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沢木耕太郎「キャパの十字架」

2016-05-29 | Book

キャパの十字架 (文春文庫)
沢木耕太郎の本を買ったのはすごく久しぶり。どうも彼のエッセイは好きになれず、深夜特急は一冊も読んでいない。「敗れざる者たち」や「テロルの決算」などに、本来陽の目があたらない人物にフォーカスをあて、圧倒的な取材力であぶり出された真実には大きく心を動かされ、ルポルタージュの虜になった。オリオンズの榎本喜八のルポなどはその真骨頂だと思う。
そんな彼が敬愛するキャパの有名な一枚の写真の真実を、彼持ち前の圧倒的な執念と取材力であぶり出していく。その結果はどうであれ、そのプロセスに触れて改めて感銘を受ける。
ネットやソーシャルメディアで情報が入りやすくなった分、情報に踊らされる世の中、自分なりの仮説を講じて納得の行くまで取材を積み重ねる沢木耕太郎のスタイルは、今まさにかけているものだと感じた。自戒も含めて。

沢木耕太郎は、自身のアイドルの一人であるキャパの真実を自らの手で解明してしまったが、キャパへの親愛の情は変わらないと書いている。そういうことだと思う。この真実を知っていようがいまいが「キャパの一枚」の価値が、俺の中で変わることはない。