語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【選挙】【原発】安部自民と石原維新がもたらす経済損失 ~経済システムの変化~

2012年12月10日 | 社会
 今回の選挙の争点は、脱原発、社会保障(消費税)、TPPで、歴史的な選択となる。何が歴史的選択なのか。

(1)全体状況
 (a)近過去
   1930年代の大恐慌以来、「100年に1度」の世界的経済危機が続いている。欧州の経済危機は、簡単には収束しそうもない。米国も「財政の崖」に直面し、4,000億ドル以上の緊縮財政を迫られる危険が年末に迫っている。それはアジアにも及び、中国も経済成長率が10%台から7%台に下がり、韓国もゼロ成長だ。
   日本は、金融機関の不良債権処理に失敗して以来「失われた20年」が続き、さらにリーマン・ショックで、それまでの新自由主義的な経済政策による矛盾が貧困・格差の拡大などの形で広く社会に顕在化した。
   それが民主党の政権交代(2009年)につながったのだが、マニフェストが実現できなかったり、公約にないことをやったりで、民主党への信頼が失われていった。挙げ句のはて、野田民主党政権は、それまで失政を続けてきた自民党と公明党との連携を模索し、社会保障改革なき消費増税で、党を割っても「3党合意」を優先した。

 (b)現在
   不良債権処理に始まり原発事故に至る無責任体制をごまかすために、再び劇場型政治が展開され、威勢のよい極端な主張がもてはやされるようになった。
    ①自民党・・・・その公約は、もはや戦時体制と似てきた。昔は戦費、今は公共事業。改憲による国防軍の創設は、米軍と一体化していく軍事国家の推進。教育委員会の独立をなくす教育改革。
    ②維新の会・・・・当初の「原発ゼロ」の看板を下ろし、TPPも業献金も看板を下ろし、新党首の石原慎太郎は核武装を唱える。「維新八策」は、もうボロボロだ。

 (c)近未来
   安部自民と石原維新が組んだら、中国・韓国をはじめ、アジアで孤立し、経済的な利益が失われる。
   日本の輸出市場は中華圏で3割、アジア全体では5割超。日本は生きる糧を失う。実際、尖閣諸島をめぐる領土問題では、世界一の自動車市場である中国への日本車生産が84%も落ちた。
    ①選択肢(その1)・・・・経済が閉塞すると、ますます軍事化に拍車がかかる。世論調査によれば、日本は今、そういう道を選択しようとしている。
    ②選択肢(その2)・・・・「脱原発、反消費税、反TPP」を掲げる側、「未来の党」はどれだけ浸透するか未知数。原発に反対する人たちも、経済性を犠牲にしても安全性を優先すべき、といったレベルの批判にとどまっている。問題は、原発を続けることが日本経済をダメにしている点なのだ。

(2)経済・社会システムの転換
 (a)経済システムの変化
   今回の総選挙の歴史的選択とは何か。それは、日本が新たな経済・社会システムに移行できるかどうか、だ。 
   日本および世界の経済システムは、20世紀型から21世紀型へどう変わろうとしているのか。その将来ビジョンの中に原発、社会保障、TPPの筋道を描く必要がある。いま、次の(a)から(b)に変わっていく過程にある。
    ①「集中メインフレーム型」/スーパーマーケット型・・・・20世紀の経済システム。「重厚長大産業」を中心に大規模化してコストを下げ、大量生産・大量消費の社会を作りだした。
    ②「地域分散ネットワーク型」/コンビニ型・・・・21世紀の経済システム。コンピュータの大容量化・高速化・小型化による情報の総記録社会を基礎とする。小規模分散の法がリスクも少なく効率的になっていく。
   原発事故は①の終わりを意味する。②の再生可能エネルギーは、ITによる住宅・工場・町のスマート化、スマートグリッド(賢い送配電網)いよって省エネと一体化しつつ成り立つようになっていく。

 (b)停滞
   ところが、バブル崩壊後の不良債権問題でも、福島原発事故でも、リーダーたちの経営責任は一切問われていない。その結果、1930年代から戦時中にかけてと非常に似てきている。脱原発こそ、新しい産業と雇用を生み出す。このことを明確に打ち出す必要がある。
    ①金融恐慌で経済が低迷し、2大政党は政策的違いがなくなり、国会ではスキャンダルで相手を攻撃するだけで、毎年のように首相が替わる。
    ②メディアも、今の電力不足キャンペーンのような大本営発表を繰り返す。
    ③そして、ついに軍部のクーデタで戦争体制に入っていく。ドイツでは、バイエルン地域政党だったナチスが国政に進出し、中央政府を乗っ取った。原発依存を続けようとする政官財は、もはや敗戦間際の“戦艦大和状態”なのだ。原発などを続ける限り、新しいシステムへの転換はできず、日本経済は成長できなくなっていく。

 (c)社会システムの転換
   再生可能エネルギーへの転換は、社会システムとも呼応している。社会保障・福祉などでも同じ転換が起きるからだ。
    ①社会保障・・・・今の人口減少社会では、年金中心の社会保障は限界にきている。現物給付を増やし、医療・介護・保育・教育などの分野を重点に雇用を創り出しながら、新しい福祉社会に変えていかねばならない。男女が働くヨーロッパ型をモデルにし、子どもを育てるコストを安くする。これらの現物給付は、地域ごとの独自性を踏まえねばならないから、地域分散ネットワーク型にならざるをえない。
    ②農業・・・・TPP推進派は、集中メインフレーム型から抜け切れていない。大規模化は米国や欧州などと比べれば焼け石に水。それよりも、直売所や産直など、ITをフル活用した効率的なシステムのもとで地域単位での一次産業をベースにした二次、三次産業への展開を図っていく六次産業の方が雇用も増え、安全・安心という点から見てもはるかによい。

(3)結論
 100年に1度の世界経済危機は、集中メインフレーム型から地域分散ネットワーク型へのシステム転換を促している。
 この総選挙では、新しい未来を創るのか、それとも後戻りして無責任体制を温存するために「戦時体制」もどきの後戻りを繰り返すのか、が鋭く問われている。

 以上、金子勝(慶應義塾大学経済学部教授)「脱原発が日本を救う」(「週刊金曜日」2012年12月7日号)に拠る。

 【参考】
【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾
【選挙】安倍自民党総裁が財界に支持される理由 ~官僚的体質~
【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~
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