あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

明治座で「細雪」をみて

2017-03-29 14:36:28 | Weblog


蝶人物見遊山記 第236回


 親切な親戚から切符を譲って頂いたので、上演回数がなんと1500回に達したという谷崎原作のお芝居を見物することができました。

 脚本はかの菊田一夫ゆえん芝居の骨格が頑丈に出来ているからこれほど長持ちしたのでしょうが、文豪の原作には出てこないような台詞で歌舞伎風の見えを切っているのはちょっと気になりました。

 市川昆の映画のヘンデルに対抗するように、水谷幹夫の演出は、この芝居を名家の没落と残照とエレジーとしてとらえ、バッハのブランデンブルク協奏曲を挽歌として流していましたが、原作者谷崎の眼は、ラストのヒロインたちが東京に出てからの奮闘努力に愛情深く注がれていることを忘れてはならないと思います。

 しかし考えてみれば、この谷崎の代表作のメインテーマは、「ある魅力的な女の永久に完結しない恋の遍歴の物語」であり、だからこそこの長い小説は、どこまで書いても未完で終わるべき麗しくも悲しき宿命を帯びているので、それをたった3幕のお芝居の内部で自己完結させるのは土台無理な話なのかもしれません。

出演は、長女鶴子が賀来千賀子、次女幸子が水野真紀、三女雪子が紫吹淳、四女妙子が壮一帆でしたが、次々に着替えては登場する着物姿の素敵なこと。市川昆の映画のそれのえげつなさに比べると雲泥の差で、これは我が国が世界に誇る和服文化の素晴らしさを堪能するお芝居というても過言ではないでしょう。

なお本公演は4月2日まで浜町にて華やかに開演ちう。


またしても電気仕掛けのレプリカントがアンケートに答えよと電話してくる 蝶人



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