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国立劇場で歌舞伎「天保遊侠録」「将軍江戸を去る」を観てきた

2010-10-12 20:01:26 | 日々是精進
国立劇場で歌舞伎「天保遊侠録」「将軍江戸を去る」を観てきた

3連休の最終日は、国立劇場で歌舞伎の観劇。
この日は前日とは打って変わっての秋晴れ。お天道様がまぶしい。

今回の2作品は、いずれも真山青果の作。
「天保遊侠録」は勝海舟の父である小吉が主人公、
「将軍江戸を去る」は勝海舟と西郷隆盛の江戸城無血開城をめぐる会談の一幕二場と、
徳川慶喜の逡巡と葛藤、そして江戸に別れを告げる二幕四場の構成。

「天保遊侠録」は、笑いありどたばたありのコメディーチックな内容で、
きっぷのよい江戸っ子の小吉の台詞が小気味よい。
粗野でありながら、息子麟太郎への愛情あふれる小吉の姿が目にとまる。

「将軍江戸を去る」の第一幕は、江戸城総攻撃をめぐっての、西郷と勝のあの歴史記的な会談を題材にした作品。
血気盛んな薩長の壮士は西郷に総攻撃をそそのかすが、西郷はのらりくらりとこれをかわし、
勝との会談を備える。西郷と勝の所属はおたがい敵同士なれど、二人は腹を割って、これからの日本国家のあり方、将来について、忌憚なき意見を述べる。そして遂に、総攻撃中止/無血開城/将軍の救命を決断する。

この攻撃中止の決定に対し薩長の壮士は猛反対するも、西郷と勝の日本国家の行く末を案じた真情の吐露を聞くや、心を打たれひれ伏すのであった-。

最後の一場は「千住の大橋」。
山岡鉄太郎は将軍に対して、外面だけ臣下の礼をとる「尊王」ではなく、実の権力や経済力すべてを朝廷に「勤王」に捧げてこそ、この国は救われる。江戸の地と住民を朝廷に捧げることによって、官軍と幕府軍の衝突は回避できる。どうか江戸の地を退去してくれないかと献策する。山岡の命をかけた請願に将軍慶喜は心を打たれ、遂に江戸を去る。

「天正十八年八月朔日徳川家康江戸城に入り、慶応四年四月十一日、徳川慶喜江戸の地を退く・・・江戸の地よさらば」

この台詞が悲しく切なく千住の橋に響き渡る。新しい日本の誕生、夜明けを前にして、徳川慶喜は江戸を去る。泪の中で幕が終わる。


国の将来や経済に期待が持てず、また尖閣諸島問題では日本の安全保障さえもままならない時勢柄、今回に作品は、いろいろと考えさせる内容だった。

江戸を去り、新しい日本国家-明治の日本が誕生した。その延長が今の日本である。
試行錯誤しながらも、この国の発展のために力を尽くした先人たちの存在は忘れてはならないだろう。
見終わった後、そんな思いが頭をよぎった。