言葉の散歩 【歌舞伎・能・クラシック等を巡って】

日本の伝統芸能や音楽を中心に、感じたことを書かせていただきます。

ある発表会で   ・・・ 凄い仕舞   

2018年03月23日 | 歌舞伎・能など
二年前にも、この方の「歌占(うたうら)」の仕舞(*1)を拝見しました。
プログラムを見て、難曲として知られるこの演目を舞われることから、相当の達人とは想像していましたが、実際拝見した感動は、その後数日冷めませんでした。
プロの能楽師ではありませんが、何度も能を舞われ、また教えてもいらっしゃる方とのことでした。

今年、まだ白梅の清らかな美しさを楽しんでいた頃の会で、今回は「井筒(いづつ)」の仕舞を出されました。

この曲を、30年程前に舞囃子(*2)で舞ったことがあります。
全力で臨んだものの、最後少し見上げるところで、申し合わせ(直前のリハーサル)の時より僅かに顔を上げ過ぎ、悔いが残りました。

この日のその方は、終始淡々と舞われているように見えながら、実は大変強い引力を発していらして、私は身を乗り出さずにはいられませんでした。
そして最後近く、見事にぴたりと顔の角度を決められました。
古寺の鐘の音が聞こえ、その視線の先には白々と明けゆく空が見えるような仕舞でした。

このような舞台に出会い、いつかこんなふうに舞えるようになりたいと、心が奮い立ちました。
その気持ちは、まだ冷めていません。


*1*2

仕舞(しまい)・・・能の一部を取り出した短い部分を、謡に合わせて舞います。

舞囃子(まいばやし)・・・同じく能の一部ですが、取り出す部分が少し長くなります。謡だけでなく、楽器(小鼓、大鼓、笛、演目により太鼓)が加わります。多くの場合、仕舞と、謡がなく楽器だけでの演奏に合わせて舞う部分(井筒では「序の舞」)とで構成されます。

仕舞も舞囃子も、自分の着物と袴で舞台に立ちますが、能では、その役の装束(しょうぞく。衣裳)と面を着けます。

『井筒』


 シテ・近藤乾之助 
 撮影・亀田邦平
 白竜社製 能の写真のはがきより


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