いよいよ夏休みも終わりを迎える時期となり、クリニックでは10月から接種開始予定のインフルエンザワクチンの準備を始めています。
毎年インフルエンザワクチンについて問い合わせの多いことを、このブログで何回かに分けてまとめて記載したいと思っています
まずは、「1歳未満のインフルエンザワクチン接種はした方がいいの?」というもの。
これまでは日本小児科学会でも1歳未満のインフルエンザワクチンの有効性は不明、としており、その理由は「免疫応答の未熟性」と「ワクチン接種量の少なさ」と言った見解でした。
そのため、2011年より以下のように接種量が変更され、WHO推奨量(世界標準量)となりました。
2010年度以前のインフルエンザワクチン接種量
1歳未満 0.1ml
1歳~6歳未満 0.2ml
6歳~13歳未満 0.3ml
13歳以上 0.5ml
2011年度以後のインフルエンザワクチン接種量
3歳未満 0.25ml
3歳以上(成人も含む) 0.5ml
1歳未満では単純に2.5倍の接種量となりました。これは日本脳炎ワクチンと同じ年齢区分と接種量です。
アメリカ疾病予防センター(CDC)によるとインフルエンザワクチン接種は生後6か月から接種すべき年齢となっています。
接種量が世界と同じになったことで、6か月~1歳未満の乳児でも効果は期待できそうです。
しかし、もう一つの「免疫応答の未熟性」については、接種量増量後の国内データがまだ見当たらずハッキリとはしていません
普通に考えると、肺炎球菌ワクチン、Hibワクチン、4種混合ワクチンなどは生後2-3か月から接種して抗体を獲得しているので、6か月からインフルエンザワクチンを接種してもある程度の抗体は獲得できそうですが...
インフルエンザワクチンの基本的な事の確認です
インフルエンザにかかる時はインフルエンザウイルスが口や鼻から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この状態を「感染」といいますが、ワクチンはこれを抑える働きはありません。
ウイルスが増えると数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が起こります。この状態を「発症」といいます。ワクチンには、この発症を抑える効果がある程度認められています。
ですので、インフルエンザの予防接種は、発症を軽く抑える、肺炎、脳炎などの重症化を防ぐのが大きな役割なんです。
また、1歳未満のお子さんへの抗インフルエンザ薬(タミフル)は慎重投与になっているため基本的に使用出来ません。
これらのことから少しでも発症のリスクを減らせるのあれば1歳未満でも接種すべきではないかと思います。
特に集団生活をしている保育園児は接種して下さい!、と外来ではお話ししています。
インフルエンザは集団生活を送っている保育園、幼稚園、小学校などから感染が拡大するためです。
保育園へ通っていないお子さんは家族内感染がほとんどです。
1歳未満の乳児が予防接種しない場合は、家族内の皆さんが予防接種を受けることで乳児への感染を防ぐ必要があります。
1歳未満のお子さんへインフルエンザワクチンを接種をどうするかは、最終的には皆さんの生活スタイルも関係してきます。
任意接種ですのでお金の問題さえクリアーするのであれば、医療従事者としては「可能な限り接種して下さい」と言う結論になります