私の小説

想い浮かぶまま小説を書いてみました。
一度には掲載できませんので何回かに分けて掲載します。お読みいただけたら幸甚です。

美濃屋の客第3部の13

2011-11-24 14:47:47 | Weblog

舟越は、斎賀さんは未だ玲子さんの手すら握った事がないんじゃないのかな、斎賀さんには失礼だが彼は若い頃憧れの人と言うか、自分1人の胸のうちで好きだと思った人はいたかもしれないが恋をした事はないのだろう、それが熟年も後半になって若い頃胸の中に抱いていたタイプの玲子さんとであって初めて恋心が芽生え今は玲子さんに夢中の状態なんだな、いまあのとしになって青春を味わっているんだな、手を握らなくても、キスしなくてもただ一緒に居てあれこれ面倒を見るのが嬉しく楽しくて仕方が無い、ワクワクしたプラトニックラブの真っ最中なんだと思いました。
先日も少し斎賀さんを刺激してやろうと「斎賀サン、もたもたしていたら何処かの人に玲子さんをさらわれてしまうと、斎賀さんもそそこ年なんだから思っていることを早くしないと後で後悔することになるよ、玲子さんもそれを心待ちにしているんじゃないかなー」と煽り立てたら「私の玲子さんをさらっていくなんて残酷な事を言わないで下さいよ、それだけは勘弁してくださいお願いします」と真顔で言うので当の玲子さんも思わず噴出してしまい3人で大笑いしました。
斎賀さんのお陰で元気を取り戻してきた玲子さんは近頃ボランティアで近所の介護老人ホームに行ってお年寄りの話し相手になったり一緒に遊んだりと面倒を見るようになり
それが生甲斐になって顔つきもいきいきしてきました。玲子さんは愛くるしい顔で若く見られるタイプなので斎賀さんより大分年下と思っていましたら斎賀さんと同年齢で玲子さんのほうが誕生日が7ヶ月早いプチ姉さんでした。
斎賀さん玲子さんコンビは今では舟越が美濃屋に来る回数より多いくらいだそうで何時も仲良く同じお惣菜を分け合って食べたりしているよと進君が話してくれました。
「おや、もうこんな時間になっている、今日は久しぶりに藤原さんと飲んでたのしかったから時のたつのをすっかり忘れていた、そろそろ帰らないと終電車に乗り遅れるからお開きにしよう」「いやー、私も舟越さんと飲んでいると何時も時間が過ぎてゆくのを忘れてしまっています、今日は有難う、マスター女将さん語馳走様でした、斎賀さん玲子さんお先に」と舟越と藤原さんは帰って行きました。
「玲子さん僕達もそろそろお暇しよう、僕も明日又朝7時に会社に行かなければならないから」「マスター女将さん又寄せてもらいます」、
「お待ちしてます、又お二人でいらしてください」と斎賀さん玲子さんのコンビも帰って行きました。
「今夜は一寸早いかもしれないがもうお客さんも来ないだろうから店を閉めようよ、一寸小腹も減ってるから美味しい蕎麦か何か食べて帰ろうよ」「そうね、じゃあ貴方火の元を確認して頂戴」「OK大丈夫だ」「有難う、じゃ帰りましょう」
美濃屋の看板の灯りも消え人通りもまばらになり夜が更けてゆきました。
美濃屋には色んなお客さんが着ます、常連さんが多いのですが一見の客も可也いて一度来ると女将さんの手料理と気さくなマスターのもてなしが気に入って常連になるお客が殆んどです。人それぞれ色々な人生があり辛い事、悩む事など皆さんそれぞれ何か抱えておられますが美濃屋に来て気分転換し又明日に向かって前向きになって帰られます。

長々と美濃屋の客シリーズをお読みいただき有難う御座いました。
次回からはまた新しいシリーズで愚作を後悔させていただきますのでお読みになられてください。

美濃屋の客第3部の12

2011-11-15 13:58:23 | Weblog

「おや、舟越さん」と声を掛けられて声の主を見ると美濃屋で何度も隣同士に座り親しくなった斎賀さんと連れの玲子さんの2人でした。
「おや、今晩は何時も中睦まじくて結構ですねー、玲子さんも久しぶりですね」
「斎賀さんたちちょくちょく来てくださるのだけれど舟越さんとすれ違いばかりで、斎賀さんからは舟越さん来られてますかと何時も聞かれていたのよ」とケイさんが話してくれました。「そうでしたか、じゃあ今夜はお二人にお会いできてラッキーだったわけだ、私も2週間ぶり位にですかな?今夜は長いお付き合いの友人を誘って先ほど来たんですよ、こちら藤原さんと言って20年来の友達です」
「藤原です、舟越先輩には何時もお世話になって居ります、宜しく」「斎賀と申します、此方友達の玲子さんです宜しく」とお互いに挨拶しあいました。
「藤原君、斎賀さんはM証券会社本社の投資担当部門の次長さんでね、お金があって投資がしたいと思ったら相談するといいよ、この道うん十年の大ベテランだから」
「いやー、ベテランと言うほどのものではありませんが少しはお役似たつ情報などお話できますから何時でもお声を掛けてください」
「其の時は宜しくお願いします、正直言って今は昇給もストップされ、ボーナスも昔の半分にも満たない状態で投資する余裕なんかありません。会社が可笑しくなってリストラをされないように必死に頑張ってる状態ですよ」
「私達の会社も以前は鷹揚なところが有りましたが今はとても厳しくなって損失でも出そうものなら即座に窓際族に追いやられるか関連会社に出向、そして減給リストラと路が決まっていますので毎日気が抜けません、こうして美濃屋さんに玲子さんと一緒に来て一杯飲んで気分転換をしないとストレスで体を壊してしまいます。お互い現役は身体を壊したらお終いですものね。いやー久しぶりに舟越さんとお会いになって居られるのに邪魔者が話に入ってごめんなさい」「いいえそんなことはありませんよ、素敵な女性とご一緒でいいですねー、私など野暮な男だから女性を誘っても面白くないのか相手にしてくれません、飲むときは何時も男とばかりで貴方達のような女性同伴で仲睦まじくやられる人が羨ましいなー世思ってますよ」「おいっ、藤原君相手が男の俺で悪かったなー」「あっいや舟越さんは別ですよ」「はっはっは」・・・・
「斎賀さんは冷酒でしたね、玲子さんは?」「私はそんなに飲めませんから斎賀さんと同じのを少し下さい。女将さんこのジャガイモサラダとひじきの炊いたのを下さい」
「僕は、おからと小芋と烏賊の焚いたのとみがき鰊の煮物を下さい」
「じゃあ乾杯舟越さん藤原さんにもかんぱい!」「有難う乾杯!」「頂きます」と斎賀さんと玲子さんはケイさん手作りの料理で飲み始めました。
「玲子さん、この小芋と烏賊の焚いたのも美味しいけれどみがき鰊の焚いたのは柔らかくてとても美味しいから一切れ食べてみて御覧」「そうー、じゃあ頂いて、本当美味しいわねー、柔らかくって凄く美味しい、どうしたらこんなに柔らかく美味しく焚けるのかしら、私が子供の頃家でもよくみがき鰊を母が焚いてくれて食べたけどこんなに柔らかくなんかなくってなんか渋味があって美味しいと思ってたべたことがなかった、今日久しぶりに頂いてこんなに美味しいと初めて知りました」「だろう、ここの女将さんの手にかかったら何でも美味しく成っちゃうんだよ」など雑賀さんは何時もの様に玲子さんを労わる様に気を配りながらそれでも玲子さんと一緒に入る事が楽しくてならないようでした。
舟越が斎賀さん、玲子さんと知り合ったのは1年くらい前からで舟越とカウンター席で何度も隣同士になっているうちに「やぁーまたおあいしましたねー」と舟越から声を掛けたのが始まりで、当初斎賀さんが同年輩くらいに見え何と話が合ったのでそれ以来店で会うと話し合うようになりました。
雑賀さん達に初めて出会った時、舟越は仲の良い夫婦かなと思いましたが、二人が「」話し合っている言葉遣いが夫婦の間の会話と一寸と違うので、会社の上司と部下かなとも思いましたが男性の方が女性に焼き魚の身をほぐして「此処は骨の無い所だから食べなさいよ、魚を食べる事は身体に良いからねとか生野菜もカウンターに並んでいるお料理も食べられそうなものがあったら何でも良いから少しずつでも食べなきゃ駄目だよ、
色々な種類の食べものを食べると言う事は健康の基だからね」と優しく親切にしていて女性のほうもそれに甘えるように見えたのでこれは職場の関係でもないし、恋人同士かなー、不倫関係かなー、お互い熟年同士だから昔の恋人同士が時を経て再会し焼けぼっくりに火がついたと言う奴かなーなどと思っていました。
「言場を交わすようにようになって男性が雑賀と申しますと自己紹介をされたので舟越も美濃屋のマスターと高校の同級生で舟越と申しますと自己紹介をし其の時一緒にいた女性を雑賀さんがこの人は玲子さんです、よろしくと紹介してくれました。
雑賀さんの話によると、玲子さんは元看護婦さんで自分も持病がありながら長い事体の不自由なお年寄りの面倒を献身的にされていたがお年寄りが亡くなられて今まで気持ちを張り詰めていたのがガタガタと崩れ精神的のも肉体的のも大きなダメージを受け持病が悪化してしまい今療養中なんですよ。元気が無くなって家にばかりこもって入て考える事は持病の事ばかりのような生活をしているので、外に出て気分転換をし美味しくて身体に良いものを食べて体力気力をつけないと駄目だよというんで私が引っ張り出して美濃屋さんに一緒に来ているんですよ、と話してくれました。
舟越も玲子さんを初めて見たとき何か暗い沈んだ雰囲気で生気がないない人だなー、着ている物も地味だしと思っていましたが斉賀さんの話で玲子さんに感じた事の納得がいきました。
其の時には玲子さんと言葉は交わしませんでしたが、その後何度か会っているうちに玲子さんから暗い影が次第に薄れそれにあわせたように着ている物も明るい色調のものを身につけるようになり、それまではぼそぼそと小声で斎賀さんと話をしていたのがしっかりと笑いを交えながらはっきりとした口調で話すようになり生気も出てきました。
玲子代わってきましたさんも舟越と何度も同席するうちに舟越と雑賀さんの話に中に自分から加わるように随分変わってきました。
斎賀さんが「玲子さんは可哀想な人で黙って見ておれないんです、出来れば私の所に引き取って一緒に生活しながら元気を取り戻させてあげたいと思っているのです」と舟越に話したので「雑賀さんは独身ですか?自分の所で一緒に生活したいと言われるのなら」と聞くと「いえいえ、家内も子供もいます。ですから実現不可能な話なんですがそのくらいこの人のことが気になって仕方が無いので水よ、1人で置いておく事が心配でならないんです」と言うから「じゃあ玲子さんは斎賀さんの恋人と言う事なのですね」と言うと「私は其のつもりですが玲子さんはどう思っているか未だ聞いたことはありません」と言う話でしたので、この頃では舟越に大分打ち解けてきた玲子さんに「単刀直入にお聞きしますが、玲子さんにとって斎賀さんは恋人ですか」と聞いたらはっきりと「そうです」とは答えず「私を優しく支えてくださり力になってくださる肩です」と言う答えが返ってきました。斉賀さんと玲子さんがどういう出会いから知り合い斎賀さんが恋人とまで言うようになったのか判りませんが、斎賀さんは何時も玲子さんを優しく包み込むように大切に接し、玲子さんの其の好意を素直に受け止め感謝しながら適当に甘える可愛い女性になっています。
美濃屋に来たのは偶然でたまたま玲子さんが中野に住んでいるので出会ってから2人で
中野界隈の店をあちこち食べ歩いてみたがこれと言う店が見つからず、たまたま通りすがりに「お袋の味美濃屋」と言う看板を見て入ってみたら雰囲気も気に入ったし良い方なので1度で気に入ってしまい、それからは玲子さんと食事をする時は美濃屋と2人で決めたそうです。