ビール買いに行こうかなあ」と囁くように独り言をいうだけで尻尾をビュンビュンと振って喜んだ。
こうして、雨の日も、雪の日もグレースと一緒に酒屋さんへビールを2缶買いに行った。
そうして11年が過ぎた。
ある日グレースを触っていたら、胸にしこりがあった。
あれっと思っている間に大きくなった。
病院へ連れて行った。
ガンだった。
いつものように「グレース、仕事に行ってくるね」と言ったが、その日は顔も上げない、顔をうずめてじっとしていた。
元気ないなと思いながら出かけた。
それが生きているグレースを見た最後だった。
私の誕生日の二日前だった。
悲しかった。どうしようもなく悲しかった。
そおっと、何度も何度も撫でた。
グレースのご飯と、水と、それに線香を供えた。
毛布をかぶせてあげた。
次の日火葬して納骨をした。
あれから、いつもの酒屋さんへは 缶ビールを買いに行けなくなった。
田口 圭二
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます