KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
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検証:箱根駅伝区間賞獲得者のマラソン記録ランキング2021

2021年01月31日 | 記録データ・ランキング
11年前に、箱根駅伝で区間賞を獲得したランナーたちが、その後マラソンにチャレンジして達成した記録のランキングを作成した。昨年のマラソンの好記録ラッシュでこのランキングもガラリと変わった。

マラソン記録の後の年代は、記録達成した際の年代。所属先は達成した時点での所属先。学生時代にマラソンのベストを達成したランナーは所属先を記していない。〇の中の数字は学年。☆マークは区間新記録を意味している。*は日本最高記録。そして、レースの大会名(開催地)も付け加えた。

1位 大迫 傑(早稲田大~NIKE) 2時間5分29秒*('20東京4位) 1区①2区②
2位 設楽悠太(東洋大~Honda) 2時間6分11秒*('18東京2位)  7区②3区③④
3位 高久 龍(東洋大~ヤクルト) 2時間6分45秒('20東京8位) 8区③
4位 藤田敦史(駒澤大~富士通) 2時間6分51秒*('00福岡優勝) 4区④☆
5位 吉田祐也(青山学院大~GMO) 2時間7分5秒('20福岡優勝) 4区④☆
6位 小椋裕介(青山学院大~ヤクルト) 2時間7分23秒('20東京12位) 7区③④
7位 服部勇馬(東洋大~トヨタ自動車) 2時間7分27秒('18福岡優勝) 2区③④
8位 下田悠太(青山学院大~GMO) 2時間7分27秒('20東京13位) 8区②③④
9位 大塚祥平(駒澤大~九電工) 2時間7分38秒('20福岡2位) 5区④
10位 今井正人(順天堂大~トヨタ自動車九州) 2時間7分39秒('15東京7位) 5区②☆③☆④☆
11位 谷口浩美(日本体育大~旭化成) 2時間7分40秒(1988北京2位) 6区②③④ 
12位 藤原正和(中央大) 2時間8分12秒('03びわ湖2位) 5区①2区④
13位 中村匠吾(駒澤大~富士通) 2時間8分16秒('18ベルリン4位) 1区④
14位 作田直也(日本体育大~JR東日本) 2時間8分21秒('20福岡5位) 10区④
15位 瀬古利彦(早稲田大~エスビー食品) 2時間8分27秒(1986シカゴ優勝) 2区③④
16位 武井隆次(早稲田大~エスビー食品) 2時間8分35秒('02びわ湖優勝) 1区①☆②☆7区③☆4区④
17位 大崎悟史(山梨学院大~NTT西日本) 2時間8分36秒('08びわ湖3位) 10区③
18位 尾方 剛(山梨学院大~中国電力) 2時間8分37秒('03福岡6位) 10区②
19位 山本憲二(東洋大~マツダ) 2時間8分42秒('19びわ湖7位) 10区③
20位 西田隆維(駒澤大~エスビー食品) 2時間8分45秒('01別府大分優勝) 9区④
21位 佐藤信之(中央大~旭化成) 2時間8分48秒(1998福岡2位) 10区④
22位 実井謙二郎(大東文化大~日清食品) 2時間8分50秒(1996東京国際4位) 1区①
23位 佐藤悠基(東海大~日清食品グルーブ) 2時間8分58秒('18東京10位) 3区①☆7区②☆1区③☆
24位 野口拓也(日本体育大~コニカミノルタ) 2時間8分59秒('17ブリスベン優勝) 3区③
25位 川嶋伸次(日本体育大~旭化成) 2時間9分4秒('00びわ湖2位) 6区④
26位 浜野 健(順天堂大~トヨタ自動車) 2時間9分18秒('02びわ湖5位) 9区④☆
27位 村澤明伸(東海大~日清食品グループ) 2時間9分47秒('18東京14位) 3区③
28位 梅木蔵雄(早稲田大~中国電力) 2時間9分52秒('03ベルリン7位) 1区③2区④
29位 花田勝彦(早稲田大~エスビー食品) 2時間10分02秒(1997びわ湖4位) 4区③☆
30位 三代直樹(順天堂大~富士通) 2時間10分33秒('03東京国際4位) 2区④☆

壮観な顔ぶれというべきか。昨年の東京、福岡での好記録続出が大いに反映されていて、11年前のランキングトップの藤田敦史が4位というのはまだしも、2位の谷口浩美が11位という凄まじさである。トップ10が全て21世紀、その半数以上が2010年以降に出された記録となった。前回のランキング作成以降である。

11年前、このランキングの元を作った頃、箱根駅伝はやはり高い人気を集めていた。テレビ視聴率も25%を越える人気を誇っていた。日本テレビが、それまで技術的に困難とされていた全コース完全生中継に成功して以来四半世紀で箱根駅伝はすっかり全国的な「正月の風物詩」として定着していた。急成長した物に批判が集まるのは世の常である。そうした箱根駅伝人気にも批判の声が集まっていた。
「関東のローカル大会が、日テレと読売新聞のゴリ推しによって正月の風物詩に持ち上げられた。」
というのはその最たるもの。これは今でもネットで目にするものだが、その論理だと、来シーズンからは東京ドームのジャイアンツ対スワローズの試合などはテレビ東京か東京МXテレビで放映すればいいというのと大差ない。ある陸上関係者が、「箱根駅伝亡国論」なるものを主張していた。
「箱根駅伝は陸上競技の発展に何も寄与していない。」
「あんなものは陸上競技ではない。」

「陸上競技サマはそんなにエライのか。」
と思ったが。後者の説は間違いではない。毎度おなじみ、監督を乗せたクルマがランナーの後ろから激を飛ばすあのシーン、あれは明らかに陸上競技規則にある「助力行為の禁止」違反である。「リレー競技の選手は全員、ユニフォームを同一形状、同一デザインに統一すべき」というルールにも違反している。もちろん、大会事務局が「特別ルール」として承認しているわけだが、こういう、根本的なルールを捻じ曲げてまで大会を実施する事に対する危惧である。

一部の売文屋さんの唱える箱根駅伝批判は、つまるところは「大新聞批判』である。朝日新聞や毎日新聞の悪口を言いたいために甲子園の高校野球を叩くのと同様に、読売新聞を叩きたいために箱根駅伝を叩く人もいた。それに感化されたのか、ネットで
「箱根駅伝は、プロ野球、プロレスと並ぶ、正力松太郎発案の日本人愚民化策」
なる説を見かけて絶句した。やはり、「いだてん」のような大河ドラマはもっと早く作られるべきだったな。

「箱根駅伝は陸上競技の発展に何も寄与していない。」
という説には、一定の説得力を持つ根拠がある。
「五輪の金メダリストを育成するために始まった大会なのに、箱根駅伝を走ったマラソンの五輪メダリストは1936年ベルリン五輪の南昇龍のみで、戦後の五輪の3人のメダリスト、円谷幸吉、君原健二、森下広一、全て高卒である。」
がそれである。世界陸上のメダリストなら、谷口浩美、佐藤信之、尾方剛と3人生み出しているし、五輪入賞者なら川島義明、前述の谷口、諏訪利成と生み出している(2010年の時点なので、中本健太郎は対象外)のだが、彼らの功績は顧みられることは無い。

僕自身、箱根駅伝について、「称賛しようと思えばいくらでも称賛できるし、悪口を言おうと思えばいくらでも言える。」と書いたこともある。当時の箱根駅伝の人気が、不幸にアクシデントである途中棄権や交通規制の問題から生まれたルールである繰り上げスタートを「感動の名場面」に仕立てたり、エースと他の選手の実力が甚だしいチームや、前走者に何らかのアクシデントが生じないと生まれない「ごぼう抜き」をやたらと称賛するのには鼻白む思いがしていた。

具体的な名前は出さないが、箱根駅伝で華々しく活躍しながら、卒業後は実業団で目立つ実績を残さずに「消えて」いったランナーも少なくない。途中で打ち切られたTBSのスポーツ・バラエティー番組「消えた天才」で取り上げて欲しかったランナーも何人かいる。

しかし、自分が批判するくせに他者に批判は許せないのが人情というもの(か?)。このランキングも、言ってみれば、
「箱根で頑張ったランナー、マラソンでもこんなに頑張ってるんだぞ。あんたが知らんだけやろ?」
という想いで作ったものだった。こうして更新されたランキングを見ると、近年の好記録ラッシュ、シューズの性能だけではないなとも思えてくる。

皆さんはどう思われただろうか?(漏れがあれば、ご指摘を)


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