言葉の散歩 【歌舞伎・能・クラシック等を巡って】

日本の伝統芸能や音楽を中心に、感じたことを書かせていただきます。

月イチ歌舞伎『棒しばり』と『喜撰』   ・・・ 中村勘三郎・坂東三津五郎・中村時蔵

2017年08月16日 | 映画
毎月一週間、映画で歌舞伎の舞台を楽しむことのできる≪月イチ歌舞伎≫、今回は『棒しばり』と『喜撰』でした。

『棒しばり』の太郎冠者は坂東三津五郎、次郎冠者は中村勘三郎。
二人の主人は、自分が留守の間に、酒好きの二人に飲まれてしまわないよう、太郎冠者のことは両手を棒に縛り付け、次郎冠者のことは後ろ手に縛り、出かけます。
しかし二人はあれこれ工夫して、縛られながらもおおいにお酒を飲み、おおいに踊り、楽しんでしまうという舞踊です。

私は踊り手の手首の動きに魅せられることが多いのですが、このように縛られていては手や腕の動きで表現することができません。
それなのに、三津五郎さんと勘三郎さんの束縛されている上半身と、軽やか且つ安定した下半身の動きから、見ている者をわくわくさせるような豊かな表現を感じました。
特に勘三郎さんには、眼や眉から足先に至るまでのちょっとした動きに独特の表情があり、縛られているにも関わらず自由自在という印象を受けました。


『喜撰』は、喜撰法師が三津五郎、お梶が中村時蔵です。
『棒しばり』の後だったせいもあるかもしれませんが、三津五郎さんの、全身を躍動させ且つ制御した、見事な踊りを堪能することができました。
多くの方が多くの場で、高い評価をしていらっしゃると思いますが、楷書の表現での、最大の豊潤と言ったらよいでしょうか。
私はそこに、三津五郎さんの、お家芸とも言える大切な踊りを、全き形で伝える使命感を感じる気がしました。
それは時蔵さんにも当てはまり、「女形の踊り」はこうあるべきという事を示す演技のように感じました。

また『喜撰』は長唄と清元の掛け合いの地ですが、演奏が舞台の雰囲気をぱっと華やかにしたり、踊りに驚くような躍動感を与えるものだと、改めて感じました。
そして素晴らしい踊り手の動きは、曲のリズムや言葉を、非常に印象的なものにするものだとも思いました。

以前観た時よりも、この演目が大変好きになりました。


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