HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

『無敵飛金剛』を観た

2013年02月01日 | 中華圏映画
 かれこれ15年ぐらい前から観てみたかった作品が、いきなり目の前にあるとビックリするね、ホント。パチモン好きにはちょいと名の知れた台湾製仮面ライダー『無敵飛金剛』(1977)がなんとYouTubeでフルサイズでアップ(分割ではあるが)されていたのだ。今までも中国語題名(前記以外に『飛天遁地金剛人』の別題あり)や英題で検索するもののフッテージはあれども全編はなかった。今回発見したのはなんとミャオ(ホン)語吹替のもので、タイトルもミャオ語題(『Kab Npauj』という)だったのだ。う~ん、そりゃ判らんわ。

 物語は悪の金色の鬼面人が、子供たちを「スーパーヒーローにしてあげよう」と言ってたぶらかし、人体改造装置によって次々に怪人に仕立て上げられるが、危機感を抱き途中で脱走した主人公(子供)が、町の老科学者の手によって正義の超人・飛金剛へと改造され、子供たちを救うため鬼面人率いる悪の怪人軍団に戦いを挑む……という感じで、明らかに日本の『仮面ライダー』の影響を受けたものになっている。同時期か以前かは不明だが、台湾では『仮面ライダー』の映像と現地で撮影された新撮部分(着ぐるみアクションも含め)によって構成された『閃電騎士』シリーズが存在しており、ライダー人気は台湾・香港ではかなり高い。

           
           

 しかし諸外国で作られた日本風特撮ヒーロー映画、という興味以外はかなり問題のある作品だと言わざるを得ない。特に顕著なのはアクションシーンでのつなぎが悪いという事。さっきまで原っぱで戦っていると思ったらいきなり次は吊り橋での戦いに移り、15秒もしないうちに河原で対決……と落ち着きがなく、さらにいきなり飛金剛がパンチを打つと敵の怪人が大爆発で戦いがいきなり〆で観てるこちらには事前に情報がないので呆気にとられてしまう。全く映画としてどうなのよ……?という感じ。まだコイツなんかはいいほうでラストの大立ち回りなんて、初めて画面に登場したであろう新怪人を、「親友を殺された主人公の怒り」によって5秒も経たないうちに爆殺という、ホントに大畑晃一・著『世界トホホ映画劇場』の説明通りでビックリ!これが日本だったら残りの尺が少なくても、もうちょっと見せ場作るぜ。そうやって考えてみるとショウブラザース製作の『中国超人インフラマン』ってのは良く出来た中華特撮ヒーローだなぁ。

           
            
           

【総評】全くダメってわけではないけど、ちょっと観てて辛いかな?ただこれをタダで観れた事は奇跡に近いと思う。「この映画のココがダメなんだよねぇ~」って言えるワケだし。

           

嗚呼!懐古的香港電影 『ロボフォース/鉄甲無敵マリア』(1988)

2012年06月11日 | 中華圏映画

 1980年代中ごろから90年代前半にかけて、香港映画界は数々の傑作群を産み出している。今思えばこの頃が一番、香港映画が《香港映画》であった時代で自分の中ではゴールデン・エイジ…黄金期だったのかな、と思う。実際1980年代だけ振り返ってみても、ジャッキーのゴールデン・ハーベスト(GH)移籍~老舗ショウ・ブラザース、GHに続く対抗勢力シネマシティ(CC)の台頭&D&B設立~ショウ・ブラザース、映画製作を(一時)停止…等々、ドラマチックな出来事の多い1decadeだったといえよう。個人的に香港映画そのものに興味を持ち始めた(ジャッキーとか功夫映画とかじゃなく)のが80年代中ごろからなので、思い出深い作品が多いのもこの時代のものばかりだ。

 最近、youtubeなどの動画サイトで、憑かれたようにこの時代の香港映画ばかりを見ている。その多くが過去に日本公開やビデオリリースされたものばかりだけれども、中古VHSも最近は入手しにくいしDVDになっていない作品もけっこうある(あくまで国内での話)。ホラ、動画サイトならタダで観れるワケだしね。そんなワケで1980年代や90年代前半といった、香港映画がイチバン熱く、面白かった《あの時代》の作品たちを懐古してみようと思った次第だ。


 ツイ・ハーク&ジョン・シャムが製作、サリー・イップが主演という《大作》モードなキャスティングにもかかわらず、現物からはすこ~しチープ感も漂うSFアクション映画『ロボフォース/鉄甲無敵マリア』(1988)は結構、いまでも印象深い作品で、ラストの女性型アンドロイド《マリア》(+ハーク&シャム)と敵のロボット兵器《パイオニア1号》との対決は何度当時ビデオで見返したか。90分前後という上映時間が心地よく、こちらがダレてくる前に場面転換するので、この頃の香港映画は友人たちが集まった際に流すのに丁度よい、パーティームービーとして重宝しておりました。

 この作品、劇場公開時に観にいったのだが、配給がシネ・ロッポニカということで普段ポルノ映画を上映しているにっかつ系の映画館だった、というのも映画の内容とワンセットで思い出に残っている。今回久々にyoutubeで観たのだが、台詞が広東語になっていて、オープニングのテーマ曲も劇場公開&ビデオではシンセのみのインスト曲だった(はず)が、広東語ボーカルが入ったものになっていた。男声合唱のテーマ曲は広東語独特のリズムと相まってなかなかカッコいい。台詞も英語と日本語のものしか観た事がなかったのでまさに《初遭遇》である。

 ちなみにこの映画、今や押しも押されぬアジアの大スター、トニー・レオンが出演しているのだが、全くといってオイシイ所がない、《誰がやってもいいような》役でちょっと悲しい(大円団まで顔を出しているので、それだけでも十分だと思う)。のちに『ハード・ボイルド』や『HERO/英雄』なんかにも出てとりあえずアクションもこなせるトニーではあるが、まだこの時点では映画俳優としてのキャリアもまだまだで、周りには一流の監督や製作者、ピンで主演作の撮れる女優がいたのだからこの扱いは仕方なし、か?まぁ、ビリング(表記列)的には同列だったラム・チェンインにバイクで空飛ばれちゃぁねぇ…


 何かにつけて、クルクルと旋回するチン・シウトンのアクションも最高だし、ラストに4人(3人と1体のアンドロイド)が夜道で踊るシーンを見る度にいつも「あぁ、いい映画だなぁ」なんて思ってしまう、わたしの心のビタミンムービーのひとつである。


『新桃太郎』を久々に観た

2011年09月12日 | 中華圏映画
 この映画は、現在30~40歳代の方であれば懐かしさと共に思い出されるタイトルであろう。無論ワタシもそうですが…

 『霊幻道士』(1985)に端を発した、日本に於けるキョンシー・ブームが末期を迎える頃、『霊幻~』の二番煎じ的作品である『幽幻道士』を放映し、あまりの高視聴率にキャストをそのまま使って30分枠のTVドラマまで製作(台湾のプロダクションが下請け)させたりして、ほぼ独占的にブームを牽引していた某TV局が「『幽幻~』のキャストとカブってるし、一応流しとくか」(妄想)とばかりに突如放映されたのがこの『新桃太郎』(1987)だった。

 この映画は誰でも知っている日本の童話『桃太郎』を基本ベースに、いろんな面白要素(SFX、アクション、ギャグ等)を盛り込んで作られた結構な娯楽大作なのだが、放映当時(15~6歳)に観た時には「随分安っぽいなぁ」と思っていた。中華圏特有のクンフーベースのアクションシーンは面白く観れるが、光学合成中心の特撮やベタなギャグ、そしてラストに登場するワイヤー繰演の桃ロボットのチープさに幼心(って歳でもないけど)に安っぽさを感じたのだが、今見れば鬼ヶ島(悪魔島)のセットなんかはよく出来てるし、赤鬼大魔王率いる鬼軍団による村焼き討ちのシーンも、火を使ったりして迫力があってなかなか良い。こんなジュブナイルな内容にも関わらす結構金掛かっているのだ。20年以上経つと観る側も《寛容な気持ち》になっちゃうのかも知れないけど、おっさんになった現在の目で観ても充分に面白かった、っていうのは正直な感想。

 逆に今でも「凄ぇ!」と感心したのは主演のリン・シャオロウ(林小楼)の激しすぎるアクション。立ち回りはもちろんの事、相手から攻撃を食らった際、ワイヤー+コマ落としによる効果により《凶悪》と思える程のスピードで吹き飛ばされていく様は何度観ても凄まじい。きっと彼女自身初の大作という事で相当気合いが入っていたと思う、それは劇中に見せる表情からでも充分に伝わってくる(ワタシだけ?)。そんな彼女の頑張りがあってこそ、20年以上経った今でもこんな色物的映画がワタシや同世代を生きた人たちの心に、鮮烈な記憶として残っているのだろう。

 この『新桃太郎』という作品はワタシら世代の日本人だけでなく、本国台湾の人たちにとってもノスタルジーの対象として受け止められいるようだ。先日、動画サイトで台湾で製作放映された林小楼の現在を追ったドキュメンタリー番組を見ていたら、番組司会者に「桃太郎、林小楼です!」なんて紹介を受けてスタジオに登場していた。今でも林小楼=桃太郎なんだなぁとちょっとだけ衝撃を受けた。ワタシたちと同じ時間を生きた台湾の人たちも、あの時彼女が演じた《桃太郎》が忘れられないんだな、やっぱり。ちなみに番組内で紹介された彼女の現在の肩書きは“演員工作人”。字面からはどんな仕事かよくわからないが、舞台の振り付けをしてる姿が画面に映っていた。見た目はすっかりおばちゃんになってしまったが、それでもあの可愛らしい笑顔は健在だった…!

『虎拳』、観賞す

2010年11月10日 | 中華圏映画
 2年くらい前に中華系動画共有サイトのYOUKUから大量に古い功夫・武侠映画をDLしたのだが、DVD用の動画ファイルにエンコードしていないためどんな映画だったか忘れているものばかり。「これは!」と思った奴は速攻で変換してDVDに焼いてはいるのだが、DVD-Rも決して安くはないので時間と金銭の問題だ。

 その中に陳星主演の『虎拳』(1973)があった。動画サイトお決まりの「投稿する動画ソースの不備によるエラー画像」も殆どなく綺麗な状態だ。とはいってもどうしてもDVDデータ用のサイズに拡大してしまうので画が多少荒いのはしょうがないけど(VCDよりかなり落ちる)。

 亡き母親が残してくれた金塊を巡って、陳星演じる主人公と弟役の龍飛が激しいバトルを繰り広げるこの作品、格闘に次ぐ格闘アクションの連続で(動機が動機だから)初めから終わりまで陳星の空手アクションが堪能できる構成となっているが、後味は非常に悪い。それもこれも龍飛が金塊を独り占めせんがために陳星に手下を送るのは常套手段だが、実の父親まで結果的に殺害してしまうし、妹まで戦闘の巻き添えで殺してしまうという極悪非道ぶりだ。…ねぇ、ここまでしないといけませんか?

 演員表には陳星のすぐ次に表記されている《見所のひとつ》である倉田保昭だが、実際に登場するのは映画が中盤を終えて以降。龍飛と敵対する小ギャングのボスの用心棒、という別に倉田さんじゃなくってもいいようなキャラクターだ。観客動員のために無理矢理陳星vs倉田の一戦を挿入したって感じ。アクションは悪くないですよ、うん。ただ、ここであれだけ極悪非道でやってきて観客からも「死ねばいいのに」と思われてきた龍飛が、大悪党・倉田の登場で一瞬ではあるが情が移っちゃうんですね。ええ、ほんの一瞬。その後はまた例の極悪非道な龍飛に戻っちゃいますけど(笑)

                             

『唐山功夫』を観る

2010年11月07日 | 中華圏映画

 えー、先月は1個も記事を投稿出来なくて申し訳ございませんでした。どんだけ書く気が起こらなくても一月に最低ひとつはアップいていたんですが…先月でちょうど当ブログも5周年を向かえ何かやらねばと思っていたんですがねぇ。

 今回は『唐山功夫』(1974)を紹介っ!

 題名の通り本作は直球な功夫映画で、何の捻りもない、良く言えば定番通りの展開で映画は進行していく。
 
 幼い頃に母と死に別れ、ずっと山奥の寺院で育てられた主人公が町に出て来て、自分を助けてくれた恩人一家に因縁を付けてくる、日本人武術家をバックに従えるチンピラ一味から得意の武術で助けるというありきたりなストーリーではあるが、個人的には何故か惹かれるモノがあり、つまり「洗練されてない」所に魅力を感じたのだ。

 殺陣一つにしてもブルース・リーのように一つ一つの技が美しい訳でもない、劉家良のような道理に基づいた本格的な動きでもないし後のジャッキー作品のようにアクロバチックでもない。「形なんてどうでもいい、ただ相手をブチのめせばそれでいいじゃないか」的な荒々しさがそこにはある。これこそが日本で《空手映画》と呼ばれていた頃の功夫映画って気がした。まぁ、偏食映画ファンなんで多分にマイナー作品に対し肩入れしてますけどね。

 先に《定番通りの…》と書いたが、本作は一風変わった作劇法を見せており、主人公である石峰が最初は全く良いところ(つまり腕っ節の強さ)を見せず、恩人宅の息子役である李欣華が格闘場面などオイシイ所を補っているのだ。これは勝手な推測だが、全くといってスター性のない石峰では客が呼べないと判断した製作者が二枚目の李に前半を任せて客寄せしたのではないか?私も最初彼が良いとこ持っていくんで「このまま主役張るんかな?」と思っていたのだが、チンピラたちに脚を負傷させられて以降、全くいいところが無く主役の座を石峰にバトンタッチするのだ。スケジュール&アクシデントが理由なのは別として、前半後半でヒーローが変わっちゃう映画ってどうよ?

 なお本作には、若かりし頃の成龍夫人である林鳳嬌がヒロイン役(か?)で出演しており、その初々しい姿と演技は観る者の目を惹き、《青春の息吹》を感じさせる彼女の存在は、後に文芸映画でトップに立った事を十分に理解できたほどだ…全く持ってスター性のない石峰を観れば観るほどに…


 PS:昨夜(正確には本日)放映された『ザ・サンクチュアリ』、御覧or録画されましたでしょうか?放映形式はバイリンガルではなく吹替のみの放映でしたが、馴染のないタイ映画、しかもアクションものということで吹替はベストだと思いました。


リアル「緑が森」! 『大侠梅花鹿』を観る

2010年06月30日 | 中華圏映画

 お待たせいたしました、約一月ぶりの更新でございます。

 ここ最近はお中元用短期バイトとmixiコミュニティー用のイラスト描きばっかりで、映画レビューのほうはとんとご無沙汰になっていたのですが、ようやく溜まっていたDVDを少しずつ観賞できる余裕ができてきました。といっても定期的に更新できるかどうかは別の話ですが…


 今回は1961年製作の台湾映画『大侠梅花鹿』を紹介します。


 まず、掲示してあるポスター画像を見てもらいましょう。この図版から貴方は何を想像しますか?

 ヒーローもの?ファンタジーもの?

 実はこれ、動物を擬人化したもので、スーパーパワーもスーパーヴィランも存在しません。とある森で繰り広げられる悪い狼集団に小動物を守るために殺害された父の敵を打つために主人公・梅花鹿の復讐の旅を描いた映画だったんです。

 いわばリアル『山ねずみロッキーチャック』、もしくは『銀牙』(あれは犬か)なんですね、コレ。

 いい大人が動物キャラクターの衣装(全身タイツ)を着て、それでいてかなり人間くさいストーリーを演じるんですから違和感バリバリです。男性キャラはともかく女性キャラのコスチュームはどれも色っぽく(61年当時では)、劇場に子供たちを連れて行くお父さんたち向けのサービスとしか思えません。中でもパッと見ワンダーウーマン(もしくはダルナ?)みたいなセパレートな衣装を着ていろんなキャラを誘惑する小悪魔・狸狐精はインパクト強すぎますし、梅花鹿の恋人である鹿小姐は、彼と別の鹿との自分を賭けた決闘に心痛めたり、敵である吸血狼を助けてしまったりとあまりの人(鹿か、この場合)の良さに違う意味でインパクト強すぎです。

 くだらない作品が多数存在するアメリカのグラインドハウス映画、もしくはドライブ・イン・シアター向き映画と十分にタメを張る、奇跡のトラッシュムービーである『大侠梅花鹿』、いったい誰が作ろうなんて言い出したんでしょう?謎です。
 
 
 こんなスゴイ映画を見る機会を与えてくださったスージー大哥には感謝っ!


 追伸:この作品で主役の梅花鹿を演じた俳優・龍松はのちに凌雲と改名。そう、あの香港ショウ・ブラザースのトップ俳優のひとりであります。人に歴史あり、ですねぇ~。


『一石二鳥』を観る

2010年03月16日 | 中華圏映画
 今回は《台湾娯楽映画の巨匠》チュー・イェンピン(朱延平)2005年の作品『一石二鳥』を紹介。
 このタイトル、検索すると日本の諺の方ばっかりがヒットして、なかなか映画にたどり着きません。こんなタイトル付けるなよ~(涙)


 話は結構複雑で、中国語が分からないので詳しくは理解できなかったが、要は『血闘竜門の宿』のような客桟戯を中心に、時折コメディ俳優(ン・マンタエリック・ツァン他)によるギャグが挿入されるという構成となっている。砂漠の真ん中に立つ客桟を舞台に、都へ護送する要人と、それに引き付けられるかのように集う武林の侠客たち。果たして要人の命を狙っているのは誰か?そして伝説の侠客とは一体誰か?謎が謎を呼ぶサスペンスフル(かつコメディ)な作品である。

              

 コメディではあるが大筋は武侠映画であるこの作品、巨匠キン・フーに挑戦したわけでもないのだろうが、前記の『血闘竜門の宿』や『迎春閣之風波』のように客桟を舞台とし、ほんの1~2シーンを除いてほとんどが客桟内でドラマが展開していくのだ。それゆえ息が詰まるような窮屈な感じが表現されていて、クライマックスに向けての高揚感の持っていき方は並大抵ではない。そしてそんな息苦しいサスペンスの合間にガス抜きのようにどーしようもないギャグが挿入され、観客はホッと一息つくことができる。

              

 イェンピン監督はベテランなのでそういう細かい芸当が可能なのであろう。もし、これがぽっと出の新人監督であったらサスペンス限定にするか、または上手く調合できなくてメチャクチャなものになるかのどちらかだろう。《娯楽映画》と人は軽々しく言うけれども、実は結構な技術が必要なのだよ。

              

『超級学校覇王』を観る

2010年03月02日 | 中華圏映画
 今回は、昨日に引き続きバリー・ウォン監督の大傑作『超級学校覇王』(93)を紹介。香港映画の世界に足を踏み入れる者なら避けては通れない“踏み絵”のような一作で、香港影星の懐の広さと、当時の香港映画が持っていた闇鍋的面白さが(もちろんダークな面も)イッペンで味わえ、「これこそが香港映画!」と呼べる香港映画ファン歴ウン十年の某氏が太鼓判を押す作品である。


 物語は2043年の未来から極悪犯罪者《将軍》を死刑にした裁判官・余鉄雄の青年時代にタイムワープして彼を殺害しようと企む部下たちの計画を知って、未来警察の精鋭部隊《飛龍特警》のメンバー3人は1993年に渡り彼を探し出し《将軍》の陰謀を阻止するというものだが、また例によって話がいろいろ飛びまくり、なかなか本筋へと進行しないのだ(笑)

              

 まず驚くのは「彼らだけで主演映画が撮れる」ほどの豪華出演陣。列記するとアンディ・ラウ、ジャッキー・チョン、サイモン・ヤム、アーロン・クォックなどなど。ねっ、すごいでしょ?物語のキーマンとなる余鉄雄の若かりし人物には当時《第二のチャウ・シンチー》として数多くの作品に主演していたディッキー・チョン、彼の妹役でチンミー・ヤウ、本編中最大の悪役《将軍》にはロー・ワイコン、彼の手下にはビリー・チョウやまだ新人だったイーキン・チェンなどが顔を出している。そんな面々がギャグやアクションを披露するのだから面白くないわけがない!視覚ギャグや有名映画のパロディが一杯で、私はというと冒頭のアンディ+ジャッキー+サイモンのコンビ芸で思わず笑ってしまいました。日本語字幕がなくて躊躇してる方、全然無問題だ。

              

 この映画、一般的にカプコンの格闘ゲーム『ストリートファイターⅡ』のキャラを無断拝借したということだけで有名であるが、それだけで語られるのはちょっと残念な感じがする。もちろん『ストⅡ』を意識した(っていうか武侠映画では当たり前の)アクションシーンはあるが、映画の中心は学園ラブコメディで、グデグデの青春ドラマの合間に急に思い出したようにハードなSFっぽいアクションが挿入されるという具合だ。

              

 そのアクションシーンだが、ゲームキャラクターを思わせるようなコスチュームを着た出演者が、ゲームそのまんまのスピード感あふれるアクションを見せてくれるのだ(ワイヤーと早回し等の編集技術と光学合成)。とにかく速いはやい。波動拳やソニック・ブームが死ぬほど出てくるので驚くより先に笑いがこみ上げてくるぞ!あたかも「現実」ではないことを画面を通して言っているようなもんだ、あれは。そんなナイスなアクション演出を担当したのが、またもやチン・シウトン先生(武術指導はディオン・ラム&馬玉成)。やっぱり先生には敵いませんね…

              

 古装片ブーム等が起きたこの1991~1994年は個人的には「香港」映画最後の黄金時代と位置づけている。香港映画が「香港映画」らしくあったこの時代、まだ映像を所持できなかった私は書籍や雑誌などで入ってくる情報を横目にうらやましく思っていたものだった。この映画を観てふとそんな懐かしい過去を思い出してしまった…

『武侠七公主』を観る

2010年03月01日 | 中華圏映画
 今回は古装片ブーム真っ只中に製作された香港娯楽映画の巨匠、バリー・ウォン監督(共同監督・陳國新)の『武侠七公主』(93)を紹介。
 実はこの映画、一年ほど前に動画共有サイトからダウンロード→DVD作成したまま長い事ほったらかしにしてあったもの。予備知識で大体はどんな映画かは知っていたのだが、いざ実物を観てみると…大傑作でした!


 物語は中国武林界を守るため傷ついた剣侠・天極の代わりに妻である独狐貞と旅で知り合った6人の女性が奥義「玄天玉女剣」を会得し、日本の豊臣秀吉の命を受け来襲した柳生と対決するというもの。

              

 こう書いちゃうと普通の(というのもなんだが)武侠片のように感じるが、現物はというと、これがくっだらないギャグ満載のコメディ武侠映画なのだ。一応記した物語に向かって各々がバカやりながら進んでいくといった感じ。ギャグパート要員としてディッキー・チョンン・マンタという面々がいるが、主演クラスの女優陣もちゃんと笑いを取るシーンがキチンと作られていて、特に普段こんなことはすまいと思われるミシェール・ヨーなんかがバカ演技をやってくれるので、不意打ち気味で笑える。

              

 あと武侠映画でおなじみの武器や名称を使ったギャグ(血滴子とか食ったら白骨化してしまうという「白骨陰陽飯」)なんかも出てくるので、武侠片を知っている人ならばクスリとさせられるだろう。残念ながら日本では(かなり入ってきてるとはいえ)それほど武侠映画に関するトリビアに馴染みがないので、香港人ほど笑えないのが悔しい。題名自体もかつてチャン・ポージュ(陳寶珠)ジョセフィーン・シャオ(蕭芳芳)ファン・ポーポー(馮寶寶)他当時のアイドル女優が揃って出演した武侠片『七公主』からの拝借だし、やっぱりハードルが高いかな?

              

 武侠片の肝である剣戟シーンは、チン・シウトンが担当(武術指導:ディオン・ラム(林迪安)、馬玉成)。冒頭から彼のデビュー作である『妖刀斬首剣』を思わせるような日本剣士(でも衣装は中華風)VS中国剣侠の軽功を駆使した空中戦で度肝を抜き、最終決戦では悪魔的な強さを持つ柳生に対し、《七公主》は集団で飛ぶ・斬り付ける・そしてロボットアニメよろしく“合体”するというこれ以上ないハイパーバトルを繰り広げるのだ!ワイヤー&早回しによりこの剣戟シーンは実写映画というよりはむしろアニメに近い感覚。シウトン監督、アンタ凄すぎるよ…


 古装片ブームの一番熱かった1993年だからこそ作りえたこのエンターティンメント大作、もし観る機会があれば是非お試しあれ。あまりの凄さ(とアホらしさ)に呆気に取られること必至ですよ。

              

『Yoga and the Kung Fu Girl』を観る

2010年02月20日 | 中華圏映画
 近年の大予算を掛け、脚本も練られたクンフー・武侠映画も勿論すばらしいのだが、マイナー好みの私としてはアイディア1発勝負のB級テイストな作品を応援したくなってしまう。脚本もヘッタクレもあったものじゃないがその心意気は文句なしだ!
 今回は怪作としてマニアの間では知れ渡っている『Yoga and the Kung Fu Girl(軟骨真奶)』(79)をご紹介。


            

 内容は、幼い頃に父親と死に別れた少女が、小さな雑技団に拾われ様々な技やクンフーを身に付け立派に成人する。しかし、とある町で巡業しているときに兄弟子の犯した些細なイザコザで、町のギャングや実力者などの紛争に巻き込まれ、それが原因で育ての母である親方を含め団員が殺されてしまう。残った少女と二人の兄弟子はすべて裏で糸を引いていた町の実力者に戦いを挑む…というもの。

              
              

 ショウ・ブラザース出身の武打星・戚冠軍が主演、ベテランの白鷹が大ボスというメンツで、70年代後半の流行であるコメディ・クンフー調アクションを見せてくれて、まぁ、その部分だけでも楽しませてくれるのだが、この映画のウリでありすべてであるといっても過言ではないのはもう一人の主演であるフェニックス・チェン(于成鳳)の柔らかい身体を生かした奇天烈なクンフー・アクションだ。
 ほら、よく中国雑技で身体をシャチホコ状にしているおねぃさんいるでしょ?あの格好をファイト中にするんですよ。それで相手の足に絡みついたり頭蓋骨砕いたりするもんですからホント、武術指導のアクション設計には参りました。多分、あの技を生かすにはどうしたらいいか?と逆算して考えたんだと思いますが。それ故か劇中すべてのアクションシーンは彼女が演じています。

              
●コレです

 他に売りといえば…あっ、ありました。戚冠軍や于成鳳(ともう一人)が白鷹の陰謀により用心棒として働くことになるんですが、その敵というのが実にバラエティに富んでいるんですな。
 まず最初は、時代設定が清末民初だというのにパーカーとジーンズで登場するボクシング選手。次は『酔拳』の蘇化子を思わせるホームレスじーさん、その次がジミーさんを彷彿とさせる獨臂拳士、最後はジャッキーのそっくりさんによる蛇拳使い…!もう、この一連のシーンを観ただけでも十分に元は取ったって感じですわ。これが許せるかどうかで正調クンフー映画ファンかB級クンフー映画ファンか分かれる分岐点敵作品ですね。ちなみに私は後者(笑)。

              
              
              
              

 最後に于成鳳の事について。彼女、激しい闘いの合間に見せる幼い表情がとても可愛く(笑っているときも凛とした表情のときも)結構な萌えポイントとなっていて、そこだけでも見る価値はアリだと思います。これ以外に出演作はないらしく、なんか残念。