HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

大梵林(ボリウッド)映画祭 ~おまけ2~ 永遠のボリウッド女神《ミューズ》:パルヴィーン・バビ

2008年11月25日 | インド映画
 今回は、ヒンディー映画史の中で永遠の輝きを放つ一人の女優、いや《女神》を紹介したいと思う。その麗しき《女神》の名はパルヴィーン・バビという…

                

 パルヴィーン・バビ(Parveen Babi: April 4, 1949 - January 20, 2005 )

 インド・アルメダバード出身。1970年に『Charitra』という作品でデビュー。それまで丸っこく、男性に順応な可愛いこちゃんタイプのヒロインが多かった中、欧米型の色っぽく、そして自立した女性像を演じ、インド映画改変期の波に乗り若者のハートを釘付けにした。そして彼女は次々とビックバジェット(大予算)映画のヒロインに起用され大女優への道を突き進む。しかし固定化されたイメージを脱却することが出来ず86年の『Abinash』を最後にスクリーンを去る。その後は酒やドラッグに溺れ、数々のスキャンダルを引き起こす。その後は母親と共にムンバイの高級アパートで暮らしていたが、2002年に母親が亡くなるとますます世間と距離を置くようになり、2005年に糖尿病の合併症により一人寂しくこの世を去る…

   私が最初に彼女の姿を観たのが『アマル・アクバル・アンソニー』で、アミターブ・バッチャンの相手役だった。あまり土着的なイメージはなく、むしろサリーよりもトップモードの洋服が良く似合う都会的な題材の方が彼女をより魅力的にさせた。個人的にはインド的ではなくどちらかと言えば欧米の大女優の雰囲気があり、英語も十分堪能な為(晩年アメリカに一時期住んでいた時にTV番組に出演した際の映像をYOUTUBEで観賞できる)インド国外、欧米圏の映画に進出しても成功していたのではないか?インド国内だけの活躍が真に惜しまれる逸材である。

 晩年は極度のノイローゼに悩まされ、紛らわせる為に酒とドラッグに溺れ、最後は孤独死という、絵に描いたような波乱万丈な人生を送った彼女の一生こそまさに《映画》そのものではないだろうか?

 ●HIMAGINE電影房で紹介したパルヴィーン・バビ出演作品

 『アマル・アクバル・アンソニー』 
 『SHAAN』
 『DO AUR DO PAANCH』

        

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戦え!小さな勇者たち 『BATANG-X』

2008年11月21日 | フィリピン映画

 今回はフィリピン産コミックス・ヒーロー・ムービーの『BATANG-X』(95)を紹介。


  ある日、謎の女性科学者ドクター・アクシスの命により、フィリピン中から特殊技能を持つ4人の子供が拉致された。彼らは彼女の秘密研究所で改造・訓練され、スーパーパワーを操る特殊チーム・バタングXとして活動する事になる。彼らの任務は国の監視下にある超小型エネルギーを盗み出す事で、それぞれの能力を駆使して任務は成功かに思えたが突如、謎のパワードスーツに身を包んだ男に邪魔されてしまう。実はドクターはこの星の人間ではなく、超小型エネルギーを用いて研究所に隠されている宇宙船に乗って自分の星に帰ろうとしていたのだ。パワードスーツを着た男は同じ種族で、彼は超人的なパワーを用いて地球侵略を企んでいたのだった。動機はどうであれ、人並み以上の力を得た事に感謝している4人の子供たちはパワードスーツの男を倒す為、研究所で最後の対決をする…


 はい、モロに『X‐MEN』の影響を受けてますね。いや、メンバー全員が未成年というシチュエーションは『THE NEW MUTANTS』かな?アメコミの方からのパクリかと思っていたら、ちゃんとフィリピン・コミックスで原作があるのですな。最近も現地のTVドラマで『BATANG-X THE NEXT GENERATIONS』なるものが放映されていたりして何がオリジナルで何がイミテーションか分からなくなっちゃいます。

 でも、映画自体はそんなふざけている訳でもなく(タルいギャグが続くのでムカッとはするけど)、親子愛、母と子の愛情はきっちりと描いている所はフィリピン映画のお家芸だなぁ、と思った。観た動機は「チープなXメンのパクリが観たい」だったんですがね…

              

              

               
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リュ・スンワン幻の傑作 『タチマワLee』

2008年11月16日 | 韓国映画

 『ARAHAN/アラハン』(04)『相棒/シティ・オブ・バイオレンス』(06)で熱きアクション魂を我々に見せ付けた《新世代韓国アクション映画の旗手》リュ・スンワンの幻の作品を鑑賞することが出来た。その映画とは『タチマワLee』(98)だ!!

 実はこの映画、劇場用作品ではなくインターネットのみで公開された35分の短編映画であるが、監督お気に入りの70年代韓国アクション映画のテイストがモロ画面からにじみ出ていて、「その手」の愛好家であるならば愛さずにはいられない作品である。

              

 ストーリーは(あってないようなものだが)、地方の街にふらり流れてきた好漢・タチマワ・リーが地回りヤクザに絡まれていた女性を救い、チンピラたちはおろかボスまで一網打尽にしてしまうといったもので、キャラクターの行動はもちろん、話の展開までもがすべて「お約束」で構成されている。限られた予算や上映時間を逆手にとってヘンにアーティストぶらず、普通に楽しめる作品になっているのはさすがというべきか。

               

 さっき70年代韓国アクション映画のテイスト…と書いたが、証拠に主人公や主要キャラクターが70年代風ファッションであること(ほかのチンピラたちは今風のカッコをしてるのがおかしい)、リーの台詞回しが(意味は分からんが)大時代的であること等が挙げられ、そのあまりのクサさに映画好きの感性が反応しクスリとさせられるはずだ。韓国クラシック・アクション映画好きならその何十倍だろう。
 そしてこう呼ぶに違いない、
「韓国の『オースチン・パワーズ』だ」と!!
 実際予算の大小はあれど、レトロテイストなのとクラシックなアクション映画に対するリスペクト加減に(あと主人公がトンチンカンなのも!)両作は通じるものがある。

 「レトロ」「古めかしい」と散々書いてきたが、格闘アクションはさすがリュ・スンワン作品で、最初のチンピラたちとの戦いは冗談ぽく演出されていたが(それこそコントのように)、ラストのボスとその手下との対決では落ち葉が舞う寺の敷地内でそれまでがウソのように、テコンドー仕込みのハイキックがうなる激しい格闘が展開されるのだ。たぶん思うに予算の殆どがこのラストの立ち回りに投入されたに違いない!(笑)

              


 ちなみにこのヘンな主人公の名前は、実は日本語の「立ち回り」が語源で、格闘アクション映画の事を「タチマワリ」と呼んでいた事に由来しているそうだ。


 今年(08年)8月に公開され、あの大韓ウェスタン『良い奴、悪い奴、変な奴』に並ぶほどの人気を博した『タチマワ・リー/悪人よ、地獄行き急行列車に乗れ!』は本作のセルフリメイクである。あ~早く観たい…
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大物俳優vs無名片腕女剣士 『獨臂空手刀』

2008年11月14日 | 武侠映画

 当ブログでは久々の武侠映画となる今回の紹介作品は『獨臂空手刀』(70)です。もうこの毒々しい字面見ただけでワクワクしてきますね、私。


かつて素行の悪さで師匠から破門された青年が、妖刀を手に入れた事により完全に悪の剣士と化し、一門への復讐の為かつての兄弟弟子を斬り殺し、なおかつ同門であった彼の妻までも毒牙に掛ける。道場の変わり果てた姿を目の当たりにした門弟たちは仇討ちを誓い、悪の剣士に立ち向かっていくがことごとく返り討ちに遭う。そんな中、皆から死んだと思われていた道場主の妻は片腕・片目を失いながらも生きていて、山奥の洞穴で謎の女僧の元で武功の修業を行っていた。果たして残された弟子たちは悪の剣士に正義の一太刀を浴びせる事が出来るのだろうか?そして隻腕隻眼の女剣士となった道場主の妻は間に仇討ちに合うのか…?

              

 以前にも言ったと思うが、私は邵氏が手がけた豪華絢爛な大作武侠片よりも、こういった中小プロダクションが作ったアイデア勝負・パクリ上等の個性的な小品が大好きだ。当作もタイトルに「獨臂」「空手」という文字が入っており否応無く期待は高まるばかりだ。だがこの作品、実は「獨臂刀」が主人公ではないのだ。
 

             


 この映画の主人公は妖刀を手に持つ悪の剣士なのだ。黒ずくめの衣装と白い歯を見せ憎々しく笑う彼に「悪の魅力」を感じるのである。その悪のオーラには普通ならもっと表に出てもいいはずの正義側の登場人物を霞ませるほどだ。もっとも彼らは道徳心を持ち品行方正なので、欲望に燃えた悪の剣士の前では目立ちようも無いのだが。

 そんな中唯一対抗できたのが、彼に同門である夫を殺され自らの片腕・片目を奪われた女剣士である。登場時間は短いながらもその隻腕隻眼という容姿のインパクトは半端でなく、まわりの中途半端な二枚目や女剣士よりも画面上の印象は強い。最初『獨臂空手刀』と聞いて、正義の片腕剣士が活躍する映画と勝手に想像し、現物を見てそれに該当する人物が登場しない事にガッカリしても、観終わった後にはちゃんと頭の中には「悪漢と(女)獨臂刀が戦った映画」として残るのだから大したものである。そんな緻密な演出をした本作の監督であるモー・マンフン(巫敏雄)を我々は評価しなければならないだろう 。

              

 主役である悪の剣士を演じたのは『大酔侠』の悪役で強烈なインパクトを残したチャン・ホンリー(陳鴻烈)。なるほどこの映画、他に彼に準ずるスターがいないため彼中心のストーリーになってしまったってわけか。ネームバリューがある俳優が対抗勢力に入っていればまた違ったストーリー展開になってたかもしれない。

 彼に(インパクト面で)対抗した女獨臂刀を演じたのはリー・シュー(李璇)という主に台湾で活動していた女優さん。それこそ知名度は陳鴻烈に比べれば無いに等しいといっても過言ではない。しかしあの強烈なメイクと出番を極端に少なくしたことにより印象を濃くし、その結果スター俳優と十分に張り合うことができたのだ。

   
               


 このような「悪の魅力」が映画を引っ張っている武侠映画を私は《ピカレスク(悪漢)武侠片》と呼んでいる。この系列の作品は「強大な敵をどう倒すか」が焦点になっているので場を盛り上げやすく、故に傑作がかなり多い(個人的感想)。いずれまた当ブログでも紹介したいと思うので、期待せずに(オイオイ)待っていて欲しい。
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金掛かってるねぇ! 劇場版『パワ-レンジャー』

2008年11月12日 | 中古ビデオ

 東映の戦隊シリーズがアメリカで『パワーレンジャー』として放映している事は周知の事実だが、わざわざビデオやケーブル放送、輸入DVD等で現物を観たことのある人はよほど気合の入ったファンぐらいしかいないはずだ。

 私も家に幼い甥っ子がいるのでパワーレンジャーの吹替え版ビデオを観せられる事があるのだが、ストーリーが学園青春ドラマっぽかったり、各人種でメンバーが分けられていたりしていて、毎週日曜の朝にやっている本家とは違う雰囲気で「あぁ、アメリカらしいな」と感じる。しかし特撮素材は本家のものを使用しているのに何かイマイチ好きになれないのは幼い頃からずーっと本家・戦隊シリーズを観ていたからなのだろう、きっと。


 ただ、パワーレンジャー人気に乗じて製作された劇場版『パワーレンジャー』(95)は正直凄いと思った。だって20世紀フォックスが配給だよ?しかも制作費がなんと40億円ときたもんだ!東映ヒーローフェアに上映する戦隊シリーズの劇場版が何本作れるんだろ?

 話はパワーレンジャーに変身することのできる6人の高校生たちが6000年前に地下に封印されたがビル工事の影響で再び甦った悪の帝王アイヴァン・ウーズの間の手から街を守り、パワーレンジャーの保護者であるゾードンを瀕死の状態から救うために戦うというもの。

 本家の劇場版は上映時間が40分そこそこなのでアクション等見せ場で繋ぐ作り方をしているが、本作も95分もある大作なのにもかかわらず次から次へと用意されるファイトシーンに、観てる方はどんどん映画に引きずり込まれてしまう。早い話がテンポ良く無駄なものが無いって事で、日本みたいに子供だけの作品、というだけではなく一般映画ファンにも十分アピールできる作品になっている。

              

  この映画でまず最初に観て驚いたのがレンジャーたちのボディスーツだ。本家(パワーレンジャーTV版も)のスーツは特殊繊維で作られた極めて平面的な感じだが、こちらの劇場版では「強化服」なイメージの立体的な造形になっていてカッコいい。それでもってTV版以上の激しいアクションをこなすんだから惚れない訳はないっ!

 次に戦隊もののラストバトル定番・ロボット同士の格闘シーンがCGで描かれているのも画期的で驚いた。一部スーツは使用しているというものの、『トランスフォーマー』(08)よりも早くCGロボットバトルを行ったという事実は賞賛に値されるのではないか?!  

 レンジャーたちの格闘アクションも、香港スタイルよろしく蹴られてクルクル回ったり大勢がワイヤーで吊られて跳んだりと賑やかだし、何よりアクション映画としてもレベルが高く、亜州アクション映画を見慣れた私ですら普通に楽しめるのだ。主人公たちが高校生のくせにマッチョなのは許せんが…

              

 「ジャリ向き映画なんて…」と不満気味の同伴者のお父さんにも、露出度の高い服(ほとんどビキニ)を着た女戦士が登場してサービスしてくれるし、
 あぁ、なんて素敵な映画なんだ『パワーレンジャー』は!!

               
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一発ネタ映画バンザイ! 『少林十八銅女』

2008年11月10日 | 中華圏映画

 「いやぁ~、『少林十八銅人』は面白かったなぁ」
 「まったくです、社長。わが社でもやりましょうよ」
 「そうだな。…でもあの映画、女ッ気が全く無いな。よし、こうしよう!」
 「?」
 「あの金粉塗ったオッサンの代わりに金粉塗った女性が闘うってのはどうだ?」
 「……」
 「…………」
 「そ、それは名案です、社長!これなら男性客大幅アップですよ!!」
 「ガハハ。何年この業界で飯食ってると思ってるんだね、君ィ」
 「はいっ!早速撮影にかかりますっ!!」

 と、まぁ社長コントはさておいて、今回の紹介作品『少林十八銅女』(83)は案外こんなカンジで企画が通ったのではないかと思われる(違うか?)「見所はそれしかない」一発ネタ映画である。
              
             

 話は清朝の将軍が少林寺から拳譜を盗み出してしまい、それを取り戻すべく大僧正はから密かに育成していた「銅女功」の会得者の女性を世に送り出す。それと同時に反清復明の闘士は将軍を倒すべく同士を集め、少林寺側と衝突しながらも最終的には将軍を打ち負かし、そして銅女は拳譜を取り戻し終わり…というもの。

  はっきり言ってこの映画、清の将軍が大悪役というのは普通に分かったのだが、他の登場人物の善悪関係がいまいち分かりづらかった。普通クンフー映画では少林寺は反清のシンボルではなかったのか?なのにレジスタンスたちとは反目し合うし、切り札である銅女たちと戦わせたりともうメチャクチャ。…観てる分には楽しいんだけどね。
             
             

 この映画の最大の売りは何といっても、タイトル通り「十八銅女」でしょう。というかそれしかない。いろんな人物が登場し戦っているのだが、金粉に身を包み金色の衣装を纏った彼女たちにはどんな事をしても敵わない。

 劇中登場する「銅女功」というのは全身の皮膚を鋼のように強くし、どんな攻撃でも跳ね返す事の出来る武功で、それを白い髭を生やした大僧正の号令の元、金粉がまぶしい彼女たちが必死で訓練するサマが悲し楽しい(どっちやねん)。

              

 おおっと、普通のクンフー映画ファンにもちゃんと見せ場は用意してますぜ。大悪役の将軍には『大酔侠』(66)でおなじみのユエ・ホア(岳華)、反清闘士の女剣士にはドリス・ロン(龍君兒)、そして少林寺の僧侶にはカム・コン(金剛)だ。どうだっ、まいったか!
  
 …でもやっぱり画面のインパクトでは十八銅女には負けてるな。          
          
              
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○○発ハリウッド着大怪獣映画 『ガルガメス』

2008年11月07日 | 中古ビデオ

 これ作品は、この間偶然DVD・ビデオショップで100円均一ワゴンセールで野ざらしにされていたのを保護したもの。

 洋泉社の『映画秘宝MOOK あなたの知らない怪獣マル秘大百科』でも紹介されていたので知っている人がいると思うが、この『ガルガメス』という、特にジャケットを見る限りでは何の変哲も無いよくレンタルビデオ店の棚を潤している海千山千のモンスター・ムービーに見えるが、実は…な作品だったのだ。


 ストーリーは中世の小国で側近の罠によって城を追われた幼き王が亡き父からもらった代々一族に伝わる聖獣・ガルガメスの人形をひょんなことで実体化させる。彼はその強大な力を使い、悪政を打倒しようと暗躍していたレジスタンスと結託し今や国の主となったかつての側近のいる城に向かって攻撃を仕掛け、見事打ち負かし彼は城を取り戻しまた元の平和な小国に戻る…といったものだ。


 劇中に大活躍するガルガメスという怪獣、こいつは所有者の涙によって土人形から実体化し鉄を喰らってどんどん大きくなるという設定だったのだが、はて、どこかでこのシチュエーション聞いた事ありませんか?

 そう。この『ガルガメス』、実は好事家の間では有名な、北朝鮮製作で“将軍様の怪獣映画”こと『プルガサリ』(85)のハリウッド版リメーク作なのだ。そして製作・原作に記されているサイモン・シーンという人物こそがオリジナル『プルガザリ』を作ったシン・サンオク(申相玉)その人だったのである。

 『ガルガメス』とオリジナル『プルガサリ』を見比べてみると、悪政に立ち向かう民衆とそれをサポートする巨大怪獣という基本形は変わらないが、作品からにじみ出る雰囲気はやはり欧米テイストというか何気にネアカだ。そして年少者をターゲットに製作されたのだろう、どことなく童話的・西洋英雄譚的な作風なのである。それを証拠に血を流すような暴力的な場面はほとんど見受けられない(チャンバラ場面はあるが)。オリジナルではどんどん鉄を食べてしまい民衆を悲観的にさせてしまうプルガサリだが、こちらでは「政府を打ち負かせるのなら…」と協力的でなかなかポジティブ・シンキングなところがアメリカらしい。

 ただ、予算やスケール感の面でいえばオリジナルにはとうてい敵わない。オリジナルの方は予算使いたい放題、エキストラも人民軍の協力で特撮もスペクタクル演出も破格なスケールなのだが、こちらの『ガルガメス』はエキストラはそこそこ出ているのだが特撮場面の予算不足はやはり否めない。そしてどことなく画面から感じられるスケール感もどことなく小さい。しかしそれでもガルガメス大暴れのシーンは少ないながらもよく工夫されており、それなりに怪獣映画の醍醐味を味わう事の出来る仕上がりにはなっている。

 と、まぁルーツは一緒でも環境が違えば違う人格になってしまうという在米外国人のようなこの『ガルガメス』。オリジナル『プルガサリ』を観たことがある人なら一度は観てみたら如何でしょうか?一度だけでいいんですが…

         

 DVDレコーダーがイカれたのでキャプチャー出来なかった。画面撮りで申し訳ない…(哀)
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リンホー祭! 『鬼面人』

2008年11月06日 | 中華圏映画

 今回は自分でも忘れるほど久しぶりの香港クンフー映画の紹介になる(実際は台湾映画なのだが)。

 タイトルは『鬼面人』(73)、主演はシャンカン・リンホー(上官霊鳳)。何かそそられるでしょ?ゲテモノ映画好きには。
         
        

 ストーリーの概要は、醜悪な仮面を被った鬼面人と名乗る男によって父を殺され宝剣を奪われたリンホーが仇討ちの為に旅立つが、途中悪漢に襲われていた少女を助けた土地では鬼面人は人々の英雄であった。父の敵討ちで頭がいっぱいのリンホーは少女の懇願も聞き入れず鬼面人と対決するが、父を殺したのは鬼面人の仮面をわざと被って悪さをしていた悪の武道家であった。誤解の解けたリンホーは本当の仇である悪の武道家と闘い、見事勝利して劇終。というもの。

        

 この作品はインドネシアでロケが行われていて(現地のプロダクションと合作か?)、映画の所々に独特な様式美の遺跡やカラフルな民族衣装、ガムランの音色などエキゾチックなバリ文化が散りばめられ観光映画としての機能も十分にある。とはいうものの劇伴に『ウエスタン』のBGMが無断で使われているのはどうかと思う。どうせなら徹底しろよ。

 観終わった後に思ったのは「シャンカン・リンホーの為だけにある映画」だという事。現実にスターと呼べる出演者は彼女一人だけだったし、脚本も彼女中心のストーリーだ。色とりどりの衣装や明光風靡なロケーションもすべて彼女を引き立たせる為にあったといっても過言ではない。
 …なぁんて書いてますが私は別にリンホーの熱烈なファンなんかじゃないんですけどね。

「強いおねいさん」

が好きなだけですから。

 そんなわけでこの映画の本当の楽しみ方は
「シャンカン・リンホーだけを鑑賞する」
事。青い空の下、カラフルな民族衣装で派手な立ち廻りをする彼女や、敵討ちの為なら手段を選ばない彼女だけを観ていれば多少ストーリーがダルくても無問題だぞ。  
          
       

 「観ないとハイキックをお見舞よ!」
すみません、ちゃんと観させてもらいます…(涙)   
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えっ、あの人が出てるって?! 『 In The Name of The Tiger』

2008年11月05日 | タイ映画

 今回は「贋物に注意!」というお話

 ここ最近、中国の動画共有サイトyouku.comというのにハマッていてそいつを利用して昔のクンフー・武侠映画や韓国映画等を観まくっているのだが、最近「?」な映画を発見した。

               

 中国題は『籠中獣』といい、監督・主演は成龍、共演は托尼・賈と書かれていた。私は思わず

「えっ、酔拳3(製作予定)の前に共演作あるの?」
「ジャッキー、タイ映画いつ撮ったの?」
と叫んだ。(いや、実際に声に出したわけじゃないんだけど…)

 そんな作品があるのならもっと話題に上ってもいいのではないか!そしてどこかに詳細は載ってないかインターネットで検索したが…

 な~し。あっても中華サイトのみでVCDやDVDの紹介のみだった。肝心のジャケット写真はジャッキーやトニーの切り貼り写真で構成された代物でこちらからもどんな映画なのか読み取ることは不可能だ。しょうがない、実物を観てみるか。DLした作品を再生してみる事にする。

  冒頭にはジャッキーが中国クンフーの優秀性を述べサンドバックを叩くシーン、続いてトニーが象と戯れるシーンがあり、いきなり本編が始まる。

                

 映画は別世界からやってきた腕の立つ主人公が、血なまぐさい部族抗争の間を潜り抜け、世話になった村の少女を助け出し、悪魔のような追っ手を倒すというファンタジー・アクションもので、画面のスケール感はそれなりにあり劇中ドラゴン型の怪物が登場したりとそれなりによく出来た作品だった。しかし肝心のジャッキー&トニーはず~っと目を凝らして観ていたが二人が出ている気配はどこにもない。

                

 え~っ、ジャッキーとトニーが出てるのそこだけぇ?!
あいや~、騙されたネ。
ムチャクチャやりよるな、中国人。

 じゃあこの作品はいったい何?

 実はこの作品、れっきとした純正タイ映画で『In The Name of The Tiger(タイ題Suea Phuu Khao)』(06)という映画だったのだ。
 さっきはチョイ褒めていたけど、あれは作品全体であってアクションに関してはホント酷かった。動作自体はまぁよく出来ていたのだが、わざとブレを作ったりカットの切り返しが速すぎたりして全体の動きがよくわかんない。騎馬シーンはよく撮れていただけに残念。よくあれで成龍導演で売ろうとしたな(怒)。 
             

 おい、販売者!一般中国人は騙せても、世界中の功夫迷は騙せないぜ!!
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大梵林(ボリウッド)映画祭~第五回~ 『AWARA PAGAL DEEWANA』

2008年11月04日 | インド映画

 思い出した頃に書き綴る毎度おなじみ(か?)大梵林(ボリウッド)映画祭。今回は今世紀に入ってからの比較的新しめの作品で、アンチローカル映画ファンの間ではちょいと有名なアクション・コメディ作『AWARA PAGAL DEEWANA』(02)を紹介。


 マフィアのドンがある日突然心臓発作で死んでしまう。その彼はアメリカの銀行に10億ルピー相当のダイヤを遺産として残していた。遺産騒動をきっかけに互いの事をよろしく思っていないドンの息子ヴィクラーントと彼の娘婿グルは対立し、血で血を洗う抗争が始まった。それと同時にヴィクラーントの陰謀により国際指名手配されたグルの懸賞金を狙って平凡なインド系アメリカ人・アンモールも動き出し、事態はより大きなものになっていく…

        

 以前紹介した『PURAB AUR PACHHIM』では西洋化に苦悩するインド人を描いていたが、30年近く経つ今作では悩むどころかアメリカ在住の2世インド系アメリカ人はもちろん、インドの都市部に住む人たちまでもがごく自然に欧米スタイルの生活を営んでいる姿が当たり前のように描かれていた

 作品は基本的にコメディで、ドロドロした遺産騒動とは別に在米インド系アメリカ人のアンモールが隣に越してきた国際指名手配犯のグルによって、嫁にいびられながらも平凡な生活を送っていたのが次第に抗争に巻き込まれていく様が悲しくて、笑える。そしてグルの妻で遺産相続権利者であるプリーティに恋をしてしまったり、反対にアンモールの女性秘書がグルに惚れてしまったりとラブ・コメディ部分ももちろんありインド娯楽映画の定石は外さない。

        

 肝心の(アクション映画好きだからね)アクションシーンは物凄く出来が良く、銃器アクションあり、カー&バイクアクションあり、そして格闘アクションありと盛りだくさんだ。特に格闘アクションは『マトリックス』に代表する香港経由ハリウッド直輸入的アクションとはいえ、なかなか工夫がされていて香港アクション映画好きにも十分堪能してもらえると思う。

 というのも、この映画のアクション指導はコアなクンフー映画ファンにはおなじみのフィリップ・コー(高飛)が担当していたのだ(無記名だがディオン・ラム(林迪安)も参加との事)。最初に登場する中華マフィアの放った刺客たちのアクションがやけにクンフー映画的だったのはその為だったのか!と一人納得した次第だ。
 
 香港の武術指導家たち、今世紀に入って至る所で仕事してるんですね。大御所のユエン・ウーピンやチン・シウトンはもちろん、フィリップ・コクやトン・ワイ等といったマニアックな面子までもが海外作品でその名を連ねている事実は、長年香港クンフー映画を観続けた者たちにとってこんなうれしい事はないだろう。

 ただ、高飛はこれ以前よりフィリピン映画界で活躍しており、現地で活躍する大島由加里の作品の監督や製作なども手がけているし、当ブログでも以前紹介したSFアクション大作SUPER NOYPI』(06)でもアクション指導を受け持ったりとフィリピン映画界には無くてはならない存在となっている。果たしてこの映画の製作者はどういう経路でこの人選をしたんだろう?と気にはなるところだ。ディオンは多分『マトリックス』に参加していたからという気はするが。

       

 なぜアンチ・ローカル映画ファンにこの作品が知られているかというと、劇中に『マトリックス』のコピー場面があるからなのだ。

 オリジナルではネオとトリニティがビル内で派手な銃撃アクションをするシーンをこの作品ではすべて(トリニティの壁歩きも)一人の俳優で行っていて、そのシーンだけがクローズアップされて紹介されているのである。たしかにそのまんまコピーは許される事ではないにしろ、その場面が存在するからといって作品全体を低く見てしまっていいものだろうか?それに評価するなら、まず全編通して観るべきからではなかろうか?それではあまりにもこの作品が可哀想である。  

        
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