答えは現場にあり!技術屋日記

「三方良しの公共事業」をモットーに、辺境の高知のそのまた辺境から、土木技術者のオジさんが泣き笑いの日々を届けます。

そして「石工の話」アゲイン

2017年02月19日 | 三方良しの公共事業

「より早く」

「より安く」

について書いた。

書いているあいだじゅう、ずっと頭から離れなかった話がある。先日紹介した「石工の話」だ。

土木における「良く」「早く」「安く」を語るとき、この話はとても示唆に富んでいる。

ふたたび(みたびかな?)『庶民の発見』(宮本常一)より引用する。

 

庶民の発見 (講談社学術文庫)

宮本常一

講談社

 

 「しかし石垣つみは仕事をやっていると、やはりいい仕事がしたくなる。二度とくずれないような・・・・・。そしてそのことだけ考える。つきあげてしまえばそれきりその土地とも縁はきれる。が、いい仕事をしておくとたのしい。あとから来たものが他の家の田の石垣をつくとき、やっぱり粗末なことはできないものである。まえに仕事に来たものがザツな仕事をしておくと、こちらもついザツな仕事をする。また親方どりの請負仕事なら経費の関係で手をぬくこともあるが、そんな工事をすると大雨の降ったときはくずれはせぬかと夜もねむれぬことがある。やっぱりいい仕事をしておくのがいい。おれのやった仕事が少々の水でくずれるものかという自信が、雨のふるときにはわいてくるものだ。結局いい仕事をしておけば、それは自分ばかりでなく、あとから来るものもその気持ちをうけついでくれるものだ」。(P.25)

 

じつに正直だ。百万言の美辞麗句やレトリックをもってしても、この石工の独白にはかなわないとわたしは思う。

白状してしまうと、「より良いモノをより早く」などとカッコをつけているわたしも、いつだってこの葛藤のなかにある。

 

ついザツな仕事をする。

経費の関係で手をぬくこともある。

やっぱりいい仕事をしておくのがいい。

結局いい仕事をしておけば、それは自分ばかりでなく、あとから来るものもその気持ちをうけついでくれるものだ。

と思いつつ、

ついザツな仕事をする。

経費の関係で手をぬくこともある。

やっぱりいい仕事をしておくのがいい。

結局いい仕事をしておけば、それは自分ばかりでなく、あとから来るものもその気持ちをうけついでくれるものだ。

 

そんな循環のなかで辺境の土木屋という生業をつづけているのが現実だ。エラそうなことを言えた義理ではない。しかし、そんな自分を棚に上げ、まっとうな台詞を並べ立て威勢のいい啖呵を切ることもしばしばである。まったくナニヲカイワンヤという気がしないでもない。

だが、だからこそわたしは、宮本常一が拾い上げ残してくれた「ある石工のモノローグ」をいつもいつでも心に持ち、「土木のしごと」という営みをつづけていきたいと思うのだ。

やっぱりいい仕事をしておくのがいい。




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「より安く」について

2017年02月18日 | 三方良しの公共事業

次に「より安く」(きのうの続編です→『「より早く」について』)。

今という時代の消費者マインドを前提として考えれば、これはじつにやっかいな問題である。

ひょっとしたら勘違いされているかもしれないが、わたしはこれまでひと言も「より安く」を是としたことはない。いつの間にか「良く早く安く」が3点セットであるかのような空気が世の中に蔓延してしまったがゆえに、「より良いモノをより早く」を提唱するわたしもまた、その3点セットの信者かのように思われているのかもしれないが、「より良く」と「より安く」は共存し得ないとわたしは思っている。少なくとも、わたしが生業とする公共土木の世界では、共存させてはいけないものだと思っている。

「それはオマエ、矛盾だろう?」と思ったそこのアナタ。その疑問はもっともだ。なぜならわたしは昨日、「より早く」についてこう書いた。

 

公共事業の執行に関わる無駄を省けば自ずから「早く」なるだろう?ということだ。平たく言うと、施工者のわたしや発注者のアナタがテメエらの都合でチンタラやるのを止めて、本当の「お客さん」である地域住民のためを考え、公共事業の最前線たる現場を回していこう、ということだ。


この文脈においては、「早く」と「安く」を置き換えても何ら不都合はない。積極的に無駄を省いて「安く」を追求するべきだ、という筋立ても成り立つ。だがやはりわたしは、公共土木において「より安く」を追い求めるのは危険だと言い切ってしまう。

「賢い消費者」とは、「最少の貨幣で、価値ある商品を手に入れることのできた者」(内田樹)だ。「賢いお買い物」とは、「5円玉1個で自動車を買う」ようなことを言う。極端なことではない。「価値ある商品を最少の貨幣で買う」という行為はどこまでも行っても許されるのが「今という時代」で、むしろそのことが賞賛されてしまうのが、「今という時代の消費者マインド」が醸し出している空気なのである。「良いモノ」は「安く」手に入れることができない、という常識が都合よく置き去りにされている。そんななかで、公共土木において「より安く」を追い求めるのは、とても危険なことなのだ。


「わたしたちのお客さんは住民です」

皆さんご存知のとおり、十年来唱えてきたわたしの決まり文句だ。

「やっかいな問題」はじつはそこ、「住民がお客さん」という考え方のなかにある。「わたしたちのお客さんは住民です」というその住民が「今という時代の消費者マインド」を持った消費者として振る舞うとき、「賢い住民」と「賢い消費者」は同義になるからだ。「賢い消費者」とは、すなわち「より良い」モノを「より安く」買うことができる存在のことを言う。「安く」は「賢い消費者=賢い住民」にとっての至上命題なのである。もう一度言う。そんななかで、公共土木において「より安く」を追い求めるのは、とても危険なことなのだ。

 

そういった風潮のなかで「わたしたちのお客さんは住民です」と言ってしまっていいのか?自分の首を自分で絞めているようなものではないか?わたしが「やっかいな問題」と感じるのはそこである。それに対してわたし自身が出した答えは、「お客さまは神さま」ではないということ。迎合しないこと。わたしをとりまく現実がそんな威勢のいいものではないのは承知で、けれど、いつもどこかに「迎合しないこと」というマインドを隠し持っているという姿勢。そしてその道しるべとして、わが女房殿の師匠であるS先生の言葉、

私はお客さんに媚びないよ、だって私は技術を売っているんだもん

(この文句、気負って言うとカッコ悪いですね、あくまでサラリと言うところがミソ)

を持ちつづけて「辺境の土木屋」を生きることだった。

 

なんだか取りとめがない内容になってしまったような気がしないでもない。じつはこれ、生のプレゼンテーションでは何度も繰り返して話していたことだ。幾度かここでも書いたことがある。しかし、思い起こしてみれば、最近ちょっと端折り気味だった。現実の多くに対しては、笑ってごまかすか、切歯扼腕しつつ涙をこらえて沈黙するしかないヘタレなオジさんではあるが、わたし自身の考えは折りにふれ確認しておくことが大切だと思いたち書いてみた。

我ながら唐突なような気がしないでもない。尾上一哉さんの『地域建設業ーある建設業者の遺書』に触発されたことは間違いがない。感謝したい。

 

 

地域建設業―ある建設業者の遺書
尾上一哉
熊日出版


と、ヤットコサの思いで書いた尻から続編が思い浮かんだ。

ということでつづきは明日、『「石工の話」アゲイン』のココロだあ

(にならなかったらゴメンね)



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「より早く」について

2017年02月17日 | 三方良しの公共事業

「良く早く安く」は、間に合わせの安物に対しての掛け声である。半永久の寿命が必要な社会資本には、絶対に適用してはならない。(P.87)

尾上一哉さんはその著書『地域建設業ーある建設業者の遺書』のなかで、同様のことを繰り返し書いている。


地域建設業―ある建設業者の遺書
尾上一哉
熊日出版


そして、わが社のモットーは「より良いモノをより早く」。

折にふれて書き、言ってきたつもりだが、ひょっとしたらあまり説明してこなかったかもしれないなと思わないでもない。ということで、「より早く」について書いておくことにした。思いつきついでに、なぜ「より安く」がないかについても書く。

まずは「より早く」。

わたしが提唱するところの「より早く」には2つの意味がある。

一つ目は、「三方良しの公共事業」の旗振り役としてのわたしが考える「早く」。公共事業の執行に関わる無駄を省けば自ずから「早く」なるだろう?ということである。平たく言うと、施工者のわたしや発注者のアナタがテメエらの都合でチンタラやるのを止めて、本当の「お客さん」である地域住民のためを考え、公共事業の最前線たる現場を回していこう、ということだ。

二つ目は、会社の番頭としてのわたしが考える「早く」。プロジェクト遂行における人間の行動特性は、往々にして「より早く」とは逆の方向で表出する。つまりこんな現象だ。

作業日数の見積もりは水増しされる。

ギリギリまで手をつけないことで、せっかく見込んだ安全余裕は結局全部吐き出すはめになる。

そんな最悪のタイミングで最悪の事態が発生する(じつは、当人が「最悪」だと感じてるだけで余裕があれば対処できることが多い)。

優先順位をつけられず、悪いマルチタスキングを行うことによって時間がかかる。

予算と時間はあるだけ使う。

早く終わっても報告しないので遅れだけが伝わる。

などなど・・・

これらの行動特性を排除していけば、おのずから「早く」が実現され、その実現が利益の向上に直結する(ちょっと回りくどい表現だな。つまり「早く」終わらせれりゃあ儲ける、だ)。

しかし、ここで肝要なことがひとつある。「早く」を念頭に置きすぎたり、「早く」だけに固執するあまり、品質をおろそかにしていては、「信頼」や「信用」という、目には見えないけれど長期的にはとても大切な利益(いち企業だけの利益にとどまりませんネ)を得ることはできないということだ。この意味において、わたしのなかで2つの「早く」は同等となる。そして、「より早く」と「より良く」も共存できる(ただ、オーバースペックは必要ないというのがわたしの考え)。むしろ共存しなければいけないと言ったほうが適切かもしれない。


次に「より安く」。

今という時代の消費者マインドを前提として考えると、これは少々やっかいな問題である。


とここまで書いたが、あいにくと今日は時間がない。

ということで、つづきはまた明日。『「より安く」についてのココロだあ

(にならなかったらゴメンね)



 

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『京奈和自動車道~プロフェッショナル達が挑む~ 「雄ノ山高架橋建設中」』という動画に見惚れてしまったこと

2017年02月16日 | 土木の仕事

大林組のSさんから凄い現場の動画を教えられた。

「格好いいなあ」と見惚れてしまった。こうなると、子どもみたいなもんである。「はたらく機械」が超大好きなわが孫と基本的に変わるところがない。

以下、全6編を紹介する。ちなみにわたしがオススメの視聴方法は、『#6 魅せる現場 つながる編』から逆に観ていくというもの。逆から並べてみたので、御用とお急ぎでない方はぜひ。御用とお急ぎのある方もぜひ(あとでゆっくりと)。

 

京奈和自動車道~プロフェッショナル達が挑む~「雄ノ山高架橋建設中」#6 魅せる現場 つながる編

 

京奈和自動車道~プロフェッショナル達が挑む~「雄ノ山高架橋建設中」#5魅せる現場 PC橋編

 

京奈和自動車道~プロフェッショナル達が挑む~「雄ノ山高架橋建設中」#4魅せる現場コンクリート編

 

京奈和自動車道~プロフェッショナル達が挑む~ 「雄ノ山高架橋建設中」#3魅せる現場 やじろべえ工法編

 

京奈和自動車道~プロフェッショナル達が挑む~ 「雄ノ山高架橋建設中」#2魅せる現場 クレーン編

 

京奈和自動車道~プロフェッショナル達が挑む~ 「雄ノ山高架橋建設中」#1 魅せる現場編

 

 

 

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『地域とともに生きる建設業2 ~ 第2章 個のやる気を引き出す』を読み、うなる。そしてアタマを掻く。

2017年02月15日 | 土木の仕事

 

『地域とともに生きる建設業Ⅱ』(小磯修二、関口麻奈美)が届く。

帯にある「北からの挑戦」という文字に、もしや、と思いそそくさと目次をのぞくと案の定、載っていた。

『第2章 個のやる気を引き出す』。

らしい。

いかにも「らしい」タイトルだ。

 

「近江商人の三方よしの考え方をそのまま建設業に適用して、地域よし、発注者よし、施工者よしになるような公共事業をしていこうと考えています。地域の人たちがこの会社が必要だ、また社員もこの会社にいてよかったと思えるような会社でないと、存在する意義がありません。売り上げや利益が良いだけでは、企業はいきていけません。特にこの十数年はそれを強く感じます」(P.37)

 

「工程の短縮や品質の高さ、技術者のレベルアップなど、お金では換算できない要素を含めると多少の割高さはペイできると思っています。考え方の問題になりますが、当社では人材育成という点を重視しているので、非常に効果があると思っています。現場の雰囲気も変わってきました」(P.39)

 

前者はS社長の経営に対する、後者はK常務の情報化施工に対する考え方だ。

特に後者、

読むなり、「そうだったんだ・・・」とうなる。

ICTさえも人材育成の一環だったのだ。

見事なまでに軸がブレてない。

そういえば・・・、

はじめて一献を傾けた神田の居酒屋で、「会社がつぶれるまで(つぶれないけど)徹底的に個の育成にこだわっていく」のだとS社長が言ってたのを思い出す。

それに比べ・・・。

今また、あのころとは異なる人材育成というテーマをつきつけられている現実を、どんなふうに乗り切っていこうかとアレヤコレヤ思い悩む自分自身をふりかえる。

本質は同じなのだ。違ってはいない。現象の差異に惑わされて、異なるテーマだと錯覚しているに過ぎないのだ。

と、「いずれにしてもブレない軸は保ちつづける」などと他人さまにはエラそうなことを言うくせに、そのじつブレブレの自分自身を省みてアタマを掻く。

 

 

砂子組、

やっぱりMyアイドルだわ。

 

 

地域とともに生きる 建設業II 北からの挑戦

小磯修二

関口麻奈美

中西出版

 

 

 

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