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【女子プロレス小説】小さいだけじゃダメかしら?~後篇~

2017年06月16日 | ARTWORK & NOVEL

 メインエベントを今まさに裁かんとするレフェリーによって、女神像をイメージした金色のプレートが貼られた紫色をしたベルト――東都女子プロレス認定王座《プリンセス・オブ・メトロポリタン》が高々と掲げられ、会場天井からのライトに照らされ《団体の象徴》は眩いばかりの輝きを放っていた。そして彼を挟んで両サイドではその光り輝くベルトを我が物にせんと、じっと見つめるふたりの女。
 《唯我独尊》浦井冨美佳と、《能天気ダイナマイト》小野坂ユカだ。
 観客の「本気の」ブーイングを浴び憎々しく笑う浦井は、紫色のワンピース型コスチュームに黒のロングシューズという女子プロレスの“王道”ともいえる出で立ちで、ふてぶてしい態度と相まって威圧感を周りに漂わせ、自分こそがリングの女王であるという事を無言でアピールしていた。
 一方のユカは二年半ぶりの浦井とのシングル戦に加え、タイトルマッチという環境からくる緊張なのか、普段なら入場時に観客からの声援に対して、入場通路やリングサイドを周回しながら明るくハイタッチなどをする彼女だったが、今日は入場ゲートに登場するや否や一目散にリングへ向かって駆け込んだので、彼女とのスキンシップを楽しみにしていたファンたちは少々戸惑った。それにコスチュームも自らが「チンドン屋」と称するレインボーカラーでなく、親友・赤井七海のイメージカラーである赤でコーディネートされており、彼女の覚悟の程が窺い知る事ができる。
 昨夜リリースされた、突然のPOM王座返上と、それに伴うユカの決定戦出場のインフォメーションは、今夜の興行にも少なからず影響をおよぼし、カードの不満を訴えチケットの払い戻しを求める客が数十人もいたという。それに昨日の浦井の例の件もあって試合会場も、八百人の定員のところが六割程度しか席が埋まっていないのが現状だった。だからこそ、ユカは大先輩であり強敵である浦井を下し、東都女子のエースの証であるチャンピオンベルトを奪取する事こそが使命であり、カード変更にも拘わらず足を運んでくれたファン達へのお礼なのだと、そう考えていた。
 リングの中央で、レフェリーがふたりに対し握手をするよう求めた。しかし浦井は手をひらひらと振り、埃を払いのける様なゼスチャーを見せこれを拒否。それを受けてユカも舌を出しあかんべえをして応戦する。《王座決定戦》だというのに普段通りな両者のコミカルなやり取りに、場内は明るい笑い声に包まれ、肩に力が入っていた観客たちもリラックスする事ができた。そしてリングサイドに設営されている本部席では団体代表の元川が、その隣りには「怪我の為」今大会を欠場した前チャンピオンの七海が着席して、リング上における事の成り行きを、息を飲んでじっと見守っている。
 試合開始を告げる、甲高いゴングの音色が会場中に響き渡った。

「よっしゃぁぁぁぁぁ!」
「来いっ!」

 両者はそれぞれ、自分を奮い立たせるために、そして己という存在を会場中にアピールするために大声で叫んだ。腹の底から吐き出した気合は、そのまま活力源となって身体中にみなぎっていくのが自分自身でも分かる。浦井が右手を高く掲げる。ユカに対して「力比べ」を要求しているのだ。それに応えて彼女も右手を差し出すが身長差が大きいので組む事が出来ない。余裕の笑みを浮かべる浦井とどうしてもコンタクトしたいユカは、ジャンプをしたりといろいろ試みるが、彼女の右手が自分の手の届くところまで下りてくる気配もない。いらいらの募ったユカはマットに仰向けに寝そべり足をバタバタとさせて、小さい子供のように駄々をこねてみた。彼女の《王座決定戦》を争っているとは思えないこの可愛らしい動作に、観客たちはついつい笑ってしまう。

「あいつは何をしてるんだ?」

 いつものコミカルテイストの試合と変わらないじゃないか――リング上でのパフォーマンスに対し、苦虫を潰したような顔で元川は呟いた。静寂の中で行われる、緊張感に満ちた序盤の攻防を想像していた彼には、ふたりが神聖なタイトル戦を馬鹿にしているとしか思えなかった。しかしこれが彼女の普段通りの闘い方であり、決してふざけているわけではない。
 完全に相手を見下した浦井が腰を屈め、駄々っ子状態のユカを覗きこむ。彼女はこの瞬間を待ち構えていたように素早くヘッドスプリングで跳ね起きると、自分の目の高さにいる浦井に大きなスイングで顔を一発張った。突然の「反撃」に、打たれた頬を押さえ呆然とする浦井の周りを、ぐるぐると腕を回して笑顔で走り回るユカに「子供かっ!」とファンのひとりから突っ込まれると、それに呼応するように発生した拍手と爆笑が会場中を覆った。

「この野郎っ!」

 怒りがこみ上げてきた浦井は、叫びと共にクローズラインをユカの喉元へ叩き込もうとするが、動作の大きな彼女の攻撃はユカにはお見通しで、すぐさま身体を捻りこれを回避する。攻撃目標を失い空を切った腕の下を潜り抜け正面のロープに向かい駆け出したユカは、反動を付けて加速し再び浦井の元へと舞い戻り、背面式ドロップキックの体勢で彼女の胴へ跳び付いた。更に自分の上半身をバウンドさせ勢いをつけ体を反り起こすと、腕を取り浦井をリングの外へと投げ飛ばす。【カサドーラ】というルチャリブレの技だ。勢いのついた彼女の身体はリングを被うキャンバスの上を滑らせて、リングの周りを囲むように敷かれた、青い保護用マットの上へ落ちた。
「来いっ!」リングの上では、ユカが膝をつき手招きをして浦井を挑発する。
 大喜びの観客たちは「ユカ」コールの大合唱で彼女を全面的に支持した。この居心地の悪さにマットを叩いて不快感を表した浦井は、あろう事かレフェリーが場外カウントを数え続ける中、ユカが待つリングに背を向けて控室へ帰ろうとするではないか。
 最初は誰もが彼女の、いつもの「客いじり」だとそう思い込んでいた――普段だと観客に自分へのコールを要求し、発生すると満足してリングへ戻っていく「お約束」だがそれもしない。白けた表情の浦井と、リング上で平然を装うがにじみ出る焦りの色は隠せないユカから、観客たちはこれが「アクシデント」である事を察し、皆の顔から“笑い”が消える。
 試合開始からまだ幾分も経っていないにも拘わらず、さっさと「試合放棄」を決めこんだ浦井の自分勝手な行動に、席から立ち上がり口ぐちに怒りの声をあげた。
 こんな試合を見に来たんじゃないぞ。何度俺たちを裏切るつもりだ? もう辞めちまえ――思い付くままの罵詈雑言が通路を歩く浦井に浴びせられるが、そんな事は意に介しない彼女は下を向いたまま進んでいく。このまま順調にカウントが進むと浦井の「リングアウト負け」でユカの勝利が確定するが、観客の誰もがそんな「負け方」を望んではいないし、ユカ自身もそんな「勝利」は欲しくない。何よりもそんなメイン戦を――王座決定戦を行えばファンやマスコミからは茶番と非難され、団体の評価は取り返しのつかない程底に落ち、今後の運営が厳しくなる事は明らかだ。

 あいつ、とんでもない事をしやがる。

 本部席の元川は額に手を当て目を閉じる。まさか今日に限って試合放棄はしないだろう、と高を括っていたが見事に裏切られて彼はパニック状態に陥った。そんなに東都女子ここが嫌いなのか? じゃあ何故オファーを受けた? 処理できない疑問が元川の頭の中をぐるぐると駆け回り、真っ青な顔からは脂汗が滝のように滴り落ちた。
 誰か、助けてくれ! と心の底から、救いを求める声が喉元まで出かかったその時、隣りで座っていた七海が目の前の、テーブルに誇らしげに置かれているPOM王座のベルトを持って立ち上がった。

「浦井さんっ! このベルトが欲しくないんですか?!」

 七海の、悲痛なる叫びを聞いた浦井は、ぴたりと立ち止まるとゆっくり後ろを振り返る。彼女は今にも泣き出しそうな表情だったが、それでも必死に歯を食いしばり、金色に輝くベルトを高々と掲げ挑むような視線で睨みつけていた。

「このベルトは――あなたが突然いなくなった後に私やユカ、それに残った者たちが必死になって団体を盛り上げ、回復の兆しが見え始めた頃に設立した、私たち東都女子に関わる者全ての想いが詰まったベルトなんです。途中で逃げたあなたには、何の思い入れの無いタイトルかも知れませんが、最後まで私たちを馬鹿にする気ならばこのベルト、綺麗にかっさらって格好つけてから去って下さい!」

 心底嫌いなはずの浦井だったが、思いの丈を言葉にし吐き出していく途中に、心の何処かでは彼女を慕っていた事に気が付き、七海は三年前のあの日――プロレス界での生き方・・・を導いてくれると思っていた矢先、まだ右も左も分からない自分たちの前から突然彼女が退団してしまい、恐怖と不安で一杯だった頃の記憶が、幾度となく繰り返し再生され涙が止まらなかった。

「浦井さん、お願いします!」「浦井さんっ!」

 セコンドとしてリングの周りを囲んでいた、所属選手たちが一斉に浦井の方を向き、ひとりひとりが彼女の名を叫び懇願する。かつて一緒に汗を流した当時の練習生、それに自分がここを去ってから入ってきた若い選手――知ってる顔も知らない顔も、みんな私の事を慕ってくれている。浦井は彼女たちの熱い想いを受け、かつて自分が、この団体を牽引する“長女”の立場であった事を思い出した。
 団体代表の元川よりも更に立場が上である、“プロレス”をよく知らない経営陣たちとの軋轢によって「方向性の違い」という“言い訳”を用い道半ばで離脱してしまったが、十六歳でプロレスラーとして誕生デビューして以来、初めて“リーダー”として迎えてくれたこの団体を、ここに残ってくれた選手たちを嫌いである筈など無い。浦井は再び、ユカの待つリングへと歩み出した。かつての“長女”としての責任と、ベルトを狙う「侵略者」としての誇りを胸に抱いて。

「子憎たらしいったらありゃしない……七海もすっかり皆の“お姉さん”ね、安心したわ」

 顔を涙でぐしょぐしょにして、それでも本部席で自分を睨み続ける七海を、横目で見ながら呟いた。今の浦井には東都女子に対する恩讐の念などない。あるのは故郷に帰ったような懐かしさと心地好さ。リングの上では、ユカが笑顔で浦井の“帰還”を待っていた。

「待たせてしまってごめんなさい。さぁ続けましょうか?」

 深々と謝罪する浦井の前に、ユカは両手を差し出した。

「今度こそ――握手、してくれますよね?」

 彼女の「お願い」に、浦井は照れ臭そうに微笑むと、無言で――力強く両手で握り返しこれに応じた。彼女たちや、その一部始終を静かに傍観していた、周囲の観客ひとりひとりの心の中で、再び試合開始のゴングが打ち鳴らされた。
 どちらからともなく前に踏み出すと、二本の腕を互い同士絡みつけロックアップの体勢に入る。全身の筋力を駆使し自分に有利なポジションを確保しようと、どちらも表情は険しく、組み合ったまま硬直した状態がしばらく続く。観客たちはじっと固唾を飲んで、両選手の次の一手を見守った。
 先に動いたのは浦井だった。
 彼女は素早くユカの腕を取り後ろに回ると、L字に曲げてハンマーロックの体勢に入った。腕を逆方向に捻りあげられ、肘や肩の関節にかけて激痛が走る。しかし身体を前方や半身に屈ませユカは必死に“逃げ道”を探り、ホールドが緩んだ隙をみて逆に体を入れ換え同じ技で返してみせた。先程とは逆に、次は浦井が脱出経路を思考する番だ。腕の痛みに喘ぎながらちらりと目線を配り相手の隙を探ると、素早く股の下からユカの脚を引っ張り、強引にマットへ引き倒し技を解除させるとそのままグラウンド式の爪先固め(トーホールド)へと移行する。またしてもユカは“振り出し”に戻されるが、キャリアの浅い新人選手とは違う彼女は慌てふためく事もなく、落ち着いて身体をずらし自分の足を攻めている浦井の、腕を掴むと空いている方の脚を相手の首に乗せ、ぐっと腰を突出し腕を引っ張って彼女の肘靭帯を伸ばさんとする。腕ひしぎ十字固めの体勢にとられた浦井は極められてなるものかと、今にも伸ばされそうな腕を掴んで必死にブロック、近くにあるサードロープに足を掛けてロープブレークをし事無きを得た。
 ふたりによる基本的ベーシックなレスリングの攻防に、観客たちは暫し声をあげるのも忘れて見入っていたが、レフェリーによる「ブレーク!」の声と共に両者が再び距離を取った瞬間、「おおっ!」というどよめきと拍手が一斉に湧きあがる。浦井の真面目なレスリングには勿論だが、普段は《コミカル担当》で派手な動作で笑わせ驚かせているユカが、堂々と彼女と重厚なレスリングで渡り合っている事の方が、彼らにしてみれば大変な驚きであった。
 場の空気を一転させるような、乾いた破裂音がざわつく会場内に響き渡った。試合は地味な関節技の攻防から一気に激しい打撃戦へと、ふたりの闘いは次の展開へと移り変わる。何十発という張り手の嵐が両選手の間を飛び交い、それら全てがスルーされる事なく確実に、そして的確に頬を張っていく光景に観客は戦慄を覚えた。
 浦井から、強烈な張り手をもらったユカの顔が圧力で歪む。
 身長の足りないユカは、浦井へ腹部蹴り(ガットショット)を叩き入れ身体を屈ませると、お返しとばかりに彼女の首筋に向け、鋭角な肘打ちエルボースマッシュを何度もぶち込んだ。ユカの見た目とは違い、意外に衝撃の重い肘打ちは浦井の体力を確実に削っていく。そして浦井の手首を掴むと、ユカ自身が転倒しそうな勢いで対角線上のコーナーへと彼女を振り投げた。リングを囲むロープを固定している金具を被う、協賛企業の名前が印刷されているコーナーポストへ浦井は背中から強く激突し、その衝撃によりロープが上下に揺れる。
 いくぞぉ! と腕を上げて叫び、拍子を付けてリングを踏み鳴らし観客たちを煽ると、今度は自分自身が、浦井のもたれ掛かっているコーナーポストへ全速力で駆けていき、彼女の顔目掛けてドロップキックを撃ち込んだ。ユカの両足は綺麗にヒットし、ダメージを受けた浦井は崩れるようにずるずると腰を落とした。

「攻めろユカ!」「浦井を休ませず畳み掛けろ!」

 自分の目下で荒い呼吸をして座っている、浦井の長い黒髪をユカは強引に掴み、引き起こして頭を脇に抱えフロントヘッドロックのような体勢を取ると、大きく円を描くようにロープを一気に駆け上がり、マットに浦井の頭を突き刺そうと真下へ体重を掛けた。身長のないユカがロープを利して、旋回による遠心力プラス重力によって相手の頭部を叩き付けるスイング式DDTを敢行したのだ。技は見事に成功し、顔からマットに落ちた浦井はうつ伏せのまま動かなくなった。
 ユカは彼女の身体を仰向けにセットし、上半身に覆い被さりフォールの体勢に入った。レフェリーは力一杯マットを叩きカウントを取るが、ツーカウントを数えた所で、浦井が必死の形相で肩を上げ惜しくもフォール勝ちとはならなかった。残念そうな表情をみせるユカだが落ち込んでいる場合ではない。彼女は頭部を持って浦井を無理矢理起こすと自ら背後のロープへ向かい走る。腕を下げふらふらと立っている浦井に対し、ロープの反動により勢いの増したユカは彼女の首に跳び付き、再び頭部をマットに突き刺さんとする。
 しかし二発目のDDTは浦井がきっちり予測していた。首をホールドされ真下に向かい引き込まれるのを、浦井は軽量であるのユカの身体を掴みこれを阻止。そのままブリッジし彼女の頭部を、今度は逆にマットへ叩き付ける。可愛い後輩に対し先輩の意地をみせた反撃だ。痛む頭を押さえながら自力で立ち上がるユカ。
 ショートヘアを振り乱し怒りの形相で向かってくる、小さくも強力な敵に対し浦井は、待ち構えていたかのように胴を掴み、大きく横に回転させると自分の膝へ彼女の腰を叩き付けた。風車式背骨折り(ケブラドーラ・コン・ヒーロ)がベストなタイミングで決まり、腰を押さえて七転八倒するユカへ今度は浦井がフォールの体勢に入る。片足を持たれ海老反りの状態で体重を預けられているので、フォールを返し辛い体勢であるにも拘らず、ユカは意地と気合でカウントワンでこれを跳ね返した。驚きと苛立ちの表情をみせる浦井。彼女の頭の中では既に《小野坂ユカ》は後輩である、という感傷に浸る余裕などはなく、倒すか、倒されるかの選択詞しか存在しない、ベルトを懸けて争うに相応しい強敵だと認識していた。だから起き上がり再び自分の前に立ちはだからんとする憎き相手に対し、容赦ない張り手や蹴りを休みなく加えていく――二度と相手が自分に歯向えないように!
 ユカの腹に浦井の膝蹴りが突き刺さり、小さな身体が真上に浮いた。吐き戻しそうな苦しみに襲われるが、それでもユカは彼女の目から視線を外さず、反撃の肘打ちを顎へ何度も何度も叩き込む。言葉にならない声をあげながら、汗で濡れた頬に髪を貼り付け一心不乱に、相手へ攻撃を加える姿は決して格好良いものではないがおんなたちの、互いの意地と意地のぶつけ合いを期待する観客たちには、それが十分に美しく感じられた。
 気迫のこもったユカの打撃に押されて、マットを踏ん張る足が次第に後方へと退いていき、定位置をキープする事が厳しくなってきた浦井は、ぐっと歯を噛みしめ力を入れ、僅かな間をついて形勢逆転を狙った平手打ちをユカの顎に目掛けて叩き入れた。
 ――――!
 目が覚めるような破裂音が会場中に響き渡るや観客たちは、騒ぎ立てるのを止め、まるで時間が停止したかのように静まり返る。この強烈な一撃でユカの両足から力が抜け、体重を支えられなくなった彼女はまるで操り人形の糸が切れたように、その場にぐしゃりと倒れてしまう。
 リングサイドの本部席から七海が親友の名を絶叫する。しかし意識朦朧として座り込んだままユカは動かない。
 浦井は、金色に染められたユカの髪の毛を掴み、強引に身体を引き起こすと自分の方に首を向けさせた。しっかりと目は対戦相手を捉えているユカだったが、その瞳の奥には輝きが無かった。浦井はまだユカに“闘う力”が残っているかどうか確かめたく、ロープへ向けて彼女の身体を振ってみた。力が残っていればきちんと背中でロープを受け、自分の所まで走って戻ってくるはずだからだ――しかし、やはりというべきか、ユカは身体を押された途端、数歩前に動いただけで膝をかくんと折り、再びマットへ倒れてしまう。
 激しく呼吸をし、四つん這いとなりながらも必死に起き上がろうと努力するユカ。
 浦井はふぅと息を吐き残念そうな表情をすると、大きく足を振り上げ彼女の背中にストンピングを叩き入れ、再びマットへ這いつくばらせゴミを扱うかの如く、彼女の身体をリングの外へ蹴落とした。
 レフェリーによる場外カウントが無情にも数えられる中、青色のセーフティマット上にくの字になって倒れているユカの周りに、雑務でリング周辺に待機していた選手たちが集まり囲んだ。各自それぞれが、彼女の名を口に出して励まし奮い立たせようとするが、ただ腹を上下させて大きく呼吸するだけで、ユカからの反応は返ってこなかった。

「ユカ、もういいよ。動かないで!」

 先程まで本部席に座っていた盟友・七海が、気が付けばユカの側までやってきて彼女の身体を起こすと、自分の膝に座らせて強く抱きしめていた。七海の目からは止めどなく涙が溢れ、泣き濡れて眼球が赤く充血している。
 試合とは全く関係ない七海が、試合権利のあるユカに触れた事を問題視したレフェリーは注意しようとするが、浦井はそれを遮り事の成り行きをリング上から見守った。仮に七海がユカを無理矢理リング内に、押し戻したとしても文句は言わないつもりでいた。そうなれば戻ってきた事を心底後悔させるほど、激しい攻撃を加えてやろうと思っていたからだ。
 七海の涙交じりの呼びかけに、ようやくユカは反応した。まだ表情の固さは残るものの、それでも笑顔を七海にみせて安心させた。

「――行かなきゃ。浦井さんが待っている」

 ダメージが完全に癒えておらず、おぼつかない足取りで立ちあがりリングへ戻ろうとするユカの手を、七海は掴んで離そうとしない。

「何故? あれだけ対等に渡り合えれば、もう十分じゃない?」
「駄目よ。わたしはまだやれる、闘えるの! それに――」じっと七海の瞳を見つめ、ユカは語り続ける。

「あの人に勝ちベルトを奪取して、あなた……赤井七海という《絶対的な存在》を超えたいのよ!」

 初めて耳にするユカの「欲望」。今まで笑顔と冗談だらけの発言で決して、己の胸の内を明かす事のなかった彼女の、熱く燃える情念や自分に対する嫉妬など、見てはいけないものを目の当たりにしてしまった七海は嫌悪感よりも、親友の自分に感情を全てさらけ出してくれた事を、何よりも嬉しく思った。
 ユカの手首から、七海の手が力なく解けていく。「ごめんね」と小さく口の中で呟くとユカは、剥き出しの腿をぴしゃりと叩き気合を入れ直し、床をしっかり踏みしめて下半身に力が入る事を確認すると、ロープを握り自分の身体をリングへ滑り込ませる。
 リングの中では厳しくも――どこか安心したような表情で、浦井が腰に両手をあてて待ち構えていた。

「場外カウントは止めておいたわよ。迷惑だったかしら?」

 あくまでも己のキャラクターを崩さず、上から目線な浦井の発言にユカは思わず苦笑いする。こうでなくては面白くない!ユカは頬を数度張り気合を注入すると、大きく振りかぶって浦井の胸にチョップを叩き込んだ。強烈な音と共に、被弾した部分の肌が瞬時に真っ赤になり、抉られるような痛みが彼女の身体に走る。浦井も負けずに膝を鋭利な武器と変化させ、ユカの腹に突き刺し身を屈ませると追い撃ちとばかりに首筋へ肘を落とす。頸椎に電流が走るがユカは意地でもマットへ這いつくばろとしない、必死になって全身に力を入れ体勢を持ちこたえさせ、下から浦井を睨みつける。
 突然、互いが申し合わせたかのように、反対側のロープへ走り出した。
 どちらも反動を利してスピードを加速させ、打撃技の威力を倍増させる事を考えていたようだ。ショルダータックル合戦か、ドロップキックの相討ちか?――観客たちは定番のムーヴを予想していたが、ユカの動きは彼らの予想を遥かに超えていた。クローズラインを狙っていた浦井の胸を蹴ると、相手の補助無しにそのままバック宙したのだ。普通ならばコーナーポストで行う威嚇技の空中回転(サルト・モルタル)を、人体で行うウルトラC級の技に観客たちは信じられない!と驚嘆の声をあげ、技を受けた浦井本人も自分の身に何が起こったのか理解できずにいた。
 相手の隙を突いてユカは、顔面へめがけて打点の高いドロップキックを敢行する。思考停止して反射神経が鈍っていた浦井は、防御する事を忘れ目の高さまで舞い上がった彼女が放つ飛び蹴りを、もろに喰らいリング下まで勢いよく転がり落ちていった。
 「行くぞぉ!」リング中央で四方の観客に叫ぶとユカは、場外へ向かって駆け出していく。
 頭を振りダメージの回復に努めていた浦井は、リングの周りを照らしている照明が一瞬、暗くなった気がしたのでふと天井を見上ると、そこには鳥の翼のように大きく手を広げた、人間らしき物体が自分の方へ落下してくるのが見えた――ユカだ。彼女はリング内外を仕切るロープを階段のように駆け昇り、真上に跳び上がると眼下の敵を標的に飛び込んでいった。ユカの体重と落下で加わった重力が、衝撃となって一気に浦井の身体に襲いかかり、耐えきれない彼女は、ユカの身体もろともセーフティマットに激突してしまった。
 地鳴りのような、驚愕と歓喜の低い叫び声が会場いっぱいに響き渡り、観客ひとりひとりは目の当たりにした光景に対し、湧き上がる興奮を押さえられずに打ち震えた。
 先に起き上がったユカは、仰向けに倒れている浦井の腕を掴み、無理矢理起こすとリングの中へ身体を押し入れた。ルール上ではリングアウト勝ちでもベルトの移動はあるものの、どうしても彼女と「完全決着」を付けたいユカは敢えて危険を犯してまで、この思い切った行動に出たのだった。膝をつき、四つん這いになって呼吸を整えている浦井を、リングのエプロンステージでトップロープを固く掴み、じっと見つめ攻撃のチャンスを窺うユカ。
 リングに垂れ下がる長い黒髪を蠢かせ、浦井が顔を上げた。「今だ!」ユカは意を決してトップロープへ跳び乗り深く腰を落とす。スワンダイブ式ドロップキックを狙っている様子だ。しかしチャンスを窺っていたのはユカだけではなかった。突然浦井は立ち上がると、ユカの乗っているロープの方に向かって走り出し身体を衝突させたのだ。黒く硬いロープが前後に揺れバランスを崩した彼女は前方へ回転しマットへ落ち背中を強打してしまう。やはりユカには“メイン”という舞台は荷が重すぎたのか? キャリアも試合経験も豊富な分、浦井の方へ少しだけ有利に事が運んだようだ。
 この僅かな勝機を逃がしてはなるものかと、浦井はユカの両手首を掴むや巴投げ(モンキーフリップ)で後方へ投げ、もう一度ダメージを負わせるとすぐさま相手の腕を曲げ、自分の脚を交差させた腕の間へ通して、足四の字固めの要領で一気に締め上げた。普段は相手への屈辱と観客を煽るための「見せ技」として使用している【熟女式グラビア固め】と表される技だが、いざとなれば立派にギブアップを奪える拷問技(サブミッション)と化す。裏返った肘と肘とが重なり合い、絞り上げられる事で鋭い痛みが脳天まで突き刺さり、ユカは思わず悲鳴をあげた。
 観客たち全てが、この小さく勇敢な女闘士に声援を送る。
 リング下の七海も、エプロンステージを両手で叩いて彼女の名を叫び続けた。
 彼らの声援によって生まれた“見えない力”が、エンプティーランプの点っていたユカに注ぎ込まれた。浦井に腕を極められたまま、疲労で重くなった身体を引き摺りどうにか左足をサードロープへと乗せて、ロープエスケープに成功するのだった。そんなユカに、観客たちは「よく頑張った」と割れんばかりの拍手を送り労った。
 「そんな……」浦井がぼそりと呟いた。この技で勝負を決めるべく全身全霊を込めて放っただけに、仕留めきれず逆に逃げられたという“現実”を正直受け入れられない。浦井の気持ちがマイナスへと傾いた、僅かな瞬間を見逃さないユカではなかった。素早く彼女の腕を掴みロープへと振ると、自らも反対側へと走り加速を付けた。三本のロープを大きく揺らし、リング中央付近に浦井が返って来た所へユカは、ロンダート(側転からの1/4捻り)で高く跳び後ろ向きに彼女の肩に乗ると、右腕を持ったまま身を捻り後ろに反って宙ぶらりんになった。首に留まったままの太腿と自分の右腕が頸動脈を圧迫し、浦井の意識は次第に遠退いていく。サブミッションにはサブミッションをと、ユカもオリジナル技である【ミステリオ・ラナ式三角締め】で応戦した。
 血流が遮断され徐々に視界がぼやけていく中、浦井は残っている力を振り絞り叫び声と共に、ユカの身体を高く持ち上げ、鉄製のワイヤーが中に入っているリングを取り囲むロープへと、彼女の後頭部を強く打ち付けた。割れるような頭の痛みに、決して離すまいと必死で絞めていた太腿が外れてしまい、ユカはマットへと落下してしまう。
 双方が死力を尽くし“魂の削り合い”を繰り広げてきた結果、どちらも体力は残り僅かとなり、あとは気力と意地と見栄だけで彼女らはリングに立っていた。

 あとひとつ、大技が決まれば勝負はつく――攻守の入れ替わりが激しく息つく暇もない、最高の“王座決定戦”を本部席から見守っていた元川は、ペットボトルの水を喉へ流し込み喉の乾きを癒すと、テーブルに手を付いて身を乗り出し、リング上でどちらが勝負の女神から寵愛を受けるのか注目した。

 浦井はユカの背後を素早く取ると、腰に腕を廻し後方へのスープレックスを狙い持ち上げる。しかしこれを読んでいたユカは足をばたばたとさせ重心をかけ、絶対に投げられまいと必死になってこれをディフェンスする。力を入れ過ぎた浦井の手が一瞬緩むやこの期を逃すまいと、今度はユカが背後に回った。同じく彼女もスープレックス狙いだったが、これも肘打ちによる抵抗により不発に終わっってしまう。最後のチャンスを掴むべく浦井は、ユカの足を踵で踏みつけ隙を作ると再度バックに回った。

 ――今度こそ、今度こそは絶対に。

 呪文を唱えるように、ひとり口の中で浦井は呟いた。何をしても、どんなに攻撃を加えても次には必ず立ち上がり反撃をしてくる《小野坂ユカ》というレスラーにどうしても勝って、彼女ら東都女子プロレスの選手たちが渇望する《団体の象徴》POM王座を手中に収めたいという、その一念が浦井を突き動かしていた。マットを踏みしめる両足に力を込め、胴に回した腕をしっかりと握り直し再びユカを持ち上げる――だが腕に重量が掛かるだけで彼女の身体は一向に上がる気配がない。ユカは浦井の脚に自分の脚を絡め、投げられないように防御していたのだ。
 自分の胴を掴んで離さない、浦井の腕を強引に剥がすとユカは素早く体を廻し、彼女と正面に向き合った。突然の事で何がどうなっているのか状況が理解できず、混乱気味の浦井の脇に頭を入れ両腕を胴体ごとしっかりとホールドすると、ユカは低い軌道を描いて彼女ごとブリッジをする。北斗原爆固め(ノーザンライト・スープレックス)が決まったのだ。両腕を固められており受身を取る事が出来ず、浦井は頭からマットに突き刺さった。レフェリーがマットを叩きフォールカウントを数える声がぼんやりと耳に入る中、彼女はどうにかして肩を上げこれを停止させたかったが、マットにめり込んだ首から身体中に広がるダメージが酷く、もう指一本すら動かす事も出来なかった。三つ目のカウントを叩き終えた瞬間――小野坂ユカは遂にこの試合の勝者となった!
 観客たちの祝福の歓声と拍手が一斉に、リング上で膝をついて呆然としているユカに贈られた。大の字になって側で寝そべっている浦井の姿と、お客さんからの祝福の声を耳にした事で彼女は、やっと「自分が勝ったのだ」と実感しユカは、拳を握りしめた両腕を天に突出して、観客たち全員に歓びの感情を表現するとその瞬間、会場は今夜一番であろう凄ましい程の湧きあがり方をみせた。彼女は敬愛する先輩・浦井冨美佳に勝てた事の喜びと、他団体へ王座を流出させる事無く自らが奪い取り、そして無事東都女子の至宝を守り抜いたという安堵感で胸がいっぱいになっていた。
 改めてレフェリーから勝ち名乗りを受けた後、ユカは団体代表の元川から《至宝》メトロポリタン王座のベルトを授与された。親友・赤井七海の腰で輝いていたこの《エースの証》をずっと隣で、またはリングの下で羨望の眼差しで見つめていた彼女にとって念願の戴冠だ。これまで自由奔放な性格ゆえ《エースの責任》という重圧を押しつけられるのを恐れ、しっかり者の七海に任せっぱなしだったが今では違う。団体の危機を目の当たりにし覚悟と責任が芽生えたユカにはもう怖いものなどなかった。

「悔しいけど――最高にカッコいいよ、ユカちゃん」

 浦井が握手を求め手を差し出す。結果には若干悔いが残るものの、試合内容には大変満足しておりその表情は晴れ晴れとしていた。ユカは彼女からの握手の申し出を受け、両手で握ると深々と頭を下げ感謝の意を表した。実は彼女の目には感謝と感激の涙が浮かんでおり、浦井に見られるのが恥ずかしく顔を上げられないのだ。

「ありがとうございます。浦井さんが対戦相手で本当良かったです!」

 涙声で感謝の弁を述べるとユカは浦井に抱きついた。環境の変化で変化せざるを得なかったユカの、浦井に対する“気持ち”は根っこの部分では全く変わっておらず、彼女の体温を直に感じた瞬間三年前の、団体旗揚げに向けてみんなが切磋琢磨していたあの頃の自分に還ってしまうのだった。それは浦井も同じで、試合中はどうしても倒したい好敵手ライバルだった彼女が今では、デビューを夢見て自分の後を付いて回っていた可愛い後輩に戻っていた。そして誰かひとり自分の側にいない事に気が付く――七海だ。彼女は親友の勝利の瞬間、祝福をしようと無意識にリングに上がってきたが、浦井とふたりで健闘を讃えあっているのを見て声を掛けるタイミングを失い、リングの中をうろうろと歩き回っていたのだった。

「七海――」

 そんな彼女にユカは声をかけ手を握る。

「ここでいうのはちょっと照れくさいけど……ありがとう、応援してくれて」
「親友でしょ、あたりまえじゃない。それに今のユカ、何だか別人に見えるよ?」
「今だけだよ――明日になればまた普段のわたしに戻るわ」

 ユカは自分の元へ、七海を手繰り寄せると感謝のハグをした。なかなか“男前”な行動だがふたりの身長差が妙な違和感を生み出し何処か可笑しい。そして彼女は何も言わず、掴んだ手をそのまま浦井へと渡した。七海は無言になり表情に緊張が走る。今まで嫌いだ、許さないと言ってきた相手を目の前にし、恐怖と嫌悪が入り混じる複雑な感情が彼女の心を支配する――しかし初めて彼女に本音をぶつけ“対等”に向き合えた今日、そんな“負の感情”は以前よりもずっと薄まった感じがした。元の関係に戻るまであと一歩だ。

「七海……昨日はごめんね、感情的になって私が上手く試合をリードしてあげられなくて。そして、これまで東都女子を支えてくれて本当にありがとう」 

 浦井からの謝罪と感謝の言葉――彼女が退団した後も、この狭い業界内で顔を合わせる機会は幾度とあった。しかし頑なにそれを拒み続けていた七海だったが、「あの頃」のようなリラックスした雰囲気で彼女から直接言葉をかけられ、長年自分の心を縛り付けていた不信感が音を立てて瓦解する。
 七海は浦井の胸に顔を埋め号泣した。思いの丈を言葉にしようとするが口が上手く動かず、ただ泣き続けるばかりの彼女を浦井は、かつての“長女”の役目として黙って抱きしめた。これこそが最高のハッピーエンドじゃないか!――ユカは抱き合うふたりを間近で見ながらそう思った。

「何だか、旗揚げ当時に戻った感じだな?ユカ。さて、僕も冨美佳と――」
「元川さんはダメだと思いますよ」
「そうかぁ……残念だ」

 ユカと近寄ってきた元川とが談笑する。観客たちが一部始終を見ている事もすっかり忘れ、リング上は和やかな雰囲気に包まれていた。自分たちは蚊帳の外であるにも拘わらず、東都女子の現役選手とOGによる謝罪と修復のドラマを目の当たりにできた彼らはそれでも満足だった。
 浦井にチャンピオンベルトを締めてもらい、七海が肩車でユカの身体を担ぎ上げてリング上をひと回りし、会場にいるひとりひとりに《新チャンピオン》のお披露目をする。東都女子と浦井との関係が最悪だといわれていた頃には、とても想像できなかった光景がいま観客たちの目の前に広がっているのだ。
 親友でライバルの七海は、必ず彼女のタイトルに挑戦してくるはずだ。
 浦井だってこのまま負けっぱなしで終わるとは思えない。
 小野坂ユカはこの先に待ち構えているであろう、更に激しくなる闘いに胸躍らせるのであった。この試合で新たに芽生えたエースとしての誇りと責任を胸に抱いて――

 終

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小さいだけじゃダメかしら?を読んで (じっちゃん)
2017-06-24 12:54:13
お久しぶりです。コメント遅くなって申し訳ありません。【女子プロレス小説 】小さいだけじゃダメかしら?前・中・後篇を読ませて頂きました。

前篇に目を通した段階で「これは軽はずみなコメントは出来ない。最後まで読み込んでから書き込みをしよう」と決めてました。

私自身、今はプロレスを観る事がなくなってしまいましたし、ここ数年は小説の方も書かなくなってしまいましたから、感覚は鈍ってますが、トレーニングで培われる受け身の強さがプロレスラーの強さという考えは今も変わってませんので、小野坂ユカの姿には惹かれるものがありました。

今の女子プロレスの現状を解った上、それに則した形でkazuさんが思い描く理想の女子プロレスラーというのが描き出されていると思います。

久しぶりにkazuさんのプロレス小説を拝見して、kazu自身様々な経験をしてきて、物の見方が変わってきたんだなと感じます。

何より読み手に対して優しく書かれていますし、必要以上には突っ込んで語らず、ユカに関しては上手く描けていると思います。

予測不能な浦井富美佳の言動も、ユカの浦井に対する想いが、ある程度の理解を与えていました。

残念だったのは、親友である赤井七海のチャンピオンとしての意地とベルトに対する執着が希薄だった事でしょうか。

プロレスラーとしては精神的に脆いと感じましたし、結果だけをみれば親友の一言でベルト剥奪という形になっていますので…どんなに性格良くて実力があっても譲ってはいけない処では?

怒りを露わにして親友の間柄でも穏やかでない雰囲気にさせても良かったでしょうし、もしくはベルトを流出させたくないフロントの理不尽さを表現するのもありだったと思います。その方が浦井の退団する理由につながるのでないかと。

いずれにせよ、未練あり執着あるベルトでこそ、理不尽に奪われた七海の言葉は説得力を持つ。浦井が奪うに値するベルトとなるし、七海が持っていたベルトだからとミカを発奮させる動機にもなる…とはいえ、無責任に好き勝手言えるのは私が外野の立場だからでしょう。

中篇の構成と後篇の落とし所は苦心したと思われますが、完成度の高い作品に仕上がってると感じました。

読ませて頂きありがとうございました。女子プロレス小説に限らず、kazuさんの次回作、読むのを楽しみにしています。
感想ありがとうございます (kazu)
2017-06-24 18:09:42
じっちゃん さま
本作品を読んでいただき真にありがとうございました。息抜き程度に書いてみたのですが、登場人物の行動が《後付け》ばかりで「なんのこっちゃ」の連続だった事でしょう。早速頂いたじっちゃんさまのご意見を肝に銘じ、今後の作品執筆に活かしたいと思います。
重ね重ねいつもありがとうございます。Facebookの方でも駄小説を投稿しますので、そちらでもよろしくお願いします。

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