前回ご紹介した和歌山城西之丸庭園を後に、和歌山城前からバスに乗り、30分ほど南下すると、次の目的地、養翠園(名勝)です。養翠園前バス停で降り、庭園を囲むウバメガシの生垣(下の写真)に沿って進むと入口がありました。
(上: 姿の良い山を借景に、広々した池と池畔の松が大名庭園の華やぎを伝える養翠園庭園)
ここは紀州家第十代藩主・徳川治寶により、別邸からの清遊の場、迎賓の場として、文政年間(1818~1825)に造営された庭園。敷地面積約33,000平方メートルのうち、池の面積が半分を占める広々とした池泉回遊式庭園です。
この池は、湾に面した立地を利用し、海水を引き込んだ珍しい「汐入り」の池。池畔には船着き場(下の写真)があり、「藩主が船で来園するのが常であった」という歴史を物語っています。
池を囲む植栽はマツが主体で、1,000本以上あるマツは「立華すかし」という、マツの豪快さを際立たせる手法とか。
池の中島へは、中国の西湖堤を縮景した三つの反り橋が連なる「三ツ橋」を配し、湖面の景を直線で区切り、借景となる章魚頭姿山(たこずしやま)という、文字通りタコの頭に似た形の山とともに、特徴的な景観をつくっています。
(上: 章魚頭姿山と「三ツ橋」)
直線と曲線を効果的に配し、大らかで華やかさもあり、またモダンでもあるという、まさに大名庭園らしい庭園です。
(上: 反り橋でつながれた半島と中島)
紀の川に沿って粉河寺庭園から辿ってきた和歌山の庭園回廊の終点は、番所(ばんどこ)庭園。「養翠園前」からバスに乗り、5分程で着く「雑賀崎遊園」停留所で下車。道標に従い15分くらい歩いて到着です。ここは「番所の鼻」という海に突き出た岬にある庭園。しかし実際には、庭園というより、公園といった趣。植栽に縁取られた芝生広場で、バーベキューなどもできるスペースです。
この地は、江戸時代、紀州藩の海岸の10数ヶ所にあったという海の防備見張り番所の一つ。和歌山城に最も近い番所として重要な所だったそうです。
異国船の出現が頻繁になった安政元年(1854)には、この芝生地にお台場が構築され、大砲・鉄砲が配備されたという記録があります。
この庭園の見どころは、なんと言っても、海岸美。この岬は、万葉集にも歌われたように、古くから海の眺めが素晴らしい景勝地として知られていました。海に浮かぶ大小の島々が、正真正銘、天然の紀州青石の造形美を見せてくれます。
時代劇をはじめ、数々のドラマのロケ地にもなっている、というのが頷ける景色です。
(ただし、入園料600円は、ちょっと立ち寄るだけでは勿体ないかも?)
・・・「庭園回廊・和歌山」終わり・・・