私の小説

想い浮かぶまま小説を書いてみました。
一度には掲載できませんので何回かに分けて掲載します。お読みいただけたら幸甚です。

美濃屋の客第4話の2

2009-02-25 11:14:26 | Weblog

銀座のクラブから中野のスナックに替わって、初めはとまどったわ、先ずお客さんが使う金額が銀座のクラブで使う金額と一桁違うくらい少なくて1ヵ月の売り上げが私が銀座で働いていた時の1か月分の稼ぎにもならいのにはびっくりしたわ、
こんな稼ぎしかなくて生活できるかしら、親父に援助してもらわないとやってゆけないと思った。
来てくださるお客様には気取る必要も無く、元々ざっくばらんが地のあたしにはぴったりで気楽に商売は出来たけれど、何しろ稼ぎが知れていてとてもじゃないが遣っていけそうに無いので親父に何とか援助してよと頼んだら物凄く怒って、自分を何様と思っている、自分の生活費くらい自分で何とかしろ、クラブに居た時のような金銭感覚ではダメだ、先ず今住んでいる高級マンションからでろ、お前に合うようなアパートがあるからそこに入れとお手の物で中野中央に2Kの賃貸マンションを見つけてくれ家賃はお前が払えと言われた。
余りぼろくそに言われたので私も悔しくって、よーし遣ってやろうじゃないか、もう二度と頼むものかと六本木のマンションを引き払い、贅沢な家具やドレスなども全部売り払い必要最小限度の物だけ持って引っ越してきた。
クラブに勤めていた頃には同僚に負けてはならじと無駄なお金も随分使ったけど、中野に来たらもうそう言う事をする必要もなくなったから余分な事には一切お金を使うまいと思って遣り出したら何とか女一人生活していく事が出来るようになってきた。はじめの内はついクラブの頃と比較して惨めな気分だったけど、今までの
生活がアブノーマルだったんだと気付いたらなんとも無くなった。
店のほうは銀座時代のお客さんが仕事の帰りやお付合いの帰りに顔を出してくれたり、親父が客を連れてきてくれたり、一見のサラリーマンやご近所の商店主さんたちが来てくれるようになり次第に常連さんが増えてきて、そこそこ繁盛するようになってきて、私も気合が入って一生懸命サービスに徹したわ、店が繁盛しだしたら私一人では手が廻らなくなりお客さんに満足なサービスが出来なくなってきたので
女の子を一人入れたの。
この子が中々機転の利く子で客あしらいも上手だし、素人ぜんとした素直な子だっったので私も良い子が来てくれたと随分か愛がってあげたよ。
でもその子が来てくれて1年くらい過ぎた頃から女の感で何か少し変だナーと思っていたら、ある日女の子が一身上の都合で止めさせてほしいと言ってきた。
折角店にも慣れたしお客さにも可愛がられていたので引き止めたが止めたいと言うので仕方なく止めさせたが、店に来て半年位した頃から私に内緒で親父と出来ていて、親父に店を持たせてやるからと言われてうちを止め親父に店を持たせてもらった事が暫くしてわかったの。
あの子もあの子なら親父も親父だと悔しくて悶々していたときマスターが初めて店に顔を出してくれたのよ。
マスターに浮かぬ顔をしているが何か有ったのかい?と聞かれ全部は話さなかったけれど大まかな事を話したら、そう言うことはママ有る事よ、そんなことでうじうじしていないで親父をとっちめて遣れよと励まされ、そうだね気を強く持って親父に対決しようと決めて親父に何と言う事をしてくれたの、私が知らないとでも思っているの?私を馬鹿にするのもほどほどにしてよ、こうなったからにはあんたとは縁を切らせてもらう、ついては手切れ金代わりに私にお店の権利を頂戴、私の言う事が聞けないと言うなら自宅に押しかけて奥さんに私との関係からあの子のことまで一部始終をぶちまけてやるからねと大啖呵を切ってやったの。
親父は養子婿で奥さんには頭が上がらない事を知っていたからね。それからも
すったもんだがあったけど結局は私の言い分を通して尾の店を貰ったしまったの。
悶々としてた時マスターにあって励まされたから出来たわけ。
「そうか、そう言うことがあったのか、でも店が自分のものになってよかったなー、ところで親父とはそれ以来あった無いのっかい?」
「それがえ笑っちゃうんだけどね、大揉して別れてから2年位してひょっこり親父が店に入ってきたの、あらっ!どういう風の吹き回し?って言うと、店を閉めたら一緒に寿司でもつまみに行かないか?一寸と付き合ってくれよと愁傷らしく言うので店を閉めた後付き合ってすし屋で呑んでいた時、どう?あの子とは上手く遣ってるの?と聞くと、それがナー、あいつ他に男を作って店の売り上げを皆持って逃げちまいやがった、仕入先の酒屋にも借金していたので、その付けが皆俺のところに来てしまい往生したよ。お前と仲良く遣っておれば良かったのにつまんない女に手を出したお陰で高い授業料を払わされたよ、というので、それはご愁傷様、でも
身から出た錆びだから仕方が無いだろうって言ってやった。本心はざまーみろと大笑いしてやりたかったけどね」
「今夜は詰まんない話してしまいごめんなさい、ご馳走様でした。マスターも女将さんもたまには私のところにも来て頂戴ね、そうそう親父の奴これからも店に来ていいかなー?って言うから、うちはお客さんで来てくれる限り誰でも大歓迎ですからどうぞと言ってやった、そしたら親父の奴、2兎を追うもの1兎も得ずか、なんて独りごちしながら帰って行ったわ、マスター土曜日の事は引き受けたから任せておいて、マスターの顔が立つよう大サービスするからね、おやすみなさい」

                おわり


美濃屋の客第4話の1

2009-02-02 13:32:56 | Weblog

「美紀ちゃん、頼みがあるけど聞いてくれないかなー」
「なーあに?マスターの頼みなら何でも聞いちゃうよ、抱かせろと言う以外はね」
「何を馬鹿なこと言ってる、頼みと言うのはね、今週末に2階で俺の高校時代の仲間の同級会をする事になって14~5人集まることになっているんだ、皆気を使って呉れて店の営業の営業の邪魔にならないようにと言うんで、お昼の2時から始めるんで5時頃にはお開きになるんだが、一杯入って盛り上がっているんで2次会に行こうとなると思うんだ、何処か良い店を紹介してくれと言い出すと思うがそんなに早くから店を開けてるところなんて無いじゃないか、家で散々飲んで食べた後だから飲む方は大したことは無いんで申し訳ないが一寸呑んでカラオケでも歌っえば満足すると思うので何とか土曜日の5時から店を開けてくれないかなー」
「なーんだ、そんなことならお安い御用だ、いいよ店を開けて待ってるから仲間に来てもらって」
「すまんなー、余り儲からない客だけど頼むよ」
「マスターの仲間だからうんとサービスしてあげるから、その代わりマスター、あとが高く付くよ覚悟しておいてね」
「おいおい脅かすなよ」「はっはっ、冗談よ、マスターには何時もお世話になっているんですもの、そのくらいは協力しないとね」
「ところで、今、美紀と話していて思い出したが、美紀の所は今年開店して10年になるんじゃないか?」
「そうなの、11月11日で丸10年よ」
「やっぱりそうか、何か開店10周年記念のお祝いをしてあげなくてはいけないなー」
「あらっ、嬉しい、ドカーン!と派手に祝ってよ、と言ってもこんな不景気の時だから特別10周年のイベントなどしないけどね、でもうちの店の10周年を覚えてくれて有難う、さすが美紀が信頼しているマスターだわ」
「美紀とは長い付き合いだものその位の事は覚えているさ」
「開店してもう10年も経っちゃったんだね、開店の慌しさがつい昨日のことの様に思えるににね、10年間色々有ったなー、何度泣いたかしら、マスターと初めて会った時も色々な事が重なって物凄く落ち込んでしまいプッツン寸前でいっそお店を止めてしまおうか等と思いつめていた時だった、その日は夕方から雨が降り出してお客が1人も来なくて、余計もんもんしていた10時頃マスターが来て、未だいいかい?と言って入ってきてくれた、マスターはカウンターに座って水割りを注文して黙って飲んでいたけど、ぽつんと、初めて来たのに余計な事を言って悪いけど、余り思いつめない方がいいと思うがナー、と言うので、えっ、何のこと?って聞いたら、さっきから君を見ていると何か悩み事を抱えて思い詰めている様に見えたから、つい口にしてしまったのだよ、と言われた。考えてみたら、くよくよ
思い悩んでいたから変な顔をしてたんでしょうね。マスターは人生山有り谷有り、朝がこない夜は無い、最悪の次には良い事が待っているんだから、一人で心に溜め込んで悩んでいるより誰かに向かって心の中のもやもやを吐き出した方がいいよ、
俺でよかったら吐き出してみないか君が話した事は俺の中に閉じ込めて誰にも話さないから、と親切に言ってくださった。
それを聞いたとたん急に泣けてきてしまって、わーわー泣いちゃった。
マスターは黙って私が泣くに任せていてくれた。暫くして泣き止んだ私は思い詰めるほど悩んでいた事を全てマスターに話した、マスターは真剣に聞いてくださり、
それほど悩んでいた問題に無責任なことはいえないし、話を聞いた立場で言えば正直言って直ぐ解決する回答なんて無いと思う、此処は一番時を稼ぐより方法は無いだろう、きつくて辛いだろうが暫く忍の一字で頑張るより他にないとおもいよ、君の問題は必ず時が経てば解決の糸口が見つかり解決すると思う、命を取られると言う事だったら大変だけど命までの問題ではないのだから開き直って気を強く持って耐え抜こうよ、と言ってくださった。
この言葉は嬉しかった、私の話をちゃんと聞いてくださり、一緒に考えてくださる方が居て下さると思ったら、今までの重苦しかった気分がすーっとらくになった。
「今夜はもう遅くなったから帰るけど、又来るから余り思いつめずに頑張れよ」って帰られ、その2~3日後に思いかけず奥さんと一緒に来てくださり、「どうだい?其の後は、実は君の話を家内にしたら、女の意見も役に立つんじゃないかしら、と言うから一緒に来たよ」って来てくださったのにはびっくりするやら私の事を本当に心配していてくださったと改めて判り涙が出るほど嬉しかった。
奥さんにあれこれ話、色々女の立場でアドバイスや忠告をしていただき本当に役に立って助かった。
あれ以来奥さんが実の姉さんみたいで、甘えて愚痴でもなんでも話て聞いてもらい
奥さんには迷惑の掛けっぱなしに成っちゃってる。いつか恩返させてもらうからね。
「何を言ってるのよ、美紀ちゃんの事は私の妹分と思っているから気にしないで、これからも私に出来る事であったらなんでもしてあげるから遠慮せずに何でも話においで」
「うわー、嬉しいー!お姉さま今後もよろしくこの出来損ないの妹をお願いします」
「このお店にはじめて来てお料理を食べた時、美味しさと一緒になんだか凄く懐かしい味がして、お店の看板どおり、これはお袋の味だと思ったが、このお袋の味を皆さんに食べさせたいと言うのがお姉さんの夢で今は定年退職してすっかりマスターが板についたお兄さん?と二人でいい雰囲気を作って、皆が好きになるお店にしたのはお二人の人柄がいいからだね」
「有難うよ、褒め言葉素直にいただいておくは」
「美紀が店を開いたのが10年前と言うと未だ歳は30歳前くらいと思うが良く自分の店が持てたねー」
「そうよ、店を開店したときは28歳だったわ、若かったねー。そりゃーあの歳で自分の店を持つということは普通じゃできないわよ。スポンサーと言うか親父がいたのよ。私が銀座のクラブで働いていた頃、私に気があって何時も私を指名してくれていた不動産屋の社長がいてね、何時までもクラブ勤めでもなかろう、お前がその気ならスナックを持たせてやるがどうだと何度も口説かれて、私もいい歳になるまでクラブに勤めるのはいやだなーと思っていたから渡りに船だとばかり言うことを聞いちゃってお店を持たせてもらったのよ。
          続く