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沢木耕太郎「キャパの十字架」

2016-05-29 | Book

キャパの十字架 (文春文庫)
沢木耕太郎の本を買ったのはすごく久しぶり。どうも彼のエッセイは好きになれず、深夜特急は一冊も読んでいない。「敗れざる者たち」や「テロルの決算」などに、本来陽の目があたらない人物にフォーカスをあて、圧倒的な取材力であぶり出された真実には大きく心を動かされ、ルポルタージュの虜になった。オリオンズの榎本喜八のルポなどはその真骨頂だと思う。
そんな彼が敬愛するキャパの有名な一枚の写真の真実を、彼持ち前の圧倒的な執念と取材力であぶり出していく。その結果はどうであれ、そのプロセスに触れて改めて感銘を受ける。
ネットやソーシャルメディアで情報が入りやすくなった分、情報に踊らされる世の中、自分なりの仮説を講じて納得の行くまで取材を積み重ねる沢木耕太郎のスタイルは、今まさにかけているものだと感じた。自戒も含めて。

沢木耕太郎は、自身のアイドルの一人であるキャパの真実を自らの手で解明してしまったが、キャパへの親愛の情は変わらないと書いている。そういうことだと思う。この真実を知っていようがいまいが「キャパの一枚」の価値が、俺の中で変わることはない。







内山 節 「半市場経済」

2016-05-02 | Book

半市場経済 成長だけでない「共創社会」の時代 (角川新書)
今の経済システムでいいと思っている人は少ないだろう。お金持ちでまだまだ資産を増やしたくて、そして、税金は取られたくないのでパナマやケイマン諸島で節税してる恥知らずの人間や企業以外は....。しかしながら19世紀半ばから続くこのシステムに変わるシステムは生まれてきていない。アンチテーゼとして巻き起こった共産主義はもろくも崩れ去り、資本主義はより一層悪魔の循環である超資本主義となり、より一層の富の集中が行われている。自然界や人間の体も良い循環が行われずどこかに膿が溜まってしまうと調子が悪くなる。今の「超資本主義」はまさにそれだ。日本ほどこの経済システムの変化に追従し(させられ?)、大きく自身も変化してきたが、日本の持つ本来の倫理性が失われていることに憂う人たちも増えてきている。
この本の著者内山氏は超資本主義の原因をあぶり出し、新しいシステムを「半市場経済」と名付けたイノベーションを提唱している。実際「物や時間の私的所有」を「共有、共創」する若い世代を中心に新しい動きが活発しているケーススタディを取り上げ、そのロジックを解明している。大きな動きではないが、かといって小さい動きではない。やや違う文脈ではあるはポーターの提唱するCSVは修正資本主義として語られ、UnileverやP&G、GEなどのグローバル企業は経営の柱として、社会課題解決とビジネス成果の両立を経営目標(定量目標)に掲げ、実績を出し始めている。
日本でも無印良品などはその代表的な企業で、宣伝広告なしにビジネスを伸ばし、海外進出でも成功を納め出している。共有価値が顧客との間に明確だからであろう。
「志」「共有価値」「縁」などこれからのビジネスのキーワードが満載な一冊である。