2010/10/8upわかる目次 |
あっちゃんとお母さん |
友人のあっちゃん(仮名)から、彼女の母親の話を聞いた。
実話である。
あっちゃんは言った。
「今考えると、うちのお母さん、すごかったわ」
ある女の子がいました。
名前をあっちゃんといいます。
小学校の時、あっちゃんはいじめっ子でした。
気が強くて体も大きかったあっちゃんに誰もかないませんでした。
中学校であっちゃんは、バスケット部に入りました。
あっちゃんはバスケがとても上手でした。
二年生になって、あっちゃんはいじめられるようになりました。
ある日、帰るとき、げた箱の運動ぐつに水が入っていました。
次の日は、ゴミがつめこまれていました。
また次の日は、画びょうが入っていました。
あっちゃんは、学校に行くのがいやになりました。
それで、お母さんに相談しました。
「わたし、もう学校に行くのいやや」
すると、お母さんは静かに言ったそうです。
「あっちゃん。いじめられてよかったねえ」
「明日から学校、行かなくてええよ」
「二階で勉強してなさい」
「大人になるんだからね」
あっちゃんは、なんてひどいことを言うんだろうと思いました。
自分がいじめられてこんなに苦しんでいるのに
「いじめられてよかった」
と言うなんて。
次の日から一ヶ月間、あっちゃんは、学校を休みました。
けれども、また学校に行くようになっても、いじめは続きました。
中学を卒業して高校に入るといろんな人が集まってくるので、いじめはなくなりました。
あっちゃんはそのとき不思議な感覚を持ったそうです。
「わたし、なんだか、いじめられてる人の気持ちが分かるようになったわ」
お母さんは、あっちゃんが小学校の時いじめっ子だったのを知っていました。
あっちゃんがいじめられたとき
「いじめられてよかったな。大人になるんだから」
とお母さんは言いました。
それは、あっちゃんに、ひとの気持ちが分かるようになってほしかったからだったのです。
2008-07-05 20:20