Stimme:-) 

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よいお年を

2007-12-31 | 日記・つぶやき
帰省中ですので、携帯より手短に。
昼間はスケート滑り納めに猫もふり納め。
夕方はミステリを買い込み、そしてこれから年越蕎麦です。
詳細は改めてアップします。
皆様よいお年をお迎えくださいまし。

近所の猫たち

2007-12-29 | 日記・つぶやき

 カメラを携え、BD-1でポタってきた夫による画像です。
人がネットやってる後ろで「これ投稿して!投稿して!」とシッポぱたぱたしてきた
ので、仕方なくここのスペースを貸してあげることにしました。
近所のサイクリングコースには釣堀があるせいか、猫達がたくさんいるのです。
ふらっと出かけては必ず私へと、屋台が出る週末には焼き芋を、平日には猫の画像を、
それぞれおみやげに持って帰ってくれるんですねー。優しいですねー(一応持ち上げとこ)。



 この後姿がたまりませんな。

後姿

冬場の雀みたいに、空気を含んでふくらんだ首元といい、丸々と肥えた輪郭といい。



 一方こちらは、茂みにもぐった猫さん。

ねこ

キジトラっぽく見えます。
額の模様のあたりをなでてみたい。


 
 昼間、帰省土産を求めにデパートへ向かう道すがらにいたトラ猫さんは、居眠りして
おりました。じっと見つめていたら視線を感じたのか、薄目を開けてこちらに目をやり、
また夢の中に戻って行きました。
今年も平和に過ぎそうだニャー。

「痾(あ)」 麻耶雄嵩

2007-12-28 | 著者別・は~ん
 通勤時に、暇つぶしに猫の鳴きまねを練習しています。
駐輪場に原付を停めて家まで歩いていたら、三毛猫さんを見かけたので挨拶してみました。
「誰?」って、不思議そうな顔されました。
足元にそろえたシッポがそそる。



 今日の一冊
 「痾(あ)」 麻耶雄嵩


 「夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)」の後に来、「翼ある闇」とリンクする話です。
作中で「翼ある闇」の結末が一部、それも衝撃的な部分が語られています。分かっていても
やはりショックなんですよねぇ……。


 如月烏有と舞奈桐璃、メルカトル鮎に木更津悠也と香月実朝が入り乱れ。
但し、美袋三条は名前のみの登場。相変わらずこき下ろされてます。
興味深いのは、会話文ではそのままなのに、地の文でわざわざ"桐璃"と表記される桐璃。
前作の終わりが終わりだけに、意味深です。


 作者は猫嫌いなんでしょうか。
「神様ゲーム」では残虐に扱われ、本作ではイライラのはけ口にされています。
これで、作者に対する好感度がぐんと、下がりました。
猫いじめる人は敵。


 メルが見込んで、自ら探偵学を教授し始めた烏有ですが、内面はかなり屈折している。
もっとも、メルはそこに目をつけたのでしょうけど、そんな烏有の子を身ごもった桐璃は?



 なんともカオスな所が気に入っている麻耶雄嵩ですが、ひとつ気に入らないのはネーミング。
主人公たちの名前はもちろんですが、烏有が興味を持つ女性の名が「わぴ子」、桐璃が拾って
きた三毛猫の名前候補が「ジュリアーノ」に「ホームズ」。基本的にマニアですよね、彼。
他の作品にも似たような名前・地名・フレーズが多いようですけど、楽屋オチに終わってしまって
る気がしてなりません。
惜しいなぁ。

 


「神様ゲーム」 麻耶雄嵩

2007-12-28 | 著者別・は~ん
 ようやく仕事納めとなりました。
定時には職員が集まって、恒例の施設長による挨拶。

でもさ。
「来年もよろしくお願いいたします」って言ったところでさ。
ほんの7日後には、またこのメンバーで仕事するんだぜ?
それを毎年毎年、ひたすら繰り返すんだぜ?

ただ救いなのは、ひとつのループに終わらず、上に伸びて行く螺旋になっていることですか。



 今日の一冊
 「神様ゲーム」 麻耶雄嵩


 日本を代表するミステリ作家達による子供向けのシリーズ、「ミステリーランド」の一冊。
そのせいか、小学4年生の少年を主人公とし、クラスメイトや家族が主な登場人物となっています。



 予想外の結末。
肩透かしを食らわせられたみたいに、一瞬はっとして、思った。
「当人を傷つけるのではなく、当人の大切なものを傷つけることが、この場合の断罪ではないか」

その方が、何倍も悲しいでしょ?



 猫、たくさん登場します。
が、普通の登場の仕方ではありません。
気分の悪くなるような、悪趣味なただの駒となっています。
にゃんてことだ。

「仮面よ、さらば」 高木彬光

2007-12-26 | 著者別・あ~の
 先日、職場でメンタルケアのための心理テストみたいなのが行われまして、その結果が
円グラフになって、出てきました。

曰く、「あなたは独立心の強いマイペース型です」
そんなの、じゅうぶん自覚してますって。
顔も知らないコンピュータに言われたくないよなぁ。



 そんな今日の一冊
 「仮面よ、さらば」 高木彬光


 墨野隴人シリーズ最終巻です。
犯人とか殺害方法とか動機とか、そういったものはすべて分かりやすくさらけ出されて
いるのに、不思議と読んでいてひきつけられました。

その名から察せられるとおり、いかにも偽名の墨野隴人。その正体は終盤、彼の告白という
形で明かされますが意外性はなく、また、あまりに一方的じゃないかと、正直反感を
持ってしまうくらい。
同時に明かされる村田和子の本性が、これまでの墨野隴人シリーズを振り返ると垣間見えて
いたのに気づいて、やるなぁ、高木彬光氏。これはおもしろい。



 読みどころのひとつは、神津恭介と墨野隴人の推理合戦。
ヒントはエラリー・クイーン。

「地球最後の男」 リチャード・マシスン

2007-12-23 | 著者別・L~Z
 今日の一冊
 「地球最後の男」
 リチャード・マシスン Richard Matheson


現在公開中の映画、「アイ・アム・レジェンド I AM LEGEND」の原作であり、
「吸血鬼」を改題、改訂したものです。



 原作と言っても、C.プリースト「奇術師 プレステージ」のように、小説と映画では内容が
まったく違います。よくあるパターンです。
比べるのもおかしな話かも知れないけれど、両者共に原作の方が深くて面白いです。



 見かけはほぼ同じ、言葉も通じる、けれど異なる人種。
これって、例えば他国人に対する時と似てるんじゃないですか?もっとも他国人の場合は
違う言語であるがゆえに、通じない言葉であることが多いですが。


で、その異なる人種に対して、お互い恐怖感や嫌悪感を抱いては殺しあうんです。
この場合、吸血鬼と旧人類(現在の私達のことです)――正確には吸血鬼にも2種類が存在し、
一方の種は環境に順応して、新社会を築いて行こうとしているところ――とに分かれ、しかも
旧人類側はタイトルの通り、ロバート・ネヴィルという男性がたったひとり。

ネヴィルは最終的に、多数派、つまり吸血鬼側がノーマルであり、少数派である自分こそが
アブノーマルであるのと同時に、彼らにとっては同朋を残虐に殺されたモンスターにほかならない
ということに気付きます。


 恐ろしいですね。
「一つ目国」の話を思い出しますね。
それは、二つの目を持つ人がある日、目を一つしか持たない種の国に迷い込み、見世物にされて
いるうちに気がおかしくなってしまい、自ら片目をえぐり出して一つ目となってしまう、そんな話です。


 他の者と違うと不安になる・他の者と同じであることを求められる、というのは比較する、
ということを行える種のみが感じる不安定さだと思いますが、それにしてもそこまで行くと
行き過ぎ、やり過ぎ感は否めません。
とは言え、仮に私がそのような立場に置かれたらどう行動するかは不明です。
基本的にチキンなので、同化してしまうかもしれませんね。



「霧舎巧 傑作短編集」 霧舎巧

2007-12-23 | 著者別・あ~の
 新劇団 松葉ステッキ(松葉杖?)の旗あげ前公演、
「クリスマスよりの使者」を観ました。キャストは男性がたった二人だけの芝居。
脚本家・村井真也氏が新に劇団を立ち上げるのだそうです。
と言っても、残念ながら彼の名を聞いたのは初めてですが……。


 ハリウッドで映画化の「ドラゴンボール」や、実写化された「魁!! 男塾」、「ナウシカ」
などの小ネタと、「(この小道具、)ゲネで使ったまんま(なおしていない)じゃねーか」
などの楽屋オチをミックスした、なんとも一言では言いがたい芝居でした。
「王大人(ワン ターレン)」なんて単語、久しぶりに聞きましたよ。どうせなら「民明書房」
を出してもよかったような悪いような。

涙が出るほど笑いすぎた一夜でした。



 さて、今日の一冊
 「霧舎巧 傑作短編集」 霧舎巧


 キャラクター描写を何とも薄く感じてしまう彼ですが、この短編集は割と好きな方かも。
なんと、御手洗潔と石岡和己のパスティーシュ、「動物園の密室」も収められていて、
これがまた笑えます。と言うか、それを目当てで借り出したんですけどね、正直。
御手洗が動物園で流した迷子の放送のくだりなんぞは、爆笑です。
確かに石岡君は、女の子でもないし半ズボンでもないですからね。
物足りなさを感じたのは、御手洗がおとなしめに描かれていたからでしょうか。



 一方、作者言う所の「ボーナストラック」である「クリスマスの約束」
ジョーマエさんの過去に後動・咲枝、ユイ・カケルのお話に加え、御手洗とカケルのつながり、
2つのシリーズもののリンクなど、少ないページの中に、実に盛りだくさん詰め込んだ
ギフトボックスみたいな作品です。
ちょうど読んでいる今現在がクリスマス前と言うこともあって、一番感情移入してしまいました。


 そんな明日は、世間で言う所のクリスマスイブってやつですが、はっきり言って私にとっては
どうでもいい。
いいけれど、観光地でのにせものカップルを観察するのは、けっこう好きだったりします。
我ながら、性格悪いよなぁ。


 「にせもの」と言うと、後に「クローン」と題して映画化されたP.K.ディックの短編を
思い出します。
外宇宙人による地球侵略を描いたSFで、衝撃的なラストシーンが好きですね。
小説映画、そのどちらのものも。


「メルカトルと美袋のための殺人」 麻耶雄嵩

2007-12-22 | 著者別・は~ん
 このところたて続けに殺人モノやら各種ミステリやらを借り出して――しかも、わざわざ
市内の分館から取り寄せてもらって――いるせいか、受付カウンタの司書さんの視線が妙に
イタいです。
すみませんねぇ、もう少し付き合ってくださいねぇ。



 今日の一冊
 「メルカトルと美袋のための殺人」 麻耶雄嵩



 メルこと自称・探偵メルカトル鮎と、その大学時代からの友人、美袋三条(みなぎさんじょう)
の登場する短編集。
軽い文体がちょっとばかり、とっつきにくい。
頭を悩ませつつも読み進めると、何とも不思議なこのコンビに苦笑です。


 何が不思議って、10年ほども付き合いがあるらしい中でこれです。

美袋→メル「なるべくなら借りを作りたくない」「なぜこいつと友達してるんだ」
      「爬虫類なのかもしれない」「いけすかない鉄面皮」「鬼畜」
       挙句の果てには「いつか殺してやる」(実際に殺害未遂にまで至る)

メル→美袋 カモ、いい暇つぶし、単純思考……。

もしかして、腐れ縁ってやつですか。



 退屈しているメルが、さんざん美袋を利用して犯罪を解明していくというパターンが多い?
利用される側としてはたまったものじゃないですが、逆に言えば、利用できるくらいに美袋の
性格を理解しているのでしょうね。
けっこういいコンビかも。


 証拠を捏造したかと思わせるシーンは、ほとんどペリィ・メイスン。
弁護士でありながら、法律ギリギリのところで小細工をし、真相を引っ張り出すこともある
メイスンのやり方は、対する検事には苦い顔で迎えられます。
そう言えば、テレビ版のメイスンシリーズには探偵・ポール・ドレイクの替わりに助手・ケン
が登場していましたが、なんででしょー?ポール好きなんだけどな。



 話がそれました。
この殺人事件短編集トリであるところの「シベリア急行西へ」の、犯人の動機がいまひとつ、
弱いような気が。
あ、それを言ったら「ノスタルジア」もそうだし、「水難」「化粧した男の冒険」なんて
最高の俗っぽさだな。
「小人閑居為不善(しょうじんかんきょしてふぜんをなす、閑は門がまえに月の文字)」は
メルカトルの極悪ぶりがよく表れている、楽しめる一作だと思いました。
 
 


「謎の物語」 紀田順一郎・編

2007-12-21 | 著者別・あ~の
 信号待ちで。
行きかう車の波の中、ある一台に注目してじっと見ていたら、
実はその車自体は静止しているだけで、アスファルトのコンベアに乗って
運ばれているだけなのではないかという錯覚に陥りました。
持ってかれそうで、なんだかいやだなぁ。



 今日の一冊
 「謎の物語」 紀田順一郎・編
「編」というのも、謎を残すお話をまとめた一種のアンソロジーだからです。
子供向けなのか、大きい活字とルビが目立ちます。


「女か虎か」 F.R.ストックストン
日本版にアレンジされて、「世にも奇妙な物語」にでも登場しそうな話。
恋人であった王女を信じて、彼女の指示通り右の扉を開けた若者の前の生死は。
互いの信頼関係がむき出しにされてしまう、最悪のテスト。


「謎のカード」 C.モフェット
何が書かれたかがゆえに、そのカードを手にした主人公がこれほどまでに追い詰められた
のか気になる話。文面が原因で、国際問題にまで発展しそうになるくらいとは。
『このカードを持つ者は堕天使である』や『このカードを持つ者はペストの媒介者である』
など、いろんなパターンを想像したのですが、答えを決めない方が面白いですね。
いろいろ考えられますから。


「新月」 木々高太郎
『最愛の人が亡くなることによって、自分はこれ以上、かのじょが他の者に心を
奪われるシーンを見なくなる。
生きていればこそ、浮気をするのじゃないかなどと不安にもなるが、そういったことも
なくなり、自分だけのものにすることができる』


「なにかが起こった」 D.ブッツァーティ
つい最近観た映画「アイ・アム・レジェンド」で、悪性ウィルスに感染したニューヨーク
を封鎖するシーンを思い出しました。
結局全地球に広がっていってしまうウィルス。
話に登場する列車ともども、誰にも止められない、その恐怖。


などなど。
こういうのって、頭の柔らかい子供の方が楽しめるんじゃないかと思います。


「金雀枝(えにしだ)荘の殺人」 今邑彩

2007-12-20 | 著者別・あ~の
 今日の夜に予定されていた、職場の忘年会。
体調不良者が多いので、見合わせることになりました。
やったー!
本が読める!!


 そんなわけで、今日の一冊は
 「金雀枝荘の殺人」 今邑彩



 グリム童話「狼と7匹の子ヤギ」に見立てた、過去の大量殺人。
1年後、それを検証しようと被害者のいとこ達が集まるが、再び殺人が起きてしまいます。
目標を達しようとする犯人の策略に、見事に引っかかってしまった結果です。
心理的盲点をついたトリックがにくい。


 それにしても、わざわざ時間を置いて召集するあたり、犯人のこだわりを感じますなー。
放っておけば、そのまま迷宮入りにもなったかと思われるのに。
まったくもって、粘着質というか何というか。

おまけに、とっておきの秘策として用意した駒が裏目に出てしまい、結局破滅することに
なる。あらゆる意味で、救われない犯人です。



 「荘」より「館」の方がしっくり来るような、クラシックな建物を舞台に話が進行
するので、間取りや家具を想像しながら読むのもまた、一興。
こういった建物につきものの肖像画も、もちろん登場しますしね。


「青猫  幻想童話館 」 司修

2007-12-19 | 著者別・あ~の
 今日の一冊
 「青猫  幻想童話館 」 司修


 「猫」という単語にひかれ、何気なく手に取った本です。
ページの上2/5ほどが挿絵、残る下側が文となっていて、青いインクで印刷されています。
この挿絵がまた、下にあげるウィトウィウス人体図のようで、タイトル以上に幻想的、
かつおどろおどろしい雰囲気を生み出しています。

人体図



 5~6ページから成る、いくつかの短いお話が一冊に詰まった本。
あっという間に読めてしまうのですが、後からじわじわくるこの恐怖感は何だ。


「老木の幸福」
主人公が樹木に転生するまでと、転生後のお話。
無資格者めと、地獄の鬼からも必要とされない主人公が、ちょっと哀れ。

「青猫」
夢で出会い、恋焦がれたその人は、なんと青い猫になってすぐ傍らにうずくまっていた。
ところが主人公は、知らずして彼を殺してしまう。
この空しさがたまらにゃい。

タイトル忘れ、「サロメ某」
パリで一目ぼれした相手は、なんと現代版サロメだった。
首を落とされてなお、陳列台から賛美する主人公。

「悪魔の絵本」
肉食植物に魅入られた主人公。
女の属性を持つ樹木を生み出してしまうが、病弱であった自らの妻をなんと、接ぎ木
してしまう。さらには、そこへ娘を・・・・・・。
温室が怖くなる。

タイトル忘れ、お地蔵さまの堂に迷い込む青年のお話
死んだ事に気づかないで彷徨う青年。
本来の自分の居場所を見つけたときの安堵感ったらなかったでしょう。

タイトル忘れ、田舎出身の少女と鏡のお話
最後に彼女が見たものは、彼女自身の心の闇か。

タイトル忘れ、蟷螂のお話
あぁそうか。
私達は自然とすべてそうなるように、プログラムされてんだ、遺伝子レベルで。



 他にもまだいくつかのお話が詰まっています。
幻想的で奇妙で、少し悲愴。
ところでこの本、絶版なのかしら・・・・・・。

ムンク展――国立西洋美術館

2007-12-17 | 本全般・映画・音楽等

 12月16日(日)晴・強風

 国立西洋美術館で開催されている
ムンク展 Edvard Munch The Decorative Projectsに行きました。



 晴れているので、ちょっと早起きしてゴハンを炊いて、おにぎり作成。
若菜のふりかけを混ぜ込んだものと、梅干入りと2種類。上野公園で食べようというのです。



 今回のお目当ては、冒頭に掲げた絵「吸血鬼 1893-94」です。
タイトルは第3者による後付のようで、『タイトルのおかげで、文学的になりすぎている』
という否定的なムンクの言葉が、脇に添えられていました。

ダリ展の時よりはましですが、それでもかなり混雑している館内は、人の頭を見てる
んだか、絵を観てるんだかはっきりしないような時もありました。
入り口を入ってすぐのところに展示されているこの絵は、とみにその傾向に。


 女性の広がる髪と、青白い男性の顔。暗い背景がさらに、際立たせる。
まず目には、そんな情景が飛び込んできます。
と同時に感じるのが、静かな迫力とゆがんだ愛情。
想いの前に屈する男性を取り込むかのような女性は、喜んでいるようにも見えました。


 他の作品の多くは、暗い色調と生や死といった哲学的なモチーフが見られましたが、
ダビデとゴリアテなど聖書もの、パリスと黄金のりんごなど神話ものも見られ、中でも
聖ヨハネの首を求めたサロメのたたずまいがとても、印象に残っています。


 絵と言うのは不思議なもので、作者の意図、鑑賞者のコンディション(肉体的にも
精神的にも)、展示の方法などによって、まったく受ける印象が違ってきます。
逆に、その分、絵からの影響も大きいわけで、出口に近づくにつれて少々気が滅入って
しまったり、うかれてしまったり。
しょせんヒトなんて、単純ですね。



 美術館を出たら、ちょうどお昼時でした。
冷たい風は吹いていたけれど、あたたかい紅茶を買って、噴水のほとりのベンチに夫婦
そろって座り、手作りおにぎりにかぶりつきました。



 平凡なのが、人生いちばんです。



「夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) PARZINAL」 麻耶雄嵩

2007-12-16 | 著者別・は~ん
 今日の一冊
 「夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) PARZINAL」 麻耶雄嵩


 21歳の主人公・如月烏有(きさらぎ うゆう)とその高校生アシスタント・
舞奈桐璃(まいな とうり)を中心に進め、ラストでほんの数ページだけ銘探偵・
メルカトル鮎を登場させるパターンです。


 まずキャラクターの名前になじめず、続いて桐璃の妙に間延びしたしゃべり方に
なじめず、という具合で、入り込むのに苦労した作品。
キュビスムや二重人格について語り、ところどころ幻想的でもある地の文。
とっつきにくそうですが反面、不思議と引きずり込まれます。


 相変わらず俗っぽい、メルカトルの登場シーン。
作者はどんだけ美少女モノ好きなんだと、小一時間問い詰めたい。
彼に対しては何しろ「翼ある闇」の衝撃が忘れられず、どうしたって異世界の住人
のような印象を受けてしまいます。


行く末を知っているがゆえに、そこに至るまでの日常に恐怖感を抱く。
いやもしかしたら、日常なんてないのかもしれない、神の視点から見下ろしていて、
気が向いた時だけ、ほんの数分だけ、降りてくるのかもしれない。
軽くパニックに陥ったりして。



 それなのに。
麻耶雄嵩の世界に一度入り込んでしまうと、抜け出すのが難しい。
蜘蛛の巣に絡めとられたトンボみたいな、そんな感じと言えばいいのかな。
お気に入り作家のひとりに、なりつつあります。

「アイアム レジェンド I AM LEGEND」 (ネタばれあり)

2007-12-14 | 本全般・映画・音楽等
 14日から公開 「アイアム レジェンド I AM LEGEND」

2007年 アメリカ
原作 リチャード・マシスン 「I Am Legend 『吸血鬼』後に『地球最後の男』と改題」

監督 フランシス・ローレンス
主演 ウィル・スミス
   サマンサ役の犬(名前忘れてしまった)


少々ネタバレしています。
興味を持ってくれた方は、お手数ですがスクロールしてください。

























 ここから






 ざっと調べたところ、どうやら原作とはかなり異なるようです。

原作も今回の映画でも「I Am Legend」というタイトルとなっていまして、「I Am」
だなんてずいぶんとえらそうだなと思っていました。
ところが、原作の内容ではそれもうなずけるのですね。
一方、結末がほぼ逆になってしまったこの映画版では、「He Is Legend」にすべき
ではないかなと、思いました。


 まぁ、読んでいない原作についてあれこれ言っても始まらないのですけれど、
かなり私好みのようです。

かつて藤子・F・不二雄が描いた短編「流血鬼」が、それとよく似ていたようです。
闇に生きる吸血鬼から見たら、昼に生きる人類こそが野蛮で乱暴な「流血鬼」にほか
ならない。
最後にはひとり残った人類である主人公も、友人達によって吸血鬼となってしまうという
内容でしたか。私が一番印象に残ったのは、そこで彼が、一見病的で気色悪いような
吸血鬼の容貌や、夜の美しさを吸血鬼になって初めて認め、受け入れるというシーンでした。

藤子・F・不二雄のSF短編には他にも、「ポストの中の明日」や「おれ、夕子」など
多くあって、かなりどきどきしながら読んだのを覚えています。

逆の立場からの視点が、ふとした瞬間に描かれる。
マシスンの原作は、一度は読んでみたいものです。

 
 
 すみません、脱線しましたが、ここからが、今回の映画について。

 怖いったら怖い。
物理的にゾンビ化した人類の襲いくる様はもちろん、そのような脅威がいつ来るか、
いつ来るかという心理的な恐怖も、もりだくさん。


 主人公の相棒・サマンサ役の犬もいい。
3年間たった二人で生き抜いてきた主人公を守ろうと闘い、ウィルスに感染してしまって
安楽死させられるのですが、この時のやりとりが泣かせます。
相棒だもんな、吸血犬になったからと言って苦しませるよりは、自分の手で。




 新ウィルスの蔓延、感染、家族の死亡と人類の滅亡、襲いくるゾンビ、孤独な闘い、
その合間に描かれる家族愛、自己犠牲、神がかり、
こういた映画に実にありがちなストーリーですが、見せ方がうまい。


いきなり冒頭が、荒廃したニューヨークだなんて。
いきなりその道路のど真ん中で、狩をしてるなんて。


音楽を上手く使い、思わず入り込んでしまうような、そんな構成。
珍しく集中しきった映画でした。


 ところで、シャワー使っていましたけど、ガスや水はどうなってるんでしょ。
発電機らしきものがあったので、電気はわかるけど。


 ハッピーエンドの今作。バッドエンドのパターンも観てみたいです。
アナ達がたどり着いたその門の向こうには、瓦礫と化した街。
既に陽は落ち、聞こえ始める吸血鬼のうなり声。
いやー、救われないにも程がありますねー。






「斜め屋敷の犯罪」 島田荘司

2007-12-09 | 著者別・あ~の
 今日の一冊
 「斜め屋敷の犯罪」 島田荘司


 北海道は宗谷岬のはずれに建つ「斜め屋敷」での連続殺人事件。
御手洗潔ひとりだって解決できるのに、傍らにその友人・石岡和巳がいるのは、彼が
知らずの内に、ガス抜きの役目を果たしているからでしょうか。
このような探偵・友人コンビはポアロ・ヘイスティングスなど、実に多いですが
不思議と、トリオは見かけません。まぁ、単に私の読書量が少なすぎるのでしょう。


 気の遠くなるような準備期間を経ての犯行。
北海道という独特の土地を利用しての犯行。
読者もだまされる犯行。
それらを解説するのは、相変わらず傍目に奇人変人な御手洗潔。
これでギターは天才的に上手だし、どこから見ても紙一重な人物。


 そんな御手洗の作中でのひとこと、
「ただそれだけのために、この家は傾けてあるのさ」
がこの事件のトリックすべてを物語っています。
読み進めながらも、その事実をつい、忘れそうになってしまうますけどね。