スパイク付の地下足袋もスパイクがすり減っては役に立たない。
崩壊地周辺をひとしきり這いずりまわったあと
てっぺんの切り株に腰をおろし、
もうそろそろ新しいのを買わなければと足袋をながめ。
ふと考えたのである。
昔は、とてもじゃないがこんなところに立つことさえできなかった。
怖くて足がすくんでいたのである。
図らずも、そんな現場ばかりを担当しているうちに、いつの間にか平気になり、
今では、「オレはだいじょうぶ」という自信さえ持つに至った。
だがそれは、「正常化の偏見」ではないのか。
「正常化の偏見」とは、「自分は大丈夫」と一生懸命思い込もうとする心の作用です。自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりして、「いつもと変わらず正常である」と心の状態を保とうとする、人間の特性です。
(『人が死なない防災』片田敏孝、Kindle版位置No.688/2221)
「オレはだいじょうぶ」という自分に対しては、
「ホントにだいじょうぶなのか?」と問いかけてみよう。
思い込みはできるだけ排除するように、違う角度から見てみることを心がけよう。
蛮勇や思い込みが物事を打開することもないではないし、
かくいう私とて、そういったやり方で道を切り開いてきたことは幾度もあるが、
基本はそこに置くべきではないと、今は思う。
危機を察知する感受性と危険を判断する冷静な頭脳を失ってはならない。
「オレはだいじょうぶ」という根拠のない自信を頼るのは、
とどのつまりでよいのである。
崩れた山の上で、スパイクのすり減った地下足袋を見ながら、そんなことを考えていた。
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