舟越は、斎賀さんは未だ玲子さんの手すら握った事がないんじゃないのかな、斎賀さんには失礼だが彼は若い頃憧れの人と言うか、自分1人の胸のうちで好きだと思った人はいたかもしれないが恋をした事はないのだろう、それが熟年も後半になって若い頃胸の中に抱いていたタイプの玲子さんとであって初めて恋心が芽生え今は玲子さんに夢中の状態なんだな、いまあのとしになって青春を味わっているんだな、手を握らなくても、キスしなくてもただ一緒に居てあれこれ面倒を見るのが嬉しく楽しくて仕方が無い、ワクワクしたプラトニックラブの真っ最中なんだと思いました。
先日も少し斎賀さんを刺激してやろうと「斎賀サン、もたもたしていたら何処かの人に玲子さんをさらわれてしまうと、斎賀さんもそそこ年なんだから思っていることを早くしないと後で後悔することになるよ、玲子さんもそれを心待ちにしているんじゃないかなー」と煽り立てたら「私の玲子さんをさらっていくなんて残酷な事を言わないで下さいよ、それだけは勘弁してくださいお願いします」と真顔で言うので当の玲子さんも思わず噴出してしまい3人で大笑いしました。
斎賀さんのお陰で元気を取り戻してきた玲子さんは近頃ボランティアで近所の介護老人ホームに行ってお年寄りの話し相手になったり一緒に遊んだりと面倒を見るようになり
それが生甲斐になって顔つきもいきいきしてきました。玲子さんは愛くるしい顔で若く見られるタイプなので斎賀さんより大分年下と思っていましたら斎賀さんと同年齢で玲子さんのほうが誕生日が7ヶ月早いプチ姉さんでした。
斎賀さん玲子さんコンビは今では舟越が美濃屋に来る回数より多いくらいだそうで何時も仲良く同じお惣菜を分け合って食べたりしているよと進君が話してくれました。
「おや、もうこんな時間になっている、今日は久しぶりに藤原さんと飲んでたのしかったから時のたつのをすっかり忘れていた、そろそろ帰らないと終電車に乗り遅れるからお開きにしよう」「いやー、私も舟越さんと飲んでいると何時も時間が過ぎてゆくのを忘れてしまっています、今日は有難う、マスター女将さん語馳走様でした、斎賀さん玲子さんお先に」と舟越と藤原さんは帰って行きました。
「玲子さん僕達もそろそろお暇しよう、僕も明日又朝7時に会社に行かなければならないから」「マスター女将さん又寄せてもらいます」、
「お待ちしてます、又お二人でいらしてください」と斎賀さん玲子さんのコンビも帰って行きました。
「今夜は一寸早いかもしれないがもうお客さんも来ないだろうから店を閉めようよ、一寸小腹も減ってるから美味しい蕎麦か何か食べて帰ろうよ」「そうね、じゃあ貴方火の元を確認して頂戴」「OK大丈夫だ」「有難う、じゃ帰りましょう」
美濃屋の看板の灯りも消え人通りもまばらになり夜が更けてゆきました。
美濃屋には色んなお客さんが着ます、常連さんが多いのですが一見の客も可也いて一度来ると女将さんの手料理と気さくなマスターのもてなしが気に入って常連になるお客が殆んどです。人それぞれ色々な人生があり辛い事、悩む事など皆さんそれぞれ何か抱えておられますが美濃屋に来て気分転換し又明日に向かって前向きになって帰られます。
長々と美濃屋の客シリーズをお読みいただき有難う御座いました。
次回からはまた新しいシリーズで愚作を後悔させていただきますのでお読みになられてください。