カキモトジュンコ日記

by Junko Kakimoto

アゴタ・クリストフ追悼月間 2

2011年12月22日 | Weblog

ずっと前に書いたものをアップします。時間が欲しい。


11月21日

引き続き、短編集「どちらでもいい」(早川書房)と「文盲 アゴタ・クリストフ自伝」(白水社)を読み終えてしまい、残るは戯曲集「怪物」「伝染病」(共に早川書房)の2冊のみ。もっと読みたいけど、日本語で出版されてるのは以上で全て。

全ての翻訳を手がけておられる堀茂樹さんの記述によると、アゴタさんは三部作を超えるものでなければ世に出したくないという気持ちが非常に強かったそうで、近年は”書けなかった”というのが正直なところらしい。「文盲」にも、同じテーマを焼き直して繰り返し描くのは嫌だ、というようなことが書かれてたし。

・・・そりゃあ、そうだろう。それが表現者ってものだろう。でももう、この人に限ってはそのテーマでいいじゃん、それしかないじゃん、だからこそいいんじゃん!と思えてしょうがない。だってどれを読んでもどこを切っても、どうしようもなく”アゴタ・グレー”(勝手に命名。”クライン・ブルー”ならぬ)一色なんだから。限りなく黒に近い灰色の、音も光もない世界。そこから逃れられない、ということこそがこの人にとっては真実なわけで、だからそのことをしつこく書き続けてくれればよかったのに、と思う。…な~んていうのは読者の勝手な期待と要求というやつで、書く側にしてみれば、生き続けることをやめてしまわないために、何とかしてそこから離れたかったのかもしれず。亡くなってしまったけれど。


戯曲集を読む前に、箸休め的に「トランシルヴァニアの仲間 ハンガリー短編集」(恒文社)を読む。アゴタさんの好きだというサボー・マグダという女性作家を図書館で検索したら、この本がヒットしたので。どの物語もハンガリーという国の複雑な立場が比喩で表現されてる気がして、これはいったい何の例えなのか?と、いちいち勘ぐりながら読んだ。アンジェイ・ワイダのモノクロ映画を観るときみたいに。はっきり言ってどれも暗いけど、マグダの「笑いかけるバッカス」はじめ、アゴタ・ワールドの背景を知るのに役立ったのでよかった。

 

その後、さらに箸休め。「小さいおうち」中島京子(文藝春秋)、「菜食主義者」ハン・ガン(クオン)、「刑務所図書館の人びと ハーバードを出て司書になった男の日記」アヴィ・スタインバーグ(柏書房)を読む。「刑務所~」はすごく面白い。

アゴタさんの戯曲集を読むのが気が重くなってきてしまった。。間を置くとダメだ~